予備試験対策 民法 まとめノート (旧)

一 総論  1主体  2契約の有効性  3代理  4時効
二 物権  1序論  2物権変動  3即時取得  4物権各論
三 債権 1総論 2債務不履行 3同時履行 4危険負担 5解除 6担保責任 7債権譲渡 8消滅

一 総論
1主体など
(1)対策総論
ア 論文ではまず訴訟物を想起する。…に基づく…請求ができるか検討する。と、訴訟物を端的に示すことができれば良い。
問題文によっては(あくまで設問文に向き合うことを忘れない)、要件(請求原因)を摘示することもある。どの要件について考えているのか、という流れができ、あとは争点について論ずればよい。
以上は要件事実の問題の場合は必須である。訴訟物→要件(抗弁→抗弁事実)の順で書き、事実①以下を意味づけていく。いきなり、「事実①」などと表題を書いて検討しないこと。
まず想起する方向は債権と物権の二方向である。
イ 対象を示すということは、全科目に共通していないだろうか。憲法は違憲を主張する攻撃対象、行政法は違法とする行政庁の処分・根拠条文・理由、民法は訴訟物及び請求原因、会社法は条文、刑法は行為、刑訴は行為や伝聞構造、を特定することが必要になる。論文(やレポート等書面審査)ではいま何の話をしているのかを示す、ということが必須である点で、全科目共通することは必然ともいえる。
ウ 請求がすべて認められない等の場合、結論の妥当性に一言言及する。三段論法を必ず守りきる。
時間軸に弱いので、日付は常に意識する。
(2)ア. 制限行為能力者による取消には第三者保護規定が無い。しかし、第三者が常に保護されないとすると取引の安全を害する。そこで、(取消前の第三者との関係では制限行為能力者の保護が優先されるとしても、)取消後の第三者の保護を検討する。
取消しによって不動産の所有権が戻るのも、一種の復帰的物権変動である。また、取り消した後は速やかに登記をして権利関係を公示すべきであり、登記を怠った者を保護する必要はない。
そこで、取消し後の第三者は177条の「第三者」に当たると解する。
イ. 制限行為能力者が同時に意思無能力者であるとき、制限行為能力を主張して取り消してもいいし、意思無能力を主張して無効を主張してもよいと考える。
(3)ア. 34条は法人が定款等の目的の範囲内でのみ権利を有し義務を負う旨定めている。
法人はその「目的の範囲」内でのみ法律上の存在を認められるので、その範囲内においてのみ権利能力を有すると解する。「目的の範囲」を柔軟に解釈することで取引の安全は図ることができる。
よって、34条は法人の権利能力を制限した規定であると解するべきである。また、その結果として行為能力も制限される。
イ.(ア)代表理事の代表権に制限を加えても、善意の第三者には対抗できない(一般法人法77条5項)。「善意」とは、善意無重過失を意味すると考える。代表権の制限は知っていたが、要件が充足されたと信じた第三者は、そう信じたことにつき正当な理由があれば110条の類推適用により保護され得る。
(イ)処理:定款による制限→法77条5項→民法110条類推→法78条(法人の不法行為)
ウ.(ア)法人が一般法人法78条により不法行為責任を負うとき、行為者である機関個人も責任を負う。代表機関は法人の行為を形成する側面と、機関個人たる側面との二面性をもち、後者との関係で機関個人の責任を肯定する。 
(イ)法人が法78条により損害を賠償した場合、機関個人に対し求償できる。損害の公平な分担という見地から。
(4)権利能力なき社団とは、社団としての実体を有しながら法律上の権利義務の主体とはなり得ないものである。しかし、その社団としての実体に着目し、法人の規定を類推適用すべきである。

2契約の有効性
(1)契約成立 ア. 私的自治の原則の下、各個人は自らの意思に基づいてのみ、権利を取得し又は義務を負担する。意思無能力時では法律行為の拘束力を及ぼす基礎を欠くため、法律行為は無効となると解する。
本件契約時、Aは意思無能力であった。したがって、Aは本件契約の無効を主張して、500万円の返還を請求できる。
イ. 無効は本来だれからでも主張し得る。しかし、意思無能力による無効の主張を認める趣旨は意思無能力者本人の保護にあり、無効主張は本人からのみ認めれば足りる。そこで、意思無能力による無効は本人のみ主張できる(相対的無効説)。
本問では、相手方たるBは、契約の無効を主張できず、絵画を返還請求できない。
ウ. 契約は表示行為(正確には表示行為から推認される法的意味)の客観的合致により成立する。表示行為の意味は当該取引のなされた環境・取引慣行に照らして判断する。「誤表は害さず」〔18〕当事者間の内心的効果意思が合致していれば、表示行為は無視して契約が成立する。←まず契約が成立することを一行で認定する。(意思表示瑕疵はその後に論じる。)
(2)心裡留保は原則有効であるが、相手方が悪意又は有過失なら無効となる(93条ただし書)。
代理人が自己の利益を図る意図で代理権の範囲内で行動した場合、93条ただし書を類推適用する。
第三者の保護は94条2項類推適用で図る。
(3)虚偽表示 ア. 虚偽表示(94条1項)の要件は、①内心的効果意思と表示行為の不一致、②通謀である。
イ. 94条2項の要件は、①第三者該当性、②第三者の善意である。(抗弁として反論で主張する)
①第三者とは、虚偽表示の当事者及び包括承継人以外の者で、虚偽の外観について法律上の利害関係に入った者をいう。
判断基準:虚偽表示により契約が無効とされる直接の効果によって、権利を失う者、または、義務を負う者が当たる。
例:差押債権者は、売買が無効とされると、債務者は目的物につき無権利者となり、不当執行(差し押さえ自体の否定)となる。したがって、法律上の利害関係を有する。
 例:虚偽表示の目的物の賃借人について。他人物賃貸借となり、所有者の明け渡し請求により、目的物を使用収益させる債務は履行不能(となり、損害賠償請求権に転化する。)したがって、法律上の利害関係を有する。
例:建物の賃借人は、土地の売買の虚偽表示について、法律上の利害関係を有しない。土地に対する権利を有しないからである。
②第三者の善意について、無過失は不要である。文言からそう解するのが素直だし、本人の帰責性が大きいので第三者保護要件は緩やかに解すべきだからである。
ウ. 94条2項の第三者として保護されるのに登記を具備する必要はない。第三者と真の権利者とは前主後主の関係にあり、対抗関係(177条)に立たないからである。(法定承継取得説→94条2項は予備的抗弁として位置づけられる。)
エ. 94条2項の第三者は、表意者からの譲受人に対して、登記なくして所有権を主張できるか。表意者からの譲受人が177条の「第三者」に当たるかが問題となる。
94条2項の第三者と表意者とは前主後主の関係にある(法定承継取得説)。その結果、表意者を起点として二重譲渡があったことになり、両者は対抗関係(177条)に立つというべきである。
以上より、表意者からの譲受人は177条の「第三者」に当たり、94条2項の第三者は登記なくしてその所有権を対抗できない。
オ. 虚偽表示につき悪意の第三者からの転得者については、第三者が94条2項によって保護されず無権利者となるため、転得者は権利を承継取得できないとも思える。
しかし、転得者であっても、虚偽表示により契約が無効とされると直接権利を喪失する点で、保護すべき要請は直接の第三者と異なるところはない。したがって、転得者も虚偽の外観について法律上の利害関係を有し、①第三者に含まれると解する。
カ. 虚偽表示につき善意の第三者からの悪意の転得者は保護されるか。
法律関係の早期安定・簡明という観点から、善意の第三者が現れればこの者が確定的に権利を取得し、転得者はかかる者の地位を承継取得すると解する(絶対的構成)。
ただし、悪意の転得者が善意の者を専ら自己のために利用したときには、権利の濫用(1条3項)として例外的に保護されない。
(4)94条2項類推適用
ア. (ア)まず、BはAの不動産を処分する権限を有しないから、Cは不動産の所有権を取得できないのが原則である。
(イ)しかし、Aが不注意であることから、94条2項を適用してCを保護できないか検討する。(原則形)
本問では、「相手方と通じてした虚偽の意思表示」がなく、94条1項の虚偽表示が存在しないので、94条2項を直接適用することはできない。よって、第三者は保護されないのが原則である。
しかし、同条項の趣旨は、虚偽の外観作出につき本人に帰責性がある場合には、虚偽の外観を信頼して取引をした第三者を保護し、もって取引の安全を図る点にある。そこで、①虚偽の外観が存在し、②本人に帰責性があり、③その外観を第三者が信頼した場合、94条2項を類推適用して第三者を保護すべきと解する。
考え方:登記には資金も時間も必要になるので、準備期間が必要となる。1週間くらいでは通謀と同程度の帰責性は認められず、判例は1年以上放置した場合に認めている。
イ (不注意型)
AB間には通謀なく、94条2項を直接適用することができない。しかし、94条2項や110条の趣旨は、虚偽の外観を信じて取引関係に入った者を保護し、もって取引の安全を図るとともに、本人保護との調整を図る点にある。そこで、①虚偽の外観が存在し、②権利者に不実登記の意思的承認と同視し得るほどの重い帰責性がある場合に、94条2項、110条を類推適用して、第三者の保護を図るべきである。この場合、虚偽の外観を他人が作出しており、本人保護の要請が大きいので、③第三者の主観的要件は善意無過失と解するべきである。
A:度重なる問い合わせをしていたが、相手方が言葉巧みな説明をして言い逃れをしていた場合、②本人の帰責性がない。
A:必要ない本件不動産の登記済証を合理的理由もないのにBに預けて数ヶ月間にわたってこれを放置している。相手方にほしいままにされる状況を生じさせていたのに、問い合わせることもなく、漫然とこれを見ていた。積極関与や知りながらあえて放置した場合と同視し得るほどの重い帰責性がある(②充足)。
ウ. 丁は本件土地の所有権を取得できるか。(意思外形非対応型)
まず、甲乙間の売買は虚偽表示であり、乙は所有権を取得できない(94条1項)。よって、乙丁間の行為は他人物売買となり、丁は所有権を取得できないのが原則である。
丁からは、94条2項により保護されるという抗弁を提出することが考えられる。
この点、本件では虚偽表示があるので、94条2項が適用される。ただし、本件では、相手方が本人の予定していた以上の外観を作出しており(越権代理に類似)、虚偽性の大きな外観作出に対する本人の帰責性があまり大きくない。そこで、94条2項と110条の法意に照らし、①第三者の保護要件として、②善意無過失を要求すべきである。
エ. 94条2項類推適用により取得する財産は、対象ごとに論じなければならない。
例:乙建物の所有権が94条2項、110条類推適用によりCに移転しても、甲土地賃借権が同様に移転するとは限らない。
(5)錯誤 「さ よ じ し」の順で検討する。要件は、①錯誤該当性、②要素の錯誤、③表意者に重過失がないことである。
ア. 錯誤とは意思表示における内心的効果意思と表示の不一致をいう。
では、動機の錯誤は95条の「錯誤」に当たるといえるか。例:名馬だから購入した。
動機はあまりに多様で取引の安全を害するため、意思表示の内容ではない。よって、動機の錯誤においては内心的効果意思と表示行為との間に不一致はなく、原則として「錯誤」に当たらない。
しかし、現実では動機の錯誤の事案が多く、これを一切錯誤に含めないとすると95条の存在意義が薄れる。そこで、表意者保護と取引安全との調和の観点から、動機が明示又は黙示に表示され、意思表示の内容となった場合には、動機の錯誤も「錯誤」に当たると解する。
本件絵画は著名な画家Cの署名入りであることから、画家Cの真作を購入するという動機は黙示に表示されているといえる。
 例:「儲かるから」という動機は、意思表示の内容にならない。100%儲かる方法なんかないし、損をするリスクは購入者が負担するべきだからである。
イ 「要素に錯誤」があるとは、表意者が意思表示の主要な部分とし、この点につき錯誤がなければ表意者は意思表示をしなかっただろうし(因果関係)、かつ、意思表示をしないことが社会通念上相当と認められるもの(重要性)をいう。
又は、要素の錯誤とは、錯誤がなければ、表意者も一般人も意思表示をしなかったことである(因果関係と重要性)。
例:主債務者がだれかについて錯誤がある。そして、主債務者が無資力であれば返還の期待がない以上、Cは契約締結の意思表示をしなかったし、それが相当といえる。よって、要素の錯誤に当たる。
例:時価100万円程度の絵画を2000万円で売買しているため、錯誤がなければ表意者も一般人も意思表示しなかったといえる。
ウ. ③重過失は要件又は抗弁として主張する。
③重過失とは、わずかな注意を払えば気づくことができたのに、漫然と信じ、注意義務に著しく反することである。
エ. 主張権者:95条は表意者保護のための規定であるから、表意者の意思に他の者が不当に干渉すべきでない。錯誤無効は表意者のみが主張でき、表意者が無効の主張をして初めて意思表示の効果が失われる。例外として、債権者代位権を行使するために、①第三者に債権保全の必要性があり、②表意者も要素の錯誤を認めているときには第三者も無効主張できる。
(6)詐欺  ア 96条1項の要件は、①詐欺によって相手方が錯誤に陥り意思表示をしたこと、②詐欺の故意である。
②故意とは、錯誤によって、意思表示をさせようとする故意である(二重の故意)。
消費者契約法4条1項1号では、②故意の要件は不要である。
イ 96条3項の要件は、①第三者該当性、②第三者の善意である。
①96条3項は取消しの遡及効(121条)によって害される者を保護し、もって取引の安全を図る趣旨の規定であるから、同項の第三者とは取消前に法律上の利害関係に入った者である。
②詐欺にあった表意者にも何らかの落ち度があり、帰責性が認められるので、表意者保護の必要性は低く、第三者をより保護すべきとの観点から、無過失は不要と解する。
第三者と表意者とは前主後主の関係にあるので、対抗要件としての登記は不要である。
ウ. まず、取消しにより遡及的に契約は無効となり(121条)、遡ってBは無権利となるので、Cは所有権を承継取得できない。
96条3項は取消しの遡及効ゆえに害されるものを保護するための規定であるから、同項でいう「第三者」とは、取消前の者をいう。とすれば、取消後の第三者は96条3項によっては保護されない。
しかし、取消しの遡及効は法的な擬制にすぎず、現実には相手方に所有権が移転した以上、取消しによって所有権の復帰を観念し得る。また、取消後は迅速に権利関係を公示すべきであり、登記を怠った者を保護する必要はない。
そこで、相手方を起点とした二重譲渡があると考え、取消後の第三者は177条の「第三者」に当たると解する。
本問では、Cは登記を備えているので、背信的悪意者でない限り、確定的に所有権を取得し、その反射的効果としてAは所有権を喪失する。
(7)強迫には第三者保護規定がない(96条3項参照)。したがって、110条等が問題となる。

3代理
(1)総則 ア. 代理の要件は、①顕名、②③に先立つ代理権授与、③有効な代理行為である(99条1項)。
①顕名が無ければ、他人物売買として処理する。顕名はあるが、②代理権が無ければ無権代理として処理する。③代理行為が有効かどうかは単に契約の有効要件の話である。
イ. (ア)本人が内部契約取り消した場合、代理権は遡及的に消滅し、遡って無権代理となる。(イ)本人が授権行為を取り消した場合、代理権は遡及的に消滅する(121条)。すべて遡って無権代理となる。(ウ)代理人が内部契約を取り消した場合、代理権は将来に向かってのみ消滅する。相手方を保護する必要性があるし、代理人が何ら不利益を負わない。(エ)代理人が授権行為を取り消した場合、場合分け。
ウ. 代理人が直接本人の名で代理行為をした場合にも、効果帰属主体を明らかにするという顕名の趣旨は満たされるため、顕名があるといえる。もっとも、相手方は動機の錯誤(契約の相手方の錯誤)を主張できる余地がある。
エ. 意思表示の瑕疵や善意・悪意は代理人について判断する(101条1項)。
代理人が特定の法律行為を委託された場合、本人は自らの知っていた事情、知る事ができた事情について代理人の不知を主張できない(101条2項)。このとき指図は不要である(101条2項の拡張解釈)。
オ. 代理人Bが本人Aを騙すつもりで相手方Cと通謀して虚偽表示を行った場合について。
虚偽表示は94条1項により無効であり、BC間の行為はAに帰属しない。また、Aは94条2項でも保護されない。
しかし、相手方の内心的効果意思と表示意思との間に不一致が認められ、相手方の意思表示を心裡留保(93条)と考えることができる。また、代理人には本人を騙す権限など無いのだから、この場合、本人の代理人としてではなく、むしろ相手方の意思表示を本人に伝達する使者として行動しているにすぎない。そこで、93条ただし書きを適用すべきと解する。
以上より、本人が善意無過失であれば、相手方の意思表示は有効になると解するべきである。
(2)濫用 ア. 代理人が顕名とともに代理権の範囲内で有効な法律行為を行ったが、自己の利益を図る目的で取引をした場合、本人は相手方からの請求を拒めるか。
代理人の行為は代理権の範囲内なので、原則としてその効果は本人に帰属する。
しかし、確かに法律効果については内心と表示との間に不一致はないが、経済的効果の帰属については内心と表示との間に不一致があり、心裡留保(93条)類似の構造が見られる。そこで、93条ただし書きを類推適用し、相手方が代理人の真意を知り又は知ることができた場合には、本人は代理行為の無効を主張できるものと解する。
イ. 未成年者Xの親権者Aは、Xの叔父BのCに対する債務を担保するため、Xの土地に抵当権を設定した。
(ア)XはCに対して、抵当権設定登記の抹消を求めたい。
この点、親権者であるAはXの代理権を有するので(824条本文)、抵当権設定契約は原則として有効である。
(イ)もっとも、Aの行為は利益相反行為であり、826条違反として無権代理(113条)とはいえないか。
この点、利益相反行為か否かは、取引安全の見地から行為自体を客観的に考察して判断すべきである。
本問ではAの行為により利益を受けるものはBであって、親権者Aとその子Xとの利益が客観的に相反しているとはいえない。
よって、Aの行為は客観的にみて利益相反行為とはいえない。
(ウ)しかし、親権者が法定代理権(824条)を濫用して法律行為をした場合、相手方が右濫用の事実を知り又は知り得るときは、民法93条ただし書きを類推適用して、その行為の効果は子には及ばないと解する。そこで、Aの行為は代理権の濫用といえないか。
この点、親権者が子を代理する法律行為は、親権者と子との利益相反行為に当たらない限り、広範な裁量に委ねられている。とすれば、子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、親権者に子を代理する権限を与えた法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、親権者による代理権濫用があったとはいえない。
(3)無権代理
ア 顕名とともに法律行為をした者に代理権が無い場合、その効果は本人に帰属しない(113条1項)。
よって、本問Cは、所有権を取得できないのが原則である。(必ず原則論)
本人は、①追認(113条)、②追認拒絶(113条2項)ができ、本人がなにもしない場合などに、相手方は、①催告(114条)、②取消し(115条)、③無権代理人の責任追及(117条)、④表見代理の主張(109条、110条、112条)ができる。
イ 顕名なくしてなされた代理行為は他人物売買などとなるが、このとき真の所有者が追認すれば、116条を類推適用して遡及的に有効となると考える。なぜなら、116条は無権代理の規定であり直接適用できないが、顕名の有無によって別異に扱う理由はないからである。
ウ 無権代理、かつ、利益相反取引、かつ、公序良俗違反である場合に、追認ができるか。追認が利益相反行為に当たらないか。当たらないとして、無効な行為を追認できるか。無効な契約は追認しても効力を生じない(119条本文)し、新たな行為をしたものとみなされても(同条ただし書)、新たな行為も公序良俗違反で無効。以上より、追認できない。
エ 相手方は、その選択によって、無権代理人に履行又は損害賠償を請求できる(117条1項)。
この場合、相手方は善意無過失でなければならない(同条2項 代理人が立証する抗弁)。
表見代理が成立する場合にも、無権代理人の責任追及を選択することができる。確かに、前者は有権代理を擬制し、無権代理の瑕疵が治癒され、無権代理人が免責されるかが問題となるが、表見代理は117条とは独立の制度であり、無権代理人の責任を免れさせるものでは無いからである。
オ (ア)無権代理人Bが本人Aを相続した場合、代理権がないという瑕疵は治癒され無権代理行為は当然に有効となるか。
(両者の地位は融合すると考えれば、無権代理行為は当然に有効となる。しかし、)相続という偶然の事情によって相手方の取消権(115条)を奪うべきではないし、共同相続であれば、共同相続人の追認拒絶権(113条2項)を認める必要がある。
そこで、両者の地位は併存し、相続により当然に無権代理行為が有効になるわけではないと考える。
(イ)もっとも、Bは本人Aの立場において追認を拒絶できない。無権代理行為を行った者自身がその追認を拒絶することは禁反言であり、信義則(1条2項)に反するからである。
ただし、本人が追認を拒絶してから死亡した場合には、追認拒絶の時点で効果不帰属が確定しており、法律効果は代理人に帰属せず、請求を拒絶することも信義則に反しない。
(ウ)では、無権代理人が信義則上追認を拒絶できないとしても、他の共同相続人Dが追認を拒絶したとき、法律関係をいかに解するか。
無権代理行為を追認する権利はその性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないと解するべきである。したがって、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は無権代理人の相続分に相当する部分においても当然に有効となるものではない。そしてこの理はそれ自体可分な金銭債権においても同様である。
本問では、Dが追認を拒絶しているのでBの行為は当然に有効とならない。確定的に無効となる。
あとは、Bに対して無権代理人の責任(117条)、不法行為責任(709条)を追及し得るに止まる。
カ 本人Aの無権代理行為をしたBが、本人Aの成年後見開始の審判(7条)により後見人に就任した場合、後見人の立場で(859条)無権代理行為を追認拒絶(113条2項)できるか。
(ア)確かに、Bが追認拒絶することは、矛盾挙動に当たり、信義則(1条2項)に反するとも思える。
しかし、制限能力者保護の観点からは、後見人は、過去にいかなる行為を行ったかに関係なく、その時点で何が制限能力者にとって利益であるかという見地から追認権を行使する義務を負う。よって、追認拒絶する余地を与えるべきである。
また、後見人は家庭裁判所が選任している(7条)ため、適切な行為を期待できる。
したがって、無権代理人が本人の後見人に就任し、後見人の立場で無権代理行為を追認拒絶することは、信義則に反しない限り、許されるものと解するべきである。
(イ)本問の山林はAが先祖から受け継いだ大切なものであり、特に売却の必要性もないのであるから、信義則上、追認拒絶が許されるべきである。(ウ)以上より、Bは追認拒絶できる。
キ 本人が無権代理人を相続した場合 まず「地位併存説」を論ずる。
(ア)そして、本人が本人の立場で追認を拒絶することは、何ら信義則(1条2項)に反せず許される。
よって、契約の効果はAに帰属せず、EのAに対する売買契約に基づく乙の明渡請求は認められない。
(イ)もっとも、本人は無権代理人を包括承継している(896条)以上、善意無過失の相手方に対して無権代理人の責任(117条1項)を免れない。ただし、金銭債務以外の債務について履行責任を負うことになると、相続という偶然の事情によって本人が不利に扱われてしまう。そこで、この場合には本来の履行を拒めると解するべきである。
(ウ)以上より、EはAに対して損害賠償請求のみすることができる。
ク 本人と無権代理人の双方を相続した場合
判例は、無権代理人を相続した者が本人を相続した場合には、追認を拒絶することは信義則に反するとする。しかし、本人を相続した者が無権代理人を相続した場合には、追認を拒絶しても信義則に反しない以上、相続の時期という偶然の事情によって結論が左右され、妥当でない。
そもそも、相続人は無権代理行為をしていないので、追認を拒絶することは、相続の時期に関わらず信義則に反しない。
よって、相続人は、無権代理の追認を拒絶して、請求を拒むことができる。
(4)表見代理
代理権授与表示がありその範囲内で取引した場合(109条)、代理権はあるがそれを越えて取引をした場合(110条)、代理権は消滅したがその代理権の範囲内で取引した場合(112条)、授与表示された代理権の範囲を越えた場合(109条1項、110条)、消滅した代理権の範囲を越えた場合(110条、112条)に論ずることができる。
109条、110条、112条はいずれも表見法理の現れであるから重畳適用も可能である。
ア 109条 (ア)Aは遡って無権代理人となり、原則としてCは所有権を取得できない(113条1項)。
Cとしては、代理権授与の表示があったとして109条の表見代理の成立を主張したいが、これは否定される。
なぜなら、109条は表見法理の現れである以上、外観作出について本人の帰責性が必要であるが、強迫によって授権した場合には本人に帰責性があるとはいえないからである。
もっとも、取消後に委任状を放置するなど、授権表示の外観を容易に除去できるのにそれを怠った場合には、本人に帰責性が認められる。そこで、新たな授権表示とみて、109条の成立の余地を認めるべきである。
(イ)白紙委任状の交付について、判例によれば、①被交付者が濫用した場合、白地を補充して代理行為をしたときは授権表示が認められ、補充しないまま呈示したときは授権表示が認められない。ただし白紙委任状に加え権利証等の呈示があった場合には授権表示が肯定される。②被交付者から予定されていない別の者が白紙委任状を取得して代理行為をした場合、委任事項欄が当初の予定されていたものであったときは授権表示が肯定され、逸脱があれば授権表示があったとはいえない。
なぜなら、白紙委任状は転々流通することを予定しないからである。
イ 以下110条
110条の要件は、①基本代理権、②顕名、代理権をこえて、取引をしたこと、③信じたことにつき正当な理由である。③疑ったこと、悪意有過失の抗弁を主張する。
代理制度の趣旨は私的自治の拡充にあるから、①基本代理権とは、私法上の法律行為をすることについての代理権をいう。
(ア)事実行為の代行権限は原則基本代理権にならない。もっとも、それが対外的な関係を予定しつつ一定の行為を委託したような場合にはなり得る。
(イ)公法上の行為の代理権は原則として基本代理権にならない。ex.登記の移転手続 もっとも、それが特定の私法上の行為の一環としてなされるものであるときは、基本代理権になる。ex.土地の売買契約に当たっての登記の移転手続
ウ 事例:夫Aが妻Bの甲不動産を勝手にCに売却した。
(ア)Aは、Bに無断で、甲不動産を売却しており、代理権を与えられていない。よって、Aの行為は無権代理行為となり、契約の効果はBに帰属せず、Cは甲不動産の所有権を主張できないのが原則である(113条1項)。
(イ)もっとも、ABは夫婦である。そこで、相手方Cは、Aの行為が761条の日常の家事に関する法律行為(日常家事行為)に当たることを根拠に、法律行為の効果が妻Bに帰属することを主張できるか。同条の法的性質と関連して問題となる。
761条は本来、日常家事行為について夫婦の連帯責任を規定したものではあるが、もし夫婦相互間に代理権がなければ非常に不便である。そこで、同条は連帯責任の効果を生じる前提として、夫婦は日常家事行為について他方を代理する権限ある旨を定めていると解する。
ここでいう日常家事行為とは、個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営む上で通常必要な法律行為をいう。その判断においては、取引安全の見地から、単にその夫婦の内部的事情やその行為の目的のみを重視するのではなく、さらに客観的に、その行為の種類、性質等をも考慮しなければならない。
本問では、確かに、乙の行為は「甲の医療費調達の目的」でなしているのであるから、夫婦の共同生活のためになした行為といえそうである。しかし、土地は一般的に高額であり、その売却は客観的に夫婦の共同生活を維持するのに通常必要な行為とはいえない。よって、Cの主張は認められない。
(ウ)では、Cは761条の法定代理権を基本代理権として、110条を根拠にBへの効果帰属を主張できないか。
110条は文言上、任意代理に限定していないので、法定代理権も同条の基本代理権となり得る。
もっとも、これを基礎に広く一般に110条の表見代理の成立を肯定すれば、夫婦の財産的独立(762条1項)を損なうおそれがある。そこで、当該越権行為の相手方である第三者において、その行為が当該夫婦の日常家事行為の範囲内に属すると信ずべき正当な理由のあるときに限り、110条の趣旨を類推適用して、第三者を保護できると解する。
よって、CはAの行為がABの「日常の行為」の範囲内と信じるにつき相当な理由があれば、110条の趣旨を類推して、土地所有権を取得する。
(エ)110条の「正当な理由」の判断方法:代理権の存在を推定する事実(実印、印鑑証明書)があるか→ある→代理権の存在に疑問を感ずべき「特段の事情」(夫婦の関係など)があるか→ある→本人の意思につき確認義務を尽くしたか。
参考:Cは画商という絵画売買の専門家であり、高度の確認義務が認められる。
本問ではBはCの実印と印鑑証明書を所有しており、代理権の存在が推定されるため、原則として「正当な理由」が認められるとも思える。しかし、BCは夫婦であり、互いの所有物を容易に持ち出せることから、代理権の存在に疑問を感ずべき特段の事情があるといえ、DはCに問い合わせをする等の確認義務が生じると解する。にもかかわらず、Dは確認義務を怠っている。以上より、Dには「正当な理由」が認められない。したがって、Dの請求は認められない。
エ 代理人が本人として行動し、代理権の範囲を超える取引を行った場合、相手方は代理権の存在を信じたわけではないから、110条を直接適用はできない。しかし、本人に効果帰属すると信頼とした点において相違はないから、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合には、110条を類推適用して、第三者は本人への効果帰属を主張できる。
オ 無権代理行為の相手方Cからの転得者Dは110条の「第三者」に含まれず、同条では保護されない。「第三者」は有効な代理権が存在する旨を信頼した者に限られるところ、転得者は相手方が真の権利者である旨を信じたにすぎないからである。
CD間の行為は他人物売買となり、Dは94条2項類推(不動産)、192条(動産)で保護されるに止まる。

4時効
(1)総則 ア 時効制度の趣旨は、長期間継続した事実状態を法律上も尊重して社会秩序・法律関係の安定を図ること、権利関係の立証困難の救済、「権利の上に眠る者は保護に値せず」という法格言にある。
時効に類似する制度として除斥期間がある。両者の違いは「えん そ はっせい ちゅう(どく)」で覚える。
イ 不動産賃借権に時効取得(162条)が成立し得るか。
債権は通常、永続する事実状態を観念できず、時効取得は一般的には認められない。
しかし、不動産賃借権は目的物の占有を不可欠の要素とし、永続した事実状態を観念し得る。また、不動産賃借権は、今日においては、地上権(265条)と同様の機能を有している。そこで、不動産賃借権も時効取得が認められ得ると解する。
ただし、不動産所有権者の保護も考慮し、その時効中断(147条)の機会を保障すべく、①目的物の継続的用益という外観的事実が存在し、②それが賃借の意思に基づくと客観的に表現されていなければならないと考える。
使用貸借(593条)も同様。使用貸借は借主の死亡によって終了する(599条)ので、被相続人の占有を主張することはできない(ので、認められにくい 原則論)。上の①②の要件でも無理なら、明渡しを権利濫用として排斥する判例が多い。
ウ 取得時効の要件(162条)は、所有の意思(自主占有)、平穏かつ公然、一定期間、他人の物を、占有したことである。
所有の意思、平穏・公然、善意を主張立証する必要はない。186条1項は、162条1項の「占有」という要件によって、同条2項の所有の意思、平穏・公然、善意の事実を推定するからである(暫定真実)。
土地を10年間継続して占有していた事実を主張立証する必要はない。186条2項の規定により、①時効期間開始時、及び、②時効期間経過時の両時点で不動産を、③占有している事実を主張すれば足りる(法律上の推定)。
他人の物であることを主張する必要はない。自己物であっても時効取得できるからである。
エ 消滅時効の要件事実 ①権利行使できる時から債権なら10年、地上権・地役権などは20年、②援用の意思表示(援用権者であること) ←抗弁 中断(147条) 時効利益の放棄(146条、又は、判例)
(2)効果 ア 時効の効力は、その起算日に遡る(144条)。消滅時効なら利息・遅延損害金を払わないでよい、取得時効なら果実収取権や不法行為に基づく損害賠償請求権なども取得する。
イ その効果は当事者が援用しなければ生じない(145条)。その趣旨は永続した事実状態の尊重という時効制度の趣旨と、当事者の意思との調和を図ることにある。そこで、援用して初めて効力が生ずると解する(停止条件説 ④時効援用の意思表示が請求原因事実となる)。
ここでいう「当事者」とは、時効により直接に利益を受ける者をいう。
保証人、抵当不動産の第三取得者などがその例である。土地所有権を時効取得すべき者からの建物賃借人や後順位抵当権者は含まれない。一般債権者は含まれないが、差押債権者は含まれる(時効により直接権利を喪失すると考えればいい)。
ウ 後順位抵当権者は、第一順位抵当権の権利消滅により、抵当権の順位が上昇して配当の増加が期待できるという利益を受ける。しかし、これは被担保債権が消滅した後に先順位抵当権が消滅することによる反射的利益にすぎず、直接に利益を受けるわけではない。したがって、後順位抵当権者は145条の「当事者」に含まれない。
以上より、Eは被担保債権の消滅時効を援用することはできない。
エ Eは、Cが無資力であるから、「自己の債権を保全するため」にCの時効援用権を代位行使する(423条本文)ことができるか。時効援用権が「債務者の一身に専属する権利」(423条1項ただし書)であるかが問題となる。
代位行使が問題となる債務者が無資力である場合にまで、時効援用について債務者の意思を尊重する合理性はない。
そこで、時効援用権は「債務者の一身に専属する権利」に当たらないと解する。
オ 求償権が有効に成立するには、「自己の財産をもって債務を消滅させ」たことが必要である(459条1項)。
本問では、時効期間の経過により、既に主債務が消滅しており、この要件を満たさないのではないかが問題となる。
(ア)確かに、167条は「消滅する」と規定しており、時効期間の経過によって債務は当然に消滅するとも思える。
しかし、民法は援用制度(145条)を採用し、当事者の意思を尊重している。そこで、時効による消滅は、当事者の援用を停止条件として発生するものと解する(停止条件説)。
(イ)本問では、Cの弁済以前にB又はCによる援用という事実はないので、Cが弁済した時に債務はなお存在している。
(ウ)よって、Cの弁済により債務は消滅し、求償権は有効に成立している。
カ 一人が時効を援用しても、その効力は他の者には及ばない(相対効)。当事者の意思を尊重するためである。
時効完成を知って自認行為をすれば時効の放棄である(146条)。時効完成を知らずに自認行為をした場合、信義則(1条2項)上、時効を援用できない〔41〕。
(3)中断 ア 時効の中断事由(147条)は請求(1号)、差押え、仮差押え又は仮処分(2号)、承認(3号)である。
催告は6カ月以内に147条各号等の手段を採らなければ時効の中断の効力を生じない(153条)。
イ Aは、Cの弁済等が時効中断事由たる「承認」(147条3号)に当たると主張できるか。物上保証人の一部弁済が、被担保債権の「承認」に当たるかが問題となる。何ら債務を負担せず、債務について確知すべき立場にない物上保証人による弁済は、被担保債権の「承認」に当たらない。

二 物権
1総論(1)物権の性質として、①直接性、②絶対性、③排他性がある。物権においては一物一権主義が妥当する。
(2)ア. 一物の概念は取引通念によって決すべきものであり、担保取引の必要性からは集合物をもって一つの物として扱うことができると解する。よって、集合物を目的としても、一物一権主義には反しない。
イ. しかし、物権の客体は特定性を有する必要がある。
この点、特定性が要求される趣旨は、物権の及ぶ範囲を明確にし、取引の安全を図ることにある。とすれば、目的物の種類・所在場所・量的範囲を指定する等の方法で目的物の範囲が特定されていることが必要である。
本問では、「50トン中25トンの鋼材」としか定められておらず、どの鋼材が目的物かは不明確である。
よって、目的物の範囲が特定されていないので、特定性の要件を満たさず、Aの譲渡担保権は無効である。

2 物権変動
(1)混同 併存させる必要のない2つの法律上の地位が同一人に帰属したとき、一方の権利が消滅する(179条1項本文、2項前段)。例外的に、その物又は権利が第三者の目的になっている場合には、混同は生じない(同条1項ただし書、2項後段)。
ただし、設定者かつ債務者と先順位抵当権者との間で地位の混同を生じると、債権の混同(520条)によって被担保債権が消滅し、(後順位抵当権者がいたとしても、)付従性により抵当権も消滅する。
(2)176条・177条 ア. 176条と177条の関係について、登記がなくとも物権変動は生じるが不完全なものであり、登記を備えることによって完全な物権変動となると解する(不完全物権変動説)。
イ. Aが甲建物の所有者であれば、Dに対して所有権侵害を理由とする損害賠償(709条)を請求し得る。
では、Aは所有権者といえるか、所有権の移転時期が問題となる。
176条が意思主義の原則を定める以上、契約成立時に所有権が移転すると解する。
本問では、甲建物の所有権はAC間の売買契約時にCに移転するので、不法行為時にAは所有権者ではない。
したがって、Aの損害賠償請求は認められない。
ウ. 登記をしなければ物権変動を対抗できない「第三者」とは登記の不存在を主張する正当の利益を有する者をいう。
エ. Cは未登記の通行地役権をDに対抗できるか。Dが177条の「第三者」に当たるかが問題となる。
(ア)「第三者」とは、登記の不存在を主張する正当の利益を有する者をいう。背信的悪意者を除き、原則として「第三者」に含まれる。
ただし、通行地役権は、好意から無償で設定されることがあり、登記がされないこともあるので、かかる地役権者を保護する必要がある。他方、通行地役権の有無は、その外観から判断しやすいので、承役地の譲受人は照会するなどしてその存在を比較的容易に把握できる。そこで、①譲渡時に右承役地が継続的に通路として利用していることが客観的に明らかであり、かつ、②譲渡人がそのことを認識していた又は認識できた場合には、③特段の事情のない限り、承役地の譲受人は登記の不存在を主張する正当な利益を有する「第三者」とはいえないと解する。
(イ)本問では、通行地役権が設定された幅3mもの甲地の一部はアスファルトで舗装されること、B及びその家族が日常的に利用していること、DがAの地役権の設定の有無を確認していないことから、①と②を充足する。また、③特段の事情もない。
(ウ)したがって、甲地の通行地役権について、Dは登記の不存在を主張する正当な利益を有する「第三者」に含まれない。
よって、CはDに登記なくして通行地役権を対抗できるので、通行地役権に基づく甲の通行を求めることができる。
(3)悪意 ア 二重譲渡の第二譲受人が悪意の場合に、第一譲受人は登記なくして所有権を対抗できないか。悪意者が177条の「第三者」に当たるかが問題となる。
自由競争原理の下では、単なる悪意者も177条の「第三者」に当たると解する。もっとも、単なる悪意を超えて、第三者を害する目的を有するような背信的悪意者は、もはや自由競争原理を逸脱しており、信義則(1条2項)上、「第三者」に当たらないというべきである。
イ(ア)背信的悪意者からの譲受人は、当該譲受人が背信的悪意者でない限り権利を取得する。背信的悪意者は信義則上登記の不存在を主張できないにすぎず、売買契約自体は有効であり、転得者は有効に権利を取得できるからである。
(イ)善意・単純悪意者からの転得者が背信的悪意者の場合、譲受人を藁人形として利用したのでない限り、権利を取得する(絶対的構成)。法律関係の早期安定のためである。
(4)解除 ア. 解除前の第三者は遡及効の制限(545条1項但書)により保護される。もっとも解除の遡及効も一種の法的擬制であり、復帰的物権変動を観念し得るので、本人と第三者は対抗関係(177条)に立つと解する。
したがって、解除した者から、対抗要件の抗弁が可能である。(詐欺や虚偽表示の場合とは異なる)
イ. 解除によって譲受人は遡及的に無権利者となり、解除後の第三者は原則として保護されない。
もっとも、遡及的無効も法的擬制であり、一度は有効に譲受人に権利が移転している以上、そこに復帰的物権変動を観念し得る。また、登記を怠った者を保護する必要はない。
そこで、第三者は177条の「第三者」に当たると解する。したがって、第三者からの対抗要件の抗弁が成立する。
(5)時効 「平成15年」など、古い年月が出てきた場合、時効取得や、時効取得と177条の論点を想起する(ペー4)。
ア. ①時効取得する者とされる者とは、当事者類似の関係にあるので、登記なくして時効取得を主張できる。
②時効取得した者と時効取得前の譲受人は当事者類似の関係にあるので、登記なくして時効取得を主張できる。
③時効取得した者と時効完成後の譲受人は、時効取得も一種の物権変動であるので、対抗関係(177条)に立つ。
④時効取得完成後の第三者は、第三者の登記後に10年or20年たてば、時効取得が可能である(敗者復活 H24重判3)
⑤時効の起算点は動かすことができない。取引の安全のためである。
イ. Bは登記なくしてDに所有権を対抗できるか。Dが177条の「第三者」に当たるかが問題となる。
(ア)時効完成前の第三者は、時効取得者とは当事者類似の関係に立つので、「第三者」に当たらない。
本問では、Dが2006年に土地を取得した後に、Bが時効取得しているので、Dは時効完成前の第三者である。
よって、177条は適用されず、Bは登記なくしてDに所有権を対抗できる。
(イ)時効取得も一種の物権変動であるから、時効完成後の第三者は、時効取得者とは二重譲渡類似の関係に立ち、177条の「第三者」に当たる。そして、取引安全の見地から、時効の起算点は動かすことができない。
本問では、Bが2000年に土地を時効取得した後に、Dが土地を取得しているので、Dは時効完成後の第三者である。
よって、Dの177条の対抗要件の抗弁が成立し、Bは登記なくしてDに所有権を対抗できない。
(6)平成5年にXはAから土地を買い占有を開始したが、登記はA名義のままだった。平成10年にYはAから当該土地を買い、Y名義に移転登記をした。Xは平成20年に訴訟を提起した。Xは所有権を取得したといえるか。
ア. まず、XはAから土地を購入しているが、XとYは対抗関係(177条)に立ち、Yが登記を備えている。したがって、確定的にYは所有権を取得し、その反射的効果としてXは所有権を喪失する。
イ. では、Xは土地を時効取得した(162条)と主張できるか。占有を始めたとき、Xは土地の所有権を取得しているが、162条は「他人の物」と規定しており、自己物の時効取得が可能かどうか問題となる。
時効取得制度の趣旨の一つは、権原に関する立証を容易にすることにあり、かかる趣旨は自己物にも妥当する。とすれば、自己物の時効取得も認められると解するべきである。
Xの時効取得の起算点は平成5年となり、10年が経過している。そして、YはXの取得時効が完成する前の譲受人であるから、両者は当事者類似の関係にあり、Yは177条の「第三者」に当たらず、XはYに登記なくして時効取得を主張できると解する。
(7)相続 ア 共同相続人Aが勝手に遺産の土地の単独登記をしてYに譲渡。他の共同相続人Bは登記なくしてその持分βをYに対抗できる。Aはβ持分については無権利であり、登記に公信力がない以上、Yはβ持分について権利を取得できないから。
イ 遺産分割によってAの持分αがBのものとなった。
(ア)相続開始時に遡ってBの物であったことになる(909条本文)。Aは909条ただし書により保護されるか。
909条ただし書の趣旨は、遺産分割の遡及効ゆえに害される第三者を保護し、もって取引の安全を保護する点にある。
したがって、ここでいう第三者は遺産分割前の譲受人をいい、善意悪意を問わず保護される。もっとも、遺産分割により物権変動を観念し得るので、譲受人は177条の「第三者」に当たり、対抗要件としての登記を備えなければならない。
(イ)遺産分割後の譲受人に対しては、遺産分割による持分の取得を登記なくして対抗できるか。遺産分割の遡及効(909条本文)によれば、Aは遡って無権利となり、Yはα持分を取得できないようにも思える。
しかし、遺産分割の遡及効は新たな物権変動と同視できる。また、登記を怠った者を保護する必要はない。よって、譲受人は177条の「第三者」に当たると解する。
Yの対抗要件の抗弁が成立し、Bは登記なくしてα持分をYに対抗できない。
ウ Aは相続放棄をした後に自己持分についてYに譲渡した。939条によれば遡及的にAは無権利者となり、Yはα持分を取得できない。そこで、Yは177条の「第三者」であるとして対抗要件の抗弁を主張することが考えられる。
939条の趣旨は、債務超過から相続人を解放することにあるから、相続放棄の遡及効を貫く必要が大きい。相続放棄に第三者保護規定がないのもその現れといえる(909条ただし書参照)。また、放棄の有無は家庭裁判所で確認できるし(938条)、放棄できる期間は3カ月に限定されている(915条1項)ことから、第三者保護の要請は大きくない。
そこで、相続放棄の遡及効は絶対的なものと解するべきである。
以上より、Yは177条の第三者に当たらず、Bは登記なくして自己の持分を対抗することができる。
Bはα持分の取得を登記なくしてYに対抗できる。

3 即時取得
要件は、①動産であること、②占有を始めたこと、③平穏、公然、善意無過失、である。
(1)即時取得は公示力の乏しい動産の占有に公信力を与え、動産取引の安全を図る制度である。
そこで、登録という公示手段の整った登録自動車は、①動産に当たらず、同条を適用することはできないと解する。
(2)取引が有効であることは即時取得の要件とせず、反論(抗弁)で取引が無効であることを主張すればいいだろう。
ア 制限能力者や意思表示の瑕疵・不存在などにより取引が無効又は取消しとなる場合、直接の相手方に192条を適用することはできない。同条は前主の無権利を治癒するものであり、取引の欠陥そのものを治癒することはないからである。それに、このような場合に即時取得を認めれば表意者保護規定の存在意義がなくなるからである。
イ Aは代理権がないにも関わらず甲のカメラをBに売却したが、そのカメラは甲が乙から預かっていたものだった。
甲は無権利者なのでBがカメラを承継取得する余地はない。Bは即時取得(192条)できないか検討する。
(ア)まず甲B間の取引が有効でなければならないが、甲が追認するか又はAB間の契約について表見代理が成立した場合には、Aの無権代理行為の瑕疵が治癒され、有効な取引になる。(表見代理を主張するには、Bは「Aが無権代理人であること」につき善意無過失でなければならない。)
(イ)甲B間の行為が有効な取引といえれば、192条によってBはカメラを即時取得し得る。(このとき、Bは「甲が無権利であること」につき善意無過失でなければならない。)
ウ AはBにカメラを売った。BはそのカメラをCに売った。AがAB間の契約を取り消した。
Aの取消によりBは遡及的に無権利者となり(121条)、CはBからカメラの所有権を承継取得できない。
では、Cはカメラを即時取得した(192条)と主張できないか。(要件は出さずにいきなり書き始める。)
Cがカメラを取得した時点ではAB間の契約は取り消されておらず、Bは無権利者ではないので、192条を直接適用できない。
しかし、取消しの先後で第三者の地位が左右されるのは疑問である。上記のように契約の取消しにより遡及的に無権利(121条)となった者から動産を取得した者は無権利者からの取得と同視できる。そこで、192条を類推適用して、取得者はカメラを即時取得したと主張できると解するべきである。この場合、善意無過失は取消事由について必要である。
エ 錯誤無効の場合、無効なので、もともと契約の効力は発生しておらず192条を直接適用できる。錯誤事由について善意無過失でなければならない。
(3)要件③ ア 平穏・公然・善意は186条1項により推定される。よって、kgではなく、反論(抗弁)で悪意等を主張する。
イ 前主の占有が適法な権原に基づくものと推定されるため(188条)、それに対する第三者の信頼についても無過失が推定される。よって、反論(抗弁)で過失を主張する。
書き方:即時取得の要件として善意無過失が必要であるが(192条)、善意は186条1項により推定され、188条により無過失も推定されるので、被告側で悪意有過失を立証しなければならない。
(4)要件② 事実:BはカメラをAから買ったが、そのままAの下に預けていた。ところが、AはこれをさらにCに売却し、CもカメラをAの下に預けておいた。
Bは占有改定により対抗要件を備えている。よって178条によりBが確定的に所有権を取得し、Cは所有権を承継取得できない。
そこで、Cは占有改定によりカメラを即時取得(192条)したといえないだろうか。192条は「占有を始めた」と規定しているが、文言上その態様が明確ではなく、占有改定がこれに当たるかが問題となる。
そもそも、同条項が占有取得を要求したのは、真正権利者との利益衡量上、譲受人に権利保護要件として要求したものである。とすれば、占有の移転が外部から認識可能な場合でなければ、保護要件としては不十分であり「占有を始めた」とはいえない。
そして、占有改定は占有状態に変化はない。占有改定では「占有を始めた」とはいえない。
よって、Cはカメラを即時取得したとはいえない。
ただし、Cは、その後、現実に引渡し時に善意無過失なら、所有権を取得できる。(忘れないように)
(5)その他 ア 無権代理行為の直接の相手方から目的物たる動産を買い受けて占有を取得した第三者は、(表見代理の主張はできないが、)192条を適用して動産を即時取得し得る。(本人が追認すれば、承継取得するだけである。)
イ ①即時取得物が盗品又は遺失物の場合、②被害者は、③盗難・遺失の時より2年以内に、回復請求できる(193条)。
ただし、①´善意で②´市場や商人から買い受けた者に対しては代価を弁償しなければ回復請求できない(194条)。
ウ. Cは動産たる本件機械を取引行為により占有開始している。よって、即時取得している(192条)。
しかし、本件機械は①盗品に当たり、③盗取されてから2年間経っていないので、②Aは回復請求が認められる(193条)。
ただし、Bは中古土木機械の販売業を営んでいることから、②´「同種の物を販売する商人」(194条)に当たり、かつ、①´Cは善意である。よって、Cは、代価100万円を弁償することと引き換えに返還することを主張できる。
以上より、Aは100万円をCに弁償して、機械の返還を請求できる。
エ. AはCに対し、本件機械の使用利益の返還を請求できるか。189条2項、190条の悪意を理由に(射程注意)、不当利得の要件(703条)を検討する。
回復請求権が認められる間は原所有者に所有権が認められると解するところ、占有者の利益と原所有者の損失との間には因果関係があるといえる。しかし、被害者等は回復するか否かを選択できる立場にあり、両者で不当利得の有無に違いが生じると、占有者は非常に不安定な地位に置かれることになる。そこで、192条が適用される場合には、占有者は代価の弁償があるまで占有物の使用収益権を有すると解する。
したがって、「法律上の原因」がないとはいえないので、不当利得の要件を満たさない。
以上より、AはCに対し、本件機械の使用利益の返還を請求することはできない。
オ. Eは動産たるステレオセットを取引により占有開始しているので、ステレオセットを即時取得する(192条)。
もっとも、ステレオセットは①盗品であるから、③2年以内なら無償で回復請求できる(193条)。
では、だれが回復請求できるか。同条の②「被害者」の意義が問題となる。
193条が成立する場合は、即時取得者は占有だけを取得し、回復請求は占有物の返還を求めるものであると解する。そして、回復請求を占有の回復と解する以上、「被害者」とは占有を有していた者をいうと解する。
本問では、直接占有者たるCと間接占有者たるAが、193条の回復請求としてEに対してステレオセットの引渡を請求できる。
(6)占有の態様
ア. 善意占有か悪意占有かは、本権がないのにあると信じていたかどうかで決する。(知不知ではない。)占有者には善意占有が推定される(186条1項)。時効取得(10年or20年)、占有者果実取得(していいor返還)、即時取得(できるorできない)などにおいて区別の実益がある。
イ. 自主占有か他主占有かは、権原の性質上客観的に所有の意思があるかどうかで決まる。(H2?司)所有の意思は、盗人にはあり、賃借人にはない。取得時効(開始するorしない)などで、区別の実益がある。
(7)事実:Xは自己の土地建物の管理をAに委託し、Aはそこに居住していた。その後Aが死亡したが、Aの相続人Bは当該土地建物がAのものであると信じ、そこに10年以上居住し続け、固定資産税も支払っていた。BはXの土地明渡請求を拒めるか。
論証:当該土地建物の所有権者はXであるから、Bが所有権を承継取得することはできず、原則として明け渡さなければならない。しかし、Bは自己が相続したと信じて占有を開始してから10年以上経過しているから、土地所有権を時効取得(162条2項)したと主張して、所有権に基づく占有権原を抗弁として主張できないか。
ア 占有権が重要な財産権であり、相続が包括承継であることから(896条)、占有権の相続は認められる。
イ Bは相続人であるから、「承継人」(187条1項)として自己固有の占有のみで時効取得したと主張できるか。
187条1項は、前主の占有を承継すると同時に自己固有の占有を開始するという二面性から定められたものであるところ、これは包括承継たる相続にも妥当する。よって、相続人は187条1項の「承継人」に含まれると解する。
よって、Bは自己固有の占有のみを主張することはできる。
ウ Bの占有は相続したAの他主占有の影響を受けるので、Bは185条の新権原により自主占有を開始したといえなければならない。相続が「新たな権原」に当たるかが問題となる。
自主占有の転換を一切否定すれば、自主占有だと信じて占有を開始した相続人は永久に時効取得できず、相続人に酷である。他方、無条件に自主占有への転換を肯定すると、相続の事実を知らない真の権利者の、時効中断の利益を害する。
そこで、両者の調和の観点から、①新たに相続財産を事実上支配することにより占有を開始し、②その占有が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される場合には、相続も「新たな権原」に当たり、自主占有への転換が認められると考える。
本問でBは、相続後に当該土地建物に現実に居住しており、新たに相続財産を事実上支配することにより占有を開始したといえる(①充足)。また、固定資産税を支払うなど、その占有が所有の意思に基づくものと外形的客観的に認められる(②充足)。
したがって、Bは相続によって当該土地建物の自主占有を開始したといえる。
(注:取得を理由とする所有権に基づく請求であれば、時効完成「前後」の判断も必要)

4 物権各論
(1)占有権 ア 効果 本権の推定(188条)、果実取得権(189条、190条)、物の滅失・損傷に対する責任(191条)、費用償還請求権(196条(1項必要費、2項有益費) 注:608条とは別の条文)
占有保持の訴え(198条 排除)、占有保全の訴え(199条)、占有回収の訴え(200条 返還)を有する。詐取された、遺失物を拾われた場合は占有回収の訴えは提起できない。侵害者の善意の特定承継人には占有回収の訴えを提起できない(200条2項)。
イ Bは不当利得(703条)に基づき、賃料相当額の返還を請求することができるか。
間接占有者たるCが、売買契約が強迫により取り消されることにつき善意であれば、賃料相当額を収取できる(189条1項)ため、利得を保有する「法律上の原因」がないとはいえず、請求は認められない。他方、Cが悪意であった場合、収取する権利を有しない(190条1項)ので、「法律上の原因」がなく、Bの返還請求は認められる。
参考:訴え提起のときから悪意の占有者とみなされる(189条2項)。通知があれば悪意といってもいいかも。
ウ 舗装部分は付合によりBの所有に帰属する(242条)として、Cは舗装工事の費用をBに請求できるか。土地を舗装することが有益費(196条2項)に当たるかが問題となる。
有益費とは、物の価値を増加する費用である。同項の趣旨は、占有者が費用を投下して価値を増加した場合に、費用を回収させて占有者の保護を図る点にあるから、物の価値の増加は客観的に判断すべきである。
本問では、土地を駐車場として舗装することは客観的には土地の価値を高めると解されるから、舗装費用は有益費といえる。
本問では、飲食店経営のために給排水管工事がなされており、Bが飲食店を経営しない場合にはこのような設備は不要とも思える。しかし、客観的には飲食店経営をなし得る給排水管設備を有することは、甲建物の価値を増加させているといえる。したがって、給排水管取替工事費用は、有益費に当たる。そして、工事終了直後であるから、取替工事費相当額の増加価値が現存しており「価格の増加が現存する場合」に当たる。
エ 占有の問題では、間接占有者に注意する。例えば、受寄者の占有が奪われたとき、寄託者は間接占有(181条)しているから、占有回収の訴え(200条)を提起できる。など。
オ Aは乙自動車に費やした費用を被担保債権として、留置権(295条1項本文)を主張し、引渡しを拒むことはできないか。
整備費用は自動車の価値を増加させる有益費といるから、Aは有益費償還請求権を有する(196条2項)。
そして、これは乙自動車の整備により発生したものであるから、物と債権の牽連性も認められる。
よって、乙自動車についてAの留置権が成立し、Aは、有益費の償還を受けるまで自動車を留置できる。
カ 「引渡しを受けた」うえで他者が「妨害しようとしている」という問題文の場合、引渡しを受けているのであるから、占有訴権すなわち占有保全の訴え(199条)により妨害の予防を主張できる。現に妨害されていれば占有保持の訴え(198条)を、占有が侵奪されていれば占有回収の訴え(200条)を主張する。
(2)所有権 ア 所有権の内容は使用、収益、処分である。所有権の取得原因には①承継取得(売買、相続)、②原始取得(時効取得、即時取得、添付)がある。物権の直接性・排他性から物権的請求権が認められる。その内容は、返還請求権、妨害排除請求権、妨害予防請求権である。
イ 囲繞地通行権(210条) 袋地の所有者は、所有権移転登記を経由しなくても、通行権者たり得る。(基M232 通行地役権とは異なるので注意。)
ウ 妨害排除請求権 (ア)内容
(イ)不動産賃借権は債権であるため妨害排除請求権が認められないとも思える。しかし、生活の基盤をなす賃借権の社会的重要性から認める必要があり、また、対抗要件を備えた場合には物権と同様に直接性・排他性を有する。そこで、対抗要件を備えた賃借権に妨害排除請求権を認めるべきと解する。
(ウ)無権原で立てられた建物の所有者と、登記名義人が異なる場合、原則として建物を取り壊す権限のある所有者を相手方として土地明渡請求する。建物を収去する権限があるのは建物所有者のみだからである。
では、登記名義人に対する建物収去請求は認められるか。
R1:請求者は、建物の譲渡を否定して所有権の帰属を争っているので、登記名義人と対抗関係(177条)同様の関係に立つといえる。R2:登記簿上では真の所有者が分からず、登記簿に記載されていない所有者を探し出す困難を強いられる。R3:①所有権者が自らの意思に基づいて所有権の登記を経由した場合は、②引き続き登記名義を有する限り、その帰責性を問える。
以上より、①②を満たす場合、譲渡による所有権の喪失を対抗できないと解する。
本問では、Bは「Aから甲建物の所有権を相続し、移転登記を了し」ており、自己の意思に基づき所有権の登記をしている(①充足)。そして、なお登記を有している(②充足)。よって、Bは建物所有権の喪失をDに対抗できない。以上より、Dの請求が認められる。
(エ)物権的請求権の内容は原則として行為請求権で、費用は相手方負担である。公平の見地から、例外として、①所有権返還請求について、②相手方が目的物を侵奪したのでない場合には認容請求権と解し、費用は請求者負担とする。
(3)付合 ア 不動産の所有者は、付合した動産の所有権を取得する(242条本文)。
①他人が権原により動産を付属させたときには、②その動産が別個の存在を有する限り(弱い符号)、動産の所有権は他人に帰属したままである(同条ただし書)。
イ 本問では、賃借権により動産を付属させている(①充足)。確かにカーポートは「コンクリートで土地に固定され」ている。しかし、業者に依頼すれば、コンクリート部分を壊して中心部分である屋根・支柱を取り外すことは容易であるし、社会経済上著しく不利益とまではいえない(②充足)。したがって、カーポートは甲土地に付合せず、その所有権はCに帰属する。よって、EはCにカーポートの収去請求をすることができる。
ウ Cは本件パイプを即時取得しているが、パイプは①盗品であるから②Fは③2年以内に回復請求(193条)でき、所有権がFに留保される。
もっとも、本問では、建物に付合(242条)しているので、Cが本件パイプの所有権を取得する。回復請求権が償金請求権に転化し(248条)FはCに償金請求しうる。一方で、Cはその物を①´善意で②´市場で買い受けたのであるから、Fは代価を弁償しなければ償金請求することはできない(194条)。結果として、両債権は相殺(505条)されることになろう。
エ 本問樹木は乙の土地に付合(242条本文)したといえるか。占有者には①借地権があるので、②動産が別個の存在を有する限り付合しない(242条ただし書)。そこで、本文の「付合」の意義が問題となる。
242条本文の趣旨は、分離復旧が社会経済上不利益と認められる場合に、これを防止しようとする点にある。そこで、ここでいう「付合」とは、分離復旧することが社会経済上不利益と認められる程度に、動産が不動産に付着した場合を意味すると解する。
本問では、樹木は土地に植栽されて初めて生育できるものであるから、土地からの分離復旧を強いることは社会経済上不利益と認められる。したがって、本問樹木は乙の土地に付合する。その所有権は乙が取得する。
オ 丙は増改築をなした部分の所有権は取得できない。
なぜなら、増改築部分が区分所有の対象とならないと、その部分は建物に付合するし(242条本文)〔73〕、区分所有の対象となっても、丙が建物利用権限を有しない以上、「権限によって」(242条ただし書)とは認められないからである。
もっとも、付合により増改築部分の所有権を失う丙は、乙に対し不当利得として償金請求することができる(248条)。
カ 作りかけの建物 完成建物の所有権は、途中から完成させた者に帰属(246条2項 完成後建物の価格が高い場合 加工法理)。工作が価値を有し、加工法理で処理することが適切だからである〔72〕。付合(243条→242条)と考えるのではない。途中まで作っていた者は、償金請求(248条)できるので、これで解決する。
(4)その他 ア(ア) 各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用収益権を有する(249条)から、一部の共有者から承認を受けた者も、同様の権利を有し、その者の使用は無権原とはいえないと解する。
本問では、EはABの承認を受けてマンションを使用している以上、マンション全部についてABの使用収益権を有する。
したがって、CはEに対し、マンションの明渡請求をすることはできない。
(イ)もっとも、各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用収益権を有する(249条)から、その権利が害されたときには、以下の請求をなし得る。
EがCの持分に応じた占有使用の請求を不当に妨げた場合には、物権的請求権の行使として、妨害排除請求をすることができる。また、不法行為に基づく損害賠償(709条)、賃料の不当利得返還請求(704条)も請求し得る。また、ABに対しても、同様に損害賠償請求、不当利得返還請求をなし得る。
ウ 建物所有を目的とした地上権と土地賃借権とは「借地権」として借地借家法の規定を受ける(同法2条1号)。
エ 地役権とはある「土地の便益」のために他人の土地を利用する権利をいう(280条)。奥を要役地、通路側を承役地という。
要役地である乙地がBからCに譲渡されており、随伴性(281条1項)により、地役権はそれに伴って移転する。
そして、地役権を設定した当事者であるAに対しては、地役権の対抗要件は不要である。(所有権の移転登記は必要。基M255→囲繞地通行権(基M232)と区別する。)
したがって、Cは地役権設定登記がなくても、Aに通行地役権を対抗できる。
以上より、通行地役権に基づく甲土地の通行を求めることができる。

三 債権
1総論
(1)ア 物権と比較したときの債権の特質として、①相対性、②排他性なし、③間接性がある。
イ 特定物か不特定物売買か+特定はあったか(引渡義務者の調達義務、危険負担・瑕疵担保責任の成否に影響) → 特定 → 弁済の提供≒受領遅滞あるか(あれば遅滞免責効(492条)、債務者の軽過失免責、危険負担の債務者主義、増加費用の債権者負担などが生じる。)
ウ 問題文中に「履行期に届けたところ、受け取ることを拒まれた」とある場合
→特定の有無が問題。(調達義務等に影響) →弁済の提供が問題。(6つの効果) →受領拒絶が問題。
物が滅失した場面:滅失の前に特定があったか→特定(401条2項)の有無が問題となる。
履行期を過ぎた場面:履行遅滞となるか→口頭の提供(493条)の有無が問題となる。
(2)特定 ア. 特定物とは、具体的な取引において当事者が個性に着目した物をいう。
特定物を目的とする契約の効果としては、①善管注意義務の発生(400条)、②現状引渡義務しか負わない(483条)、③危険負担の債権者主義(534条1項)、④所有権の移転(176条)などがある。
イ.  特定の要件は、①債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了すること、又は、①´債権者の同意を得てその給付すべき物を指定することである(401条2項)。①必要な行為を完了とは、債務の履行をするために、債務者の側において弁済前になすことを要する行為を全て完了することをいう。持参債務(これが原則 484条)では、現実の提供が必要である。取り立て債務では、分離・準備・通知が必要である。
特定後の変更権も債権者の利益を害さない限り信義則上認められる。
なお、瑕疵あるものでは特定しない。引渡債務者は瑕疵のないものの調達義務を負うからである。(弁済の提供にもならない)。
(3)特定・弁済の提供各論 ア. 商品Aの消失により、甲の引渡債務は履行不能となり消滅するか。
甲は乙に対して現実の提供をしているので、目的物が特定したといえる(401条2項)。その後、商品Aの焼失により甲の引渡債務は履行不能となり、これにつき甲に帰責性はない。したがって、甲の債務は履行不能となり消滅する。
イ. 買主乙は、売主甲に対して、完全なタンスの引渡しを請求できるか。
本件契約は不特定物売買であるため、特定があるか、すなわち甲が「給付をするのに必要な行為を完了し」(401条2項)たといえるかが問題となる。
甲の債務は特定物を引渡すことであるが、別段の意思表示(484条前段)があり持参債務となる(同条後段)ので、目的物を現実に提供することを要する。
甲は、目的物たるタンスを「履行期に乙方に届けた」ことから、現実の提供があるので、特定が生じている。
したがって、乙は甲に対して、別のタンスを請求することはできない。
ウ. 瑕疵があるタンスの提供では、「物の給付をするのに必要な行為を完了」に当たらず、特定(401条2項)が生じないため、甲は依然として、調達義務を負う。したがって、乙は甲に対し、完全なタンスの引渡しを請求することができる。
エ. 乙の債務は不特定物を引き渡す債務であるが、乙の倉庫を引渡場所とする特約があるため、取立債務である(484条前段)。この場合、「給付をするのに必要な行為」とは、目的物の分離、引渡しの準備、通知である。
オ(ア)乙の引渡債務は不特定物の引渡債務であり、持参債務である(484条後段)。そして、持参債務については、債務者が現実の提供(493条本文参照)をすることが必要である。
そして、乙がワープロをトラックに乗せただけでは現実の提供があったとはいえない。よって、乙は「給付をするのに必要な行為を完了」したとはいえない。
(イ)しかし、甲の指示に基づいて乙が倉庫からワープロを搬出しトラックに乗せた以上、甲の「同意を得て」乙が「給付すべき物を指定した」といえる(401条2項後段)。
よって、目的物は特定したといえ、滅失により乙の引渡債務は履行不能となる。
以上より、甲は乙に対して、ワープロ200台を請求することはできない。

2債務不履行
(1)債務名義とは、一定の私法上の給付義務の存在を証明し、法律によって執行力を付与された公正の文書をいう。
ア 履行遅滞に基づく損害賠償(415条)の要件は、①債務が履行期に履行可能なこと、②履行期を経過したこと、③債務者の帰責事由、④履行しないことが違法であること、⑤損害の発生、⑥因果関係(or因果関係のある損害)である。
請求原因としては、②履行期の経過(412条(期間の定めのない場合は催告 3項))、④同時履行の抗弁権の不存在(せり上がり 存在効果)を主張する。②のなかで債務の存在を論ずる場合もある。
③債務者の帰責事由がないことは反論(抗弁)で主張するが、金銭債務なら不要(419条3項)。
⑤損害と⑥因果関係をkgで出すかどうかは、問題による。金銭債務の⑤⑥損害額は法定利率(419条1項 通常・特別×)。
イ 履行不能に基づく損害賠償請求(415条)の要件は、①履行が不能であること、②債務者の帰責事由である。③損害と④因果関係を出すかどうかは、問題による。請求原因としては、①´債務の存在と、①履行不能の存在(及び③損害、④因果関係)。反論(抗弁)で②債務者の帰責事由がないこと。
③損害④因果関係は、通常損害(416条1項)と、債務者に予見可能な特別損害(416条2項)を請求することができる。
(2)債務者の帰責事由とは、債務者の故意・過失又はそれと同視し得る事由をいう。
ア. 履行補助者たるCの故意・過失についても債務者は債務不履行責任を負うか。履行補助者の故意過失が債務者の帰責性と同視できるかが問題となる。債務者は履行補助者を使うことで活動領域を広げ、利益を得ているので、それによって生じた損失も、債務者が負担するのが公平である。よって、狭義の履行補助者の故意過失は、信義則(1条2項)上、債務者の帰責性と同視できると解する。Cの過失あり、Aに帰責性あり。
イ 狭義の履行補助者の場合○ 履行代行者の場合 1禁止されていた場合○ 2許可されていた場合選任監督についてのみ帰責される。明文がない場合基本的に○ 
ウ ところが、贈与契約は無償契約であり、Bのために輸送すべくCに委託したからと言って、Aが利益を得ているわけではない。よって、履行補助者の理論はその趣旨が妥当せず、Cの過失をAの過失と同視することはできないと解する。
エ 転貸借により利益を得るのは賃借人であるから、報償責任の趣旨が妥当する。
よって、転借人の故意・過失も、債務者たる賃借人の故意・過失と同視すべき事由に含まれる。
したがって、丙の過失は、乙の過失と同視できるので、乙には帰責事由があるといえる。
以上より、甲は乙に対して、債務不履行に基づき損害賠償を請求できる(415条)。
オ 債務者の履行遅滞中に、債務者の責に帰することができない事由により履行不能となった場合、適時に履行していればそのような損害は生じなかっただろうから、信義則上、債務者に帰責事由があるというべきである。
ただし例外的に、遅滞と不能との間に因果関係がないことを立証したときには、帰責事由があるとはいえない。
(3)債務の有無 ア 売主が給付をなす際の不注意で買主の所有物を損傷したような場合、契約関係にある当事者間では、契約の履行を通じて相手方の生命・身体・財産に損害を与えないという保護義務が、信義則上認められ、かつ、債務者に帰責事由があるというべきである。拡大損害についても同様の法理を用いる。
イ(ア)機械の結果に起因して生じたけがについても、損害賠償請求できると解する。
確かにこの損害は、本来的給付義務の違反によるものではないが、債務者は給付に当たって、相手方の生命・身体・財産を侵害しないという信義則(1条2項)上の付随義務を負っており、かかる義務の違反も債務不履行責任となり得るからである。
よって、けがによる治療費、休業による損失、慰謝料等は、通常の損害として請求できる(416条1項)。
(イ)債務不履行責任に基づく解除(541条)の要件は、①履行遅滞、②債務者の帰責事由、③催告、④相当期間の経過、⑤解除の意思表示、(⑥同時履行の抗弁権の不存在)である。
この点、飲食店を経営する者は、飲食物の供給のみならず、店内で安全に食事ができるように配慮すべき義務が、信義則(1条2項)上認められると解する。そして、AはかかるCに対する債務に違反している(①充足)。
ウ 一部転貸について、2階部分を使用収益している丙は1階部分についても損害を与えない信義則(1条2項)上の義務を負っている。したがって、甲は丙に対して、1階部分の損害についても債務不履行責任を追及できる。
エ 売買契約の当事者たるAB間では、信義則上相手方の生命・身体・財産に損害を与えないという保護義務が認められる。
にもかかわらず、A社はかかる義務に違反し、これによって、B社にマウスの処分、感染防止措置による費用支出という損害を与えている。
よって、B社はA社に対し、マウス200匹の費用、感染防止措置の費用を損害として賠償請求できる(416条1項)。
オ 保護義務違反が認められる場合に、(社会通念上)第三者にも保護義務が及ぶと解する場合には、第三者は不法行為責任(709条)のみならず、保護義務違反を理由に賠償請求し得る(415条)。
契約当事者という緊密な関係にはないという理由で、否定してもよい。
(4)損害(金銭的評価の基準時 因果関係のなかで論じるべきか)
ア. 履行不能における損害賠償額は原則として①履行不能時の価格を基準時とする。解除の場合は解除時。
例外的に、目的物が高騰中で、債務者が履行不能時に高騰を予見可能であったときは、②高騰時の価格を基準とする。ただ、転売していたであろうことを債務者が立証できれば、③転売時の価格を基準とする。
④中間最高価格は、債務者が、高騰に加えて最高価格時に転売したであろうことを履行不能時に予見可能であったことが必要。
イ. 乙が丙に支払うべき損害額はどのように算定されるか。価格の基準時が問題となる。
原則として不能時を基準にすべきである。債権者に、債務不履行がなかった場合と同様の地位に回復させるためである。
ただし、商品Aの価格騰貴の事実、騰貴した価格で処分し利益を収取するという事情が、債務者乙に予見可能であったことを、債権者丙が立証できれば、中間最高価格の時点を基準とすることができる(416条2項)。
本問では、Aの価格は5月まで騰貴しており、乙はAを甲から600万円で購入し丙に700万円で転売する契約を結んでいることから、乙も価格の騰貴を契約時には予見していたといえる。
よって、丙がAを転売するであろうことを、乙が予見できていれば、中間最高価格たる800万円が基準となる。
この場合には、丙は乙に対し、代金額の700万円との差額100万円を損害額として請求できる。
ウ 損害には、契約が有効で、それが履行されていれば得られたであろう利益(履行利益)と、契約が無効・不成立となった場合に、それを有効に成立すると信頼したために被った損害(信頼利益)とがある。
エ(ア)Bは代金相当額全額を損害額として賠償請求している。
しかし、設置の費用たる200万円については、Bは結局設置をせず、その出費を免れており、損害がない。よって、代金800万円のうち600万円がBの損害額となる。
(イ)さらに、Bは金融業者への借財の利息20万円についても損害賠償請求している。
しかし、この利息は機械製作のコストとしてBが負うべきものであり、契約が履行されていても出費を免れなかったものである。
とすれば、利息としての20万円は、Aの債務不履行との因果関係を欠くため、Aへの損害賠償請求は認められない。
別解:履行利益(600万)は契約の有効を前提としている。契約の無効・不成立を前提とする。信頼利益(20万)とは矛盾するので、両取りはできない。
(5)受領遅滞 ア. 受領遅滞を理由に契約を解除し、損害賠償の請求をすることができるか。「遅滞の責任を負う」(413条)の意義が問題となる。債権は権利であって義務ではなく、債権者に受領義務はない。そこで、受領遅滞の責任を法が公平の観点から特別に定めた法定責任であると解する。そして、その内容も弁済の提供の効果(492条)が認められるにすぎない(法定責任説)。
よって、債務者は、債権者に対して、413条に基づいて契約の解除・損害賠償の請求をすることはできない。
ただし、目的物がその性質上、長期保存に耐えられないことが明白であるような場合などには、黙示の合意又は信義則に基づく引き取り義務が債権者に発生すると考える。
イ. 本問では、機械はAの工場専用であり、Aが工場の改造をしない限りBは機械を処分できない。また、機械の保管に相当な費用がかかるうえに、機械の引渡しが先履行である。Bには履行ができないことによる不利益があり、AB間でもBが期日に機械を受領することを前提に契約していると解される。したがって、Aに黙示の合意に基づく受領義務が認められる。
(Bは機械完成後、受領の催告をし、相当な期間の経過も認められる。したがってBは解除(541条)をすることができる。)
(6)契約前の債務・安全配慮義務
ア. 契約の締結過程において、一方の過失により相手方が損害を受けた場合の法律関係をいかに解するか。
この点、契約が原始的に不能であり、無効である以上、当事者間に契約上の債権債務関係は存在しない。したがって、買主は債務不履行責任(415条)を追及することはできず、不法行為責任(709条)しか問い得ないようにも思える。しかし、不法行為責任の追及においては、立証責任・時効(724条、3年)の点で買主に不利であり、これでは後発的不能の場合と不均衡である。
そもそも、契約当事者は、無効な契約を締結し、相手方に不測の損害を被らせないようにする信義則(1条2項)上の義務を負っていると解する。とすれば、かかる義務違反を理由に買主は売主の債務不履行責任を追及できると解するべきである。
そのための要件としては、①契約が原始的不能であること、②売主がその不能の事実を故意又は過失によって知らなかったこと、③買主が善意無過失であることを要すると考える。以上の要件を充たせば、買主は信頼利益のみ請求することができる。あくまで原始的不能である以上、履行を観念できないからである。
イ. AB間には、調印によって契約を成立させるという予備的合意があったと考えられるので、調印がなされていない本問では、AB間の売買契約は未だ成立しておらず、契約責任に基づく損害賠償請求(415条)はなし得ないのが原則である。
しかし、契約書の調印のみが残る本問では、AB間の契約は間近である。そこで、契約準備段階の過失として契約責任に基づく損害賠償請求ができないか。
(ア)契約は成立していなくとも、契約交渉を開始し取引関係に入った者は、相手方に不測の損害を被らせない信義則(1条2項)上の義務を負っている。とすれば、相手方がかかる義務に違反した場合には、他方は債務不履行責任を追及できる。
かかる債務の発生要件は、①相手方の信頼を惹起する先行行為の存在、かかる信頼の要保護性を高める②契約交渉過程の成熟性であると解する。そして、以上の要件を充たした場合、買主は信頼利益に限って賠償を請求できる。あくまで契約不成立である以上、履行を観念できないからである。
(イ)本問では、Aは「Bの希望に沿って」展示室の内容を変更しており、Aの信頼を惹起する先行行為があった(①充足)。
また、AとBの交渉は、契約書の調印を残すのみとなっていたから、契約は成立間近であり、契約交渉過程の成熟性が認められる(②充足)。
(ウ)よって、Bには、Aが不測の損害を被らないようにする信義則上の注意義務が認められ、Aはかかる義務違反に基づき損害賠償を請求することができる。
その範囲は、契約の成立を信頼して行ったチケットやビラの印刷代、内装工事代金、盗難保険料に及ぶ。ただし、展覧会の開催を見込んでの入場料収入は信頼利益に当たらず、請求できない。
ウ 説明義務違反 709○ 415×(平23重判7)
エ 安全配慮義務:(ア)直接的な契約関係がない以上、不法行為責任を問えるのみとも思える。しかし、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間においては、当該法律関係の付随義務として、当事者の一方又は双方が、相手方の生命及び健康を危険から保護する義務(安全配慮義務)を信義則上負うものと解する。
(イ)Aは甲に対し雇用契約上の責任を問えるか。
雇用契約の内容として、甲は報酬支払債務のみを負うとも思える(623条参照)。しかし、雇用契約においては、当事者は特別な社会的接触の関係に入っている。かかる当事者間においては、雇用契約の付随的義務として、当事者の一方又は双方が、相手方の生命及び健康を危険から保護する義務を信義則(1条2項)上負う(労契法5条)。
本問では、甲には、使用者として作業全体の安全指導、機械設備の整備、点検等の安全配慮義務があると解される。
この義務違反が原因でAが機械に巻き込まれた場合には、甲は、Aに対して債務不履行責任(415条)を負うことになる。
(ウ)安全配慮義務と不法行為責任をともに論じるときは、表題として「債務不履行責任」「不法行為責任」という分類。
安全配慮義務と過失の判断は何をなすべきか、という点で重なる。
(7)履行不能につき乙に帰責事由がある場合、甲は乙に対して、履行不能に基づく損害賠償請求(415条)ないし契約の解除(543条)ができる。この場合、乙は、残りの300台のワープロのうち200台を甲に引き渡して、本来の契約責任及び損害賠償責任を免れることができる権利(変更権)を有すると解する。なぜなら、代替物がある以上、当事者としては同種のワープロによる履行を望むのが通常であり、信義則(1条2項)上、債務者に変更権を認めるべきだからである。

3同時履行 (1)総則 同時履行の抗弁権(533条)の趣旨は当事者間の公平にある。具体的には履行促進、紛争予防、相互担保の確保である(そ よ た)。
要件は、①同一の双務契約から生ずる両債務が存在すること、②両債務がともに弁済期にあること、③相手方が履行又は弁済の提供をせずに債務の履行を請求してきたことである。
効果は、①遅滞免責、②相殺禁止、③履行拒絶、④引渡給付判決である。①②は原告が請求原因等で双務契約の存在を主張しているだけで発生する。③④は抗弁として主張立証しなければ認められない(権利抗弁)。
(2)意思ない 反対債務を履行しない意思を明確にした当事者は、同時履行の抗弁権を主張することはできない。趣旨が妥当しないから。他方当事者は弁済の提供なく解除することができる。(Kg解除(541条)の再抗弁)
(3)遅滞 一度弁済の提供がなされても、(遅滞にはなるが(415条))相手方は同時履行の抗弁権を失わない。もし失うとすれば、提供者が無資力になろうと、目的物を転売しようと相手方は履行義務を負うことになり不公平だからである。(再度の履行請求の場面 抗弁○)又は趣旨が妥当するから。
他方、解除する場合には再度弁済の提供をする必要はない。533条は履行上の牽連性を問題にし、そもそも契約を解消させる解除の場面では妥当しない。(解除の場面 同時履行の抗弁は主張自体失当)
(4)その他 ア 取消し後の返還請求権についても3つの趣旨が妥当する。そこで、533条を類推適用する。詐欺者は、295条2項の趣旨に照らし、533条の主張をすることができない。(詐欺者のみ)
イ 建物買取請求権(借地借家法13条)が行使された場合、土地の明渡しと建物代金の支払いは同時履行の関係に立つ。土地の明渡しをして建物の明渡しを拒絶することは不可能だからである。また、建物買取請求権の趣旨に鑑みれば借地人を保護すべきだからである。他方、造作買取請求権(借地借家法33条)が行使された場合、建物の明渡しと造作代金の支払は同時履行の関係に立たない。建物は造作よりはるかに高価であり、同時履行を認めればむしろ533条の趣旨たる公平の原則に反するからである。

4危険負担
(1)ア. ①「目的物・債務が滅失した」とある場合、②債務者に帰責性がないと判断すれば、ここだけ先に当てはめて、危険負担が問題になる。反対債務が存続するか否かを検討する。
イ. 異説:危険負担の趣旨は、自らの支配領域で生じたリスクを負担すべしという点にある。
(2)条文 ア. 危険負担においては、公平の観点から、原則として債務者主義(536条1項)が採られている。(債務消滅)
例外的に、「特定物」に関する「物権の設定又は移転」を目的とする「双務契約」(534条1項・2項)、又は、債権者の責に帰すべき事由によって履行不能となったとき(536条2項前段)は、債権者主義がとられる。(債務存続)
534条の趣旨は、利益の存するところ損失もまた帰するという原則、所有者は危険を負担するという原則にある。
とすれば、未だ所有権が完全に移転していない二重譲渡や他人物売買の場合には、534条の適用を否定すべきである。
イ. Dの放火により建物が焼失しているので、Aの建物引渡債務は、Aの過失なく(②)履行不能となっている(①)。
では、B・Cの代金債務は存続するか、危険負担が問題となる。
本問建物は特定物であるので、その「移転」を目的とする契約は、債権者主義(534条1項)の適用があるとも思える。
しかし、債権者主義の根拠が所有者は危険を負担するという点にあるところ、本問では二重譲渡がなされており、未だ所有権の帰属が明らかではないため、債権者主義を適用する前提を欠く。
そこで、本問では、債務者主義(536条1項)が適用される。
本問ではAが危険を負担するので、B・Cの代金債務は消滅する。よって、売買代金を支払っていない場合にはその支払いを免れ、既に支払った場合には不当利得の返還請求(703条)が可能となる。
(3)債権者主義(534条)は債務の存続上の牽連性の例外であるにもかかわらず、その適用範囲が広く、これを制限すべきではないかとも思える。かかる見解によれば、債権者主義は債権者が目的物の支配を収めた時点から適用される。
しかし、534条は任意規定であるから、不都合であれば特約で排除すればよく、その文言に反してまであえて適用を制限する必要はないと解する。
(4)ア. 無効主張後、Aの責めに帰することができない事由によって(②)甲絵画が消滅している(①)ので、Aの甲絵画の返還債務は消滅する。では、Bの500万円の返還債務についても、存続上の牽連性により消滅しないかが問題となる。
この点、売買契約の無効主張後の不当利得関係は、売買契約の裏返しであるから、危険負担の規定を類推すべきと解する。
そして、危険負担の趣旨は、自己の支配領域内の危険は自己が負担すべきということにあるから、絵画を所有するAが危険を負担するべきである(債務者主義 536条1項)。よって、Bの返還債務も消滅する。
イ. 一方債務が履行済みの場合も、危険負担の問題となる。なぜなら、双務契約の存続上の牽連性を維持して、当事者の公平を図るという危険負担の制度趣旨は、一方債務が履行済みの場合にも妥当するからである。
(5)危険負担の債権者主義(534条1項)により代金債務が存続し、かつ、物の滅失により債務者(引渡債務者)が火災保険金等を受け取る場合、債務者(引渡債務者)は二重の利得を得ることになる。
そこで、履行不能と同一の原因によって、債務者が履行の目的物の代償といえる利益を取得した場合には、公平の観念より、代償請求が認められると解する(536条2項後段類推適用)。(あくまで534条1項が適用されているため、536条2項が直接適用されるわけではない。)

5解除
(1)総則 541条の解除の要件は、①履行遅滞、②催告、③相当期間の経過、④解除の意思表示(540条1項)である。双務契約では、⑤同時履行の抗弁権の不存在を主張する必要がある(せり上がり)。⑥債務者の帰責事由の不存在は反論(抗弁)で主張。
543条の要件は、①履行不能、②解除の意思表示である。③債務者の帰責事由は抗弁であり、相手方からの反論として述べる。
解除の趣旨は、双務契約において、相手方が債務不履行に陥った場合に、債権者を反対債務から解放することにある。
原状回復請求(545条1項本文)では、⑦債務の履行が必要。第三者保護(ただし書)の抗弁は、①´第三者、②´登記が必要。
(2)要件②催告 ②催告の趣旨は、債務者に履行のために考慮の猶予期間を与えることにある。
相当の期間を定めなかった場合、催告の後、客観的に相当の期間を経過すれば解除権は当然に発生する。相手方に履行の機会を与えるという趣旨は達成されているからである。
私的自治に基づく契約自由の原則から、無催告解除の特約も有効である(②③が不要)。賃貸借契約等の継続的契約においても信頼関係の重大な破壊がある場合には、無催告解除が認められる。
債務者に履行の意思がないことが明らかであっても、翻意の可能性を考慮して、催告を要する(②は必要)。ただし催告後はすぐに解除できる(なぜ?)(③が不要)。
期間の定めのない債務については、412条3項の「請求」によって相手方が①債務不履行に陥れば、重ねて②催告(541条)する必要はなく、相当期間経過後当然に解除権を取得する(②が412条3項の「請求」と同じ)。趣旨は達せられるから。
(3)一方の債務の不履行で他方を解除する場合 ア. 付随義務違反における解除の可否については、①当事者の同一性、②当事者の意思を合理的に解釈し契約全体の目的を達成できないかという観点から判断する。
例:マンション売買契約とスポーツクラブ会員契約における後者の違反 → 契約は2個だが、当事者が同一で、両契約が密接に関連しいずれかの履行だけでは契約全体の目的を達成できない。したがって、双方の契約を解除可。
ゴルフクラブ入会契約における付帯設備の未完成→付帯設備なければ、入会契約における目的を達成できない→解除可。
イ. 2つの独立した契約ととらえる立場
では、在宅介護契約の債務不履行を理由に、Xが住宅の売買契約まで解除できるか。
形式的には別個の契約である以上、一方の契約の債務不履行は他の契約に影響を及ぼすものではないのが原則である。
もっとも、解除は債権者を反対債務から解放するという機能を有するところ、かかる機能を果たすべき場合には、解除を認めるべきである。すなわち、①同一当事者間の契約において、②両契約の目的が相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、いずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体として達成されないと認められる場合には、一方の債務不履行を理由に他方の契約も解除できると解する。
本問では、Xは在宅介護を理由に住宅の売買契約を締結しているので、両者は密接に関連し、売買契約が履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されない。したがって、XはYの住宅介護契約の不履行を理由に、Yとの売買契約をも解除することができる。(参考:①同一当事者間ではない場合は、判例の射程を論じ、否定するほうがいい。)
ウ. 単一の契約ととらえる立場
では、契約内容の一部の不履行を理由に、契約全体を解除することができるか。
この点、要素たる債務の不履行の場合には、契約全体の解除を認めるべきである。そして、ある債務の不履行の結果、債権者が実質的に契約全体の目的を達することができない場合、その債務は要素たる債務であると解する。
本問では、在宅介護という役務の提供は、売買契約の付随する債務にとどまるとも思える。しかし、Xは在宅介護を理由に住宅の売買契約を締結しているので、在宅介護を受けられなければ、契約全体の目的を達することができないといえる。そこで、在宅介護という役務提供債務は、要素的なものと見るべきである。
したがって、Xは、Yの役務提供債務の不履行を理由として、Yとの間の契約全体を解除できる。
(4)本質 債権者を双務契約による拘束から解放するという解除制度の趣旨から、解除の効果は契約を遡及的に消滅させるものと解する(直接効果説)。
545条1項本文の原状回復義務は、(善意の相手方も全額返還しなければならない点で)不当利得制度(703条、704条)の特則であり、同条項ただし書は解除の遡及効を制限するものである。
同条3項は、債務不履行が遡及的に無かったことになると、債権者が損害賠償を請求できず酷であるから、遡及効の範囲に制限を加えて債権者を保護する趣旨の規定である。
(5)第三者 Cの解除によって、BC間の売買契約の効果は遡及的に消滅し(121条)、Cは所有権に基づく返還請求をできるのが原則である。しかし、Aは545条1項ただし書の「第三者」に当たり、Cは解除の効果をAに対抗できないとのではないか。「第三者」の意義が問題となる。
ア 545条1項ただし書は、解除の遡及効ゆえに害される者を保護するための規定であるから、ここでいう第三者とは、「解除された契約から生じた法律効果(解除される契約の目的)を基礎として解除前に新たな権利を取得した者」をいう。
善意悪意は問われない。
直接効果説によっても復帰的物権変動を観念し得るので、解除前の第三者と解除者とは対抗関係(177条)に立つと解すべきである。(又は、177条の「第三者」に当たる。)よって、両者の優劣は対抗要件の先後によって決する。(94条や96条とは違う)
(ア)本問では、AはCの解除前にBから乙自動車を譲り受けており、解除前の第三者といえるが、登記名義を移転していない。
しかし、Cも対抗要件を備えていない。この場合、Aは対抗要件の抗弁により、請求を拒むことができる。
(イBC間の契約は、解除される契約の目的たる甲を目的物とする解除前の賃貸借契約である。Cは引渡しを受けているため、対抗要件を具備したといえる(178条)。よって、Cは賃貸借契約をAに対抗することができ、Aの引渡請求は認められない。
イ 545条1項ただし書は、解除の遡及効で害される者を保護する規定であるから、ここでいう「第三者」は解除前の第三者に限られる。よって、解除後の第三者は545条1項ただし書では保護されない。しかし、解除における契約の遡及的消滅も一種の擬制であり、実際には復帰的物権変動を観念し得る。また、公示を怠った者を保護する必要はない。
そこで、解除権者と解除後の第三者は対抗関係(177条)に立ち、登記の先後によってその優劣を決すべきと解する。
(6)その他 ア. 契約解除に伴う原状回復義務(545条1項本文)については、保証人も責任を負う。
主たる債務が遡及的に消滅すれば保証債務も付従性によって消滅するとも思えるが、保証の趣旨は、主たる債務者の負担する一切の債務を保証し、契約の不履行によっても相手方に損失を被らせない点にあると解するべきだからである。
イ. 原状回復義務が当事者の帰責事由なくして履行不能となった場合の損失を、いずれに負担させるべきか。原状回復義務は、解除により契約前の状態に服せしめるものであるから、物がなければ価格の返還をすべきである(ペー3 基M323)。

6担保責任
(1)性質・560条 ア 担保責任とは、売買契約の目的物に瑕疵がある場合に売主が負う責任をいう。その趣旨は有償契約おける等価的均衡を保つ点にある。559条により他の有償契約にも準用されるので、賃貸借や交換でも担保責任が問題となる。
イ B社は、処分した200匹のマウス及び感染防止処置の費用について賠償請求できるか。
この点、A社に過失はないので、債務不履行責任(415条)や不法行為責任(709条)は問い得ない。
そこで、種類物売買の売主に対して、瑕疵担保責任(570条・566条)が認められるのかが問題となる。
特定物売買においては売主の債務は当該目的物を引き渡すことにつき(483条参照)、目的物に原始的瑕疵があっても、売主は債務不履行責任を負わない。しかし、それでは代金に見合った物を得られず、買主に酷であって、当事者の公平にも反する。
そこで、有償契約における等価的均衡を保つために、法律上特に担保責任が定められた(法定責任説)。
帰結として、①原始的瑕疵に限る、②不特定物売買には適用しない、③完全履行請求(瑕疵修補請求・代物請求)は認められない、④損害賠償の範囲は信頼利益に限られる(瑕疵のない完全な物というものを観念し得ないため)。
本問の、売買は種類物売買である。
したがって、B社は、処分した200匹のマウス及び感染防止措置の費用について賠償請求することはできない。
ウ 特定物売買では、目的物の引渡しにより債務の本旨に従った履行はなされたことになり、買主の瑕疵修補請求権は認められないのが原則である。しかし、①売主自身に修理能力があり、②それが容易である場合にまでこの原則を貫くことは、当事者の意思に反する。この場合には、当事者間に黙示の修理保証契約を認定し、買主は、この契約に基づき売主に対して瑕疵修補請求をすることができる。
エ 他人物売買(560条) 売主無過失の場合415条責任を問えない。解除(561条)は悪意の買主でも可能。善意なら損害賠償(561条)も可能。
売主有過失の場合、債務不履行に基づく損害賠償(415条)、解除(541条、543条)などが可能。561条の損害賠償請求(善意なら)、解除も可能。
561条の損害賠償に対する抗弁は、買主の悪意。561条の請求・解除に対する抗弁は、不能が買主の故意過失によること。
(2)AB間の土地売買契約が数量指示売買(565条)に当たるとして、AはBに解除請求できないか(565条、563条)。
ア 「数量を指示」する売買(565条)とは、一定の面積や数量等があることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として(数量を基礎として=掛け算で)代金が定められた売買をいう。
本問では、3.3平方メートル当たり25万円、本件土地の面積を330平方メートルとして代金を2500万円と定めている。面積が表示され、この数量を基礎として代金が定められているといえる。よって、本問売買契約は、数量指示売買といえる。
そして、Aとしては、土地の面積が297平方メートルでは、希望する建物の建築が不可能であり、購入した目的を達し得ない。そこで、「残存する部分のみであれば買い受けなかったとき」といえる
したがって、Aは当該契約を解除できる。
イ 損害賠償の要件は、①不足、②善意、③1年以内、④因果関係ある損害である。
売買の対象である目的物の数量が表示された場合でも、その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり、売買契約の目的を達成する上で特段の意味を有するものでないときは、買主は、目的物が表示どおりの数量を有したとすれば得たであろう利益について、売主に対して賠償を求めることはできない〔51〕。(④損害と因果関係のはなし。)
なぜなら、土地は千差万別で、登記も正確ではなく、面積は通常用途に関係ないからである。また、無過失責任であることとの均衡を図るべきだからである。
ウ E1買主悪意の抗弁(565条) 本件売買契約時において、買主は数量不足につき悪意であった。
E2除斥期間の経過(564条) 買主が数量不足の事実を知ったこと、および、その日から1年が経過した。
(3)566条 ア 存在するとされた土地賃借権がなかったときは「地役権」の566条2項を類推適用する(基M332)
イ 甲から借りた土地に乙は建物を建てた。この建物を土地賃借権付きで丙に売り渡した(甲の同意あり)ところ、もともと敷地に欠陥があった。
このとき、丙は甲に修補請求(606条1項)、担保責任追及(559条、570条)することができる。
しかし、あくまで買い受けたのは建物と土地賃借権であって、土地は乙丙間の契約の目的物では無いから、その欠陥は目的物の瑕疵とはいえない。また、債権の無資力の負担は債権譲受人が負担すべきである(569条参照)。乙に対して(「賃借権」の瑕疵を理由に)担保責任を追及することはできない。
批判:①そもそも売買の目的物である。②569条参照を理由にしており、直接的効果を有する物権(地上権)の場合には判例の射程は及ばない。
(4)570条 ア 解除の要件は、①契約成立、②目的物の隠れた、②´瑕疵 ③契約目的不達成、④解除の意思表示である。損害賠償請求なら、⑤②と因果関係のある損害である。
瑕疵を知っていれば、通常買わないし、契約の目的も達成できない。そこで、②の買主の悪意・有過失、③は抗弁である。
②隠れたとは、取引上要求される一般的な注意では発見できないこと、つまり買主の善意無過失を意味する。
瑕疵とは、契約当事者の合意、契約の趣旨に照らし、目的物が予定されていた性質・性能を有していないことをいう。
売買契約時には有害とされていなかったふっ素の汚染は、その後有害と周知されても「瑕疵」に当たらない。
イ カメラには「ちょっと気のつかないところ」に「故障」があり、当該カメラは、その種類の物として通常有すべき品質・性能を欠き、これは取引上要求される一般的な注意では発見できないといえる。よって、「隠れた瑕疵があった」(570条)といえる。損賠賠償請求及び契約解除○(570条、566条1項)。
ウ 1年の期間制限は、除斥期間である。では、中断のない除斥期間と解した場合、どのように権利保全を図るべきか。売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判上の権利行使までは必要ない。
なお、損害賠償請求権は10年の消滅時効に服する。
エ 瑕疵担保責任と錯誤が競合した場合、判例は担保責任の規定を排除する(いつまでも無効主張できる)が、これでは担保責任が短期の消滅時効を定めた趣旨を没却するので、錯誤の規定が排除されると解するのが通説である。
(5)他人物買主の保護は、94条2項の類推適用により図る。(本人に帰責性が認められそうなとき。)
他人物売買も債権的に有効であり、売主は目的物の所有権を買主に移転する義務を負う(560条)。意思主義(176条)により、売主が目的物の所有権を取得した時点で、買主に所有権が移転すると解する。よって、Cは甲土地の移転登記を請求できる。

7債権譲渡
(1)総論 ア 債権譲渡は、債権の同一性を保ちつつ債権を移転する契約である。付随する権利・抗弁権は当然に移転する。
債権譲渡は原則として自由にできるが、性質・法律・特約によって制限される場合がある。
要件は、①債権発生原因、②譲渡契約である。
イ 特約による制限は、債権者を確知する手間を省くという債務者の便宜のためのものである。譲渡は原則として自由であるから、取引安全も図る必要があるので、特約を善意無重過失の第三者に対抗することはできない(466条2項ただし書)。
(抗弁)主張すべき事実は、①特約の存在、②譲受人の悪意重過失である。
強制執行秩序維持のため、466条2項は転付命令には適用されない。したがって、禁止特約につき善意であると悪意であるとにかかわらず、差押債権者の得た転付命令は有効である。
ウ 法があえて466条2項を設けたことから、譲渡禁止特約は物権的効力を有し、特約に反する譲渡は無効であると解する。
しかし本問ではCがこれを承諾しており、これにより債権譲渡が有効とならないか。
466条2項は債務者の便宜のための制度であるところ、その債務者が承諾した以上、これを有効としても不都合はない。また、譲渡禁止特約に反する債権譲渡は、債務者に留保された処分権限を無断で行使するといえ、無権代理に類似する。
そこで、譲渡禁止特約に反する債権譲渡も、債務者が承諾した場合には、譲渡時に遡って有効になると考える(116条類推適用)。
ただし、116条の法意に照らし、承諾前の第三者の権利を害することはできないと解する。
本問では、確かに、Aに対する債権譲渡は、債権譲渡の時点に遡って有効になる。しかし、Dの差押通知書はCの承諾前にCに送達されており、対抗要件を備えている。したがって、Aは、債権譲渡の効力をDに対抗することはできない。
以上より、DがAに優先する。
エ DがBから譲渡された本問賃料債権は、将来発生する債権である。かかる将来債権の譲渡の有効性が問題となる。
譲渡される債権は未だ発生しておらず、もし債権が不特定であれば、債務者の経済活動の自由を阻害し、債権の抜け駆け的回収を誘発するおそれがある。しかし、債権者、債務者、発生原因及び範囲の特定により、債権が特定されていれば、上記弊害を防止できるので有効であると解する。
本問では、BC間の賃貸借契約に基づく賃料債権の1年分の譲渡であって、債権の特定はあるといえる。
よって、BD間の譲渡契約は有効である。
オ 参考:当事者AB間の「特約」を、Aから目的物を譲り受けた第三者Cが承継するかについて、BC両者の利益を調和し、466条2項を類推すべきという立場をとるべきである。
(2)対抗要件
ア 債権譲渡の債務者に対する対抗要件は、①譲渡人から債務者への通知、又は、②債務者の承諾である(467条1項)。その趣旨は二重払いの危険の回避にある。通知は取引安全の見地から譲渡人がする必要があるが、承諾はどちらにしてもいい。
第三者に対する対抗要件は、③確定日付ある証書による通知・承諾である(467条2項)。その趣旨は債務者をして公示機関を営ませる点にある。
イ 債権譲渡の解除を、解除権者から債務者に通知した場合について。確かに直接効果説だが、しかし復帰的物権変動を観念し得る。とすれば、解除により債権者が変更する場合も債権譲渡と同視されるから、対抗要件が必要である(467条1項)。
そして通知は、取引安全の見地から、債権の譲渡人がする必要がある。
本問では、解除前はBが債権を有していたのであるから、解除したAは譲受人と同視でき、A自ら行った通知は対抗要件とはいえない。
ウ 債権譲渡における第三者に対する対抗要件は、確定日付ある通知又は承諾である。
ところが、本問では債権がCDに二重に譲渡され、CDがともに確定日付ある通知を備えている。そこで、両者のいずれが優先するか問題となる。
467条2項の趣旨は、債務者をして公示機関を営ませる点にある。そこで、債務者が債権譲渡の事実を知ったとき、つまり通知が債務者に到達した日時、又は、債務者が承諾した日時を基準に両者の優劣を決する。
エ 債権譲渡についての確定日付ある通知が複数同時に到達したとき(不明も含む)、各譲受人はともに第三者対抗要件を備えているので、債務者はその請求を拒むことはできない(供託は許される)。他方、債務者もその中の1人に対して弁済すれば債務を免れる。
そして、譲受人の一人が全額弁済を受けたときは、債権者平等の原則により、各譲受人に対して債権額に応じた不当利得分配債務を負うと考える。
オ 譲受人相互間の優劣関係は債務者にも及び、優先する第三者に対する弁済のみ有効である。
第一譲受人から確定日付のない通知を受けた債務者が弁済をした後、確定日付ある通知がなされた場合、債務者は弁済を第二譲受人に対抗できる。(第二譲受人の債務者対抗要件がないとき)第一譲受人への弁済によって債権は消滅するからである。
(3)無留保承諾
ア 債権譲渡は債権の同一性を保って移転するものであるから、譲渡によって債務者が従来よりも不利な立場に置かれてはならない。よって、債務者は、原則として譲渡人に対する通知前の対抗事由をもって譲受人に対抗することができる(468条2項)。
しかし、債務者が債権譲渡について異議をとどめずに承諾をしたときには、かかる抗弁を(善意の(判例))譲受人に対抗できなくなる(同1項)。
イ 抵当権付債権者Aに債務者Bが弁済をした。抵当権登記が抹消されない間に、Aがその債権を抵当権付きのものとしてCに譲渡し、Bもそれにつき異議なき承諾をした。その土地には二番抵当権者Dがいた。
(ア)Bの弁済により、被担保債権は消滅し、Aの抵当権も付従性によって消滅した。
しかし、Bが無留保承諾をしたことで、BはCに対して被担保債権の消滅を主張できない(468条1項)。
このとき、抵当権の消滅は譲渡された債権そのものについて生じた事由では無いから、同条項の「対抗することができた事由」には含まれない。もっとも、自ら異議なく承諾をした債権者よりも、抵当権登記の外観を信頼した譲受人を保護すべきであるといえる。よって、債務者は譲受人に対して抵当権の消滅を対抗できない。(Dがいないときは抵当権登記が存続?)
(イ)では、債務者以外の第三者も、譲受人に対して抵当権の消滅を主張し得ないのか。
債務者の承諾は、第三者の与り知らない事情であり、これによって不利益を被る理由はない。よって、異議なき承諾前に利害関係に入った第三者との関係においては、第三者は抵当権の消滅を譲受人に対し主張できると考える。
他方、異議なき承諾後に利害関係に入った第三者は、抵当権の存在を覚悟していた以上、抵当権の消滅を譲受人に対抗できない。
(参考:既に物上保証人、保証人となっていた者は被担保債権の消滅を対抗できる)
ウ 請負人Aは仕事完成前に、Bに対する請負代金債権をCに譲渡し、Bはこれに異議なき承諾をした。その後、Aの債務不履行によりBは請負契約を解除した。BはCからの請求を拒むことはできるか。
(ア)545条1項ただし書の趣旨は、契約の遡及的消滅を前提に、移転したはずの権利の帰属の点において「第三者」が不測の損害を被るのを防止する点にあり、消滅する債権そのものの譲受人は「第三者」(同ただし書)とはいえない。よって、同ただし書によりCは保護されない。
(イ)では、BはCに対して解除を対抗できるのか。債権譲渡の承諾後の解除が468条2項の「譲受人に対して生じた事由」に当たるかが問題となる。
承諾時に債務不履行がない以上、解除自体は「譲受人に対して生じた事由」とはいえない。
しかし、債務者が債権譲渡によって不利益を被らないようにするという同条項の趣旨によれば、「譲受人に対して生じた事由」には抗弁発生の基礎となる事由も含まれると解するべきである。
本問の場合、債権譲渡前にAの仕事は未完成であるから、解除の抗弁発生の基礎となる事由がある。
(ウ)もっとも、Bが異議なき承諾(468条1項)をした以上、BはCにもはや解除を対抗できないのではないか。
同条項は譲受人保護のための規定であるところ、悪意の譲受人は保護に値しないので、債務者は悪意の譲受人には常に抗弁を対抗できると考える。そして、この場合の悪意とは、同条の「事由」に抗弁発生の基礎となる事由も含まれると解する以上(上記(イ))、その認識をもって悪意とするべきである。
本問では、譲受債権が仕事未完成部分に関する請負報酬債権であることをCが知っていたのであれば、468条1項は適用されず、Bは解除をもってCに対抗でき、代金支払請求を拒むことができる。
(4)債務引受け:免責的債務引受けについて。債権者と引受人間の契約は、債務者の意思に反しなければ認められる。債務者と引受人間の契約は債権者の承諾が必要である。
併存的債務引受けは承諾など不要であり、性質は連帯債務となる。→絶対効・相対効を論じさせる問題はあり得る。
(5)賃貸人たる地位の移転は、契約当事者たる地位の移転である。とすれば、契約から生じる債権を既に第三者に譲渡したという地位もそのまま引き継ぐ。したがって、Aは、賃料債権を既にDに譲渡したBの地位を引き継ぐため、賃料債権を有しない。以上より、Cに対して、1年分の賃料を請求することはできない。賃貸人たる地位の移転は将来効(620条)、と説明してもいいか。

8債権の消滅
(1)弁済
ア 弁済により債権が消滅する旨の明文はないが、民法第三編第一章第五節の債権の消滅において第一款「弁済」と定められていることから、債権の消滅事由であると解する。
代物弁済(482条)は、要物契約である。不動産であれば引渡しだけでなく登記移転までして初めて債務が消滅する。
イ 弁済の提供とは、債務者が給付を実現するために必要な準備をして、債権者の協力を求めることをいう。
債権者側の協力が必要な債務において、債務者を履行遅滞責任から解放するために弁済の提供を規定し(492条)、提供によって債権者は受領遅滞に陥るとした。効果6つ:①遅滞責任の解放(492条)、②相手の同時履行の抗弁権を奪う、③約定利息の不発生、④危険の移転、⑤注意義務の軽減、⑥増加費用の債権者負担(485条ただし書)
弁済の提供の方法には、現実の提供と、口頭の提供がある(493条)。受領拒絶、又は、債権者の協力が必要な場合は、口頭の提供でいい(493条ただし書)。
ウ ①瑕疵のあるタンスの提供では、弁済の提供の効果は生じないので、甲は履行遅滞責任を免れない(492条参照)。したがって、瑕疵あるタンスを引き渡したことにつき、甲に帰責事由がある場合には、乙は甲に対して損害賠償を請求し(415条)、契約を解除することもできる(541条)。
①口頭の提供の場合、493条の文言にかかわらず債務者は履行期に目的物を準備して待っていれば履行遅滞責任を免れる。しかし、②反対債務の同時履行の抗弁権を奪い、債権者の債務不履行責任を追及するには、(文言通り)履行の準備及び通知が必要である。
エ ④甲の引渡し債務は履行不能となっているが、反対債務である乙の代金債務はどうなるか。危険負担が問題となる。この点、弁済の提供がなされた場合、提供者がなすべきことをなした以上、信義則(1条2項)上、債権者が危険を負担すべきである。本問では、甲が弁済の提供をしている。したがって、危険は乙が負担し、代金債務は存続する。
オ ⑤乙は甲に対してタンスの引渡債務を理由に損害賠償(415条)を請求できるか。まず、地震によるタンスの滅失により、甲の引渡債務は履行不能となっている。では、甲に帰責性は認められるか。甲は目的物たるタンスを現実に提供しているので、弁済の提供(492条)があったといえる。このように、債務者が弁済の提供をなした場合には、債務者としてなすべきことをした以上、注意義務が軽減され、故意・重過失の場合にのみ責任を負う。本問では、地震によりタンスが滅失しており、少なくとも甲に重過失は認められない。よって、乙は甲に対して、損害賠償を請求することができない。
⑤乙は引渡しの準備をした上、約定の期日に甲に引き取るよう通知しており、「弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告」をしている。よって、乙は弁済の提供をなした(493条ただし書)といえるので、乙の善管注意義務は軽減され、故意・重過失についてのみ責任を負うと解する。本問の腐食は、乙の倉庫に在庫中、約定期日後の湿気により生じたものであり、乙の故意・重過失は認められず、債務不履行責任は負わない。よって、甲は損害賠償を請求することができない。
カ ⑥甲は弁済の提供を行っているため、乙に対し、弁済期である5月1日からの遅延利息の請求、5月1日から6月10日までの保管費用という増加費用の請求(485条ただし書)をなし得る。⑥甲は弁済の提供を行っているので、乙に対し、タンスの運送費用及び保管費用を増加費用として請求できる(485条ただし書)。
(2)第三者弁済
ア 弁済は原則として債務者がするが、例外的に第三者がすることができる(474条)。例:建物賃借人は、利害関係を有することから、土地賃貸人・土地賃借人の意思に反してでも、第三者弁済できる(474条2項反対解釈)。
イ 一定の場合には弁済による代位が生じ、債権・担保権等はすべて弁済者に移転する(499条、500条)。その趣旨は、弁済者の求償権を確保することにある。
保証人と担保目的物の第三取得者との関係では保証人が全額代位できるが、(弁済後の第三取得者に対しては)付記登記が必要(501.1)。第三取得者相互間は各不動産の価格に応じて(501.3)。物上保証人相互間も価格に応じて(501.4)。保証人と物上保証人との間では、その人数に応じて債権額を分けその範囲内において代位し、数人の物上保証人いればそのなかで担保物の価格に応じて(501.5)。物上保証人からの譲受人は物上保証人と同視する(判例)。二重資格者は保証人1人として扱う(判例)。
(3)478条 ア ①債権の準占有者に対してした弁済は、②弁済者が善意無過失であればその効力を生ずる(478条)。
その趣旨は弁済の簡易迅速な処理を図るために受領権限者たる外観を信頼した弁済者を保護する点にある(公信の原則)。
イ. Yが債権者だとしても、Zが詐称代理人である以上、丙の保証債務は消滅せず、乙に対して求償できないのが原則である。
しかし、丙はZがYの代理人であると信じており、Zが「債権の準占有者」(478条)に当たるとして保証債務の消滅を主張できないか。205条が「自己のために」と定めていることから「債権の準占有者」の意義が問題となる。
478条の趣旨は、弁済の簡易迅速な処理を図るために、債権の受領権限者たる外観を信頼した弁済者を保護する点にある。とすれば、「債権の準占有者」とは、取引通念上、真に債権の受領権限者たる外観を有する者をいうと解される。そして、本人の代理人と称する者は、債権者本人と称するものと同様に、取引通念上真に債権の受領権限者たる外観を有するものといえる。したがって、詐称代理人も「債権の準占有者」に含まれると解する。
本問では、Zが詐称代理人であることにつき、丙が善意無過失であれば、478条により丙の弁済は有効になり、乙に対して求償し得る。
(4)子Bが拒否しているにもかかわらず、親Aが当該子BのCに対する債務を消滅させる法律的方法について
ア. Cとの合意が必要ない方法
第三者弁済は、Aが「利害関係を有しない」(474条2項)ので、Bが拒否している以上、できない。
イ. Cとの合意が必要となる方法
更改(514条)は、「更改前の債務者の意思に反するとき」にはできないので、Bが拒否している以上、できない。
AC間で保証債務を結ぶことは、債権者の利益のため、主債務者の意思に反してもすることができる(466条2項)。したがって、AはBの保証人となり、自己の保証債務を弁済することで、Bの債務を消滅させることができる。
また、併存的債務引受けも、債務者の意思に反してすることができる。そこで、AはCとの間で併存的債務引受けの契約をし、債務の弁済をすることによってBの債務を消滅させることもできる。
さらに、AはCに対する債権を譲り受け(466条1項本文)、自らが債権者となった上でBに対して債務を免除(519条)することが考えられる。
(5)相殺
ア. 相殺とは、相互に同種の債権・債務を有する場合に、一方の意思表示によって、その債権と債務とを対等額において消滅させることをいう(505条)。その趣旨は、手続の簡易化、当事者間の公平、担保的機能にある。
相殺をすることは、自働債権については履行の強制、受働債権については任意の弁済と同視できる。
要件は、①相殺適状(505条1項)、②相殺の意思表示(506条1項)である。
相殺適状であることとは、債権が相対立していること、双方の債権が同種の目的を有し、弁済期にあり、有効に存在し、相殺を許す債務であることをいう(1項)。相殺禁止特約のないこと(2項)、法律による禁止に当たらないこと(509条~511条)は、あること、当たることを抗弁として主張する。
受働債権は、その債務者たる相殺者が期限の利益を放棄することができるので(136条2項)、弁済期にあることを要しない。
受働債権が差し押さえられた後に取得した自働債権で相殺することはできない(511条)。
イ. 511条の反対解釈として、受働債権が差し押さえられる前に取得した自働債権で相殺することは可能である。
もっとも、受働債権よりも自働債権のほうが後に弁済期が到来する場合、かかる者の相殺への期待は、債務不履行に陥ることを前提としており一般的に合理性がないとの批判がある。
しかし、相殺制度は担保的機能を有するところ、この制度によって保護される当事者の地位は尊重されるべきである。
したがって、Aが相殺の意思表示をしたことで、本件債権は消滅する。
ウ. 債権譲渡前の自働債権による相殺:
468条2項によれば、AはBに対して主張し得た相殺の抗弁を、Cに対しても主張し得る。
もっとも、受働債権よりも自働債権のほうが後に弁済期が到来する場合、かかる者の相殺への期待は、債務不履行に陥ることを前提としており一般的に合理性がないとの批判がある。しかし、相殺制度は担保的機能を有するところ、この制度によって保護される当事者の地位は尊重されるべきである。したがって、自働債権の弁済期の先後を問わず相殺し得ると解する。
エ. Cの相殺の意思表示の後、AがCに対して、この売掛代金債権を受働債権としてBに対する貸金債権と相殺する旨の意思表示をしている。そこで、CとAの相殺の優劣が問題となる。
先に意思表示がなされた時点で債権はその相殺適状の時にさかのぼって消滅し(506条2項)、その後の相殺の意思表示がなされた時点では、相殺すべき債権は存在しない。また、債権回収により熱心な者を保護すべきである。そこで、相殺の意思表示を先になした者が優先すると考えるべきである。
本問の場合、Cが先に相殺の意思表示をしている。したがって、AのCに対する債権は消滅する。
オ. Aは不法行為に基づく損害賠償請求権で相殺できるか。双方の債権が不法行為に基づく場合にも509条が適用されるかが問題となる。この点、同条の趣旨は、被害者に現実の弁償によって損害の填補を受けさせるという点にある。そして、かかる趣旨は、双方の損害賠償請求が不法行為に基づく場合にも妥当する。したがって、本問でも509条が適用されるため、Aの相殺の主張は許されない。

 

 

 

 

 


四契約各論 1売買 2賃貸借 3請負 4委任等  五債権その他 1事務管理 2不当利得 3不法行為
六債権の履行確保 1責任財産の保全 2人的担保 3物的担保  七家族法 1夫婦 2親子 3相続

四 契約各論
1 贈与・売買・消費貸借
(1)贈与は諾成契約である。要物契約ではない。諾成・無償・片務契約である。
書面によらない贈与は、履行が終わっていない限り、当事者が撤回することができる(550条)。
その趣旨は、贈与者の意思を明確にするとともに軽率な贈与を戒め、紛争の発生を防止する点にあるから、不動産では引渡しをすればよく、登記の移転までは必要ではない。
(2)手付 ア 手付とは、売買契約の締結の際に、当事者の一方から他方に対して交付される金銭をいい、売買契約とは別個独立の要物契約である。手付の種類には、証約手付、解約手付、違約手付があり、全ての手付は証約手付の性質を有し、とくに断りがなければ手付は解約手付と推定される(557条1項)。
解除の要件は、①手付合意、②交付、(③現実の提供)、④解除の意思表示、⑤履行に着手する前であることである。
③は「償還」という文言、買主が現実に手付交付することとの均衡から必要。
イ 本件手付は、557条1項により、解約手付たる性質を有するか。契約書には違約金条項が設けられており、本件手付は違約手付として授受されたと考えられる。そこで、解約手付の性質を有し(557条1項で推定)、違約手付が併存し得るか問題となる。
少なくとも、手付を放棄又は倍返ししなければ契約を解除できないのであるから、解約手付であっても契約の拘束力を強めるものといえる。そこで、解約手付と違約手付は矛盾せず、併存し得ると解する。
ウ 解除の効果は、買主は手付損、売主は③手付倍返しで、契約を解消し、損害賠償請求を免れることなどである。
エ ⑤履行に着手とは、客観的に外部から認識できる形で履行の一部をなし、又は、履行の提供をするために必要な前提行為をなしたことをいう。
乙は自己の費用で土地を実測しているが、これは、土地面積・売買代金を確定させるためのものにすぎない。また、乙は甲に対して「代金支払の準備ができた」と告げているが、いまだ口頭の提供にとどまり、さらに、この提供は履行期の1年以上も前である。したがって、乙は客観的に外部から認識し得る形で、履行行為の一部又は不可欠の前提をなしたとはいえず、「履行に着手」したとは認められない。
オ 557条1項が履行に着手後の解除権を制限する趣旨は、履行に着手した当事者が不測の損害を被ることを防止する点にある。自ら履行に着手していても、相手方には損害は与えない。そこで、相手方が履行に着手していない限り解除できる。
カ 違約手付は損害賠償額の予定と推定される(420条3項)。
(3)575条は、果実と利息との二重取りを防ぐという公平の観点から規定されている。果実-費用=利息の計算である。
(4)準消費貸借の当事者の合理的意思によれば、新旧債務の同一性は、当事者がこれに反対する意思のない限り維持される。そこで、債務者は、原則として、旧債務に付着した抗弁権をもって新債務の抗弁とすることができる。(旧債務の抗弁やその瑕疵を新債務において主張する場合。)

2賃貸借
(1)物権化 ア 不動産賃貸借は債権→不利→借地借家法及び判例法理により修正・強化され事実上地上権と同じである。
①対効力付与(借地借家法10条1項、31条1項)②対抗要件を備えた賃借権に基づく妨害排除請求権が認められる(判例)。
③存続期間が延長されている(同法3条・9条、29条・30条)。④賃借人の承諾がなくとも賃借権を処分し得る場合がある(判例)。土地の場合、承諾に代わる許可を裁判によって得ることができる(同法19条1項)。⑤時効取得できる(判例)。
イ 借地借家法10条1項「登記」は本人名義のものでなければならないか。
確かに、他人名義の建物の存在で借地権の公示は十分なされている。しかし、同条項は、建物の所有権を対抗できる登記のあることを前提に、これをもって土地賃借権の登記に代えようとするものである。他人名義の登記は実質上の権利状態に符合しない無効なものであって、建物の所有権を対抗できず、これを前提とする借地権も対抗できないはずである。
したがって、他人名義の建物の登記は同項の「登記」に当たらず、これを借地権の対抗要件とすることはできない。
ウ 不動産賃借権に妨害排除請求権が認められるか。賃借権が債権であることから問題となる。
生活の基盤をなす不動産賃借権の重要性から、妨害排除請求権を認める必要性が高い。そもそも、物権に物権的請求権が認められるのは、物権が排他性を有するからであるところ、対抗要件を備えた賃借権も排他性を有する。
そこで、対抗要件を備えた不動産賃借権に妨害排除請求権を認めるべきと解する。
エ 妨害排除請求として挙げられる手段は、①賃貸人に自己に使用させるよう請求すること(601条)、②占有保全の訴え(199条)、③対抗要件を備えた賃借権に基づく妨害排除請求権、④賃貸人の所有権に基づく妨害排除請求権の代位行使などがある。
ただし、二重賃貸借の場合、一方の賃借人は④を採れない。なぜなら、賃貸人は他方の賃借人に対しても目的物を使用収益させる義務を負っており(601条)、妨害排除請求権が発生していないからである。
オ 賃借権が二重に譲渡された場合、賃借権の物権化に鑑み、対抗要件の先後によりその優劣を決すべきと解する。
本問では、乙は対抗要件を備えていないので、丁に対して自己の賃借権を対抗できない。
カ 賃借権が対抗要件を備えていない場合、賃借権を理由に明渡しを拒むことはできない。
しかし、今日の賃借権の物権化傾向に鑑みるならば、物権と同様に、背信的悪意者は不動産賃借権を有する者との関係においても保護するに値せず、605条の登記の不存在を主張する正当な利益を有しないというべきである。
本問では、丙は乙からA地を2分の1で転借しておきながら、これと矛盾する所有者の立場からの明渡しを請求しており、背信的悪意者に当たる。したがって、乙は登記なくして賃借権を丙に対抗できるので、丙の明渡請求を拒むことができる。
(2)敷金 ア 敷金とは、賃貸借契約において賃借人が負担する一切の債務を担保するために差し入れられた金銭であり、賃貸借契約に付随する別個の要物契約である。契約が終了すれば、賃借人の債務を控除して残金が返還される。敷金返還請求のkgは、賃料の弁済も必要。
イ R1対価関係がない。R2著しい価値の差がある。R3敷金は賃貸借によって生ずる一切の債権を担保する趣旨で交付するものである。とすれば、明渡しまでの債務も担保すべきであるから、賃借人の敷金返還請求権は契約終了時でなく明渡し時に発生すると解する。明渡しが先履行であり、明け渡すまで敷金返還請求権は発生していないため、同時履行の抗弁権の主張をすることができない。
ウ 賃貸借契約存続中に賃貸人の地位が移転した場合には敷金も当然に承継されるのか。免責的債務引受けの側面があり、債権者たる賃借人の承諾が必要ではないかが問題となる。(下の賃貸人たる地位の移転を論じてからこれを論じる場合もある。)
新賃貸人は建物を所有しているから、旧賃貸人よりも新賃貸人から敷金を回収するほうが無資力のリスクを軽減でき、賃借人に有利である。また、敷金は賃借人の債務の担保として、賃貸人の地位と密接に結びつくものであり、担保物権の随伴性と同様に解することができる。
そこで、敷金は賃貸人の地位とともに、旧賃貸人に対する債務を差し引いた額が、当然に承継されると考える。
エ 賃借権が移転しても、敷金契約は当然にはこれに伴い移転することはない。当然に承継されるとすれば、敷金を交付した旧賃借人が新賃借人の債務まで担保することになり、旧賃借人の予期に反するし、賃貸人は譲渡時の承諾に際して新たに敷金の取り決めを行えばよいからである。
(3)賃貸人たる地位の移転 BはAから借りた土地に建物を建て、保存登記をしたうえで居住していた。後にAがその土地をCに譲渡し、移転登記を済ませた。BC間の法律関係について論ぜよ。
ア まず、CはBに対して所有権に基づく当該土地の明渡し請求をすることはできない。
Bは自己の名義で当該土地上の建物に保存登記をしており、賃借権をCに対抗できるからである(借地借家法10条1項)。
イ では、CはAから賃貸人たる地位を承継したとして、Bに賃料請求などの賃貸人の権利を主張できないだろうか。本問ではAB間に地位の承継について合意があったとの事情が認められず、賃貸目的物の譲渡によって当然に賃貸人たる地位も移転するのかが問題となる。
(ア)賃借権が対効力を有する場合、当該所有権は賃借権の負担を伴っていることは明らかである。とすれば、この所有権を譲渡する当事者の意思としては、賃貸人たる地位も譲渡したと考えるべきである。
また、賃貸人たる地位の移転は、免責的債務引受けという性質も有するため、債権者たる賃借人の承諾が必要ではないかが問題となるが、特段の事情がない限り不要と考える。なぜなら、賃貸人の使用収益させる債務は、没個性的な債務であるから、賃借人にとって所有者がだれであるかは通常重要な問題ではないからである。
本問では、Bが賃借権の対抗要件を備えているので、賃貸人たる地位は賃貸目的物の所有権とともにCに移転する。
(イ)では、CがBに対して賃貸人たる地位を主張するのに登記が必要か、それとも通知・承諾で足りるか。条文上明らかでなく問題となる。
登記を不要とすれば、賃料の二重払いの危険が生じる。不動産取引に関わる者を公示によって保護するという177条の趣旨は賃貸人たる地位の移転の場面にも妥当する。
そこで、賃借人は177条の「第三者」に該当し、新賃貸人が賃貸人たる地位を主張するのに、登記を要求すべきである。
本問ではCは当該土地の移転登記を経ているので、Bに賃料請求などの賃貸人の権利を主張できる。
ウ (ア)動産の賃貸借の場合、上の「登記」を「引渡し」に代えて、同様に論じればよい。
605条以外に明文はないものの、引渡しを受けている場合には対抗力ありと解する。対抗力があれば賃貸人たる地位は移転する。賃借人の同意は不要である。
賃料の二重払いを避けるため、賃貸人たる地位を賃借人に主張するには、対抗要件(178条 引渡し)が必要である。
(イ)AC間で賃貸人たる地位を留保する特約をすることはできない。Bを転借人にするから。
Cの賃料請求の請求原因では、期間経過(614条)も必要。
エ 賃貸人たる地位が移転した場合、それ以降の賃料不払いを理由に、原賃貸人が解除することはできない。
また、新賃貸人も、登記がないと賃貸人たる地位を賃借人に対抗できない以上、解除できない。
オ AB間で甲を売買し、買主Bが甲をCに賃貸した。その後Aは甲をDにも売渡し、Dが登記を備えた。BC間の賃貸借契約がDに移転するか(論M68 H13旧試)。解1. Dが登記を備えることによりDは甲の所有権を確定的に取得し(177)、その反射的効果としてBは確定的に所有権を喪失する。BD間の物権変動を観念し得るので、賃貸人たる地位の移転の論点を論じる。
解2. あくまでAD間の売買であり、BD間に物権変動はない。したがって、Bが承諾した等の事情がない限り賃貸人たる地位は移転しない。(こっちのほうが楽)
(4)解除 612条、信頼関係破壊の法理だけ、541条の3つの選択肢 
ア 旧賃貸人との間の債務不履行を理由に、新賃貸人が賃貸借契約を解除できるか。賃貸借契約は人的信頼関係を基礎とする継続的契約であるところ、その債務不履行解除には、信頼関係の破壊が必要である。そして、信頼関係の破壊の有無は、当事者間で個別に検討すべきである。したがって、新賃貸人は自身の下で新たな信頼関係の破壊がない限りは、解除できない。
イ 612条の即時解除の要件は、①無断譲渡・転貸があること、②現に使用していること、③信頼関係が破壊されていること(破壊されていないことを抗弁で主張する)。③では資力と用法について信頼、主観的悪性を当てはめる。
借地権者は承諾に代わる許可を求めて裁判所に申し立て○(借借法19条・20条)。
譲渡担保は所有権構成なら①を充足する(H9重判9)。担保的構成なら担保実行して初めて①無断譲渡・転貸がある。
会社と賃貸借契約を締結し、会社内部の役員が入れ替わったときは、あくまで契約当事者たる会社が同じである以上、①無断譲渡とはいえない。択六479〔Ⅱ58〕
ウ Cは甲地の賃借権を理由に、Aに甲地の通行を求めることができるか。甲地の賃借権は、従たる権利として乙土地の所有権とともに移転する(87条2項参照)。賃借権の譲渡に際しAの承諾がない(①②充足)。
しかし、612条2項が解除を認める趣旨は、賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることに鑑み、賃借権の無断譲渡・転貸が、賃貸借関係を継続するにたえない背信的行為であるといえる点にある。そこで、③無断譲渡・転貸が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権は発生しないと解する。
このような場合には、Aの承諾がなくとも、Cは通行を求めることができる。
仮にAに明渡請求をされれば、履行不能となり、Bに561条で担保責任(Bの過失不要)を、415条で債務不履行責任を追及できる。
エ (ア)承諾転貸がなされた後に賃借人の債務不履行を理由に解除する場合、転借人の転借権はその基礎を失い消滅する(対抗○)。信頼関係を破壊されているから。このとき原賃貸人は転借人に対して催告をする必要はない。催告を要すれば、原賃貸人の解除権が不当に制限されるからである。
(イ)確かに、私人が契約を合意によって解除するのは、私的自治の原則から本来自由のはずである。
しかし、自己の権利を他人の権利の目的としておきながら、これを自由に消滅させられるとすることは、その他人に不測の損害を及ぼすものであり、許されるべきではない。これは、自己の権利を他人の権利の目的としておきながら、その権利を放棄することは許されないとする398条の趣旨と共通する。
よって、398条類推適用により、転貸借した場合の賃貸借の合意解除や賃借人からの権利放棄としての更新拒絶、他人を転借人の地位にする契約は無効である。
本問では、Cの合意がない以上、AとBは合意解除をCに対抗することができない。この場合、AがBの地位を承継し、AC間は賃貸借契約になる。転借人保護のため、契約内容は転貸借と同じである。
ただし、賃借人の二重払いの危険があるので、賃貸人たる地位の移転につき賃借人に対する通知が必要(467条類推)。
オ 賃貸借契約にも541条の適用はあるが、人的信頼関係を基礎とする継続的契約たる点を考慮しなければならない。具体的には、信頼関係を破壊しない程度の義務違反では解除権は発生せず、他方著しく信義に反する義務の不履行がある場合には無催告解除を認めるべきと解する。例:賃料不払いなら6カ月くらい 原状回復困難な無断改造なら直ちに無催告解除できる。
541条の解除の要件は、①債務不履行、②催告、③相当期間の経過、④信頼関係の破壊、⑤解除の意思表示である。
①債務不履行は、用法遵守義務(616条、594条1項)、返還義務としての善管注意義務(400条)、賃料不払いが問題となりやすい。
カ 賃貸借を解除するまでは転貸借は有効であり、賃貸借の解除は将来効のみを有する(620条)ので(というより、転借人の賃貸人に対する義務(613条1項)では?)、解除前の賃貸人Aに対する転借人Cの債務は、賃貸人Aの賃料債権と同額(月額10万円)にとどまる。
これに対し、解除時以後はどうか。AのCに対する不当利得返還請求権(703条)の基準額が問題となる。
確かに、増改築をしたのは賃借人Bであるから、Aの損失とCの利得との関係には因果関係がないとも思える。しかし、これではCに不当な利得を与えることになる(30万円で借りていたのに、10万円しか払わなくて良い)。Cには転借料分の利得があり、他方で、Aは増改築後の甲建物を、客観的に相当な賃料として月額30万円で賃貸できたのであるから、Cの使用によりAに月額30万円の損失があるというべきである。
よって、利得と損失との因果関係があり、Aは転貸料(月額30万円)を基準に、不当利得返還請求できる。
(5)後発的不能
BがAから借りていたアパートが全焼した。
目的物の滅失によってAの使用・収益させる債務、Bの返還債務は履行不能となり消滅する。他方、Bの賃料債務については、滅失が当事者の帰責事由に基づくかどうかによって異なる。
ア. 滅失が当事者の責めに帰すべきでない事由によるとき
危険負担の原則(536条1項)によって賃料債務も消滅し、賃貸借契約は終了する。
イ. Aの帰責事由によるとき
Bの使用収益権は、債務不履行責任に基づく賠償請求権(415条)に転化するものの、解除権(543条)を行使しない限り、賃料債務は存続するのが原則である。しかし、目的物がないのに賃料債務だけ残るのは、継続的契約たる賃貸借契約において現実性を欠く。そこで、継続的契約の特殊性により契約は解除を待たず当然に終了すると考える。
ウ. Bの帰責事由によるとき
536条2項前段により、Bの賃料債務は存続するとも思える。しかし、目的物がないのに賃料債務だけ残るのは、継続的契約たる賃貸借契約において現実性を欠く。そこで、継続的契約の特殊性により契約は解除を待たず当然に終了すると考える。
後は、AのBに対する返還債務の不履行責任(415条)や不法行為責任(709条)の追及によって処理する。
(6)他人物賃貸借・転貸借
ア 他人物賃貸借も債権的には有効である(560条、559条)。559条が560条を賃貸借にも準用している。
イ 他人物賃貸借(559条参照)において、所有者Dは賃料相当額を不当利得(703条)として賃借人Cに請求することはできない。CはAに賃料を支払っており、「利得」がないからである。よって、DはAに対して請求し得るのみである。
ウ 他人物賃貸借では、所有権者からの明渡請求により、使用収益させる債務が社会通念上、履行不能となる。
この場合、賃借人は賃貸人に対し担保責任を追及し得る(559条・560条等)。
また、善意でも悪意でも、債務不履行を理由に損害賠償を請求し得ると解する(415条)。
エ 他人物賃貸借において、賃貸人が無権利である以上、賃借人は賃借権を所有権者には対抗できない。
その保護は、94条2項類推により図る。AはBの登記を信頼して賃貸借契約を締結したのであるから、94条2項が類推適用され、賃借権という占有権原がある、とCに主張することが考えられる。→趣旨から3要件の検討。
オ 善意の甲が、乙所有の建物を、丙に賃貸した場合の甲丙・乙甲・乙丙間について。
他人物賃貸借も債権的には有効である(559条、560条)。丙は目的物の所有者を誤信しているが、賃貸人が目的物の所有者か否かは、重要とはいえないので、錯誤無効(95条本文)を主張することはできない。
乙は甲に賃料相当額の不当利得返還請求(703条)をできるか。甲は丙をして建物を間接占有(181条)しており、かつ丙は善意である。したがって、甲は果実収取権(189条1項)を有する。賃料は法定果実である(88条2項)から、甲は賃料を収集できる。ここで189条1項と703条の関係が問題となるが、189条1項がある以上、甲の賃料受領には「法律上の原因」があるといえる。したがって、乙は、甲に対し賃料を返還請求できない。
甲に賃料を支払っていた丙は利得を得ていないので、乙の丙に対する不当利得返還請求権(703条)は認められない。
カ 転借人の賃貸人に対する義務は613条1項前段=400条で論じる。
(7)その他
ア 乙建物の売却により、Aの甲土地の賃借権も移転するか。
土地の賃借権は、建物の所有権の従たる権利として、建物所有権の移転に伴い移転する(87条2項類推)。そして、所有権は契約時に移転する(意思主義 176条)。
本問では、AC間で建物の売買契約がなされており、乙建物の所有権はCに移転している。
したがって、甲土地の賃借権は、乙建物の売買契約時に、AからCに移転する。→612条2項の問題へ。
イ 賃借人と第三者に二重譲渡した事例。
賃借人が目的物の所有権を取得した場合、対抗力ある賃借権は混同(179条1項本文類推適用)により消滅するはずである。しかし、賃借人が所有権を取得したがために、かえって以前より不利な立場に立つのは妥当でない。そこで、二重譲渡では、未だ債権の混同は生じないと解する。よって、賃借権は消滅しない。
ウ 事案:Aの抵当権設定登記の後に、BC間で賃貸借契約が締結された。Aが抵当権を実行し、Xが買い受けた。
抵当権と賃貸借は、抵当権の登記と、賃借人の対抗要件の先後により優劣が決する(177条 387条の登記がない限り)。当該抵当権は登記により公示されている場合、その後に建物を賃借する者は、当該建物が抵当権の実行により競売され第三者に移転されることを予測した上で、賃貸借契約に入っているからである。X明渡請求○ 395条1項1号でBは6カ月猶予。
敷金返還義務を承継するか。民執法59条2項により、賃貸借契約は終了するので、賃貸人たる地位の移転はない。395条による明渡しの猶予はあっても、賃貸借契約があるわけではない。したがって、従たる債務たる敷金返還債務は承継されない。
エ ウォシュレットつきのトイレに改良した後に、賃貸人の同意の下、賃借権を譲渡した。まず、有益費に当たるので、増加額又は支払額を請求できる(608条2項)。回復者はだれであるか、また請求できるのはどの時点かが問題となる。(判例はない。)
文言上、請求できるのは「終了」時点である。賃貸借契約は同一性を保ったままAB間からAC間に移転しているので、AC間の賃貸借契約が終了した時点で請求できる。請求主体はCである。以上より、Bは請求できない。
オ 一度は修繕義務を履行した場合、信義則上、416条1項の通常損害の範囲が制限される(重判H21民法6)。

3請負
(1)報酬請求権の要件は、①契約成立、②仕事の完成(、③履行遅滞に基づく損害賠償請求まで求めるなら、③引き渡し又は弁済の提供)。E1同時履行(633本文又は634.2後段) E2瑕疵担保に基づく解除、又は、641条 E3相殺
E1引き渡しと報酬請求権は同時履行である(633条本文)。
(2)所有者 ア. 完成した製作物の所有権の帰属は特約があればそれによる。では、特約がない場合は誰に帰属するか。
請負人の報酬請求権の担保を確保するために、材料の供給態様を基準として製作物の所有権の帰属を決めるべきと解する。
例外:特約があるとき。注文者が完全弁済又は大半を支払ったとき、引き渡したときは、注文者の所有。
イ. 注文者・元請負人間で完成した製作物の所有権は注文者に帰属するとの特約があった。下請負人は元請負人と異なる権利関係を主張できず、下請負人が材料を供給して仕事を完成したとしても、所有権は注文者に帰属する。理由1:下請負人は、特約を前提に契約関係に入っている。理由2:元請負人倒産のリスクは本来下請負人が負うべきである。
(3)製作物供給契約 ア 甲乙間の契約は、乙が自らの材料で部品を製造するので、製造物供給契約である。
これは、部品の製造という仕事の完成及びその供給という所有権の移転を目的としているから、請負契約と売買契約の混合契約といえる。かかる混合契約の解釈は、その契約の性質を考慮して個別的に検討すべきものと解する。
本問部品の瑕疵は、部品の製造に関するものといえる。したがって、請負の規定により処理されるべきである。
本問部品の滅失は、仕事完成後の供給の場面における問題である。したがって、売買の規定により処理されるべきである。
イ. 乙建物の再築は間に合わないため、Yの債務は履行不能となり消滅する。
ウ では、Xの請負代金債務も消滅するか。危険負担が問題となる。
請負契約の本質は役務の提供にある。また、請負人が自己の材料により目的物を製作した場合、特約ない限りその所有権は請負人に帰属する(判例に同旨)から引渡しは役務の提供というよりは所有権移転の意味合いが強い。そこで、かかる場合は完成・引渡しを仕事内容とする1個の請負契約でなく、①目的物の製作という請負契約的側面と、②目的物の所有権移転という売買契約的側面を有する混合契約と解すべきである。そして、①の段階には請負に関する規定、②の段階には売買に関する規定が適用されるものと解する。
本問では、建物の建設は終了しており、②の段階である。そして、危険負担の趣旨は、自己の支配領域内の危険は自己が負担すべきということにあるから、本問では、建物を占有するXが危険を負担するべきである(債務者主義 536条1項)。
以上より、Xの請負代金債務も消滅する。
(4)XはYに請負を依頼し、Yが履行補助者といえ、履行補助者の故意・過失の理論が妥当するとも思える。415条のはなし。
しかし、請負人は注文者とは独立して業務を行うものであり、法も請負人の不法行為責任について注文者は責任を負わないことを定めている(716条本文)。そこで、原則として注文者は責任がないと解する。例外的に指示したか、知って放置した場合に責任を肯定する。したがって、XがYに対し手抜き工事を指示したか、知って放置したような事情がない限り、ZのXに対する損害賠償請求は認められない。
(5)本問において、仕事の過程での債務不履行を問おうとしている。請負契約は役務提供契約の一種であるから、仕事の途中でも適切な仕事がなされていないときには、債務不履行責任を問うことができる。
そして、基礎工事が不完全でありAが催告しているにもかかわらず、Bは工事の追完をしようとしない。
そこで、Aは請負契約を541条により解除し、Bとの契約を終了させることができる。
(6)瑕疵 H26予備 ア 瑕疵修補請求権(売買では認められない)の要件は、①瑕疵(隠れた瑕疵に限られない)、②瑕疵が重要であること、又は、②´修補に過分の費用を要しないことである(634条1項)。(なお、瑕疵修補請求ができないときは、損害賠償請求もできない。)瑕疵修補請求権と報酬請求権は、同時履行である(明文はない。)。634条2項後段が損害賠償請求権について533条を準用しており、その前提として認められる。全部の履行を拒絶できる。修補を拒んだ、瑕疵が軽微な場合などは、同時履行を主張して報酬請求を拒むことが信義則に反する〔66 ペー1〕。
損害賠償請求権は瑕疵修補に代えてあるいは瑕疵修補とともにすることができる。履行利益も含む。請負人の報償請求権とは同時履行の関係にある(634条2項後段)。
③瑕疵が重大なため契約の目的を達することができないときには解除できる(635条本文)が、④土地の工作物の請負は解除できない(ただし書)。
イ 瑕疵ある完成のときには、債務不履行はない(415条× 634条でのみ請求等できる。) なぜなら、請負人の保護。また、634条2項の文言から報酬請求権の履行期が到来していることが前提であるから。=あくまで仕事の完成のみが債務と分かる。
ウ (ア)本件住宅には雨漏りが生じるという「瑕疵」(634条1項本文)がある。これでは生活に支障が生じるから瑕疵は重大であるし、2000万円の請負代金に比して100万円という修補費用は過分とはいえない(同項ただし書)。
よって、Aは屋根の瑕疵修補を請求できる。
(イ)また、Aは、瑕疵の修補に代わる100万円の損害賠償を請求し、これが履行されるまで残代金全額の支払いを拒むことができる(634条2項、533条)。
(ウ) Aは100万円の損害賠償請求権と、1000万円の残代金債権を相殺(505条)し、残った900万円のみを支払うことができるか。自働債権に同時履行の抗弁権が付着しており(634条2項)、相殺は、相手方の同時履行の抗弁権を奪うので、債務の性質上(505条1項ただし書)許されないのではないか。
目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権と報酬債権は同一の原因に基づく債権であって、相殺による清算的調整を図ることが当事者双方の便宜と公平にかない、法律関係を簡明にする。そこで、瑕疵修補に代わる損害賠償請求権と請負代金債権を相殺することは許されると解する。
なお、注文者は、相殺の意思表示をするまで報酬債務について履行遅滞の責任を負わないので、これが相殺の遡及効(506条2項)により覆されることはない。(ここ忘れない。)

4委任・寄託
(1)委任は当事者間の個人的信頼関係を基礎とする、法律行為についての労務提供契約である。 法律行為以外の事務を委託した場合は準委任契約として委任の規定が準用される(656条)。無償でも善管注意義務を負う(644条)。特約がなければ報酬を請求できない(648条1項)。前払い請求(649条)、費用の(支出の日以後の)償還請求(650条1項)がある。受任者が過失なく損害を受けたときは委任者に賠償請求できる(650条3項)。各当事者はいつでも解除できる(651条1項)。
(2)論M74 委任者の死亡は、委任契約の終了事由(653条1項)、代理権の消滅原因(111条1項1号)。Aの死亡によってAY間の委任契約が終了しるか。(なお、委任後事理弁識能力を欠いた場合も論点になりうる。)
当事者の死亡が委任の終了事由とされた趣旨は、委任が当事者間の個人的信頼関係を基礎として成り立っているからである。委任契約の内容が当事者の死亡によっても異ならない場合には、当事者の信頼関係に変更はないため、当事者の死亡によっても委任契約は終了しないと解する。
委任者が自己の死亡後の事務処理も含めて依頼した場合、委任内容が当事者の死亡によっても異ならないといえる。したがって、AY間の本件委任契約は終了せず、Xは委任者たる地位を相続する。
以上より、XのYに対する請求は、預貯金等から、諸費用を差し引いた額の限度でのみ認められる。
(3)寄託 ア 要物契約である(657条 「物を受け取ることによって、その効力を生ずる」)。無報酬の寄託は自己の財産に対するのと同一の注意で保管する義務を負う(659条)。寄託者は寄託物の性質又は瑕疵によって生じた損害を賠償する(661条本文)。抗弁として寄託者が悪意有過失であることを証明すれば免れる(同ただし書)。
イ 隣家からの失火による滅失であるから、受寄者Dには滅失につき帰責事由がない。したがって、Dの目的物返還債務は損害賠償義務に転化することなく消滅する。Dは受け取った報酬のうち、いくら返還する必要があるか。受寄者の帰責事由なく寄託契約が終了したときには、その報酬は履行割合による(665条・648条3項)。本問では、安全に保管が終了した19日分の報酬である19万円を受領できると解すべきであり、残り31万円について不当利得返還義務を負う。

五 事務管理・不当利得・不法行為
1事務管理(1)ア 要件(697条)は、①他人の事務を管理すること、②他人のためにする意思があること、③法律上の義務がないこと、④本人の意思及び利益に適合することである。
効果:本人の意思に反しないときは有益費を償還請求することができる(702条1項 反する場合は現存利益のみ(3項))。
制度趣旨は他人の生活への不当な干渉の排除と社会生活における相互扶助の要請との調和を図る点にある。
イ 怪我人の介抱の場合、怪我人に意識があれば、依頼すると考えて、準委任契約(656条)が成立するので、必要費も(650条1項)、損害も(650条3項)請求できる。しかし、怪我人に意識がなければ、契約は結べないので、事務管理を検討する。
ウ Cは法律上の「義務なく」、Bの「ために」、Bの意思に反することなく、Bの事務を管理したといえ、事務管理(697条)が成立する。とすると、Cはタクシー代を702条1項の有益費として請求し得るが、一般に損害とされるクリーニング代まで請求できるか。
管理者には本人に対する損害賠償請求権(650条3項参照)が認められないから、「有益な費用」(702条1項)の範囲は、事務管理の趣旨たる相互扶助の精神から、広く解すべきである。具体的には、事務管理をなす上で通常発生する損害も有益費に含まれる。
本問では、クリーニング代も事務管理をなす上で通常発生する損害といえるので、有益費として請求し得る。
(2)事務管理としてなされた法律行為の効果は本人に帰属しない。管理行為は本人・管理者の対内関係にとどまり、本人・相手方の対外関係とは別個の問題である。このように解しても、表見代理、追認義務、黙示的追認、追認拒絶権の否定などで妥当な解決が図れる。

2不当利得
(1)法律上の原因がないことにつき善意なら703条で現存利益、悪意なら704条で受益、利息、損害。善意の占有者は果実収受権あるが(189条)、悪意の占有者には収受権がなく(190条)、不当利得の返還を請求できる(704条)。制度趣旨は当事者間の公平を図ることにある。
要件は、①受益、②損失、③因果関係、④法律上の原因がないことである。
③因果関係は社会通念上、①受益と②損失との間に因果関係があれば足りる。④法律上の原因がないとは、公平の理念からみて、財産的価値の移動を当事者間において正当なものとする実質的相対的理由がないこと。
①利得がどれくらいかを論じさせる問題はありうる。図で人毎に+-を書いて、法的構成も踏まえ、丁寧に人毎に認定するようにしよう。ただし、通説は給付利得の場合、現物から生じた果実、使用利益、利息は、①受益に含める〔72解説〕。基M78問01
(2)BがAから借りたブルドーザーをCに修理してもらった。Cは無資力のBではなく、Aに不当利得返還請求したい。
ア. Cの修理によりAの受ける利益は,本来,CB間の請負契約に基づくものであるため,請負代金債務の債務者であるBの財産に由来するものである。しかし、Bの無資力によりBに対する請負代金債権の全部又は一部が無価値であるときは,その限度においてAの受けた利益はCの労務に由来することとなる(③充足 H23司出題趣旨)。
イ. ではAの利得には「法律上の原因」がないといえるか。
法律上の原因がないとは、公平の理念からみて、財産的価値の移動を当事者間において正当なものとする実質的相対的理由がないことをいう。もし賃貸人の利得保有が契約全体としてみて有償と認められる場合に請求を認めれば、賃貸人に二重の負担を強いる結果になり酷である。そこで、賃貸借契約を全体としてみて賃貸人が対価関係なしに利益を受けたといえる場合に限り、法律上の原因がないというべきである。
本問では→利得の対価関係があるか検討する。例えば、瑕疵は賃借人が修補する代わりに賃料を安くしていたなど。
(3)BはAから金銭を騙し取り、Cに返済した。AはCに対して不当利得返還請求できるか。
利益と損失の因果関係は社会通念上の因果関係で足り、騙取金による弁済においても認められる。
法律上の原因がないとは、公平の理念からみて、財産的価値の移動を当事者間において正当なものとする実質的相対的理由がないことをいう。債権者が騙取金による弁済であることにつき悪意・重過失の場合には、かかる実質的相対的理由がないといえ、被騙取者との関係では法律上の原因がないといえる。
(4)親権者Aは子Bの土地の売却代金500万円をAのDに対する債務について弁済した。(売却段階では弁済の意思なく、土地の売却は代理権の濫用に当たらないことを前提に)BはDに対して不当利得返還請求(704条)できるか。
ア Dは500万円の弁済により債権の満足を受けており「利益」を受けている。また、Bは500万円をAから受け取っておらず、「損失」があり、両者の間には因果関係も認められる。
イ 弁済受領者が他人の金銭によって弁済されたことにつき悪意・重過失である場合、損失者との関係では利得を保有する実質的理由がなく、「法律上の原因」がないと解する。
本問Dは、AがBの土地の売却代金によって弁済したことを知っているので、「法律上の原因」がない。
ウ 以上より、BはDに対して、500万円の支払いを請求できる。
(5)論M54・H20新試第2問 なお、強迫事例につき〔75〕諾約者から要約者への703条の請求を棄却した。
ア 第三者のためにする契約において、対価関係が無効である場合、諾約者は第三者に支払った金銭を返還請求(703条)できるか。「法律上の原因」のない利得といえるかが問題となる。この点、対価関係は第三者のためにする契約の内容とはならないため、対価関係が欠けていても有効に成立する。とすれば、諾約者の弁済は有効であり、「法律上の原因」はあるといえる。よって、諾約者の金銭返還請求は認められない。
イ また、原因関係が取り消された場合も、原因関係の瑕疵によって既に給付を受けた第三者が影響されるのは妥当でない(根拠として538条を挙げる)。そこで、第三者が自己の債権の弁済として給付を受領したのであれば、第三者に利得を保有する実質的理由があるといえ、利得は「法律上の原因」があるものといえる。
(6)708条 ア 708条によって不当利得返還請求はできないが、所有権は未だ移転していない(90条)以上、物権的請求権は認められるようにも思える。しかし、これでは反社会的行為に関与した者に対し法の救済を拒否するという708条の趣旨を没却する。そこで、物権的請求権についても708条を類推適用し、請求は認められないと解する。
また、物権的請求権が認められなくなった反射的効果として、所有権は受益者に帰属するものと解する。このように解することで、法律関係を安定かつ明確にすることができるからである。
イ 708条本文でいう「給付」は確定的なものでなければならない。不確定のものでも良いとすると、国家が給付を確定的にするために手を貸すことになり、708条の趣旨に反するからである。動産では引渡し、不動産では登記まで必要である。

3不法行為 709条→不法行為一般→714、715、717、719、721、特別法の順でナンバリング整理
(1)総則・709条 ア. 処理手順:①損害の認定、②誰が(請求主体)、③だれに対して、④根拠(条文)、⑤反論
例:Xは治療費についてYに対し709条に基づき損害賠償を請求できるか。
不法行為制度の趣旨は、被害者の救済、損害の公平な分担、将来の不法行為の抑止にある。
要件は①故意過失、②権利利益侵害、③損害の発生、④因果関係が挙げられる。(論文ではこれだけでよい。⑤責任能力と⑥正当防衛等は抗弁として提出する。)
①過失とは損害発生の予見可能性を前提とする結果回避義務違反である。
本件の義務の内容を具体的に特定することが大切である。
結果回避の予見可能性は、結果回避義務を導くための前提となるものであるから、特定の結果回避の措置を動機づけるほどの具体的結果の予見が必要である。(新薬事案では予見義務→予見可能性)
②権利利益の侵害とは違法性の徴表であり、被侵害利益の性質と侵害行為の態様との相関関係によって決せられる。
債権も財産権であり不可侵性を有するから、民法上保護される。よって、債権侵害も「権利…を侵害した」ものとして、一般不法行為責任(709条)が成立し得ると解する。もっとも、不法行為の違法性の有無は被侵害利益と侵害態様との相関関係によって判断する。債権は、その非公示性及び非排他性から、複数債権者による自由競争が許容されており、その被侵害利益は大きくない。そこで、侵害態様が悪質か否かで、不法行為の成立範囲が限定される。
事例:AはBCに二重譲渡し、Cに移転登記した。Aに対する第1譲受人Bの売買目的物引渡請求権の侵害がある。しかし、不法行為の成立を認めれば、177条の対抗要件主義と矛盾する。したがって、不法行為責任は認められない。
③損害とは、不法行為によって生じた財産状態と不法行為がなければあったであろう財産状態との差額である(差額説)。
差額説によれば、損害は損害事実と金銭的評価をともに含むので、ともに因果関係の適用対象となる。
積極的損害(治療費等)、消極的損害(逸失利益等)、精神的損害(慰謝料)が対象となる。論文では、財産的損害と精神的損害に分け、それぞれを抽象的に論じる場合と、治療費など具体的に書いて、積極的損害、消極的損害、精神的損害に分ける場合とがある。基本的に前者でいいと思う。
論文では、③損害の検討で、損害の意義→本件の損害(ぽいもの まだ因果関係の範囲内かどうかは分からない。 どんな損害なのかをしっかりと認定することが大切である)を見る。
④因果関係の検討で、賠償範囲の判断方法(416条類推適用)→賠償範囲に含まれるとし、最後に金銭的評価をする。
例:家がなくなれば社会通念上代わりに住むところが必要になるから、借家住まいまでが相当因果関係の範囲に含まれる(416条1項)。借家の横に迷惑な人が住むことは相当因果関係に含まれない。416条2項によっても、Yは予見不能であろうから、因果関係は否定される。(刑法と同じような処理でいいだろう。)
例:金銭的評価の基準時選択の問題について。金銭債権は額によって定義され、発生時に額が決定されなければならないので、金銭債権の発生時点を基準時とするのが原則である。そうすると不法行為時点が基準時となる。加害者が、不法行為時点において、後の高騰などの特別事情について予見できた場合には、特別損害も請求することができる(416条2項類推適用)
参考:適切な治療が行われていたとしてもAが死亡していた場合、④因果関係が否定される。そこで、②権利利益侵害を生存可能性の利益、延命利益と再構成する。③損害は精神的苦痛である。
イ 失火責任法 失火につきDに重過失がある場合、BはDに対して不法行為に基づく損害賠償を請求できる(失火責任法 民法709条)。では、丁に対して損害賠償を請求するのはだれか。この点、丁は、Aの所有権を侵害したのであるから、所有権者に対して賠償すべきである。そして、所有権は原則として契約時に移転する(意思主義 176条)。本問では売買契約があり丙が所有権者である。以上より、丙は丁に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求できる。
問題文中に「放火」とある場合、放火者は故意であるから、失火責任法は適用されない。問題文中に「失火」とある場合、失火者は過失であるから、失火責任法の検討の余地がある。なお、失火責任法は不法行為において広範な責任を限定するための規定である。契約関係においては当事者に対してのみ責任を負い、広範な責任を負うことはないので、適用されない。
ウ CはDに対して不法行為に基づく損害賠償の要件を充たす(709条)。しかし、Cは乙建物について登記を得ていないため、乙建物の取得をDに対抗できないのではないか。177条の「第三者」の意義が問題となる。この点、177条の「第三者」とは、登記の不存在を主張する正当な利益を有するものをいうところ、不法行為者は含まれない。よって、Cは登記なくして、Dに対して損害賠償を請求できる。
エ 論M71 損害賠償額の予定(420条1項 なお、違約金は賠償額の予定と推定(420条3項))など、責任を限定する特約は、債務不履行責任であれ不法行為責任であれ、当該契約から生じる責任は限定される旨の内容であると考えるのが、当事者の通常の意思に合致する。したがって、どちらにも及ぶ。
しかし、帰責性がない場合にも当事者の一方に責任を負わせるのは、当事者の合理的意思に反する。したがって、帰責性がなくとも責任を肯定するには、その旨の特約が必要となる。責任を負う旨の特約ではなく、負う場合の金額を定めたもの。
オ なお、本問では不法行為責任と契約責任が成立するが(請求権競合)、両者は別個の責任であり、Cはどちらでも任意に選択して請求できると解する。
カ 本問では、事故発生後4年を経過していることから、短期消滅時効により(724条前段)、乙は不法行為に基づく損害賠償を請求できないのではないか。「損害…を知った時」とは法律関係の早期安定という724条の趣旨に鑑み、現実に損害の発生を知った時をいうものと解する。
本問では、事故の時点でAの死亡による損害の発生を知ったと解され、その時点が起算点となる。そして、そこから4年経過しているから、甲が乙の権利行使を故意に妨げる等の事情がない限り、甲の時効援用により不法行為責任の追及は認められない。
(2)不法行為一般 ア. 請求権者
(ア)711条の趣旨は、被害者が死亡した場合に近親者が精神的損害を被るという高度の経験則の下、慰謝料請求権に関する709条の要件について立証責任の軽減を図った規定である。請求権者を限定したり、死亡の場合に限ったりする趣旨ではない。
711条は、被害者が死亡した場合に近親者が精神的損害を被るという高度の経験則の下、慰謝料請求権に関する709条の要件について立証責任の軽減を図った規定であり、生命侵害以外の場合に請求を否定する趣旨ではない。
したがって、例えば被害者が傷害を負い、被害者が生命を害された場合にも比肩すべき程度の精神的苦痛を近親者が被ったときには、近親者は709条・710条に基づき慰謝料を請求できると解する。
また、内縁の配偶者・未認知の子など親や子、配偶者に準ずる者、被害者が死亡した場合にふつう精神的苦痛を被るという経験則の働く者については、711条を類推適用することができる。逆に、近親者でも経験則が妥当しない者には適用されない。
別論証:FはBと同居しており、F自身の扶養利益喪失による損害賠償請求権(709条)を有する。これに対し、Fは内縁の妻であり、相続権はない。また、711条の「配偶者」に内縁の妻は含まれないため、711条を直接適用することはできない。しかし、内縁関係も実質的には婚姻関係と変わりがない以上、内縁の配偶者にも、被害者が死亡した場合に精神的苦痛を被るという経験則が妥当する。そこで、711条を類推適用し、Fも慰謝料請求権を有すると解する。
(イ)会社の経営者が不法行為の被害者となり、会社が入院中も150万円の報酬を支払い、また、経営上の損害を被った、会社は請求できるか。→2つの構成を想起することが大切である。
肩代わり構成:本来であれば直接の被害者が請求できる損害を肩代わりした場合、第三者は直接の被害者に代わって損害賠償請求することができると解する。なぜなら、そのように解しないと、不法行為者が望外の利益を得ることになり、損害の公平な分担という不法行為制度の趣旨に反するからである(422条参照)。役員報酬150万円は肩代わり構成として論ずる。
直接被害構成:加害行為と会社との損害との間に④因果関係は認められないから、原則として会社の損害賠償請求は認められない。ただし、経営者個人に代替性がなく、経済的にも一体といえるときには、④因果関係を肯定する。ウルトラC
イ 過失相殺:過失相殺(722条2項)の趣旨は損害の公平な分担にある。
(ア)道路で遊んでいた乙にも事故に関して過失がある。賠償額について過失相殺(722条2項)が問題となる。
過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に責任を負わせる問題とは趣を異にし、公平の見地から被害者の不注意をいかに考慮するかの問題にすぎない。よって事理弁識能力があれば足りると解する。
本問では、乙は「小学生」であるから、事理を弁識する能力は認められる。損害賠償額について裁判所は、過失相殺○。
問題となる危険の性質に応じて、それを認識することを求めるべきか、ということを判断しなければならない。
(イ)損害の公平な分担という不法行為制度の趣旨及び求償関係の一挙解決という観点から、被害者自身の過失のみならず、被害者本人と身分上・生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失も考慮できると解する。
本問では、甲乙は親子関係にあり、両者は身分上、生活関係上一体をなす関係にあるので、乙の過失は甲側の過失として考慮されるべきである。したがって、損害賠償額について裁判所は、乙の過失を考慮して過失相殺することができる(722条1項)。
本問では、使用者たる被害者Xの被用者乙に過失がある。715条の制度趣旨たる代位責任から、乙の過失を相殺できる。
(ウ)被害者の素因に関しては「過失」では無いため賠償額の減額事由として考慮できるかが問題となる。
素因について被害者に帰責性がない以上、原則として考慮すべきでない。しかし、過失相殺の趣旨たる損害の公平な分担という観点から、被害者のコントロール可能な素因については、例外的に722条2項を類推適用して考慮できると解する。
(エ)Cは、Dの右足の障害が損害の発生・拡大の一因となっており、722条2項により、これを考慮して賠償額を減額すべきであると反論することが考えられる。
身体的特徴は「過失」ではない。また、身体的特徴に関しては、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されている以上、特段の事情のない限り、賠償額の算定に当たっては考慮すべきでない。
しかし、722条2項の趣旨たる損害の公平な分担という観点から、被害者の身体的特徴が損害の発生・拡大に寄与し、それが一般的なものといえない場合には、同条項を類推適用して、これを考慮できると解する。
本問では、Dの右足の障害は、疾患に当たり一般的なものとはえいない。そして、これが損害の拡大に寄与している。したがって、同項を類推適用して、賠償額を減額することができる。
ウ. 損益相殺 被害者が損害を被った原因と同一の原因によって利益も得た場合、その利益を相殺する。
後発的事情(心臓まひによる死亡)後の逸失利益と介護費用の減額(損益相殺)を主張できない。(I:労働能力喪失をどのように金銭的評価するか)不法行為時に請求額は確定しており、後発的事情という偶然の事情によりこれが左右されるのは妥当ではないからである。
エ. 相続 財産的損害の賠償請求権については相続の対象になる。
被害者が即死したか否かに拘わらず、死亡による財産的損害の賠償請求権は相続される。確かに即死した場合、被害者に損害賠償請求権が発生することはなく、よって相続もできないとも思えるが、このような法的擬制はよくあることであり、許されるべきである。また、逸失利益が賠償額になり、賠償額の立証が容易となるから相続性を肯定すべきである。
精神的損害に基づく慰謝料請求権も相続できると解する。結局は単純な金銭債権であるし、生存中に支払われた場合との均衡を図る必要もあるからである。
「妻乙は甲に対していかなる請求をすることができるか。」のように、不法行為と相続が問題になる場合には、慰謝料請求権の相続性が常に問題になる。
扶養請求権の侵害と、相続による逸失利益の請求は両取りできないことに注意する(多くの場合前者は後者に包括される)。共同相続の場合は、固有損害(扶養請求権の侵害)を遺産から引いてから、残りを相続人間で分割する。
(3)714条 ア. 責任能力(712条)はだいたい12歳くらい。中学生なら肯定してよいが、11歳なら微妙。場合分けするべきである。論文では10歳以下なら責任無能力の抗弁が成立し、請求は認められない。ここで間違えると、714条との関係で致命的なミスをしてしまうので、十分に注意する。
714条の要件は、①行為者が責任能力以外の不法行為要件を満たすこと、②監督義務者(1項)、代理監督者(2項)、義務履行又は因果関係がないことの立証がないこと(ただし書)である。
イ 加害者が未成年者かつ責任能力を有する場合(約12歳ないし19歳)、監督義務者は714条の責任は負わない。
しかし、714条は責任能力がない者の監督義務者について過失を推定したにすぎず、加害者に責任能力がある場合に、監護義務者の不法行為責任を否定するものではない。
そこで、監督義務違反と損害との間に相当因果関係が認められる限り、不法行為責任を肯定し得る。
親権者Yは未成年者Aの監護者として、監護義務を負っている(820条)。Yが適切な指導を怠り校則違反たるバイク登校を黙認していたから今回の事故が起こったといえる。Yの監督義務違反があり、損害との間に因果関係もある。
以上より、YはXに対し不法行為責任(709条、710条)を負うので、Xの請求は認められる。
(4)715条 ア. 715条の責任は、選任監督についての過失の挙証責任を転換している中間責任である。また、被用者の不法行為責任を肩代わりするものであり、代位責任でもある。
被用者に対する不法行為に基づく損害賠償請求権と、使用者責任に基づく損害賠償請求権は、不真正連帯債務の関係にある。
要件は、①被用者自身が不法行為の要件を満たすこと、②使用者、③事業執行性である。④監督の履行(715条ただし書)は反論(抗弁)で述べる。
イ X及びZは②使用者といえるか。715条の趣旨は他人を利用して利益を得る者はその他人によって生じた損害も負担すべしという報償責任原理にある。そこで、実質的な指揮監督権限が認められれば使用者に当たると解する。
例:派遣会社X・派遣先の企業Zはともに派遣先の従業員Yとの間に実質的な指揮監督権限が認められる。したがって、X及びZは使用者に当たる。
例:弟に迎えにこさせた上、同乗して自宅に戻る途中、運転経験の長いYが助手席に座って、運転免許取得後半年くらいで運転経験の浅いAに気を配り、事故発生の直前にもAに「ゴー」と合図して発進の指示をした。一時的にせよ指揮監督下にあった。
ウ 本問Aの行為は就業時間中のものではない。そこで、③事業執行性の有無が問題となる。(そもそも事業執行中なら簡単に当てはめるだけ)
715条の趣旨は、他人を利用して利益を得る者は、そこから生じる損害も負担すべしという報償責任原理にあり、使用者はその事業の客観的活動範囲について責任を負うべきである。そこで、被用者の職務の範囲は、内部関係・主観的意図にとらわれず、客観的に行為の外形を標準に判断する(外形標準説)。
(ア)取引的不法行為において715条は被害者の信頼保護を目的とするものである。したがって、取引的不法行為において、被害者に適法な職務行為でないことにつき悪意又は重過失ある場合には、使用者責任を負わないと解する。(これは⑤悪意重過失の抗弁で書けばよく、要件をすべて検討した後でもいい。)
重過失とは、わずかな注意を払いさえすれば、職務範囲外と知ることができたのに、漫然職務権限内の行為と信じたことにより、注意義務に著しく違反することをいう。
実務問題:不審に思ったのに確認しなかったことは、過失の評価根拠事実である。
実務問題:性質は詳細に論じる、請求原因事実か抗弁事実か、権利根拠・障害・消滅・阻止事実か、評価根拠・障害事実か、は述べる。
(イ)外形標準説は事実的不法行為についても妥当する。ただし、外形上事業執行性が充たされない場合、下の支配領域説で判断するか、又は、実質的には事業執行中といえるか、外形標準説、の2本柱でいく。
715条の趣旨は、他人を使用して利益を得る者はそこから生じる損害も負担すべきという報償責任原理にある。そこで、純然たる事業行為には限られない。もっとも、およそ使用者のコントロールを及ぼし得ない場合にまで使用者に責任を負わせるのは、損害の公平な負担という不法行為制度の趣旨に反する。そこで、「事業の執行について」とは、使用者の支配領域でなされた行為をいうと解する。
(ウ)喧嘩の事案:Cは、Aを殴り倒してけがを負わせている。これは喧嘩の際の出来事であり、家具店の業務とは無関係とも思える。しかし、喧嘩は、Cが職務中に不注意でAにけがを負わせたことを契機としている。そして、これに引き続き行われた喧嘩によって、Aに新たなけがが生じたのであるから、喧嘩は、事業の執行に密接に関連する行為といえる。したがって、CがAを殴り倒してけがを負わせたことは、使用者Bの支配領域でなされた行為といえる。
例:商談後の3日後に暴行→密接関連性が認められない。例:商談の場で暴行したが、もともと仲が悪く、個人的な怨恨から暴行に及んだ。→契機性がない。
エ. 被用者Bの過失の有無につき、失火責任法が適用されると解する。なぜなら、同法は不法行為の責任を限定する規定であるが、実際の行為者は被用者であり、ここに適用するのが趣旨に合致するからである。本問では、ガスの操作は、一般家庭でも行われる単純作業であり、操作を誤る点で重過失があるといえる。
オ.  効果
使用者と被用者は不真正連帯債務を負う。被害者救済の見地から、債務満足以外の事由について、相対効とするためである。
715条3項により請求できる。ただし、715条は被用者の不法行為責任を肩代わりするものであり、代位責任を定めたものであるから、被用者の行為の危険が現実化したときにすべて被用者に負担させることは信義則に反する。そこで、求償権は損害の公平な分担という見地から一定限度に制限されると考える。
被用者からの逆求償はどちらの説でもいい。715条が代位責任を定めた規定であること、及び、被用者が払おうとせず被害者救済を失することを防止することから、逆求償を認めるべきである。
(5)717条 ア. 要件は、①土地の工作物、②瑕疵、③損害、④因果関係である。制度趣旨は危険責任原理にある。
⑤占有者の免責事由は、反論(抗弁)として検討すればいいだろう。
①土地の工作物とは、土地に接着して人工的に造り出されたあらゆる設備をいう。
②工作物の瑕疵とは、その種の工作物として通常備えるべき安全な性状を欠いていることをいう。
まず占有者(本文)→占有者が「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき」は所有者が責任を負う(ただし書)。
イ. CはAに対して、工作物責任(717条1項本文)を理由に損害賠償を請求することが考えられる。
まず、本問のビル修理作業の足場等は、土地に接着して人工的に造り出された設備であるから、①土地の工作物といえる。
ビルの修理作業の足場等の設置には、落下物等で通行人に危害を加えないための設備を備えることが必要と解されるから、かかる設備を欠く場合は、通常備えるべき安全性を欠いているといえる。本問では、かかる設備を欠いている。したがって、②瑕疵が認められる。③④もある。
なお、Aは占有者かつ所有者であるので、過失の有無は問わない。
したがって、CはAに対して、工作物責任に基づき損害賠償を請求することができる。
ウ. CはAに対して、占有者の工作物責任(717条1項)を根拠に損害賠償を請求し得るか。
まず、マンションは、土地に接着して人工的に造り出された設備であるので、①土地の工作物に当たる。ベランダの鉄柵の留め金が弛緩しているので、マンションとして通常備えるべき安全性を欠いていたといえる。したがって、マンションの保存に②瑕疵があるといえる。そして、かかる瑕疵「によって」、ベランダからBがCの屋根に転落したことで、Cに屋根の修理代30万円の「損害」が生じている(③④充足)。
エ. Aは売買契約の締結により、既にマンションの所有権を喪失している(176条参照)ので、「所有者」には当たらないと解する。もっとも、本問では事故当時、マンションの登記はAにあった。工作部責任において、所有権の喪失を対抗するのに、その旨の登記が必要かどうか問題となる。この点、所有者の工作物責任の趣旨は危険責任にあり、177条が本来予定する排他的な物権間の優劣を争う場面では無い。よって、177条の適用はないと解する。したがって、Aは登記なくして所有権の喪失をCに対抗できるので、Cの請求は認められない。
(6)718条 ア 要件は、①動物の占有者(1項)、管理者(2項)、②動物が他人に損害を加えたこと(以上718条本文)、③注意をもって管理をしなかったこと(ただし書)である。
イ. DはBに対して、718条に基づき、損害賠償を請求することが考えられる。
Bは1項の「占有者」又は2項の「管理する者」に当たるか。
718条の責任は危険責任であるところ、占有補助者には独立の危険の支配が認められないので、「占有者」「管理する者」には当たらない。本問では、Bは犬の運動を命じられたにすぎず、占有補助者にすぎない。
したがって、Bは「占有者」「管理する者」に該当せず、DのBに対する請求は認められない。(なおBに709条○)
ウ. Bは占有補助者であるから、危険を支配している飼い主Aが直接占有者であるといえる。
したがって、Aが自己の免責事由(718条1項ただし書)を立証しない限り、DはAに対して、718条1項に基づき損害賠償を請求し得る。
(7)719条 ア 要件・効果に関しては、①共同不法行為者各自が不法行為の要件を満たす必要があるか、②「共同」という要件の意義、③「連帯して」の効果の意義がそれぞれ問題となる。
イ A説:共同不法行為が成立するには、各人の行為が独立に不法行為の要件を備えなければならない。要件は、①各不法行為者の成立要件、②共同関係である。
B説:①各人の行為と損害との間に因果関係を要求すると、各人に709条の責任が生じることになり、共同不法行為の規定を置いた意義が半減する。また、被害者救済という不法行為制度の趣旨から、要件を緩和すべきである。そこで、単独では結果が発生しない場合でも、行為者の共同行為と損害との間に因果関係があれば足りると解する。
②各行為者間に要求される共同関係については、客観的に関連共同していれば足りる。「共謀」等の文言がないため主観的要素は不要である。条文にない要件を付加することで被害者の救済がかえって困難になるのは、不法行為制度の趣旨に反するからである。
③効果:被害者救済という観点から、各共同不法行為者は不真正連帯債務を負う。
一人が弁済した場合に求償が可能か。719条が成立した場合、客観的共同関係が認められ、各人の負担部分を観念しうる。そこで、当事者間の損害の公平な分担という不法行為制度の趣旨から、求償を認めるべきである。
B説 当てはめ:本問では、甲乙両者の行為が合わさって初めて損害が生じているので、因果関係があるといえる。また、故意・過失、権利利益侵害も認められる。
ウ 関係者間の寄与度が損害額に影響を与えない〔95 相対的過失割合 受験新報08/14〕。仮に共同不法行為者が賠償すべき損害額を限定すれば、連帯関係を免除することになり、共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償額を受けられることとしている719条に反し、被害者救済を図る同条の趣旨を没却するからである。又は個人責任主義。
例外として、全員の過失割合が明らかである場合は、絶対的過失相殺による。他人の負担を転嫁させることになるから。
エ.  使用者責任と求償関係…715条が代位責任を定めていることから、被用者の寄与度=使用者の寄与度と解する。
使用者が全額賠償した場合、共同不法行為者に対する求償が認められる。代位責任はあくまで被用者の負担割合についてのみ負う責任だからである。また、使用者が被用者に求償して、被用者が他の共同不法行為者に求償することは、二度手間だからである。
使用者が複数いる場合、その使用者らの責任割合に従い求償できる(被用者は考慮しない 基M2-128)
(10)特則 ア. 自動車事故については、自動車損害賠償法3条が定めている。
同法3条本文によれば、自動車の運行により他人に損害を与えたときは、損害賠償責任が生ずる。ただし、無過失など免責事由を立証すれば責任を免れる(3条ただし書)。このように、立証責任の転換により被害者救済が図られている。
要件は、①自己のために自動車を運行の用に供すること、②生命又は身体(のみ)の侵害、③損害、④①と③の因果関係を証明すれば足りる。故意・過失は立証不要である。
イ. 製造物責任法は、「欠陥」という客観的要件を求めており(3条)、請求権の発生に故意過失は不要である。
要件は①製造物業者等(2条3号)、②製造物の欠陥、③損害、④因果関係となる。もっとも、4条の免責事由を立証した場合には責任を免れる。
例:Cは、①製造物業者のAの製造した部品の瑕疵と④因果関係のある③損害を被っており、瑕疵は②欠陥といえる。製造物責任法に基づく責任を追及できる(同3条本文)。

六 債権の履行確保
1責任財産の保全
(1)423条 ア 債権者代位権(423条)及び、詐害行為取消権(424条)はともに、債務者の「財産管理自由の原則」の例外であり、その趣旨は、責任財産の保全・強制執行の準備手続としての機能にある。
423条の要件は、①債権者が自己の債権を保全する必要があること(1項)、②債務者が自ら権利行使しないこと、③被保全債権が弁済期に達していること(2項)をいう。
①の帰結として、被保全債権は原則として金銭債権でなければならず、また、債務者は無資力であることが必要である。③の例外として、裁判上の代位(2項本文)、保存行為(2項ただし書)がある。
行使上の一身専属権は、代位権の客体となることができない(1項ただし書)。裁判外でも行使できる。債権者が自己の名において、債務者の権利を行使するものである。
イ 423.424共通 被代位債権が物の引渡し又は金銭給付である場合、債権者は代位権の行使として相手方から直接自己に引渡すように請求することができる。なぜなら、これを認めないと、債権者が受け取らないときに不都合であるし、債務者が金銭や物を費消するおそれもあるからである。この場合、債権者は債務者に対する不当利得返還債務と、被保全債権を相殺することができ、結果、代位債権者が優先弁済を受けることになる。
これに対し、自己に対する不動産の移転登記請求はすることができない。これは債務者の意思に反してでも可能だからである。
ウ(ア)債権者代位権は、責任財産の保全という目的で用いることから、原則として、被代位債権は金銭債権でなければならない。もっとも、条文上も金銭債権に限定していないし(425条参照)、転用を認める社会的必要性もある。そこで、債務者の権利行使により、自己の債権が保全される関係にあるときには、特定債権を保全するために債権者代位権を行使することができる。
(イ)このとき無資力要件は不要である。なぜなら、かかる権利の保全と債務者の資力とは何ら関係がないからである。(債権者の権利が金銭債権の場合でも無資力は不要〔12〕)
(2)424条 ア. 詐害行為取消権は、詐害行為を取り消し、かつ、逸出した財産の返還を請求する権利である。そしてその効果は、財産の返還を請求するのに必要な範囲で、債権者と相手方に対してのみ及ぶ相対効である。
要件は、①被保全債権が金銭債権であること、②被保全債権が詐害行為前に成立したこと、③債権者を害する(債務者の無資力)、財産権を目的とする法律行為、④債務者と取得者に詐害意思があること、である。
イ. Aは詐害行為取消権(424条1項本文)を行使できるか、特定物債権を被保全債権として詐害行為取消権を行使することができるか。
詐害行為取消権の趣旨は債務者の責任財産保全にある(425条)ため、①被保全債権は金銭債権でなければならない。したがって、特定物債権を被保全債権とする詐害行為取消権の行使は認められない。
もっとも、特定物債権も究極においては、損害賠償債権に変じるものである。そこで、目的物の処分によって債務者が無資力になった場合には、①損害賠償債権保全のために取消権の行使が認められると解する。なお、177条の対抗要件主義を没却するとの批判があるが、177条と424条は制度趣旨・要件を異にするから、不当な結論ともいえない。
このとき、取消権者は一般債権者であるから、不動産については直接自己への移転登記及び引渡しを請求できない。本問では、Bの下に返還するよう請求できるにとどまる。
ウ. ②被保全債権は詐害行為前に成立していることが必要である。ある行為によって債務者の責任財産が減少したとしても、その減少した財産を前提に債権を取得した者は、その行為によって害されたとはいえないからである。
特定物債権の事例では、損害賠償請求権に転化する前の特定物債権が詐害行為前に成立していれば十分である。なぜなら、特定物債権も究極には損害賠償請求権に転化するものであり、債務者の資力に関心があるからである。
詐害行為前に成立した債権であれば、詐害行為後にその債権を譲り受けた者も取消権を行使できる。
 詐害行為前の債権について、詐害行為後に準消費貸借契約を締結した債権者も、取消権を有する。旧債権と新債権は同一性を有するからである。
エ. ③詐害行為とは、財産権を目的とする法律行為で、債務者が無資力(債務超過)となる行為である。
不動産を相当価格で売却する行為も、消費しやすい金銭にかえることだから、詐害行為に当たる。
弁済は債務者の総財産を減少させないので、原則として詐害行為に当たらない。
代物弁済が不相当な価格でなされた場合、詐害行為に当たることは問題ない。また、代物弁済が相当価格でなされた場合、債務者の総財産の減少はないとしても、そもそも相当価格かどうかの判定自体困難である。さらに、代物弁済が本来の履行行為でない。そこで、原則として詐害行為となると解する。
相続放棄は身分行為であるから、当事者の意思を尊重すべく、詐害行為には当たらない。
遺産分割協議は、財産権を目的とする法律行為であり、対象になり得る。
離婚に伴う財産分与は、768条3項の趣旨(清算・扶養・慰謝料)に反して不相当に過大である場合、財産分与に仮託してなされた財産処分であり、詐害行為に当たる。
詐害性(債務者の無資力)は詐害行為時、及び取消権行使時に必要である。
オ. ④詐害意思とは、債権者を害すること(当該法律行為によって債務超過となること)を知っていればよく、害することを意図したり欲したりする必要はない。
④詐害意思は債務者及び相手方(受益者や転得者の一人でも有していればいい)の双方に必要である。
カ. 効果:(ア)取消債権者が金銭を受領した場合、他の債権者に分配する義務はない。もし分配義務を認めると、受益者が債権者の一人だった場合に、按分額の返還を拒否できることになり、いち早く弁済を受けることになって425条の趣旨に反する。
(イ)それでは、Aはどの範囲で、いかなる請求をできるか。
取消権の趣旨は責任財産の保全にあるので、その範囲は債権額に限定されるのが原則である(一部取消)。ただし、目的物が不可分の場合には、詐害行為全体を取り消した上、原状回復請求をなし得る(全部取消)と解する。本問の代物弁済の客体である不動産は不可分であるから、全体につき、登記移転と引渡しを請求できる。
詐害行為取消権は「すべての債権者の利益のために」行使すべきものである(425条)から、(不動産のときのみ 内田328 基M152)直接自己への移転登記及び引渡しを請求できず、債務者の下に返還するよう請求できるにとどまる。
(ウ)原則として現物返還である。費消しにくい現物を返還するほうが、424条の趣旨たる責任財産の保全(425条参照)に資するからである。例外的に、現物返還ができない場合は価額賠償となる(例1:善意の転得者がいるときに受益者に請求するとき、相対効の帰結。例2:滅失した場合。例3:代物弁済によって抵当権登記が抹消された場合には、不相当に過大、望外の利である。相対効により登記が復活することもないので、価額賠償によるしかない。)
(エ)債務者悪意、受益者が善意、転得者が悪意の場合、転得者に対して詐害行為の取消しを主張できる。このとき、詐害行為は相対効を有するのみであるから、受益者が転得者から追奪担保責任の追及を受けることはない。

2 人的担保 
多数当事者の債権債務関係として、民法は次の4つ、(1)分割債権債務、(2)不可分債権債務、(3)連帯債務、(4)保証債務を大別している(なお、連帯保証は458条で連帯債務の規定を準用している)。
多数当事者の債権債務関係において重要な視点は3つ、①対外的効力、②絶対効・相対効の問題、③内部的求償関係である。
(1)ア. 427条は分割債権債務関係の原則について定める。個人主義思想にマッチし、法律関係が簡明になるという長所がある。一人に生じた事由についてはすべて相対効しか持たない。
しかし、債権者に不利で、債権の効力が弱められてしまうため、制限・修正が加えられている。
イ. Dは、AでなくB又はCに請求できないか。数人が共同で物を購入した場合の代金債務の性質が問題となる。
この点、本件代金債権が金銭債務であり、金銭債務は性質上可分であるから、分割債務の原則(427条)により、分割債務になると解する。したがって、DはAに対してのみ請求でき、BCにAの未払いを請求できない。
ウ. ただ、Dは残額の支払いがない場合、部屋の明渡しを拒むことができる(同時履行の抗弁権 533条)。不動産の引渡は性質上不可分の債務であり、かつ、未履行部分は3分の1と契約全体にとって重要だからである。
(2)不可分債権において絶対効を生じる事由(428条、429条2項)は、①「請求」及びそれに基づく履行遅滞・時効中断、②履行等である(428条後段、429条1項)。不可分債務は、債権を満足させるものについて絶対効を有する(430条)。
(3)ア. 連帯債務はあくまで、数個の独立した債務である(433条参照)。しかし、各債務者間に結合関係が存在し、多くの事由に絶対効が生じる(ただし、他人のそう(436.2)めん(437)じこう(439)ふたん)。
イ. 事前の通知を怠った場合、債権者に対抗できる事由を対抗される(443条1項)。事後の通知を怠った場合、事前の通知をして〔22 2項は1項を前提とする〕善意で免責を得た者は、自己の免責を有効とみなすことができる。
ウ. 不真正連帯債務とは、対外的関係は連帯債務と同様であるが、債務者間に緊密な結合関係がないため、相対効が多く、求償関係も当然には生じないという点で連帯債務と異なる多数当事者の債務関係である。
債権者を満足させるもの以外は原則として相対的効力を生じる。
(4)保証債務
ア 法的性質 ①別個独立性、②同一内容性、③付従性、④随伴性、⑤補充性(連帯保証はない 454条)
イ 保証人の抗弁権
催告の抗弁(452条本文)、検索の抗弁(主債務者に弁済の資力があり、執行の容易なことを証明して、まず主たる債務者の財産について執行すべきと主張すること 453条)がある。
参考:Cは「連帯」保証人であるから、Aの履行請求を拒むため、催告・検索の抗弁権(452条、453条)を主張することはできない(454条)。
I:契約当事者でないCが、Bの有する同時履行の抗弁権を援用できるか。R:保証債務は主債務の履行を目的とし、主債務を履行する必要がない場合にまで保証債務を履行させる必要はない(付従性 448条参照)。そこで、保証人は主債務者の抗弁を援用できると解する。
保証人にすぎないCは、請負契約の当事者の解除権の行使について干渉すべきではないから、解除権の行使は認められない。よって、Cは契約を解除して、債務の履行を拒むことはできない。(既にした解除権の行使は対抗できる。)
保証人は、主たる債務者が債権者に対して有する反対債権による相殺を対抗できる(457条2項)。これは反対債権の相殺が認められるのではなく、反対債権の範囲で弁済を拒み得るものであると解する。保証債務の付従性からは、履行拒絶の抗弁権で十分であり、それ以上に他人の権利関係への関与を認めるべきではないからである。
ウ 絶対効・相対効 主債務者に生じた事由は、すべて保証人に及ぶ(付従性)。
 しかし、主たる債務者が時効の完成後に時効の利益を放棄しても、その効果は保証人には及ばない。
保証人に生じた事由は、主たる債務を消滅させる行為のほかは、主たる債務者に影響を及ぼさない(連帯保証は例外、458条)。
エ 保証人に負担部分というものはない。保証人が債務者に弁済したときには主たる債務者に求償権を有する(459条1項)。
要件は、①自己の支出により主債務者を免責させること(459条1項)、②これが制限を受けないこと(463条1項・443条)。
事前の通知(463条1項・443条1項)と事後の通知(2項)②´保証人が弁済する場合、すべての保証人は事前・事後の通知が必要。②´´主たる債務者が弁済する場合、委託した保証人に対してのみ事後の通知が必要。
例:債務者乙に事前通知(463条、443条)をした場合、丙は乙に求償できる。(注:通知を忘れないように!)
事後求償の範囲:委託を受けた者(459条2項、442条2項)、委託を受けない者(462条)を区別する。
委託を受けた保証人に限り事前求償権が認められる(460条)。その法的性質は委任事務処理者の費用前払請求権(649条)。
オ 物上保証人に事前求償権はない。債務の弁済を受任していないし、求償権の存在・範囲が不明確であるからである(H24予)。
論M98 物上保証人は、保証人と異なり、債務なき責任を負い、責任が特定財産である。重い責任負わず補充性はない。主債務の時効の援用権者たる当事者(145条)である。あくまで主債務者の債権であり、相殺はできる(457条2項類推 趣旨は求償関係の簡明)。担保確保の趣旨が妥当し、債務はないので時効中断の必要があり、時効中断は絶対効(457条1項類推)。
カ 特殊 (ア)特定物売買の場合、目的物を引き渡せるのは債務者のみであり、保証人が履行することはできない。この場合、保証債務は実現可能性を欠き、無効とも思える。しかし、保証債務の趣旨は、債務を担保することで債権者を保護することにあるから保証人の通常の意思は、債務が履行されないとしても債権者に損失を与えないということにある。
そこで、主債務が特定物の引渡債務の場合には、保証人は、債務不履行に基づく損害賠償債務を保証したものと解する。
(イ)保証の趣旨は、債務者が負担する一切の債務を保証し、債権者に損失を被らせないという点にある。
したがって、保証債務は、原状回復義務にも及ぶと解する。

3物的担保
(1)抵当権
ア 目的物 370条
(ア)抵当権は非占有担保権であり、目的不動産から生じる果実については、原則として抵当権の効力が及ばない。ただし、被担保債権について不履行があった場合、その後に目的不動産から生じた果実について効力が及ぶ(371条)。
(イ)当該機械は、建物の効用を高める独立物であり、建物の従物(87条)に当たる。抵当権の効力はこの機械にも及ぶか。「付加して一体となっている物」(370条)の意義が問題となる。
抵当権はその目的物の占有を設定者の下にとどめながらその交換価値を把握する権利であり、かかる価値権としての抵当権の重要性に鑑みれば、付加一体物とは抵当目的物の交換価値を高める価値的に一体となったものをいうと解する。従物は主物の経済的効用を高める価値的に一体となったものといえ、(抵当権設定の前後を問わず)370条の付加一体物に含まれると解する。
(ウ)従物の対抗要件は主物の対抗要件によって公示されるから、登記済みの甲の抵当権は、乙の譲渡担保権に優先する(177条)。また、甲の抵当権は登記により公示されている以上、乙は抵当権の負担のない譲渡担保権を即時取得(192条)できない。
以上より、甲の抵当権の効力は、当該機械に優先的に及んでいる。
(エ)従物該当性 庭石は「時価200万円」もする高価なものであり、「物の所有者」であるAが、土地建物の「常用に供するため」「附属」させたものであり、従物(87条1項)に当たる。
庭石は、甲の「所有者」であるBが、甲の「常用に供するため」「附属させた」(87条1項)物なので、「従物」に当たる。
(オ)従たる権利 確かに370条は「物」と定めており、権利について370条を直接適用することはできない。
しかし、抵当権は、その目的物の占有を設定者の下にとどめながらその交換価値を把握する権利であり、かかる価値権としての抵当権の重要性に鑑みれば、付加一体物とは抵当目的物の交換価値を高める価値的に一体となったものを言うと解する。
そして、従たる権利は権利であっても、抵当目的物と価値的に一体をなし、その交換価値を高めるものといえる。
したがって、370条を類推適用して、抵当権設定の前後を問わず、抵当権の効力は従たる権利にも及ぶものと解する。
もっとも、賃借権の承継には賃貸人たるAの承諾(612条1項)又は承諾に代わる許可(借地借家法20条)が必要である。
(カ)伐木 第三者との関係:分離物であっても、伐木は土地と価値的に一体をなし、その交換価値を高めるものといえ、付加一体物といえる。しかし、取引安全の見地からすれば、抵当権は登記を対抗要件とする権利であって、登記の公示の及ばない範囲にある分離物まで抵当権の効力を対抗できるとすべきではない。そこで、分離物が公示の衣に包まれている限りにおいてのみ、抵当権の効力を第三者に対抗できると解するべきである。
抵当権設定者、債務者との関係では、抵当権の効力はどこまでも及ぶ。
イ 目的物 物上代位
(ア)目的物の交換価値が実現した場合、その価値代表物に対して抵当権の効力を及ぼすことができる(372条、304条)。
このとき、抵当権者は「払渡し又は引渡しの前に」価値代表物を差し押さえなければならない(304条1項ただし書)。この趣旨は、物上代位の目的となる債権の債務者(第三債務者)を二重弁済の危険から保護する点にある。
物上代位は抵当権者のための制度であるから、差押えは抵当権者自らするべきである。
(イ)客体 売却代金○ 賃料○(371条) 転貸借料× 火災保険金○ 請負代金債権は材料や労力等の対価を含み原則として×。請負代金債権が割合的にみて売買代金債権と同視し得るような場合は例外的に○。
ウ 目的物 物上代位の優劣
(ア)目的債権について一般債権者が差押えをしたにすぎない場合には、第三債務者に二重弁済の危険は生じない以上、先取特権者は当該債権に対し物上代位できる。
(イ)賃料債権がEに譲渡され、対抗要件が具備されているが、抵当権に基づく物上代位ができるか。「払渡し又は引渡し」(372条・304条1項ただし書)に債権譲渡が含まれるかが問題となる。
「差押え」が要求される趣旨は、二重弁済を強いられる危険性のある第三債務者を保護する点にある。
抵当権登記がある場合、物上代位は予測できる。債権譲渡がなされた後に物上代位権の行使を認めても、弁済前であれば第三債務者に二重弁済の危険は生じない。そこで、「払渡し又は引渡し」に債権譲渡は含まれないと解するべきである。
したがって、債権譲渡前に登記を経由した抵当権者は、目的債権譲渡・対抗要件具備後であっても、自ら債権を差し押さえて物上代位権を行使できると解する。
(ウ)抵当権者の物上代位による差押えは登記によって既に優先弁済権が公示されている。とすれば、抵当権設定登記「後」の債権取得者との関係では、相殺の担保的機能が害されるとはいえない。したがって、抵当権者が物上代位権を行使して差押えをすれば、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の「後に」取得した債権を自働債権とする相殺を対抗できない。
敷金が賃借人の債務の担保として当然に賃料債権に充当される性質を有することから、賃料債権の敷金の充当による消滅は、常に物上代位に優先する。
(エ)譲渡担保と債権譲渡の優劣について判例はないが、占有改定を含む引渡しにより公示がなされていると考え、抵当権と同じように対抗要件の先後で決すべきではないか。
(オ)強制執行手続の法的安定性の要請から、転付命令後の差押えは許されない。
エ 法定地上権 ①更地に抵当権設定後、建物を建てた場合× ②①で当事者間の合意があっても× ③更地に抵当権設定後、建物が建築され、さらに土地について第2順位の抵当権が設定された場合、第2順位の抵当権が実行されたとき× ④建物が存在し、保存登記がなされていない場合でも○ ⑤更地に抵当権設定後、建物を建てて建物に抵当権を設定し、建物の抵当権が実行された場合○もっとも、土地の買受人に対抗できない。 ⑥抵当権設定時に存在した建物が滅失し、再築した場合○ ⑦共同抵当において建物が滅失した後、新建物が再築された場合× ⑧抵当権設定時は同一人に属していたが、設定後に所有者が別人になった場合○ ⑨土地と建物の所有者が異なる場合に、土地に抵当権が設定された後、土地と建物の所有権が同一人に帰属するに至った場合× ⑩⑨で土地に2番抵当権を設定した場合× ⑪土地と建物の所有者が異なる場合に建物に抵当権が設定された後、土地と建物の所有権が同一人に帰属するに至った場合× ⑫⑪で建物に2番抵当権を設定した場合○ ⑬土地に甲抵当権が設定されたときには同一人に帰属していなかったが、土地に乙抵当権が設定された後に同一人に帰属するに至った場合、甲抵当権が消滅したとき、乙抵当権が実行されると○ ⑭共同抵当で、一方又は双方が実行された場合○ ⑮土地共有の場合× ⑯建物共有の場合○
抵当権登記設定「後」の賃借権は、抵当権者の承諾を得て、その旨を登記しない限り、競落人に対抗できない(387条)。→明渡し猶予制度(395条)で保護を図る。
オ 抵当権侵害の効果 ①物権的請求権(明渡請求など)、②損害賠償請求権(709条)、③期限の利益喪失(137条2号)、④増担保請求(1条2項)、⑤明渡し請求の代位行使 
(ア)〔88〕抵当不動産を占有する不法行為者に対しては、抵当権に基づく物権的請求権を行使することができる。不法行為者の存在が目的物の交換価値を低下させ、抵当権を侵害しているといえるからである。
論M28:担保目的物が滅失709条 目的物の交換価値を把握→交換価値が被担保債権を下回ったときに初めて損害という説。
他例:抵当権も物権であり、侵害された場合には、物権的請求権が認められると解する。庭石βを甲不動産から持ち出そうとしたときには、抵当権に基づく妨害予防請求権により、βの搬出を禁止することができる(妨害予防請求)。
(イ)〔88〕抵当権は非占有担保であるから、所有権者から占有権原の設定を受けて占有する者に対しては、原則として抵当権者は妨害排除請求をすることはできない。
もっとも、所有者は設定者として抵当不動産を適切に管理維持することが予定されていることから、①占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、②その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられているときには、妨害排除請求をなし得ると解する。
また、妨害排除の実効性確保のため、抵当不動産の所有者によって目的物を適切に管理維持することが期待できないときには、直接自己への明渡しを求め得る(管理占有)。
(ウ)709条は被担保債権の弁済期以降である。(H22?新司)
(2)質権
ア. 質権の本質は、目的物の占有を債権者に移転する点にある。留置的効力、優先弁済的効力がある。付従性、随伴性、不可分性(350、296)、物上代位性(350、304)を備えている。
動産質権を即時取得(192)する場合がある。質権設定契約は要物契約である(344)。第三者に対する対抗要件は、目的物の占有の継続である(352)。第三者の意義につき論M99例2
弁済期到来前の流質契約は禁止される(349 強行規定)。質物が第三者に奪われた場合、占有回収の訴えによるほかない(353、200)。債務者、設定者に対しては、質権に基づく返還請求が認められる。
設定者の承諾なしに質物を使用等できず、これに違反した場合、債務者は質権の消滅を請求できる(350、298.3)。
不動産質権者は目的物を使用収益できる(356)。権利質権者は質権の目的たる債権を直接取り立てることができる(366.1)。
イ. 債権者Cが質物を任意に設定者に返還した場合、Cは質権を失うか。設定者による質物の占有を禁じた345条との関係で問題となる。345条は質権設定の段階にのみ適用され、成立後の占有継続については352条の対抗要件問題となるにすぎず、占有喪失によっても質権自体が消滅することはないと解する。以上より、Aに茶器を返還しても、Cは質権を失わない。
ウ. Bの承諾なく、AからCに茶器の転質がなされている(責任転質 348条)。転質の被担保債権額(100万円)が原質権のそれ(50万円)を超過しているが、Cが超過額についても質権の実行により優先弁済を受け得るか。責任転質の法的性質と関連して問題となる。
責任転質は、質物そのものを再び質入れするものと解する。とすれば、質権が留置物から優先弁済を受ける権利である以上、転質権者は債権全額について優先弁済を受け得るとも思える。しかし、転質権はあくまで原質権を基礎に成立するものであり、ここにいう質物の質入れとは、原質権によって把握される担保価値が質入れされるという意味に解すべきである。よって、転質によって優先弁済を受けられる範囲は、原質権により把握された担保価値を超えることができない。
本問では、Cは原質権の被担保債権額である50万円についてのみ、質権実行による優先弁済を受けることができる。
エ. BはCに対する債権(以下本問債権という)をAに質入れしているが、本問債権には譲渡禁止特約(466条2項本文)がなされており、かかる特約違反の質権設定の効力が問題となる。
債権の質入れは債権譲渡と類似することから(364条、366条1項参照)、譲渡禁止特約に違反した債権譲渡の効力の問題と同様に解することができる。そして、466条2項があえて明文で規定していることから、譲渡禁止特約は物権的効力を有し、この特約に反する質権設定は無効であると解する。善意無重過失の第三者は466条2項ただし書により保護される。
(3)留置権 
引渡請求されている目的物について何か債権が発生したときに反論で述べる。認容されれば引換給付判決。
要件は、①債権が「その物に関して生じた」(295条1項本文 牽連性)こと、②債権成立時に、当該債権の債務者と引渡請求権者が同一人であることである。被担保債権の成立時点において被担保債権の債務者と物の引渡請求権者が同一人でなければ、物の留置によって被担保債権の弁済を間接的に強制することにはならない(留置権の制度趣旨を達成できない)から、②が必要となる。
③債権が弁済期にあること(ただし書)、④物の占有が不法行為によって生じたものではないこと(2項)も要件である。
ア Aが不動産甲をBCに二重譲渡し、Bに引渡し、Cに登記移転した。この場合②を欠くので、BはAに対する債務不履行を被担保債権とする損害賠償請求権(415)の保全のために留置権を主張することはできない。(Cが登記を備えた時点ではじめて損害賠償請求権が発生する以上、被保全債権の債務者はA、引渡請求権者はCである。)
イ(ア)占有開始時に権原があったが、その後に無権原となった者の費用支出については、占有開始時には適法な権原を有することから、295条2項を直接適用することはできない。しかし、同条項は、違法な占有権者に留置権を認めて保護する必要はないとの価値判断に基づく規定である。そして、占有権原の喪失を知りながら、又は知ることができたのに占有を続ける者についても、その占有は同じく違法である。そこで、この場合は同条項を類推適用して、かかる者の留置権を否定すべきである。
(イ)他人物賃貸借においては、たとえ賃借人が悪意でも、賃貸人が所有権を取得することを期待しており、かかる期待は合理的といえる。そこで、背信性が強い場合にのみ、295条2項を適用する。
ウ Cは、自らがなした給排水管の取替工事で支出した300万円が有益費(196条2項)に該当し、有益費償還請求権を被担保債権として甲建物について留置権(295条1項)が成立すると主張することが考えられる。そこでまず、CのDに対する有益費償還請求権の成否について検討する。
エ 所有権に基づく返還請求に対する抗弁として、修理代金債権(632条)を被担保債権として留置権(295条)を主張する。修理代金債権はトラックを修理したことにより生じており(①充足)、返還請求権者と修理代金債務者はともにBである(②充足)。留置権は物権である以上、Cに対しても留置権を主張できる。しかし、留置権者は債務者の承諾を得なければ留置物を使用できず、これに違反した場合には債務者は留置権の請求をすることができる(298条2項・3項)。本問では、Cは無断でトラックを使用しているので、Aが留置権の消滅を請求すれば、抗弁は認められない。
オ 違法駐車と本来の所有者に対する不当利得返還請求は、①が論点。パーキングエリアの免責約款はその有効性が論点。
(4)譲渡担保
ア 譲渡担保設定契約により、債権者は所有権を取得するという見解がある。しかし、譲渡担保の実質は債権の担保であるから、担保的に構成するほうが当事者の合理的意思に合致する。そこで、譲渡担保設定契約によって債権者は担保権を取得すると解する。
イ 債務者が債務の履行をしないとき、債権者は譲渡担保権を実行でき、それにより目的物の所有権は債権者に移転し、債務者は受け戻すことはできない。すなわち、処分清算型の場合、担保権者が他に譲渡した時、帰属清算型においては、清算金の支払い、又はその提供のとき、あるいは清算金が生じない旨の通知をしたときに、受戻権は消滅する。
本問は帰属清算型であるところ、Dへの譲渡の前になされたBの清算金の提供により、譲渡担保権が実行されているので、Aはもはや受け戻せない。
ウ BのAに対する100万円の債権について、Aの150万円の品物に帰属清算型の譲渡担保を設定した。弁済期の到来後、50万円を清算する前にBはCに目的物を処分してしまった。帰属清算型の場合でも、また、譲受人が背信的悪意者であっても目的物の処分によって設定者の受戻権は消滅する。このように解しないと、権利関係の確定しない状態が続くし、履行遅滞に陥った債務者を保護する必要はないからである。〔97〕
(5)その他
ア 先取特権は、債務者がその目的である動産を第三者に引き渡した後は、その動産について行使できない(333条)。
(ア)EはBに鋼材を売却しているので、未払い代金を被担保債権とする動産先取特権を有し(311条5号、321条 論M108、111(H22旧司))、それに基づいて競売の申立てをすることが考えられる。もっとも、鋼材はAの譲渡担保権が設定されている甲倉庫内に搬入されている。そして、譲渡担保の設定は、333条の「第三取得者」への「引渡し」に当たり、先取特権の追及効は消滅すると解する。
したがって、Eは鋼材に対して動産先取特権を行使することができない。
(イ)Eは、Bとの売買契約を解除して、Bに鋼材を返還請求することが考えられる(545条1項本文)。もっとも、Aは、甲倉庫内に鋼材が入った時点で譲渡担保権を取得し、占有改定により対抗要件を備えている(183条、178条)ので、545条1項ただし書の「第三者」に当たり、保護される。したがって、Eは、譲渡担保権の負担のある鋼材を返還請求し得るに止まる。
イ 物上代位の目的債権が譲渡され、対抗要件が具備された後でも、動産売買先取特権に基づく物上代位はできるか。「払渡し又は引渡し」(304条1項ただし書)に債権譲渡が含まれるかが問題となる。
304条1項ただし書が差押を求める趣旨は、第三債務者の二重払いの危険の防止にある。抵当権と異なり、動産売買先取特権は登記により公示されていないので、第三債務者を保護する必要がある。また債権譲受人の保護。そこで、「払渡し又は引渡し」には債権譲渡も含まれるというべきである。したがって、先取特権者は、目的債権譲渡・対抗要件具備後においては、当該債権に物上代位できない。
ウ DはSに所有権留保特約を付して車を譲渡した。SはUに車を譲渡し、Uは代金を完済した。ところが、DがDS間の契約を解除した場合、DはUに車の引き渡しを請求できるか。(所有権に基づく引渡請求のKgに対する抗弁)このとき、Dが協力しているので、DはUの占有を認めている。また、確かに所有権はDにあるものの、引渡請求を認めればDが負担すべきS無資力などのリスクをUに転嫁することになり、Uに不測の損害を被らせる。そこで、車の引渡請求は、権利の濫用(1条3項)として許されない。そして、Dが引渡請求できなくなった反射的効果として所有権はUに帰属すると解するべきである。
エ 売買契約において所有権留保特約を締結した場合、売主は留保所有権を有する。留保所有権は、代金債務の弁済期が到来するまで目的物の交換価値を把握するにとどまり、目的物を占有支配する権利を含まない。引渡しを受けていれば、買主が占有する権限を有する。よって、売買契約締結の抗弁に対する所有権留保特約の再抗弁に対して、基づく引渡しを予備的抗弁として主張することができる。

七 家族法 家族法はここと択一六法でカバーすれば十分
1 夫婦
(1)婚姻の要件は①届出(739)、②婚姻意思の合致、③婚姻障害事由(731-737)の不存在である。
ア.  届出は成立要件であるから、婚姻意思は届出の受理時に必要である。したがって、受理された時点で婚姻意思がない場合、婚姻は無効である。そして意識が喪失しているときは原則として婚姻意思もない。もっとも、受理時に当事者が意識を喪失していても、①婚姻意思に基づいて婚姻届が作成され、②事実上の夫婦共同生活が存続していれば、③翻意したなど特段の事情のない限り、婚姻意思を持ち続けているものと推定する。かかる場合、受理によって婚姻は有効に成立すると解する。
イ. ②婚姻意思の意義が問題となる。届出意思だけでは婚姻の本質的効果に向けられた意思がなく妥当でない。また、現在は多様な婚姻形態が存在する。そこで、重要な婚姻の法的効果を享受する意思を婚姻意思と考える。つまり、享受する効果が専ら婚姻の1つにあった場合でも、その他の効果を享受する意思又は生じても問題ないと認識していれば婚姻意思があるといってよい。(逆にその他の効果を享受する意思がなければ×)
(2)瑕疵 ア 無効な婚姻の追認も、原則として無効である。ただし、①夫婦としての実質的生活関係が存在しており、②届出の事実を知らない者が届出の事実を知ってこれを追認したときは、右婚姻は届出時に遡って有効となると解する(116条類推適用)。
当事者の意思・実質的な生活関係には合致しているし、婚姻の有効を前提とする第三者の利益を守る必要があるからである。
イ 婚姻無効(742)は、当然無効である。その間に生まれた子も嫡出子としての身分を取得することはない。
ウ 婚姻の取消し(743-747)は将来効のみ有する(748条1項)。∴子は嫡出子のままである。
(3)婚姻の効果として、①夫婦同氏(750)、②同居・協力・扶助義務(752)、③貞操義務、④成年擬制(753)がある。
夫婦の一方の配偶者と肉体関係をもった第三者は、他方の配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持という権利・利益」を侵害し、不法行為責任を負い得る。逆に、①婚姻関係が既に破たんしていたときには、「婚姻共同生活の平和の維持という権利・利益」がない以上、②特段の事情のない限り、第三者は不法行為責任を負わない。
(4)離婚 ア 届出時に離婚意思がない場合、協議離婚は無効となる(742条1号類推適用)。そこで、離婚意思の意義が問題となる。法律婚解消後の家族形態は様々であるから、離婚意思は、離婚届出に向けられた意思で足りる(形式的意思説)。
YがXへの甲不動産の移転登記義務を免れるために、YZ間の通謀により財産分与の形をとったにすぎない場合でも、離婚届を出すことについての意思がある以上、離婚意思が認められる。
イ まず770条1項5号の事由があるので、原則として離婚を請求できる。(出て行った側の請求は1号ではない場合が多い。)
しかし、自ら婚姻破綻の原因を作りながら、その原因を理由として離婚の請求をすることは、原則として信義則(1条2項)に反し許されない。
ただし、有責配偶者からの離婚請求であっても、①夫婦の別居期間、②未成熟の子の存否、③配偶者の経済的不利益等を考慮して、信義則に反するとはいえない場合には、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないと解する。なお、③は、財産分与又は慰謝料などを考慮する。
(5)財産分与 ア. 財産分与(768.3)の法的性質は、①婚姻中の財産関係の清算、②離婚後の扶養、(③慰謝料)である。とすれば、この趣旨に反して不相当に過大な部分については、財産分与に名を借りた新たな財産権を目的とする法律行為であり、詐害行為(424条1項)として債権者による取消しの対象となり得る。
イ. 財産分与請求権と慰謝料はその性質が必ずしも同じではない。(もっとも、慰謝料も含めて財産分与の額を定めることもできる。)したがって、財産分与が損害賠償の要素を含めた趣旨と解されないか、含めた趣旨であるが足りないときには、別個に慰謝料を請求できる。
(6)内縁 ア. 内縁は法律婚では無いので、婚姻の効果のすべてを享受できるわけではない。しかし、婚姻に準じた関係であるから、共同生活の維持・安定は保護され得る(準婚理論)。したがって、共同生活の維持・安定という利益を害されたときには709条請求できる。また、760条を準用して婚姻費用の分担請求もできる。さらに、内縁の不当破棄に対しては、415条責任、709条責任ともに追及することができる。
イ. 内縁配偶者の相続権は否定される。また、死亡による内縁の解消に財産分与の規定も類推適用することもできない。財産分与の趣旨は婚姻中の財産関係の清算であって、相続承継とは異質のものだからである。 さらに死亡した内縁配偶者の扶養義務を相続人が承継することもない。扶養義務は一身専属権(896ただし書)だからである。
生存内縁配偶者は、相続人がいないときに特別縁故者制度(958条の3)、借地借家法36条により保護され得る。

2親子
(1)母子関係は分娩の事実により当然発生する。772条1項はこれを当然の前提としている。
父子関係について、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定される(772.1)。分娩により母子が結ばれ、これに婚姻を媒介として父子を結ぶ。これに対し、婚外子は、婚姻を媒介にできないので、非嫡出子であり、認知により父子関係が生ずる(779)。
法的親子関係の効果は、①親権(818条)、②扶養(877条1項)、③相続(887条1項、889条1項1号)である(テンポ○)。
(2)ア. 嫡出推定(772条2項 婚姻から200日離婚から300日)を受ける子は、嫡出否認の訴え又は審判(774)によらなければ嫡出子たる身分を奪われない。その意義は、家庭の平和の維持、子の法的地位の早期安定(1年の期間制限 777)にある。
イ. 推定されない嫡出子、推定の及ばない子は、親子関係の存否確認の訴え(人訴2条2号)によりその地位が覆される。
嫡出推定は外観上、夫婦間の性交渉がないことが明らかな場合には及ばない(外観説)。
親子関係不存在の確認の訴えについて、実子と扱われた者が長年、実親子同様の生活を送っていたなど、諸般の事情を考慮し、実親子関係の不存在の確定をすることが著しく不当な結果をもたらすものといえるときには、請求は権利濫用に当たり許されない(主に、相続財産の争いで問題となる)。確認の利益は有るが、権利の濫用により排斥する。
(3)認知の訴え(787)は形成の訴えである。その効果は出生時に遡って発生する(784本文 なし→父子関係)。ただし、第三者の利益を害することはできない(同ただし書)。
(4)準正とは、非嫡出子を嫡出子へ昇格させる制度である。婚姻準正(789.1)と認知準正(789.2)がある。
準正の効力は、婚姻の時から生じる(789.1及び通説 非嫡出子→嫡出子)。789.2の文言とは異なる解釈である。公平の観点からである。(ここは違憲判決が出たことから、文言通りでもいいのでは?)
(5)養子縁組の要件は、①縁組意思の合致、②届出、③縁組障害事由の不存在(792~798)である。
ア. ①縁組意思を欠く縁組(代諾権ない者による代諾)は無効である(802条1項)。
縁組できる者が追認したとき縁組は当初に遡って有効となる(116条類推適用)。なぜなら、子の代理人として代諾するのに代理権が欠けていたという点で、無権代理による養子縁組といえるからである。
このとき、第三者は自己の権利を害することを理由に追認の遡及効を否定できない(民法116条ただし書の類推適用を否定)。民法116条ただし書は取引安全のための規定であって、身分関係の安定が要請される場面においては適用されないからである。
イ. 虚偽の嫡出子出生届は無効である。そして、有効な養子縁組届と解することもできない(無効行為の転換を否定)。∵未成年者の縁組は本来家裁の許可が必要であるところ(798)、それを潜脱し、厳格な要式性に反するから。(したがって、親子関係不存在確認の訴えでいつでも誰でもその地位を覆し得る。)
(6)未成年後見人は法人や複数人でもよい(842条は削除された)。
未成年者は父母の親権に服する(818.1)。 親権は権利でもあり、義務でもある(820)。 財産管理権・包括的代理権(824 制限された子の行為能力を補充)と、身上監護権(庇護)という2つの側面を有している。

3相続
(1)相続人
ア. 相続人は配偶者(890条)、子(887条)又は直系尊属(889条1項1号)又は兄弟姉妹(889条1項2号)である。
イ. 複数人の死亡の先後が不明である場合、これらの者は同時に死亡した者と推定される(32条の2)。
胎児は既に生まれたものとみなされる(886条 H26司)。
ウ. 子・兄弟姉妹が既に死亡していた場合、その直系卑属がその者に代わって相続する(代襲相続 887.2、889.2)。この趣旨は、直系卑属の期待利益を保護し、公平を実現する点にある。
要件は、①被代襲者が被相続人の子及び兄弟姉妹であること、②代襲原因が、死亡、欠格、廃除であること、である。
配偶者は、代襲相続人となることも、代襲相続することもない。
再代襲相続も認められるが(887.3)、兄弟姉妹については、再代襲は認められない(889.2は887.3を準用していない)。
エ. 891条5号には形式的には当たる。しかし、相続人の破棄・隠匿が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者には当たらない(二重の故意必要説 内田342)。
オ. 915条によれば、単純承認、限定承認、相続放棄の3つの選択肢があることになる。
相続の承認・放棄は「相続の開始があったことを知った時」から3ヵ月以内になされなければならない。「相続の開始があったことを知った時」とは、①被相続人の死亡、及び②①により自分が相続人になったこと、を知った時をいう。
相続の承認・放棄は撤回できない(919.1)。身分関係の法的安定性のためである。ただし2項。
(2)相続分
指定があれば指定相続分(902)、指定がなければ法定相続分(900,901)による。
法定相続分は1/2:1/2、2/3:1/3、3/4:1/4である(900条1号ないし3号)。同位複数のときは4号で均等。
みなし相続財産:遺産+特別受益(903条、904条)-寄与分(904条の2) → 相続分を乗じて一応の相続分を算出する。 → 具体的相続分:一応の相続分-特別受益+寄与分
最後に遺贈を抜くのを忘れない。
(3)何を相続するのか
ア. 896条は当然包括主義を定めている。ただし一身専属権は相続されない(896ただし書)。
相続財産は共有に属する(898)。遺産の分割の段階(又は相続分の指定 902条1項)では、遺産分割協議又は審判による(907)。
遺産分割が終わった後、又は、包括遺贈(964条、990条参照)、分割方法の指定による場(908条)、遺産性は失われる。したがって、共有物分割請求で解決する(258条 ローヤリ)。
相続分の指定は相続人に対して、包括遺贈は相続人以外に対してされる(H22新司)。
可分債権・可分債務は当然に分割されて承継する。連帯債務は各自の相続分に応じた債務の限度で分割され連帯責任を負う。
イ 427条により、可分債務は法定相続分に従い、当然に分割される。そして、可分債務に対する遺産分割の効力を債権者に対抗できない。
本問では、Bに対する債務がC・D・Eに1000万円ずつ分割される(900条4号)ので、遺産分割の内容にかかわらず、BはC・D・Eに1000万円ずつ請求することができる。
ウ 遺産分割協議(907条)は、対内的法的安定性の見地から、541条による解除が認められない。
もっとも、全員の協議による合意解除の場合は、対内的法的安定性に配慮する必要はないので、許される。
相続開始後遺産分割前に遺産から生じた債権(ex.遺産のなかの借地の賃料)は、遺産とは別個に分割され、相続分に応じて単独債権を取得する〔68〕。(「果実」(88条2項)ととらえない立場。)
エ 遺産分割によって取得した財産に瑕疵がある場合、担保責任を負う(911条)。例えば、他の共同相続人からの譲受人に対しては、一部他人物の場合、解除・一部返還請求(563条2項、545条1項)し得る。また、他の共同相続人に対しては、損害賠償請求し得る(563条3項)。
オ 特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、遺産分割の方法(908)を定めたものと解する。したがって、無権利の法理が妥当する。(なお、遺贈と解する説なら対抗要件必要である。)
(4)884条は相続回復請求権が5年の消滅時効にかかる旨定めている。
第三取得者に対する請求は、真正相続人の所有権に基づく請求であるから、884条の適用はない。但し、第三者は時効取得(162条)については可能。
(表見相続人以外に)善意無過失の共同相続人にも884条適用される。悪意・有過失であれば884条は適用されず、5年の消滅時効を主張できない。
静的安全を図る884条の趣旨から、5年たつまでは、取得時効(162条)は進行しない(内田446 学説は反対)。
(5)遺言の成立要件は①意思表示、②方式である。②遺言の方式は、967条から984条の条文を見る。
遺言による財産処分を遺贈という(964)。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(990 ただし持分の対抗には登記が必要であるかは論点である。高裁は登記必要としている(基M195))。
特定受遺者は、贈与契約における受贈者と同様の地位に立つ(∴被相続人が生前に処分していれば、二重譲渡の関係にある)。
遺言はいつでも撤回できる(1022条)。法定撤回について1023条。
死因贈与(554条 遺贈の規定が準用)は、書面によるか否かを問わず撤回可能である(1022条準用)。死者の最終意思を尊重するためである。ただし、負担付贈与(553条)については、負担を履行した場合、受贈者の信頼は保護されるべきである。信義則上、原則として撤回が制限される(択六688〔88〕基M2-2頁)。
(6)遺留分
処理手順(表題として用いる) ①相続人 → ②遺留分率(総体的→個別的) → ③遺留分率算定の基礎となる財産 → ④遺留分額 → ⑤遺留分侵害額 → ⑥減殺 (そりきがしげ)
②は1028条、③は1029条・1030条(1年以内の贈与、知ってなした1年より前の贈与、特別受益(1044,903))による。②に③を乗じて④を導く。⑤の計算:(積極財産+贈与(1030条)-債務)×遺留分率-(現に相続した財産+特別受益(1044,903))
⑥減殺:遺贈→後の贈与→前の贈与(1033.1035)。同時は価格の割合(1034)。受遺者の無資力は影響しない(1037)