予備試験対策 民事訴訟法 まとめノート (旧)

Ⅰ開始 1総論 2当事者 3訴え 4訴訟要件  Ⅱ審理・進行 1総則 2訴訟行為 3弁論主義 4証拠総論  5証明責任  6証拠調べ  Ⅲ終了 1当事者の意思による訴訟終了 2判決 3既判力  Ⅳ複雑訴訟 1複数請求訴訟 2複数当事者訴訟 3上訴 

Ⅰ 開始
1 総論など
(1)総論
ア 定義・基本原理・概念・判例の規範を正確に書けている場合、高得点がつく(科目特性)。例:法定訴訟担当 共同訴訟人独立の原則(39条) 証拠共通の原則 
イ 民事系の判例の射程問題の処理パターン 1-1.判例の理由付けを類型化して区別し、判例の結論を示す。1-2.判例の理由付けが異なれば、結論が異なる理由、結論が異なることを書く。2.本件では判例の理由付けが妥当しないことを当てはめる。3.本件では判例と異なる結論になる。と示す。
ペー3で処理1-1と1-2が問われた配点ついて0/5点
ウ 裁判所は民事訴訟が公正かつ迅速に行われるよう努め、当事者は信義誠実に訴訟追行しなければならない(2条)。裁判の公正、訴訟経済、信頼保護、不意打ち防止≒手続保障、禁反言などを当該事案にあった言葉で論述し、それを理由付けにすることが最も大切であることが分かる。一般条項でも規範は忘れない。
(2)管轄
ア 管轄(4条~)とは、裁判権の及ぶ多数の事件をどのように各裁判所に配分するかの基準である。例:被告の普通裁判籍(住所、居所)の所在地を管轄する裁判所(4条1項、2項)
職分管轄とは、裁判所の種々の作用をどの種類の裁判所の職務として分担させるかの定めである。例:審級管轄
事物管轄とは、通常裁判所において、第一審訴訟を地方裁判所と簡易裁判所のどちらに分担させるかの定めである。例:140万円以下は簡易裁判所(裁判所法33条1項1号、裁判所法24条1号)。
土地管轄とは、事件と土地の関係で定まる管轄である。 例:財産上の訴え(5条)のときは、義務履行地(5条1号)、不法行為地(5条9号)、不動産の所在地(5条12号)
専属管轄とは、法定管轄の中で、強度の公益的要請に基づき、特定の裁判所のみに管轄を定め、その他の管轄を一切排除するものである。対:任意管轄 
合意管轄とは、当事者の合意によって生じる法定管轄と異なった管轄である(11条)。
応訴管轄とは被告の応訴によって生じる管轄である(12条)。例:管轄のない裁判所に訴えが提起され、被告が準備書面を提出
移送とは、ある裁判所に生じている訴訟係属を、申立又は職権により、その裁判所の裁判によって他の裁判所に移すことである。例:簡易裁判所から地方裁判所への裁量移送(18条)
イ 併合請求における管轄は、1つの請求の管轄に訴えを提起できる(7条本文)。ただし共同訴訟は38条前段の場合に限る(同ただし書)。
審級管轄などの職分管轄は原則として専属管轄(13条)であり、事物管轄や土地管轄は原則として任意管轄である。 専属管轄の場合、合意管轄(11条)とすることはできない。
管轄違い(16条1項)・遅滞を避けるため等(17条)の場合、移送される。裁判所は裁量により簡易裁判所から地裁に移送できる(18条)。 管轄選択権の濫用〔A3〕。
ウ 簡易裁判所を専属管轄とする合意がある場合に地裁に訴訟提起された場合。
地裁は簡易裁判所の事件を自庁処理できる(16条2項)。16条2項の趣旨は、地裁において審理及び裁判を受けるという当事者の利益を重視して事物管轄の弾力化を図ることにある。そこで、「相当と認めるとき」とは、訴訟の著しい遅滞を避けるためや、当事者間の公平を図るという観点からだけではなく、広く当該事件の事案内容に照らして地裁における審理及び裁判が相当であるかどうかという観点から判断されるべきである〔3〕。
解説:純粋に当事者の合意だけで決まるわけではない(明文に定めあり 16条2項ただし書かっこ書)。
エ 裁判所の公平・公正を担保するための制度として、除斥(23条)・忌避(24条〔4〕)・回避がある。

2 当事者
(1)当事者とは、訴え又は訴えられることによって判決の名宛人となる者である。
二当事者対立構造の原則とは、民事訴訟では特定の当事者間の争訟処理を行うことから、対立する当事者の存在が不可欠であるという原則をいう。例:原告が死亡すると、訴訟は中断し、訴訟承継がなされる(124条)。
表示の訂正とは、甲と乙が同一人格である場合に、訴状に当事者として表示されていた甲の表示を、訴訟係属中に乙に訂正することである。
任意的当事者変更とは、甲と乙が別人格である場合に、法定の当事者変更制度(訴訟承継)以外の場合で、甲から乙に当事者を変更することである。
訴訟承継とは、当事者交替のうち、実体法上紛争の主体たる地位の移転があるものをいう。例:原告が死亡すると、訴訟が中断し、相続人が原告の地位を承継する。
当事者の確定は、訴状の当事者欄の記載を中心に請求の趣旨・原因など一切の訴状の表示を合理的に解釈して判断する(実質的表示説)。
他に意思説、行動説がある。規範分類説:手続開始前は表示説。手続開始後は、当事者適格を有し手続関与機会が与えられていた者。
(2)氏名冒用訴訟〔5〕
ア. 訴訟係属中に判明
(ア)原告甲が乙の氏名を冒用
当事者は訴状に表示されている乙となり、裁判所は代理権欠陥の場合に準じて補正を命じ(34条1項前段)、任意的当時者変更として処理するか、訴えを却下する。
(イ)被告丙が乙の氏名を冒用
当事者は訴状に表示されている乙となり、裁判所は丙を手続から排除して、乙に訴訟を続けさせる。
イ. 判決後に判明
表示説によれば、訴状に表示されている乙に判決効が及び、乙は代理権欠陥の場合に準じて、上訴・再審で争うことになる(312条2項4号、338条1項3号)。
(3)死者名義訴訟〔6〕
ア. 原則:死者が当事者となり、二当事者対立構造に反し、訴訟係属は生じないから、訴えは却下される。判決も原則として無効である。
イ. 承継:訴訟係属中の死亡と同視できる(ex.訴訟準備段階に死亡)なら、124条の趣旨を類推して中断・承継を認めるか、又は、任意的当事者変更による。 訴訟係属中に死亡したときは中断・承継する(124条1項1号)。
ウ. 看過して判決がなされた場合でも、原則として無効である。しかし、手続保障があれば、不意打ちとはならず自己責任を問える。また、積み上げた訴訟手続をすべて無効とすることは訴訟経済に反する。
そこで、信義則(2条)上、相続人に判決効が及びうる場合がある。
(4)当事者能力とは、民事訴訟の当事者となることのできる一般的な資格である。例:犬は当事者能力を有しない。
当事者適格とは、具体的な事件について当事者となることができる資格である。例:訴訟物たる権利関係につき何ら利害関係を有しない者は、当事者適格を欠く。
ア 当事者能力は、実体法上の権利能力に対応する概念である(28条)。権利能力なき社団(29条〔8〕〔9〕)、組合〔10〕も当事者能力を有する。その趣旨は、相手方・団体構成員の便宜、手続運営の便宜を図ることにある。
イ 民法上の組合も29条の「社団」に当たるか。訴えのできる範囲、判決の効力の及ぶ範囲に違いが生じることから問題となる。
29条の非法人団体の要件は、①対内的独立性、②対外的独立性、③財産的独立性、④内部組織性である。①②④は問題ない。
組合財産は組合員個人に合有的に帰属するため、③を満たさないとも思える。しかし、組合に当事者能力を認めないと、団体構成員全員で訴え又は訴えられる必要があり、不便である。相手方及び団体構成員の便宜を図るという29条の趣旨は、組合についても妥当する。そこで、③を満たさなくても、例外的に「社団」に当たると解する。(基M34 組合が当事者のみと考える場合〔10〕解説)
(5)訴訟能力とは、自ら単独で訴訟行為をなし、又は、受けることのできる能力である。例:未成年者は単独で訴えを提起できない(31条)。
ア.  訴訟能力は、行為能力に対応する概念である。
訴訟能力は訴訟能力者の保護を図るための制度で、当事者として自己の利益のために訴訟追行する場合に要求される。∴証人尋問など証拠調べの対象となるにすぎない場合には要求されない。
訴訟能力あっても意思能力なければ訴訟行為は無効である〔16〕。
絶対的訴訟無能力者は未成年者・成年被後見人(31条)、制限的訴訟能力者は被保佐人・被補助人(28条)である。
法定代理に関する規定は、法人の代表者にも準用される(37条)。
イ. 訴訟能力を欠く者の訴訟行為は当然に無効となる。手続の安定を図るためである。裁判所は、訴訟能力の欠陥を発見した場合、まず34条1項により補正を命じなければならない。法定代理人or訴訟能力を取得・回復した本人が一括して追認すれば遡及的に有効となり得る(34条2項)。
看過してなされた判決は、上訴・再審で是正される(312条2項4号 338条1項3号)。 
ウ. 訴訟無能力者の訴えは却下されるはずだが、看過してなされた棄却判決に控訴した場合、訴訟能力の欠陥を理由として控訴を無効とすると、訴訟能力を欠く者に対する敗訴判決が確定してしまい、不当な結果となる。また、控訴は有利な行為である。そこで、控訴は適法と解する。
もっとも、控訴裁判所での補正を認めると訴訟無能力者の審級の利益を害する。そこで、第一審判決を取り消したうえで原審に差し戻して補正の機会を与えるべきである。
エ. 訴訟成立後に訴訟能力の欠陥が生じた場合:中断(124条1項3号)し、本人の上訴は不適法、上訴期間も進行しない。
(6)代理 (第三者による訴訟担当→Ⅰ4(4)カ)
ア. 訴訟上の代理人は法定代理人と任意代理人に大別され、前者は実体法上の法定代理人(ex.親権者)と訴訟法上の特別代理人(35条 〔17〕)とに分かれ、後者は法令上の訴訟代理人(ex.支配人)と訴訟委任に基づく訴訟代理人(ex.弁護士)とに分かれる。
訴訟上の代理人とは、当事者の名において、これに代わって自己の意思に基づき訴訟行為をなし、又はこれを受ける者である。
法令上の訴訟代理人とは、一定の地位に就くことによって、法令が一定の範囲の業務につき包括的な代理権を認めた者である。例:支配人
訴訟委任に基づく訴訟代理人とは、当事者によってその訴訟追行につき包括的な代理権を与えられている者である。例:弁護士
イ. 代理権欠陥の効果:訴訟能力ない訴訟行為なので無効であり、訴えは却下される。追認により有効となる(59条、34条2項)。看過してなされた判決は有効であり、上訴・再審で是正される(312条2項4号、338条1項3号)。
訴訟代理権の消滅は、相手方に通知をしなければ効力を生じない(59条、36条1項)。代理権の存否に関して画一的な判断を可能とし、手続の安定を図るためである。
ウ. 法人の代表者の登記と表見法理:実体法上の表見法理の規定は訴訟行為には類推適用されない〔18〕。
∵民法109条・会社法354条は取引安全のための規定であり、手続の安定が要請される訴訟手続には適用されないからである。
エ. 訴訟委任による訴訟代理人は、原則として弁護士である(弁護士代理の原則 54条1項〔A8〕〔A9〕 H26司等)。その趣旨は本人の保護と手続の円滑な進行を図る点にある。
オ(ア)法定代理人は当事者の能力を補充する者であり、訴訟追行上は本人の身代り的な存在であるから、その地位は本人に準じる。具体的には、①訴状・判決書に当事者と並び記載される(133条2項1号、253条1項5号)。②送達は法定代理人にする(102条1項)。③本人を出頭させるべき場合には、法定代理人を代わりに呼び出す(151条1項1号)。④法定代理人の尋問は当事者尋問の規定が準用される(211条)。⑤法定代理人の死亡等は訴訟手続の中断事由となる(124条1項3号)。
(イ)これに対し、任意代理人は、当事者の能力を拡張する者であり、その地位は第三者的存在である。具体的には、①訴状及び判決書の必要的記載事項ではない。②送達・出頭はない。③本人による事実の更生権(57条)がある。④証人、鑑定人となり得る。⑤死亡しても訴訟手続は中断しない。

3訴え
(1)訴えとは、原告の裁判所に対する審判を求める旨の申立てをいい、給付の訴え、確認の訴え、形成の訴えがある。
給付の訴えとは、原告の被告に対する特定の実体法上の給付請求権の主張と、これに対応した裁判所に対する給付判決の要求とを訴訟上の請求の内容とする訴えである。例:金銭の支払いを求める訴え
確認の訴えとは、原告の被告に対する特定の権利関係の存在・不存在の主張と、その存在・不存在を確定する確認判決の要求とを訴訟上の請求の内容とする訴えである。例:不動産の所有権確認の訴え
形成の訴えとは、実体法の定める一定の法律要件の存在による特定の権利関係の変動の主張と、その変動を宣言する形成判決の要求とを訴訟上の内容とする訴えである。例:婚姻の取消しの訴え(社団関係や身分関係)
ア. 特定 裁判所は、当事者の申し立てた事項についてのみ審判し得る(246条、裁判所に対する機能)。また、攻撃・防御の主題を明確にし、被告に対する不意打ちを防止する必要もある(被告に対する機能)。
そこで、訴えにおいては、請求の趣旨及び原因によって、審判対象たる請求が特定されていなければならない(133条2項)。特定されていなければ請求は却下される(137条2項)。
債権存在確認の訴えにおいては、原告は救済を求める範囲の上限を明示して訴えを提起しなければならず、裁判所はその範囲で判決する。抽象的不作為請求の可否:禁止されるべき結果が特定されることにより、具体的な不作為義務の範囲が合理的に限定されていれば、適法である。〔32〕
イ. 狭義の請求とは、民事訴訟における本案の審判対象としての、原告の被告に対する権利主張である。例:代金支払請求権
広義の請求とは、民事訴訟における本案の審判対象としての、原告の被告に対する権利主張と、それに基づく裁判所に対する特定の審判要求である。例:代金50万円の支払を求める訴え
請求(狭義 ≠申立事項)は原告、被告、訴訟物に分けて特定することが考えられる(133条2項 規則53 基M59)。
請求(広義 申立事項)は、原告が①訴訟物、②権利救済の種類、③その範囲を、訴状の請求の趣旨の記載により明らかにして特定する。
ウ. 形式的形成訴訟とは、形成要件が具体的に法定されていない形成訴訟である。例:共有物分割の訴え(民258条)
境界確定の訴えとは、隣接地相互の境界が争われる場合に判決による境界線の確定を求める訴えである。
境界確定の訴えの法的性質は、形式的形成訴訟であると解する〔35〕。境界は地番と地番との境界であり、地番によって表示される一筆の土地は公法上の単位としての側面を有し、私人が自由に認めることは許されないからである。
裁判所は裁量で合目的的に境界を確定する。
帰結として、①処分権主義の排除、②弁論主義の排除、③証明責任法理の不適用、④不利益変更禁止原則の排除などがある。
境界線に接続する土地の一部を取得したにすぎない場合、(境界の全部に接する部分の土地を時効取得した場合であっても、)両者は当事者適格を失わない。これに対し、隣地の全部を一方当事者が取得した場合、両当事者は当事者適格を失う。
エ. 訴訟物とは、審判対象たる特定の実体法上の権利又は法律関係をいう。(最狭義 基M59) 
客観的併合(136条)、訴えの変更(143条)、二重起訴(142条)、既判力の客観的範囲(114条1項)で主に問題になる。
基準の明確性、実体法との調和、当事者の手続保障を重視する旧訴訟物理論によれば、訴訟物の特定識別及び個数の異同は、実体法上の個々の権利を基準に判断する。(他方、紛争の一回的解決を図ろうとする新訴訟物理論によれば、原告が求める究極の目的との関係での、より包括的な法的地位の主張を基準に判断する。)
(2)処分権主義とは、訴訟の開始、審判対象の特定、訴訟の終了につき当事者の主導権を認めてその処分にゆだねる原則をいう(入口と出口の問題)。
その趣旨は、実体法上私的自治が採られていることに鑑み、訴訟法上も当事者の意思を尊重する点にある。
機能としては、紛争解決方式選択自由の保障、争訟の自主的形成、不意打ち防止がある。
内容としては、不告不理の原則、審判対象の特定提示、当事者の意思による訴訟終了がある。
(3)246条 ア. 申立事項(広義の請求)と判決事項は一致しなければならない(246条)。申立事項は、原告が、①訴訟物、②権利救済の種類、③救済を求める範囲を、請求の趣旨の記載により明らかにすることで特定される。そして246条に反しないかは、原告の合理的意思に反しないか、被告にとって不意打ちとならないかを基準とする〔75〕〔76〕〔77〕。
イ 量的一部認容判決は原告の意思に合致し、被告に不意打ちともならないので許される。
現在給付の訴えに対して将来給付判決は、原則として②が異なり許されない。しかし原告の意思を合理的に解釈して、原告が「現在給付判決が認められない場合には将来給付判決でもよい」と考えていると解される場合には例外的に許される。(将来給付の利益(135条)は必要である(H22司)。注:条件付判決(代償請求、敷金返還請求等)は将来給付判決である(H22採点実感に明示)。なお、限定承認、引換給付判決は現在給付判決である(リー34.409)。)
将来の給付の訴えに対し現在給付判決は常に許されない、②が異なるうえに被告に不意打ちとなるからである。
一時金賠償の請求に対し、定期金賠償の判決を下すことは、質的一部認容として許され得る(〔A25〕受験新報4月号 両者の性質をとらえ、事案に応じた判断をする)。
主位的請求について判断することなく、予備的請求を認容する場合、246条に反する。主位的請求を優先して認めてほしいという原告の合理的意思に反するからである。
賃借権と地代額は、①別の訴訟物である(H24重判2)。
ウ 246条違反の効果は、判決が当然に無効となるのではなく、控訴・上告・再審によって取り消されるにとどまる。
(4)債務不存在確認の訴えとは、債権者の主張する債務は存在しないことの確認を求める訴えである。例:500万円の債務は存在しないことの確認を求める訴え
ア. 債務の上限を明示しない債務不存在確認訴訟は適法だろうか。請求の特定があるかが問題となる。
そもそも特定が要求されるのは、処分権主義の下、裁判所は原告の申立てた事項についてのみ審判し得ること、及び、被告に対する不意打ち防止の観点からである。上限を明示しなくても、訴状の請求原因などから債権自体の特定が可能である場合には、裁判所にとって審判対象は不明とはならない。また、債権者たる被告は、債権額を主張立証する地位にあることから、被告にとっても不意打ちとはならない。
そこで、このような場合には上限を明示しなくても請求は特定され、訴えは許される。
イ. そして、裁判所が原告の自認額を超える額を残債務として認定した場合、裁判所は残債務額を確定したうえで一部認容判決をすべきである(246条 〔77〕上限明示しない場合)。
原告としては、請求棄却よりも、一部なりとも残債務の不存在確認を受けて紛争を解決したいと望むのが通常であり、被告も申立事項の範囲内であれば十分に攻防を尽くしており、不意打ちとならないからである。
ウ. 400万円のうち、100万円を超えては債務が存在しないことの確認を求める訴えに対して、50万円を超えて債務は存在しないことを確認する判決を出すことは許されない(246条の③)。訴訟物の範囲は、400万円から100万円までの間の300万円の債務であり、50万円と判断することはかかる審判対象を超えているからでいる。
エ. なお、消極的確認請求の訴訟物は上限額から自認額までの不存在の確認であり、債務者の自認額は訴訟物では無いので既判力は生じない。もっとも、自認額はいわば先行認諾であり、相手方の信頼を保護するべきであるから、信義則上(2条)、原告は後訴でその存在を否定できない。
(5)一部請求 ア. 一部請求は処分権主義の観点から許される。
イ 一部請求認容判決後の残部請求は、原告が一部であることを明示していれば、前訴の既判力に抵触しない〔A27〕。試験訴訟の必要性と被告の手続保障との調和の観点から、原告が一部であることを明示していれば、訴訟物はその一部に限定されるからである。
参考:試験訴訟の必要性は債権の迅速確実な決裁を求める利益ともいえる。被告の手続保障は、同一債権の審理重複にともなう訴訟不経済、二重の防御を強いられる被告の不利益、ともいうことができる。
ウ 一部であることを明示した一部請求で敗訴した原告が、残部請求について訴えを提起した場合、前訴の既判力が及ばない。
しかし、一部請求を全部又は一部棄却する場合、債権全部の審理結果に基づき、残部が存在しない旨を判断するものである。後訴で残部請求をすることは、前訴で認められなかった請求を蒸し返すものであり、紛争解決に対する被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いる。したがって、一部請求敗訴後の残部請求は、信義則(2条)に反し許されない[81②]。
エ 一部であることを明示した場合、時効中断効は訴訟物たる一部のみに生じる(判例)。明示がない場合、中断効は全部に生じる(判例)。一部請求と催告(民法153条)についてH25重判1.
オ 一部請求がなされ、相殺の抗弁が提出されてそれに理由があるとき、裁判所は請求の基礎となっている債権の総額を基準に相殺して、認容額を定めるべきである〔113 外側説〕。(過失相殺も同様〔75〕)一部請求をした原告の意思としては少なくとも請求の範囲においては、請求権が現存すると期待するものであり、かかる原告の意思を尊重すべきだからである。
(6)交通事故による損害賠償請求訴訟で勝訴した原告が、判決基準時以後に生じた同一事故に基づく後遺症損害の賠償を求める後訴を提起することは、被害者救済及び損害の公平な分担の見地から認められるべきである(117条参照)が、前訴の既判力に抵触するとも思えるため、その法的構成が問題となる〔82〕。
この点、不法行為に基づく損害は不法行為時に既に発生しており、前訴請求は全損害の一部について請求したものと解することができる。
そこで、後訴は一部請求後の残部請求と解し、その可否について検討する。
R:一部であると明示されていれば既判力は残部に及ばない。(上述)
そして、予想し得ない後遺症損害については、原告が主張立証できない以上、前訴請求においてその請求から除外する趣旨であることが明示されているといえる。
以上より、予想し得ない後遺症損害についての後訴は、前訴と訴訟物を異にし、前訴の規範力には抵触せず認められる。
(7)訴状には「当事者及び法定代理人」と「請求の趣旨及び原因」を記載しなければならない(133条2項)。また「請求を理由づける事実」とこれに関する事実も記載する必要がある(民訴規則53条1項・2項)
請求の趣旨とは、訴訟における原告の主張の結論となる部分である。(訴えをもって審判を求める請求の表示のことを意味し、原告が勝訴した場合にされる判決の主文に対応するものである。)例:被告は原告に対し、2000万円を支払え。
請求の原因とは、請求を特定する事実である。請求の趣旨だけでは請求を特定できない場合に請求の原因の記載が必要となる。
(請求原因とは、訴訟物である権利又は法律関係を発生させるために必要な法律要件に該当する事実である。例:売買契約の締結)
訴訟係属とは、特定の訴訟事件が、両当事者の関与の下に特定の裁判所により審理されている状態である。
(8)二重起訴 ア. 訴状が被告に送達されて(138条1項)二当事者対立構造が生じると、訴訟係属が発生し、その訴えと同一の「事件」の訴えが禁止される(二重起訴の禁止 142条)。二重起訴は不適法却下される。
142条の趣旨は、相手方の応訴の煩わしさを回避すること、審理の重複を回避し訴訟経済を図ること、判決の内容の矛盾抵触を防止することにある。そこで、「事件」の同一性の要件は、①当事者の同一性(115条1項2号参照)、②訴訟物の内容をなす権利関係の同一性であると解する。(訴訟物が異なっても先決・矛盾なら②○)
矛盾でも②○に対する批判:被告の訴訟物が異なり、既判力(114条1項)を得る利益がある。
イ. 債務不存在確認訴訟が提起された後に、対象となった債務の給付訴訟の反訴が提起された場合、当事者と訴訟物が同一であるから、二重起訴の禁止(142条)に反するとも思える。しかし、執行力が付与される点では紛争解決機能が高まるし、反訴は同じ裁判所で審理される(ここ条文不要)ので、応訴の煩、審理の重複、矛盾判断のおそれはない。そこで、対象債務の給付を求める反訴は、二重起訴に反することなく許されると考える。
ウ. 二重起訴を看過してなされた本案判決は当然に無効となるわけではない。違法であるから、上訴で取消しを求めることができる。後訴が確定すれば、規範力を有し、前訴の裁判所が既判力に反する判決をすれば、再審事由(338条1項10号)となる。
二重起訴の場合でも、弁論を併合すれば、142条に反しない(基M79 [A34])。
エ. 訴えがまだ確定していないのに、何かしら訴えが提起されたら、まず二重起訴を疑う。訴えが二つ提起された時点で二重起訴を疑い、後訴提起の時点で前訴が確定していれば既判力というように、先に既判力を思いつかない頭を持つ。
オ. 債務不存在確認訴訟の被告が、当該訴訟の訴訟物について手形訴訟を提起する場合、当事者と訴訟物が同一であるから、142条に反するとも思える。しかし、R1手形訴訟という簡易迅速な審判を利用する債権者の利益を保護する必要がある。R2手形債権者が先制的に手形訴訟を封殺できるのは妥当でない。そこで、例外的に142条には反しないと解する〔37〕。
カ. 一部請求の訴訟物は主張された一部であるから、その後の残部請求は上述の②を欠き許される。(ただ、訴えの追加的変更(143条)、弁論の併合(152条1項)という措置を採ることが望ましい。)前訴が棄却された場合には、142条に反するのではなく、信義則上残部を求めることは許されないという理由で、後訴が不適法却下されることに注意する。
(9)相殺の抗弁と二重起訴 
ア. 抗弁に判決の既判力は及ばない(114条1項)ので、抗弁の提出は原則として二重起訴の禁止の問題とならない。
もっとも、相殺の抗弁が理由中で判断された場合には自働債権の存否に既判力が生じる(114条2項)。そこで相殺の抗弁は二重起訴の禁止が問題となり得る〔38〕。
イ. 抗弁先行型の場合、前訴で請求された相殺の抗弁は攻撃防御方法にすぎず、「係属する事件」に当たらないので、142条を直接適用することはできない。
抗弁後行型の場合、後訴で請求された相殺の抗弁は攻撃防御方法にすぎず、「訴えを提起」に当たらないので、142条を直接適用することはできない。
ウ. もっとも、相殺の抗弁が理由中で判断された場合には、対抗した額の自働債権の不存在について既判力が生じる(114条2項)。 そこで、既判力の抵触のおそれ等がある以上、142条が類推適用されるものと解する。
エ. 批判:相殺の抗弁が提出されても、判断されるか否かは訴訟が終了するまで不確実であるため、被告の債権の行使の自由が不当に制限される(債務者無資力の際の担保的機能の保障)。批判:抗弁後行型の場合、前訴を取り下げない限り(時効中断なくなる、民法508条があっても不確実である)相殺の抗弁を主張できないことになり、被告の防御の自由を不当に制限することになる。
再反論:二重起訴の禁止は既判力の抵触の「おそれ」を問題にしており、前訴で自働債権が認められる可能性がある以上、やはりその主張を排斥すべきである。
オ. [38②]一部請求の残額で相殺…一部請求の訴訟物と相殺の自働債権は異なる。もっとも、1個の債権が訴訟上分割して行使された場合には、実質的争点が共通し、審理の重複が生じる、被告の応訴の負担が生じるなどの不都合がある。しかし、相殺の抗弁は防御の手段として提出され、相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるから、原則として許される。
[A12]反訴の訴訟物を、本訴の相殺の抗弁とすることは許される。この場合、反訴は予備的反訴となる。

4訴訟要件
(1)訴訟要件とは、本案の審理を続行して本案判決をするための要件である。例:管轄権、当事者適格、訴えの利益
ア 職権調査事項とは、当事者の申立てを待たずに、職権でもって調査を開始しなければならない事項である。例:訴えの利益
抗弁事項とは、当事者の申立てを待って初めて調査を開始すれば足りる事項である。例:不起訴の合意の存在
訴訟要件を必要とする趣旨は、公益的見地から無駄な訴訟を省いて訴訟制度の合理的運用を図ることにある。公益的役割=原則として職権調査事項 私益保護=例外的に抗弁事項(基M82)
イ 職権探知主義とは、訴訟資料の探索を裁判所の権能かつ職責とする原則である。例:当事者能力
弁論主義とは、訴訟資料の収集・提出を当事者の権能かつ責任とすることである。例:訴えの利益
(2)訴えの利益とは、個々の請求内容の、本案判決による紛争解決の必要性及び実効性である。
将来給付の訴えとは、判決の基準時(事実審の口頭弁論終結時)までに履行すべき状態にない給付請求権を請求の内容とする給付の訴えである(135条)。
ア. 現在給付の訴えは、即時に履行を求め得る請求権の存在を主張することであり、解決すべき紛争が存在し既に顕在化していることをも内包している。よって、紛争解決の必要性・実効性、すなわち訴えの利益は原則として認められる。
登記請求訴訟も、判決確定により意思表示が擬制され(民執法174条)、執行が完了するので、訴えの利益は認められる〔21〕。ただし、抹消登記の実現可能性を要求する見解もある。
既に給付判決を得ている場合には、訴えを提起しなくても判決正本により紛争解決を図ることができるので、時効中断や判決正本をなくしたなどの事情がない限り、訴えの利益は認められない。
イ. 将来の不法行為に基づく損害賠償請求が認められるか。
将来の給付の訴えは、必ずしも給付判決を得ることによって紛争が解決するものではないから、無駄な訴訟を排し、被告の応訴の煩わしさや訴訟不経済を防止するため、特に訴えの利益(将来給付の利益)が必要である。
具体的には、①将来給付を求める基礎となる資格(請求適格)が存在し、②「あらかじめその請求をする必要」(135条)がなければならない。なお、条件付請求(代償、敷金返還)の場合は、①を当然に満たすので、②の検討のみでよい(H22新司)。
ウ. 本問において①は満たされるか。条件付請求権などとは異なり、請求権発生の原因事実さえ未だ生じていないことから問題となる。
原告は、将来給付判決により履行期が到来すれば(条件が成就すれば)直ちに強制執行ができるという利益を有する。一方、被告は、口頭弁論終結後における給付義務の変更・消滅を主張するために請求異議の訴え(民執法35条)を提起し強制執行を防がなければならないという不利益を負う。
そこで、両者の利益を衡量し、①´事実関係の存在とその継続が予想されること、②´請求権の成否・内容につき債務者に有利な将来の変動事由があらかじめ明確に予想されること、③´かかる変動事由を請求異議事由として主張立証する負担を債務者に課しても不当でないこと、が必要と解する(〔22〕 権利の存在→消滅→主張という流れで覚える)。
エ. 不動産の不法占有者に対する賃料相当額の損害賠償請求権は、
すべて要件を充足する。賃貸人による賃借人に対する転借料請求は、債務者の請求異議の負担が過大であり、③´を充足しない。
①´は居住用家屋や建物敷地は満たしやすく、駐車場は満たしにくい(H25重判2)。
オ. 形成の訴えの場合、形成判決による法律関係の変動を主張できるので、原則として訴えの利益はある。ただし、無意味な場合は認められない。
(3)確認の訴えは、給付の訴えと異なり、確認対象が無限に拡大し得るため、その限界を設定する必要がある。また、確認判決は執行力が付与されないため、紛争解決できる場合が限定される。そこで、確認の訴えにおいては、確認の利益が認められなければならない。
確認の利益が認められるには、①確認対象が適切であること、②即時確定の利益が存すること、③方法選択が適切であることが必要となる。(たい そく ほう)
ア. 一般的には、現に争われているⅰ自己の、ⅱ現在の、ⅲ権利法律関係の、ⅳ積極的確認請求が対象となる。例外的に、当該対象が確認訴訟によることが適切であれば、ⅰ*他人の、ⅱ*過去の、ⅲ*事実関係の、ⅳ*消極的確認請求でも確認の利益が認められる場合がある。
例:ⅰ*転借人による賃貸借契約の確認請求、賃借人による賃貸人の所有権確認の訴え
ⅱ*遺言者死亡後の遺言無効確認の訴え〔23〕、子の死亡後の親子関係確認の訴え〔A10〕
ⅲ*証書(書面)真否確認の訴え(134条)
ⅳ*被告の商標権の不存在の確認
第二順位抵当権者が自己の第一順位抵当権の確認を求めても、必ずしも抵当権実行を阻止できるわけではなく(不利な時期に競売にかけられる可能性もある)、むしろ第一順位抵当権者の抵当権の不存在確認を求めた方がより直接的であるから、後者の確認の利益を認めるべきである。
遺言無効確認の訴えは、過去の法律関係の確認を求めるものであるが、紛争を一挙抜本的に解決し、相続人らの法的安定性を図るものであるから、訴えの利益が認められる〔23〕。
遺産確認の訴えとは、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであり、現在の法律関係の確認を求めるものであるから、①を満たし、確認の利益が認められる〔24〕。(家事審判手続きの本案判断の前提問題となる事項でも、訴訟手続において争う原告の意思を尊重するべく、独自に確認対象とすることが有効・適切といえる。)
イ. ②は原告の法的地位と、危険不安とに区別できる。
具体的相続分の確認の訴えは、それだけで遺産分割等の内容が定まるわけでなく、遺産分割等の手続においてその前提と問題として判断されれば足りることから、①と②を欠く。確認の利益を欠くので、不適法却下される〔25〕。
遺言者の生存中に遺言無効確認請求をしても遺言者はいつでも遺言を撤回できるから、①も、②もない。心神喪失状態で回復の見込みがない場合についても同様である〔26〕。遺言者の生存中は遺言者の個々の財産について推定相続人が実体法上の権利を有しない(事実上の期待にすぎない)からである。
敷金返還請求権の確認の訴えは、条件付法律関係の確認を求めるものであり、確認対象は現在の権利又は法律関係であるから、①を満たす。また、条件付きの権利の存否を確定すれば、原告の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険は除去されるので、②も満たす。よって、訴えは適法である〔27〕。
ウ. 不存在確認請求に対して被告が給付請求の反訴を提起した場合、確認請求は③がないといえる。そこで、確認の利益を欠き、不適法却下される〔29〕。後訴の給付訴訟の反訴は、当事者と訴訟物が同じであるが、二重起訴の禁止(142条)には反しない。この場合、控訴審での給付訴訟の反訴提起に、相手方の同意(300条)は不要である。
(4)当事者適格とは、訴訟物たる特定の権利・法律関係について当事者として訴訟追行し本案判決を求め得る資格をいう。
ア 訴訟物である請求権を有しない者は、(例えば、給付訴訟では、自分以外の者に対する給付を求める場合、)原則として当事者適格を欠く。
しかし、権利能力なき社団はその名で登記をすることができず、組合員の代表者個人又は構成員全員の名義で登記するしかない。組合代表者としての登記もできない。そこで、組合が組合員に対する登記移転請求を求める場合、組合の当事者適格を認めるべきである〔9〕。(最判H26・2・27)総有権の帰属主体である構成員全員からの授権による任意的訴訟担当(可否は論点)を認める。
判決の既判力は構成員全員に及ぶ(115条1項2号)
イ 入会団体の原告適格を認めることは、紛争を簡明かつ短期に解決するために必要である。そこで、構成員から団体による授権があればその範囲で、明文なき任意的訴訟担当(可否は論点)が成立すると解する。(基M34組合は訴訟担当者)
本問では、…を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続による授権があるので、…の範囲で原告適格を有する〔11〕。
判決の既判力は構成員全員に及ぶ(115条1項2号)。
ウ 遺言執行者は管理処分権を有する(民法1012条1項)ので、原則として当事者適格を有する。しかし、遺言の執行として受遺者宛てに登記が経由された後は、右登記についての権利義務は受遺者にのみ帰属し、遺言執行者は管理処分権を失う。よって、遺言執行者は当事者適格を欠くので、相続人は、遺言執行者ではなく、受遺者を被告として訴えを提起するべきである〔12〕。
エ 原告適格について、代表役員の地位についての争いは、代表役員の地位に影響を及ぼすべき立場にあるか、その地位に法律上の利害関係を有することが必要である〔14〕。
法人の内部紛争では当事者適格について、実際の紛争主体、及び、紛争解決に不可欠な対世効を認めるに足りる法人の手続保障との関係で問題となる。判例は、法人が最も重大な利害関係を有し、法人を除外した訴訟では対世効により法人を拘束する根拠がなく、紛争の根本的解決にはならないことを理由に、法人にのみ被告適格を認めている〔15〕。
オ. 債権者代位訴訟では、代位債権者は民法423条により被代位債権につき管理処分権、すなわち当事者適格を有する(法定訴訟担当)。もし訴訟で被保全債権が認められない場合、当事者適格を失うので、訴えは不適法却下される。
債権者代位訴訟が提起されている場合、債務者は、債権者の被保全債権の存在を争って独立当事者参加をする場合には、当事者適格が認められる。両請求は被保全債権の存否につき非両立だからである。
カ. 第三者の訴訟担当とは、特別の理由によって本来の利益帰属主体の代わりに、又はこれと並んで第三者が当事者適格を有する場合をいい、法定訴訟担当(例:債権者代位)と、任意訴訟担当(例:選定当事者 30条〔A5〕)がある。
明文なき任意的訴訟担当も便宜であるから、①弁護士代理の原則(54条)や訴訟信託禁止の制限を回避・潜脱するおそれがなく、②これを認める合理的理由がある場合には、広く許容すべきである〔13〕。
例:組合の業務執行組合員が訴訟追行する。構成員の代わりに権利能力なき社団が訴える。
当てはめ:共同利益者は、自己の利益のために適切な訴訟追行をすることが期待できるので、①を満たす。訴訟についてより詳細な知識を有する者が訴訟担当をする場合、②を満たす。
判決は被担当者にも及ぶ(115条1項2号)。

Ⅱ 審理・進行
1総則 (1)口頭弁論とは、公開の法廷で、当事者双方の関与の下、受訴裁判所の面前で、口頭で弁論及び証拠調べを行って裁判資料を収集し、それに基づき裁判をする審理手続ないし審理方式をいう。(論M22~26参照)
必要的口頭弁論の原則とは、①判決をするにあたっては、口頭弁論を開かなければならず(87条1項)、②口頭弁論でなされた陳述やそこに提出されたものだけが裁判資料となる原則をいう。その趣旨は、当事者に手続を保障し適正・公平な裁判所を担保すること、口頭弁論の諸原則を実現することにある。
①の例外は要件の欠缺が補正できないとき(140条、290条)書面審理により上告を理由なしと認めるとき(319条)などである。②の例外は、陳述擬制(158条)などである。
(2)諸原則 ア. 公開主義(憲82条)とは、訴訟の審理及び裁判が国民一般の傍聴し得る状態で行われなければならないという原則である。
その趣旨は、裁判の公正を担保し、審理の質を高め、国民の司法に対する信頼を確保することにある。
イ. 双方審尋主義とは、裁判所の中立性を前提として、対立当事者双方にそれぞれの言い分を主張する機会を平等に保障しなければならない原則である。
その趣旨は、当事者双方に十分な訴訟活動の機会を与え、公平な裁判を実現することにある。
ウ. 口頭主義(87条1項)とは、弁論と証拠調べは口頭で行われなければならず、口頭で陳述されたものだけが裁判資料として判決の基礎たり得る原則である。
その趣旨は、公開主義・直接主義と結合してその機能を高めることにある。
書面による補完として、①訴状の提出(133条1項)、②口頭弁論調書の作成(160条)、③準備書面の提出(161条1項)、④判決書の作成(253条)がある。論じるときは、原則→弊害→各制度+弊害除去の内容、というふうに書く。
エ. 直接主義(249条1項)とは、当事者の弁論の聴取や証拠調べを、判決をする裁判官自身が行う原則である。
その趣旨は、陳述の趣旨・真偽を正確に理解し、その結果を裁判に直結させることにある。
例外として、①弁論の更新(249条2項)、②受命・受託裁判官による証拠調べ・証人尋問(184条、185条、195条)がある。
①の趣旨は訴訟経済。②は法廷内の証拠調べが困難ないし適切でない場合。ただし、直接主義が強く要請される証人尋問は限定(195条)。
(3)口頭弁論の準備
審理の充実と促進のため、口頭弁論の事前準備制度が定められている。
裁判所が関与しないものとして、当事者照会(163条)、訴え提起前における証拠収集の処分等(132条の2以下)がある。
裁判所が関与するものとして、準備書面(161条)、争点証拠整理手続などがある。争点証拠整理手続はさらに①準備的口頭弁論(164条)、②弁論準備手続(168条)、③書面による準備手続(175条)に分かれる。
ア 当事者照会とは、当事者自ら直接相手方当事者に対し、必要な事項につき照会書を送付し、一定期間内に文書で回答するように求めることができる制度である。
準備書面に記載されていない事実は、相手方が在廷しないときには口頭弁論で主張できない(161条3項)。
イ 準備的口頭弁論とは、口頭弁論期日に、公開の法廷で争点及び証拠の整理を行う手続である。弁論準備手続とは、口頭弁論期日外の期日において、受訴裁判所または受訴裁判官が主宰し、当事者双方が立ち会って行われる争点整理手続である。書面による準備手続とは、当事者の出頭なしに、準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続である。
ウ 電話会議システムは、弁論準備手続(170条3項)と書面による準備手続(176条3項)で利用可能。(204条1号は証人尋問の場合。)説明義務がある(167条、174条、178条)。
(4)口頭弁論の一体性とは、口頭弁論終結に至るすべての口頭弁論は、全体を一体としてとらえて、等しく判決の基礎とされることをいう。
適時提出主義とは、攻撃防御方法は、訴訟の進行状況に応じて適切な時期に提出されなければならないとする建前である。
時機に後れた攻撃防御方法は却下される(157条 〔45〕)。この趣旨は、当事者の公平・審理の効率性確保に寄与する適時提出主義(156条)を実効的なものにすることにある。要件は、①時機に後れて提出したこと、②故意又は重大な過失があること(相殺・建物買取請求で問題 弁護士か本人訴訟か)、③訴訟の完結を遅延させる場合であることである。
(5)当事者の欠席について
必要的口頭弁論の原則(87条1項)→口頭弁論の原則=出席が原則→しかし訴訟促進・出席当事者の利益→そこで制度。
ア. 一方当事者の欠席について、①最初の期日に欠席の場合、陳述擬制(158条)がなされ、欠席当事者が明らかには争っていない事実は擬制自白(159条3項)となる。裁判所は判決の言渡し(243条1項 調書判決が多い(254条))又は続行期日の指定(93条)をする。 ②続行期日における欠席の場合、陳述擬制(158条)は適用されない。
イ. 当事者の双方が欠席した場合、1月以内に期日指定の申立てがないか、又は、あっても連続して2回欠席すれば取下げが擬制される(263条)。証拠取調べはできる(183条)。続行期日なら判決の言渡し(243条)もできる。
(6)弁論再開(153条)は裁判所の職権事項で、当事者に申立権はない。その根拠は手続的正義にある。既判力の遮断効との関係で、裁判所に弁論の再開義務が認められる場合がある〔41〕。
弁論の併合(153条)とは、同一裁判所に別々に係属している数個の請求を同一の訴訟手続で審理・判決すべきことを命じる処置をいう。制度趣旨は、審理を整理して判決の矛盾を防止することにある。証拠資料は流用できる(ペー1)が、証人尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をすれば再度尋問をしなければならない(152条2項)。別々の裁判所なら移送→併合。

2訴訟行為
(1)総則 ア. 訴訟行為とは、裁判に向けて訴訟手続を展開させていく当事者及び裁判所の行為である。
本案の申立てとは、両当事者の請求認容又は棄却の終局判決を求める申立てである。例:被告の請求棄却を求める申立て
攻撃防御方法とは、原告・被告が申立てを基礎づけるために提出する一切の裁判資料をいう。
訴訟行為は、訴訟手続との関係で評価され、一定の訴訟法上の効果が認められるものであり、(訴訟上の行為である限り)実体法上の規定は適用されない。もっとも、訴訟開始前や訴訟外での行為は裁判官の指揮下でなされるものではないし、手続の安定性も害しないので、類推適用を認めてもよい。
イ. 攻撃防御方法は、法律上の主張、事実上の主張、立証の3段階で構成される。
事実上の主張に対する対応としては、否認、不知、沈黙、自白がある。不知はその事実を争ったものと推定され(159条)、沈黙は自白とみなされる(159条1項)。不知とは異なり、答弁書で否認するときは理由が必要となる(規則79条3項)。
ウ. 権利抗弁は援用があって初めて斟酌される(ex同時履行、対抗要件、留置権〔51〕)。(↔事実抗弁)
形成権が裁判外で行使された事実を主張すれば訴訟上も法的効果は発生する(形成権は権利抗弁ではない H21新司)。
エ. 裁判所は、当事者の付した抗弁の順位に原則として拘束されない。いずれの主張を認めるかは判決理由中の判断であり、既判力が生じないので(114条1項)、どちらを先に判断しても違いがなく、裁判所の判断を拘束するのは妥当でないからである。ただし、相殺の抗弁が判断された場合には、既判力が生じ(114条2項)、経済的出捐を伴う点で実質的敗訴である。そこで、相殺の抗弁が予備的に主張された場合には裁判所は当事者が付した順位に拘束される。
オ. 訴訟行為の評価としては、成否、有効無効、適法な行為として審理されるか、採否という4段階がある。瑕疵ある訴訟行為に対し、裁判所は補正を求め、追認等されれば瑕疵の治癒が認められる(34条参照)。
(2)訴訟契約とは、当事者あるいは当事者となるべき者が、特定の訴訟につき影響を及ぼす一定の効果の発生を目的とする合意である。例:不起訴の合意
ア(ア)明文にない訴訟上の合意は適法なものとして認められるか〔93〕。
確かに円滑かつ能率的な訴訟運営を図るという公益上の要請からすれば、これを否定すべきである(任意訴訟禁止の原則)。
しかし、処分権主義・弁論主義が妥当する民事訴訟においては、特定の訴訟行為についても当事者の意思を尊重すべきである。ただ、効果の不明確な明文の無い訴訟契約を無制限に認めては、当事者の裁判を受ける権利を害するおそれがある。
そこで、①処分権主義・弁論主義が妥当する範囲内であって、かつ、②合意の訴訟上の効果が明確に予想される場合には、明文の無い訴訟上の合意も許されると解する。
(イ)そして、訴訟上の合意がなされると実体法上の行為義務が生じ、その違反に対しては、相手方が契約の存在を抗弁として訴訟上主張することで間接的に訴訟上の効果が生じる(私法契約説)。例:訴えの利益を欠き却下
イ. 管轄の合意(11条)、飛躍上告の合意(281条1項ただし書):第一審判決後、控訴しない旨の合意
訴え取下げの合意、判決前の控訴しない合意も適法有効と解する。処分権主義の範囲内で効果も明確に予想されることから。
証拠制限契約・自白契約は弁論主義の範囲内で(①充足)効果も明確に予想される(②充足)から適法である。ただし、自白の対象として間接事実・補助事実を対象とする場合は、①を充足せず、自白契約は不適法である。
(3)形成 
ア 私法上の形成権が攻撃防御方法として裁判上で行使された場合、訴訟法上の効果と同時に私法上の効果も生じるか。
訴訟における直接の形成権の行使は、外見上は一つの行為であっても、私法上の形成権行使とその効果を援用する訴訟行為とが併存し、前者については私法法規が適用され、後者には訴訟法の規定が適用されることになると解する。なぜなら、形成権の行使が私法上の効果を生じることなく有利な裁判資料となることはないからである。
もっとも、形成権行使の抗弁又は訴え自体が却下された場合でも、常にその私法上の効果が残ることになると、行使者に酷となる場合もある。そこで、その形成権の行使を合理的に解釈して、形成権行使者がその効果の残存を望まない場合には、解除条件付き意思表示としてとらえ(、その私法上の効果は残存しないものと解す)る(新併存説)。
イ. 建物買取請求権の行使の意思表示を和解により撤回した場合について、新併存説と異なる立場の裁判例〔43〕があるが、新併存説のほうが明快である。R:建物買取請求権の行使は、土地の明渡を認める点で、実質的に敗訴に等しく、行使者はその効果の残存を望まない。したがって、解除条件付き意思表示であると解する。(あとは民法538条類推適用などで建物賃借人の地位を保護すればよい。)
ウ 相殺に対する反対相殺を認めれば、仮定の上に仮定を積み重ね、審理の錯雑化を招く。また、例外規定たる114条2項の適用範囲を無制限に拡大してしまう。訴訟外で権利行使できるから認めないことによる不都合はない。そこで、相殺に対する反対相殺は許されないと解する〔44〕。
(4)裁判所の役割 訴訟における活動は、判決の基礎となる事実や証拠を収集して事実を解明する側面と、口頭弁論手続を進行整理する側面とに分けられ、前者においては当事者主義が、後者においては職権主義が採られている。
ア. 職権進行主義とは、審理の進行・整理が裁判所の主導権の下で行われる原則をいう。
その趣旨は民事訴訟制度の能率的運営と訴訟遅延の弊害防止にある。裁判所は訴訟指揮権を行使する。(実体形成面=弁論主義、手続形成面=職権主義)修正として、申立権、責問権が当事者に認められる。
イ. 訴訟指揮権とは、訴訟の審理を円滑迅速かつ適正に進行させ整理するため裁判所に認められた審理の主宰機能である。例:期日の指定・変更(93条)その他17条、149条3項、157条、126条
申立権とは、裁判所の訴訟指揮権の発動を求める当事者の権限をいう。
責問権とは、方式規定の違反がある場合に当事者が異議を述べてその無効を主張し得る訴訟上の権能をいう。
①当事者の利益に関する任意規定違反の責問権は放棄することができる(90条)。②故意過失により、③遅滞なく異議を述べないときは、責問権を喪失し瑕疵が治癒される〔A14〕。①例:訴えの変更の方式の瑕疵、訴訟の中断中になされた訴訟行為、宣誓を欠く証人尋問、証人を当事者としてする尋問は瑕疵が治癒される。弁論の更新(249条2項)、裁判の公開は瑕疵が治癒されない。
ウ. 訴訟手続きの停止とは、訴訟の係属中、一定の事由の発生により、その訴訟手続が法律上進行しない状態になることである。例:中断
中断とは、訴訟係属中、当事者側の訴訟追行者がその一身に関する事情により訴訟追行上不能となったため、新追行者が代わって手続を追行する事由が生じた場合に、新追行者が訴訟をすることができるまで、法律上当然に生じる訴訟の停止である。例:当事者の死亡(124条1項1号)
ウ 送達
(ア)原則として交付送達(101条~106条)であり、交付送達ができない場合は、付郵便送達(107条)による。
それでもできないときは公示送達(110条、111条)。公示送達の場合、擬制自白は成立しない(159条3項)。公示送達を①知らない(無過失 リー463)受送達者は、②公示送達申立人が悪意有過失であれば、③知ってから1週間以内に97条により追完できる〔A13〕。
(イ)法律上の利害対立者になされた補充送達(106条1項)は無効であるが、事実上の利害関係の対立があるにすぎない者になされた補充送達は有効である。送達事務の円滑な遂行のためである〔40〕。
補充送達の受領能力たる「相当のわきまえ」(106条1項前段)とは、送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することが期待できる程度の能力である。7歳9カ月の者については否定される〔116〕。
(ウ)訴状の補充送達が無効でも有効でも、実質的に当事者に手続関与の機会が保障されたといえない場合には、再審事由となる(338条1項3号類推適用)〔40〕。∵338条1項3号の趣旨。このとき補充性(338条1項ただし書)を満たす。
公示送達と付郵便送達にも妥当するかは争いあり。ペー2〔40〕解説5リー465
(エ)付郵便送達の適法性について、送達事務取扱者である裁判所書記官の裁量が広く認められる。被告の救済については、確定判決の騙取による損害賠償請求、再審(338条1項3号)、慰謝料による解決などがあり得る〔39〕。

3弁論主義
(1)意義 ア. 弁論主義とは、訴訟資料の収集・提出を当事者の権能かつ責任とする原則をいう。対:職権探知主義
根拠は私的自治の訴訟法的反映にある(本質説)。処分権主義とともに、民事訴訟における当事者の主導権ないし自己責任原理たる当事者主義の発現であるが、処分権主義は訴訟物レベルで作用するのに対し、弁論主義は攻撃防御方法レベルで作用する点で異なる。その機能は、当事者の不意打ち防止にある。
イ. 第一テーゼ:裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎とすることはできない。(第一テーゼの準則の裏返しとして、主張責任が導かれる。)
第二テーゼ(自白の拘束力):裁判所は当事者間に争いのない事実はそのまま判決の基礎としなければならない。
第三テーゼ(職権証拠調べの禁止):当事者間に争いのある事実を証拠によって認定する際には、必ず当事者の申し出た証拠によらなければならない。
(2)総論 ア 主要事実とは、権利関係の発生等を直接定める法規の構成要件に該当する事実である。例:金銭の授受 実務では要件事実と主要事実とは同じものとして扱われている。
間接事実とは、主要事実の存否を推認するのに役立つ事実である。例:被告が急に金回りが良くなる
補助事実とは、証拠の信用性に影響を与える事実である。例:証拠たる証人の証言に対する、証人の性格
イ 弁論主義の適用される事実には、間接事実や補助事実は含まれず、主要事実に限定される。
当事者の意思の尊重、不意打ち防止の見地から、訴訟の勝敗に直結する事実たる主要事実を弁論主義の対象とすれば十分であるからである。また、間接事実や補助事実は主要事実の認定につき証拠と共通の機能を果たすところ、これらについて主張責任や自白の拘束力を認めることは自由心証主義(247条)に反するおそれがあるからである。
重要な間接事実、すなわち主要事実の存否を推認する蓋然性の程度が高い事実についても対象とする説がある(リー209)。当事者の不意打ちを防止するためである(裁判所の釈明義務として処理してもよい)。批判:むしろ不明確であり不意打ちを招く。
ウ. 主張事実と認定事実に小さなずれがあっても弁論主義に反しない。なぜなら、当事者に対する不意打ちとはならないからである。〔46〕の差戻審…死因贈与の主張に対し生前贈与を認定することは許される。贈与を基礎づける事実は主張されているのであるから、贈与の時期がいつかの差異にすぎず、結論に影響を与えない(よって、当事者の不意打ちとならない)。
エ. 弁論主義の機能が当事者の不意打ち防止にあることから、当事者に対して重要な間接事実の主張を促し、争点を間接事実のレベルで具体化するなどの釈明がされるべきである。(〔49〕解説3)弁論主義に反しないとしても、釈明義務を論じる。
(3)各論 ア. 一般条項においては、規範的事実(ex過失)を主要事実とすると、それを基礎づける個々の具体的事実(評価根拠事実 ex飲酒運転)を裁判所が職権で認定できることになり、不意打ちのおそれがある。
そこで、この場合には評価根拠・障害事実を主要事実とすべきである。例:注射器の消毒不完全、注射器の不良は、ともに主要事実であり、当事者が主張しない場合は認定することができない。(なお、弁論主義に反する場合でも結論が変わらなければ原判決を破棄しない。)
イ. 例:代理による契約成立の認定〔47〕新司H24×、事実の来歴・経過(共同相続の主張→死因贈与の認定〔46〕)×、
過失相殺について主張責任はない〔A18〕大島515。過失相殺を基礎づける事実についてすべて主張を要するとすれば、当事者間の公平の観点から被害者・債権者の過失を考慮するという過失相殺の趣旨に反するからである。(→裁判所の釈明義務の検討)
公序良俗違反は民法90条違反の事実の主張があれば当事者が主張しなくても認定できる〔48〕。弁論主義の根拠は私的自治にあるところ、公序良俗違反は公益的規制に関するものであり私的自治が及ばないからである。信義則・権利濫用は争いあり。
注意:昔の判例の考え方は変更されている。したがって、判例に追随するのではなく、自分で何が本件の主要事実かを考える。裁判所が当事者の主張しない事実に言及した場合、それが主要事実でないかを考える。(その後、重要なずれか否かを検討する)
権利は権利者の意思によって行使されて初めてその権利の内容たる利益を享受する。そこで、留置権や同時履行の抗弁権、対抗要件の抗弁などの権利抗弁は、当事者の主張を要する〔51〕。
ウ. 被告が原告の主張する請求原因事実を否認している。この場合、右請求原因として主張された事実を証拠上肯定することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって右請求原因たる主張の立証がないとして排斥することは、その認定に係る事実が当事者によって主張されていないとしても、弁論主義に反しない。主張が認められないのは、請求原因事実の立証ができなかったからであって、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである〔A16〕。(抗弁事実ではなく、積極否認事実を勝手に認定した場合である。抗弁事実なら当事者の主張が必要となる。)
X→Y1→Y2と所有権移転登記がなされている土地につき、Xは所有権に基づく抹消を請求した。XはX→Y1→Xを主張し、Y側はX→Y1→Y2を主張した。X→Y1→X→Y2を認定するのは弁論主義違反である。X→Y2は主張のない主要事実(抗弁事実)だからである〔A17〕。
(4)主張責任 ア. 主張責任とは、訴訟上ある事実が弁論に現れない結果、これに基づく自己に有利な法律効果の発生が認められないことになる一方当事者の不利益をいう。例:原告が金銭授受の事実を主張しないと、貸金返還請求権という原告に有利な法律効果の発生は認められない。
社会通念上同一性が認められれば、当事者の主張とは少し違いがあるとしてもよい(当事者の不意打ちとして重大かを検討する)。
具体的な配分は、法律要件分類説により判断され、証明責任と重なる。
イ. 一方が援用しない他方に不利益な事実の陳述を、判決の基礎とすることができるか。
この点、弁論主義は裁判所と当事者との役割分担の問題であるから、当事者のいずれかが主張した事実であれば、裁判の基礎とすることができる(主張共通の原則 〔50〕)。
ウ. 訴訟資料とは、当事者の弁論から得られた裁判資料のことをいう(事実上の主張レベル)。証拠資料とは、裁判所が当事者の証拠調べによって獲得した内容のことをいう(立証レベル)。
弁論主義における主張責任から、証拠資料は訴訟資料を補えない。つまり、主要事実であっても、証拠調べから顕出したにすぎない場合には、裁判の基礎とできない。
(5)釈明 ア. 釈明権とは、事件の内容をなす事実関係や法律関係を明らかにするために、当事者に対して、その主張についての質問を発し、立証を促す裁判所の権能・義務をいう(149条)。その趣旨は、弁論主義の補充・修正にある。→当事者の不意打ち防止、弁論権の保障、裁判の公正とそれに対する信頼確保、審理の充実、真実発見などから論じる。
消極的釈明とは、当事者が事案にとって必要な申立てや主張をしているが、それらに不明瞭・前後矛盾などがみられる場合に、これを問いただす釈明である。積極的釈明とは、当事者が事案の適切な解明に必要な申立てや主張・立証をしていない場合に、裁判所がこれを示唆し、指摘する釈明である。
当事者が釈明に応じない場合、敗訴、時機に後れた攻撃防御方法の却下など不利益を受けるおそれがある。
イ. 釈明権(許容性)について
積極的釈明は、過度に行使されると、相手方当事者との関係で裁判の公正に対する信頼を害し、争訟内容の自主的形成機能も阻害するため、歯止めが必要となる。当事者は忌避(24条1項)を主張し、異議(150条)を述べうる。
判例は、別個の法律構成を基礎づける事実関係が主張されるならば原告の請求を認めることができ、紛争の根本的な解決が期待できるにも関わらず、明らかに誤解などにより原告が主張しないときには、釈明を許している〔52〕。
裁判所に対する信頼を保護すべく、釈明権の範囲を逸脱したとしても、釈明に応じた当事者の行為は有効であり、上告審では是正できない。
ウ. 釈明義務について
裁判所に対する当事者や国民の信頼を確保するため、裁判所が釈明義務に反して釈明権を行使しなかった場合には、法令に違背するものと同視して上告審での是正を認めるべきである(312条3項(簡裁地裁高裁ルート ペー3×)又は318条1項)〔53〕。(控訴審の場合、控訴審が釈明権を適切に行使すると考えられ、瑕疵が治癒されるだろう。)
権利抗弁は釈明義務がない〔51〕としてもいいが、争いある。
積極的釈明については、当事者の公平や私的自治との関係で、裁判所は必ずしも釈明義務を負うわけではない。釈明義務の有無は、4要素により判断する。判決における勝敗転換の蓋然性、当事者による法的構成の成否、当事者の主張の期待可能性、当事者の公平といった事情を考慮して決する。(しょほきこう)例:異なる法的構成、重要な間接事実・補助事実、先行自白など。
エ. 法的観点についても釈明すべきと解する。確かに法的事項の判断は裁判所の職責であるが、法律構成が変われば争うべき事実も変わり、当事者の不意打ち防止・審理の充実の観点から釈明が求められる場合がある。〔46〕解説3 R当事者の攻防を尽くさせるべき法律構成の変更かを検討する。
XYともに主張しない信義則違反の点について、Xに主張するか否かを明らかにするよう促すとともにYに反論の機会を与えることなく、Yは信義則上、退職の効果を主張することができないと判断した。これにつき、釈明権行使を誤った違法がある(最判平22・10・14)。(参考:判断された事実の主張はしているので、弁論主義の違反はない。)

4証拠総論
(1)基本概念 ア 証拠とは、裁判所による事実認定のための資料である。証拠方法とは、裁判官が、その五官の作用によって取り調べることのできる有形物であり、証拠調べの対象である。証拠資料とは、裁判所が、証拠調べによって獲得した内容である。証拠能力とは、ある有形物が、証拠方法として取り調べの対象とされ得る資格である。証拠力とは、一定の証拠資料が事実認定に役立つ程度である。
証拠能力あるものは証拠方法として証拠取調べの対象となり、証拠調べによって裁判所は証拠資料を獲得し、その証明力を判断することになる。立証には証明と疎明、本証と反証などがある。
イ 直接証拠とは、争われている主要事実の存否を直接証明する証拠である。例:弁済の抗弁事実を証明するための領収書
間接証拠とは、主要事実の存否を推認せしめる間接事実及び補助事実を証明するための証拠である。例:金銭の授受を推認させる間接事実を証明するための証人の証言
本証とは、客観的証明責任を負う者の提出すべき証拠ないし証明活動である。対:反証
証明とは、裁判の基礎として明らかにすべき事項について、裁判官が確信を得た状態、又はこの状態に達するように証拠を提出する当事者の行為である。
疎明とは、裁判官が、証明の程度には至らず、一応確からしいとの認識を得た状態、又はその状態に達するように証拠を提出する当事者の行為である。例:民保法13条2項
厳格な証明とは、法定された(180条以下)証拠調べ手続によった証明である。対:自由な証明
経験則とは、経験から帰納される知識・法則である。
ウ 証明を要するのは、主要事実、間接・補助事実(主要事実の認定に必要な範囲)、専門的経験則である。法規、経験則は証明を要しない。
もっとも、事実のうち顕著な事実(公知の事実・職務上顕著な事実)、当事者間に争いのない事実は不要証事実である(179条)。
(2)自白
ア(ア)裁判上の自白とは、①口頭弁論又は争点整理手続期日における、②相手方の主張と一致する、③自己に不利益な④事実の陳述である。
その効力としては、審判排除効(弁論主義の第2テーゼ)、不撤回効、不要証効(179条)がある。関係:審判排除効ゆえに不要証効→ゆえに不撤回効
(イ)裁判所において当時者が自白した事実は審判排除効を生じ、証明を要しない(179条)。
不要証効、審判排除効に対する当事者の信頼を保護するために、裁判上の自白が成立した場合には、原則として撤回できないと解する。
イ. ⅰ刑事上罰すべき他人の行為により自白がなされた場合、再審事由に該当し(338条1項5号)、適正手続の観点から、撤回が許される。確定判決の既判力を解除するものではないので、有罪判決の確定等(338条2項)は必要ない。
また、自白の不撤回効の根拠は不要証効に対する相手方の信頼保護にあるので、ⅱ相手方の同意があれば撤回は許される。
ⅲ自白内容が、真実に反し、かつ錯誤に基づく場合〔56〕には、撤回が許される。自白内容の反真実性の立証責任が自白した者に課せられ、相手方の保護が図られるからである。また、錯誤があり真意に基づく自白とはいえないからである。判例によれば、反真実性の証明があれば、錯誤が事実上推定される。
ウ. ③自己に不利益な事実とは、基準が明確であることから、相手方が証明責任を負う事実をいうと解する。(③の当てはめは簡単に)
エ. ④間接・補助事実は自白の対象とはならない。これらは主要事実の認定につき証拠と同様の機能を有するところ、これらについて自白の拘束力を認めると、自由心証主義(247条)に反するおそれがあるからである〔54〕。
(重要な間接事実については、当事者の不意打ちを防止するために、認めてもよい。文書成立の真正に関する補助事実の自白は、処分証書について認めてもよい。リー233)
オ. 権利自白とは、請求の当否の判断をなす先決的な権利・法律関係についての自白である〔55〕。例:原告の所有権の存在の主張に対して、被告が原告の所有権を認めること
法律関係の判断は裁判所の専権事項であるから、原則として権利自白に自白としての拘束力はないと解する。
所有権については、原始取得から現在までの所有権をすべて証明することは容易ではなく、法律関係が日常生活概念として受け入れられているので不意打ちもないことから、権利自白が成立すると解する。
カ. 擬制自白とは、当事者が口頭弁論・争点整理手続において、相手方の主張した事実を明らかには争わない場合に、当該事実を自白したものとみなされることである(159条1項(欠席した場合3項が1項を準用))。
(3)その他
ア. 自由心証主義(247条)とは、裁判所が事実認定をするに当たり、証拠方法の選択及び証拠の証明力の評価について、裁判官の自由な判断にゆだねる主義をいう。
その内容は、①証拠方法の無制限と弁論の全趣旨のしんしゃく、及び、②証明力の自由評価である。
事実認定は恣意的なものであってはならず、あくまで経験則を適切に用いて行われなければならない。経験則違反は法令違反と同視され、上告等の理由になる〔114〕。
イ. 当事者の一方が提出した証拠は、相手方が援用しなくとも、当然に相手方にとって有利な事実の認定にも用いられる(証拠共通の原則)。理由:自由心証主義。帰結として、証拠調べ開始後は相手方の同意なくして証拠申出を撤回できない。取調べ終了後は裁判官の心証が形成されるので、相手方の同意があっても撤回は不可能である。
ウ. 自由心証主義の下では、真実発見の要請から、すべての証拠能力が認められるのが原則である。しかし、相手方当事者の地位に対する不当な侵害を認めるべきではないし、訴訟手続の公正さへの信頼を確保し、人格権侵害の誘発を防止すべきである。そこで、採取手段が、人格権を侵害し、反社会的なものである場合には、例外的にその証拠能力を否定すべきである。
エ. ①の例外に説によってはなるものとして、文書の形式的証拠力(228条)、証明妨害(224条、229条2項〔61〕など)、証拠契約がある。②は経験則により拘束される。
証明妨害とは、当事者の一方が、訴訟上の義務に反し故意に相手方の立証を妨げる行動をとったときは、それだけでその者に不利な事実認定を妨げないとすることである〔61〕。心証説など争いあり。
オ. 民事訴訟における事実認定に必要な心証の程度について。一点の疑いも許されない自然科学的証明とは異なり、経験則に照らして通常人が日常生活において疑いを抱かない程度の、十中八九のいわゆる高度の蓋然性の証明で足りる〔57〕。
カ. 損害賠償額の認定(248条)について〔58〕。

5証明責任
(1)証明責任とは、ある事実が真偽不明の場合に負う、その事実を要件とする自己に有利な法律効果の発生又は不発生が認められないことになる、一方当事者の不利益をいう。例:転貸借における背信性は賃借人がその不存在を証明しなければ解除が認められる。
その趣旨は、裁判所が主要事実の真偽不明を理由に裁判を拒否することを防止することにある。
本証とは客観的証明責任を負う者の証明活動をいう。∴上述の定義より、本証は要証事実について裁判官の確信を生ぜしめなければならない。反証は裁判官の確信を動揺させ真偽不明に追い込めればよい。
(2)ア. 条文の文言を手掛かりに、自己に有利な法律効果の主張をする者は、その効果の発生を基礎づける適用法条の要件事実について証明責任を負う(法律要件分類説)。具体的には、権利根拠規定は権利を主張する者が、権利障害規定、権利消滅規定、権利阻止規定は権利を否定する者が証明責任を負う。
もっとも、文言や形式のみで判断すれば不公平を招く場合もあり、形式的基準を手がかりにしながらも、立法趣旨や当事者間の公平を考慮して分配することが必要となる。
イ. 準消費貸借の旧債務の証明責任:債務者が旧債務の不存在について証明責任を負う。旧債務の証拠は破棄され、新債務の証書には旧債務のことは記載されない場合が多いため。
無断譲渡・転貸における背信性:賃借人が背信性の不存在について証明責任を負う〔64〕。無断譲渡・転貸は、通常、信頼関係を破壊する背信性を有するため。
虚偽表示における第三者の善意:第三者が自己の善意を証明する〔63〕。94条2項は1項との相対的な関係において権利障害規定だからである。
(3)証明の負担軽減の制度として、①証明責任の転換、②法律上の推定、③暫定真実、④立証困難・証拠偏在の救済等がある。
証明責任の転換とは、一般の証明責任の分配とは異なり、法律の規定によって、反対事実について相手方当事者に証明責任を負わせることである。例:自動車損害賠償保障法3条ただし書
事実上の推定とは、推定が、裁判所の自由心証の一作用として経験則を用いて事実上行われる場合である。
法律上の推定とは、経験則が予め法規化されており、推定がその規定の適用として行われる場合である。例:民法186条2項、188条
暫定真実とは、前提事実の証明を要せず、無条件に一定事実を推定し、ある規定の要件事実の不存在の証明を相手方に負わせる法技術である。例:民法186条1項(基M162、リー271)
間接反証とは、ある主要事実について証明責任を負う者が、これを推認させるに十分な間接事実を一応証明した場合に、相手方が、これと両立するが前者の立証した間接事実から主要事実への推認を揺るがせる間接事実を立証することによって、主要事実につき裁判官の心証形成を妨げる立証活動である。

6証拠調べ
(1)証拠調べ開始後(終了前)には相手方の同意なくして証拠申出の撤回は許されない。証拠共通の原則の下、相手方の信頼を害するからである。証拠調べ終了後は、既に証拠申出は目的を達しているし、裁判官の心証も形成されているので、撤回できない。
唯一の証拠方法の却下(181条参照)は原則として違法とされる(判例)。双方審尋主義の理念より。
審理の充実・促進を図るために、集中証拠調べ(182条)が採られている。
証拠調べの必要性の有無をめぐる判断に対し、これを不服として即時抗告をすることはできない(338条1項参照)〔A24〕。
(2)証人尋問・人証
日本の裁判権に服する者は、すべて証人義務を負う(190条)が、一定の場合には証言を拒絶することができる(196条、197条1項)。証人と一定の親族等の自己負罪拒否権(196条)、公務員の秘密保持義務(197条1項1号)、法定専門職の守秘義務(同項2号)、技術又は職業上の秘密(同項3号)、などが問題となる。
技術又は職業上の秘密(197条1項3号)について、「技術の秘密」とは、その秘密が公開されると技術の有する社会的価値が下落し、これによる社会活動が不可能ないし困難になるものをいう。また、「職業の秘密」とは、その秘密が公開されるとその職業に深刻な影響を与え、以後の遂行が困難になるものをいう〔A23〕。報道関係者の取材源もこれに含まれるが、実質秘に当たる場合でも、保護に値するかどうかは、秘密の公表によって秘密主体が受ける不利益と、証言拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量によって決定される〔68〕。
テレビ電話会議システム(204条1号)、ビデオリンク方式(204条2号)が利用可能である。
当事者尋問における当事者は証拠方法であるから、そこでの供述は訴訟資料とならず、自白にはなり得ない。
当事者尋問の補充性の原則は廃止されている(207条2項参照)。手続は証人尋問の手続に関する規定が準用される(210条)。当事者が義務に反した場合、尋問事項に関する相手方の主張を真実と擬制できる(208条)。
(3)書証
ア.  形式的証拠力とは、文書が挙証者の主張する特定人の意思に基づいて作成されたものであることである。
実質的証拠力とは、形式的証拠力を備えた文書の記載内容が、要証事実の証明にどれだけ役立つかの程度である。
文書の証拠力は、まず形式的証拠力(作成者の真正)を判断し、さらに実質的証拠力(内容、証明力)を判断するという2段階の構造により判断される。実務ではまず①成立の真正について認否をとる。①否→②意思に基づく署名・押印か→否→作成者の印章により顕出された印影か→認なら二段の推定。①ないし③は全て補助事実。
文書の成立の真正について相手方が相当な理由を明示して(規則145条)争った場合、証拠によって真正な成立を証明することが必要になる(228条1項)。
処分証書とは、意思表示その他の法律行為を記載した文書をいう。処分証書は、その文書の性質上、形式的証拠力の審理判断は実質的証拠力の検討とほとんど重なるため、その書証が真正に成立したと認められた場合には、特段の事情がない限り、その記載内容である法律行為等がなされたものと認められる。
イ. 私文書には推定規定がある(228条4項)。
「本人…の署名又は押印があるとき」とは、本人…の意思に基づいて顕出されたことを意味する。
印影が本人の印章によって顕出されたものであるときは、本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定され、その結果228条4項により、文書全体について真正に作成したものと法律上推定される(二段の推定 〔71〕)。
1段目の反証は、窃取、冒用。2段目の推定の反証は改ざん・変造。
ウ. 文書提出命令の申立て(219条、221条(各号を明らかにする))がなされ、それに理由があると認めるときは、裁判所は決定で所有者に対し文書提出を命じる(223条1項)。
当事者が文書提出命令に従わないとき、裁判所は当該文書の記載に関する相手方の主張(文書の内容と成立)を真実と認めることができる(224条1項・2項)。その文書しか証拠たり得ないときには、証明主題自体たる主要事実について相手方の主張を真実と認めることができる(同3項)。
エ.  220条3号に基づく申立ては、実質的に4号に基づく場合とほぼ同じ結果になるので、刑事関係文書のみ意義がある。
文書提出の一般義務が220条4号に定められている。例外として、刑事訴訟関係文書(3号〔70〕)、①「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により」②「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」(4号ロ)、技術・職業上の秘密文書(4号ハ、197条 取材源に関して〔68〕)、自己専利用文書(4号ニ〔69〕)などは、文書提出義務が否定される。
4号ロ:①公務員が職務上知り得た秘密であり、かつ、②公務遂行の支障を生ずるものである。(①は、実質秘の要件が含まれているが、これは②と重なる。)公務員が職務遂行の過程で知り得た私人の秘密であって、公にされると私人との信頼関係が損なわれ、公務の公正かつ円滑な運営に支障を生じることになるものも含まれる〔67〕。
調査内容の真実性正確性を担保するには、被調査者の任意の協力による真実に合致した正確な報告が行われることが重要。調査票情報の保護を図り情報保護に対する信頼を確保することが必要。仮に情報を開示すると、被調査者の信頼を損ない、被調査者の任意の協力を通じて統計の真実性正確性を担保することが著しく困難となる(H25重判3)。
4号ハ(197条):技術又は職業上の秘密文書とは、①実質秘、かつ②保護に値する秘密である。実質秘とは、その事項が公開されると、技術上の社会的価値が下落する(職業の遂行が困難となる)ものをいう。保護に値する秘密か否かは、比較衡量により判断する。
銀行の守秘義務は、個々の顧客との関係で認められる。開示を求められた顧客情報について、当該顧客自身が開示義務を負う場合、銀行は当該顧客に対して守秘義務を負わない〔A23〕。
4号ニ:自己利用文書の要件は、①外部の者に開示することが予定されていないこと、②開示されるとプライバシーが侵害される又は自由な意思形成が阻害されるなどのおそれがあること、③特段の事情がないことである〔69〕。(が ぷ と)
③特段の事情の例として、整理回収機構が守秘義務を負わず、銀行は解散するのでもう活動せず、自由な意思形成が阻害されすことはない、という場合がある。(これは②と重なる? 要確認)
③株主代表訴訟は、会社が役員に対してなしうる責任追及(会社法423条1項)を株主としての地位に基づいて代位行使できるにすぎず(同847条1項参照)、銀行と同一の立場に立って本来公開される予定のない文書について利用する地位を株主X1らに付与する制度ではない。よって、③特段の事情はない〔69解説2(3)〕。

Ⅲ 終了
1当事者の意思による訴訟終了としては、訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解がある。
(1)訴えの取下げとは、訴えによる審判要求を撤回する旨の、裁判所に対する意思表示である。
ア 判決言渡し後も、終局判決の確定時までは、原告は自由に訴えを取り下げることができる(261条1項)。
訴えの取り下げは、被告の訴訟上の地位を保障する必要があることから、被告の同意を要する(261条2項)。
イ 訴えが取り下げられると、訴訟係属は遡及的に消滅し(262条1項)、紛争解決基準は示されない。
ウ 終局判決後、訴えを取り下げた場合、同一の訴えを提起することはできない(再訴禁止効 同2項)。あくまで再訴禁止効が生じるのは、終局判決後の訴え取下げである。終局判決がなされる前には、再訴禁止効が生じないことに注意する。
その趣旨は裁判を徒労に帰せしめたことに対する制裁・濫訴の防止にある。同一の訴えとは、①当事者と訴訟物が同じであり、②訴えの利益について事情の同一がある場合(∵①だけでは趣旨に反しない。むしろ当事者の裁判を受ける権利を不当に奪うことになる。この点で二重起訴禁止と異なる)をいう〔A30〕。
エ 訴えの取下げの意思表示に瑕疵があった場合、民法の意思表示の規定を類推適用できるか。
判例は、訴えの取下げにおいて民法の意思表示の規定は適用されないとする。訴えの取下げは訴訟行為であって、手続の安定を図る必要があるからである。ただし、詐欺・強迫など刑事上罰すべき他人の行為に基づく場合には338条1項5号の法意に照らし、訴えの取下げを無効とし、かつその無効主張のためには有罪判決等の要件(同条2項)は不要であるとする〔92〕。
これに対し、訴えの取下げの場合には手続が終了するので新たな手続が築かれないことから手続の安定を考慮する必要はない、判例によれば錯誤による訴えの取下げの効力を否定できないとの批判がある(私法規定適用説)。
オ 訴えの取下げが訴訟係属全体を遡及的に消滅させるのに対し、上訴の取下げは上訴審の訴訟係属のみを消滅させる。
(2)請求の放棄とは、原告の、請求に理由がないことを自認する裁判所に対する意思表示である。
請求の認諾とは、被告の、請求に理由があることを認めるとの裁判所に対する意思表示である。
ア. 要件は①訴訟物の処分可能性、②請求が法律上許されるものであることである。訴訟要件の具備は不要と考える(∵請求の放棄・認諾は許されず、訴えを却下すべきである)。
請求の放棄・認諾がなされると、調書が作成され(160条)、調書の記載は「確定判決と同一の効力」を生じる(267条)。執行力・形成力を生じる。
イ. 既判力は認められるか。再審を経ることなく放棄・認諾の無効・取消しの主張を認め得るか否かと関連して問題となる。
確定判決と同一の効力という文言から、既判力を認めるべきである。しかし、既判力の根拠は手続保障の結果としての自己責任にあるので、実体法上の無効・取消しを主張して手続の続行を求めることができる(何でも○ 制限的既判力説)。
異説:既判力の絶対性が没却され概念の統一性を図れない。放棄・認諾の成立過程は裁判所が常に関与・調査して意思表示の瑕疵のないこと確認した上で調書を作成させるものではなく、既判力の正当化根拠としての手続保障が確保なし。既判力なし。
ウ. 瑕疵を争う方法は訴訟上の和解に準じて、期日の申立て(従前の訴訟)、新訴(再審に準じた訴え)の提起がある。
(3)訴訟上の和解とは、訴訟係属中に、両当事者が、訴訟物をめぐる主張につき、相互に譲歩することによって訴訟を全部又は一部終了させる旨の期日における合意である。
裁判所は訴訟が係属中である限り、どの段階であっても和解の勧試をすることができる(89条)。
和解は調書への記載により「確定判決と同一の効力」を生じる(267条)。民事執行法22条7号参照。執行力を有する点で、原告にとっては、実体法上の和解よりも有利である。
ア. 既判力の有無:判例は既判力を認めながら、実体法上の無効・取消原因が存在する場合、和解は無効であって、既判力は生じないとする〔94〕。
(しかし、再審によらない無効主張を認めることになり、既判力の概念に反する。和解の場合、瑕疵の存在につき当事者は攻撃防御方法を尽くさせたうえで審理・判断していないことから、既判力を正当化する手続的基礎がない。また、和解には通常判決主文に対応する部分がないから、その客観的範囲が不明確である。)
参考:和解には民法上の拘束力がある(民法695条)ので、既判力を認める必要はない、という説が書きやすい。
したがって、既判力は否定すべきである。
イ. 訴訟上の和解に瑕疵がある場合、期日の申立て(従前の訴訟)、新訴(別訴)の提起のどちらかを当事者が選択できる。
別訴提起には審級の利益の確保、期日指定の申立てには従前の訴訟資料の利用とそれぞれメリットがあり、どちらか一方が勝る関係にない。したがって、当事者の意思に委ねるべきである。
ウ. 有効に和解は成立したものの、和解の内容の債務不履行を理由に解除する場合、これは和解成立後の新たな事由に基づく権利変動であるから(前訴は復活せず)、新訴提起によるべきである。

2裁判 (1)裁判とは、裁判機関が行う判定の結果又はその判断や意思を法定の形式で表示する訴訟行為である。
裁判は判決・決定・命令に区別される。判決とは、当事者の申立てのうち重要な事項(訴え・控訴・上告)に対する裁判所の終局的な判断をいう。判決と決定は裁判事項が重要か否かで区別でされる。
判決・決定は主体が裁判所なのに対して、命令は裁判長又は受命裁判官・受訴裁判官が主体となる。
全部判決・一部判決という範囲による分類、本案判決・訴訟判決という内容による分類ができる。
中間判決とは、訴訟の進行過程において、当事者間で争点となった訴訟法上・実体法上の事項につき、審理の途中で判断を示して終局判決を容易にするための判決である。例:所有権に基づく移転登記請求訴訟で、原告の売買による所有権取得の主張に対する判決 対:終局判決
終局判決とは、係属中の事件につき当該審級の審理を完結させる裁判である。例:全部判決、訴訟判決
本案判決とは、訴えによる請求、又は上訴による不服申立てに理由があるか否かを裁判する終局判決である。
訴訟判決とは、訴訟要件又は上訴の要件の欠陥を理由として、訴え又は上訴を不適法として却下する終局判決である。
(2)ア. 確定判決の騙取がされた場合、相手方としては、上訴の追完(97条)、再審請求(338条1項3号類推など)、損害賠償請求(他にも移転登記抹消請求)をして争うことが考えられる。
最判昭43・2・27…債務名義の騙取について、被告の防御をする手段方法等を講ずる機会を奪っているから、信義則(2条)に反し、その効力は認められない。
イ. 騙取して得た確定判決に対して、再審の訴えを経ることなく、直ちに別訴で判決の無効を主張して損害賠償を求めることが考えられる。①相手方の権利を害する意図、②不正な行為、③本来ありうべからざる内容の確定判決の取得及び執行、④損害の発生、という要件が満たされる場合には、再審の訴えを経ずに救済を求め得ると解する〔86〕〔39〕。①②④は規範力の根拠を否定し、③は既判力の趣旨を否定するからである。

3既判力 (1)既判力とは、確定判決の判断内容の後訴での通用力・基準性である。
既判力の趣旨は紛争解決の実効性を図ること、紛争の蒸し返し防止にある。
既判力の根拠は、手続保障が与えられた結果としての自己責任にある。
(2)作用 ①裁判所は既判力で確定された判断に拘束され、これを前提として後訴の審判をしなければならないという積極的作用と、②当事者が既判力の生じた判断を争うことは許されないという消極的作用とがある。(原則積極、当事者主張→例外消極)
既判力は後訴の訴訟物が前訴の訴訟物と①同一の場合、②先決関係の場合、③矛盾関係の場合に作用する。例:所有権に基づく妨害排除請求権の認容判決の既判力は、被告による所有権確認訴訟に及ばない(先決の矛盾で合わせ技とかはない)。
訴訟判決にも既判力はある。同一の訴訟要件を欠く訴えの蒸し返しを防止する必要があるからである。(H24重判4参照)
(3)具体的処理手順
前訴判決の確定○→当事者の同一性○→訴訟物の同一・先決・矛盾関係○→基準時の問題
       ×→二重起訴禁止 ×→第三者へ拡張        ×→理由中の判断
(4)基準時 既判力の根拠は手続保障の結果としての自己責任にある。そこで、既判力の基準時は、訴訟資料を提出できる最終時点、つまり、原則として事実審の口頭弁論終結時である(民執法35条2項)。
基準時前に存在していた訴訟資料を基準時後に提出して基準時の権利関係の存否を争うことは許されず、そのような事由が提出されても裁判所は審理せず排除しなければならない(既判力の遮断効 頻出)。
ア. 形成権について、基準時前に形成原因が発生し、基準時後に形成権行使がなされた場合、いずれの時点を基準に考えるか。行使の意思表示をしてはじめて権利変動が生じるものであるから、前訴基準時後に生じた事由として遮断効は及ばないのではないか問題となる。
イ. R1取消権は、前訴の訴訟物の発生障害事由であり、前訴の訴訟物自体に内在・付着する瑕疵である。かような瑕疵は、既判力の趣旨たる紛争解決の実効性を図る必要がある。R2前訴で手続保障がある以上、行使することが期待できたはずであり、自己責任を問える。R3無効事由が遮断されることとの均衡を図るべきである。以上より、遮断される〔78〕。
解除権についても、これを後訴で認めれば、前訴で勝訴した当事者の地位を無にするので、既判力の趣旨たる紛争解決の実効性を図る観点から、遮断される。(ただし基準事後も解除事由あれば主張できる。)
ウ. この点、相殺に供される自働債権は、前訴の訴訟物たる受働債権とは別個の債権であり、相殺をするか否かは権利者の自由にゆだねるべきである。また、相殺は訴求債権の存在を認めながら、自己の債権を対等額で消滅させるもので経済的出捐を伴い、実質的敗訴にほかならず、前訴での行使を期待することは酷である。
したがって、相殺権の行使は既判力により遮断されない。
エ. 建物買取請求権は、前訴の訴訟物たる建物収去土地明渡請求権とは別個独立の債権であり、買取請求をするか否かは権利者の自由にゆだねるべきである。また、請求権の行使は土地の明渡しを認めるもので実質的敗訴にほかならず、前訴での行使を期待することは酷である。したがって、建物買取請求権の行使は既判力により遮断されない〔79〕。
(5)既判力は原則として「主文に包含するもの」(114条1項)について生ずる〔81〕〔82〕〔83〕。
判決理由中の判断については原則として既判力が及ばない。その根拠は、審理の簡易化・弾力化、当事者の不意打ち防止、拘束力を認める必要性が低いこと、にある。
ア. 例外として、相殺の抗弁の不存在は、相殺をもって対抗した額について理由中の判断にも既判力が生じる(114条2項)。この趣旨は、反対債権(=自働債権のこと)についての争いの蒸し返しを防ぐことにある。
イ. 訴求債権の存在が認められ、相殺の抗弁(反対債権)を認容した場合、どの範囲で既判力が生じるか。
そもそも既判力の趣旨は紛争の蒸し返しを防止することにあるところ、主文の判断と反対債権の不存在について既判力を認めればかかる趣旨は達せられる(成立・不成立ではない)。すなわち、(a)原告の不当利得返還請求等は、訴求債権の存在を先決問題とするから、前訴の訴求債権の不存在の既判力により封じられる。また、(b)被告の不当利得返還請求等は、反対債権の存在を先決問題とするから、前訴の反対債権の不存在の既判力により封じられる。
∴主文の判断と反対債権の不存在についての既判力が生じると解する。(反対説:基準時前に債権が存在したことにも)
Ex. α100万円、β100万円→「αβともに不存在」に既判力
  α100万円、β80万円→ 「α20万円のみ存在、β不存在」に既判力
  α100万円、β120万円→「α不存在、βのうち100万円不存在」に既判力
ウ. 論文は争点効について触れずに、以下の規範を出せばいい。(まず既判力によって遮断されないと述べる。)
Yの訴えが、既判力によって遮断されないとしても、それが前訴の蒸し返しといえるときには、かような請求は排斥すべきではないか。
ある法律上の地位を基礎づける事実について、一方当事者が既に主張立証を尽くしたといえる場合には、もはやその法律上の地位を訴訟上主張し得ないことについて相手方の信頼が形成される。また、前訴において手続保障が十分に与えられていたのであるから、自己責任を問うことが可能である。そこで、①目的が同じ、つまり実質的には前訴の蒸し返しであるときで、②前訴で主張立証したか、できたのにしなかった場合、当事者がその事由を主張することは信義則(2条)に反し許されないと解する。
エ. 判例は限定承認の存在・効力に既判力に準じる効力を認める〔85〕。主文に記載され、紛争の蒸し返しを防止する必要があるからである。引換給付判決の引換部分は既判力がない(論M61 例外あり(H21新司))。
信義則により既判力の範囲を縮小できる〔A28〕。
(6)既判力は当事者のみに作用し(115条1項1号)、第三者には及ばないのが原則である。(判決の相対効)
手続保障の充足されていない者に自己責任を問い得ないからである。例外的に同条項2~4号に掲げる者については(固有・独自の利益を有しないか4号、又は代替的に手続保障が充足されているので2号、3号)既判力の拡張が認められる。
ア. 訴訟担当における利益帰属主体(2号)
(ア)任意的訴訟担当については既判力の拡張が認められる。本人の授権があるし担当者により代替的手続保障があるから。
(イ)債権者代位訴訟は、民法423条により管理処分権があることから、当事者適格が認められる(法定訴訟担当)。
そして、訴訟担当者と本人の利害が対立し得る場合にも、訴訟担当者の受けた判決は無条件に本人に拡張される〔88〕。
理由:被代位債権の存否は担当者の被保全債権の回収のために重要な事柄であり、訴訟担当者に適正な訴訟進行が期待され、これにより本人に代替的手続保障が充足されるため、本人に既判力を及ぼしても不合理ではない。債務者には訴訟参加の機会がある。債務者は代位債権者に対して事後的に損害賠償請求できる。
(ウ)甲債権の債権者Aによる債権者代位訴訟(訴訟1)で、被代位債権乙債権が認められず、請求棄却判決。債務者Bが、乙債権につき、訴訟提起(訴訟2)。訴訟2で訴訟1の口頭弁論終結時に甲債権が存在していたと判断された場合、していないと判断された場合に分けて、それぞれ裁判所はいかなる判断をすべきか(H25予備)。
(a)していた 訴訟1と訴訟2の訴訟物はともに乙債権であり、同一関係にある。また、甲債権が存在していたと判断されているので、訴訟1の既判力はBにも及ぶ(115条1項2号)。
したがって、訴訟1の既判力が訴訟2に作用する。すなわち、裁判所は、訴訟1の口頭弁論終結時において乙債権が存在しないことを前提として審理しなければならず(積極的作用)、これに反する当事者の主張は排斥される(消極的作用)。
以上より、裁判所は、乙債権が存在しないと判断しなければならないので、請求棄却判決をするべきである。
(b)していない 訴訟1の口頭弁論終結時において、甲債権が存在しないと判断されているので、Aは乙債権につき管理処分権・当事者適格を有しない。115条1項2号には当たらず、訴訟1の判決効をBに及ぼす前提を欠く。そうすると、第1訴訟の既判力は作用せず、裁判所は独自に乙債権の存否について判断することになる。以上より、乙債権が認められると判断した場合には、請求認容判決をし、乙債権が認められないと判断した場合には、請求棄却判決をするべきである。
イ. 口頭弁論終結後の承継人(3号)
この趣旨は、紛争解決の実効性確保にあり、その根拠は代替的手続保障の充足にある。
(ア)では、ここにいう「承継人」の意義をいかに解すべきか。(適格承継説or紛争主体承継説)
そもそも口頭弁論終結後の承継人に既判力を拡張した趣旨は、敗訴当事者がその訴訟物たる権利関係や係争物を第三者に譲渡すること等によって、当事者間の訴訟の結果を潜脱し訴訟による紛争解決の実効性を失わせることを防止することにある。
そこで、「承継人」とは、当事者の紛争主体としての地位を承継した者を広く含むと解する。(ex.XY土地明渡請求→土地上の建物を口頭弁論終結後に譲り受けた者Zは承継人は含まれる。訴訟中の譲受人は含まれないので、訴訟引受けを申し立てて(50条1項、51条後段)、既判力を及ぼす。)
(イ)承継人の範囲は訴訟物の実体法的性格により違いを生じない。もし生じるとすれば、訴訟物理論いかんを問わず、前訴の判決と矛盾する事実の主張を認めることになり不合理である。したがって、物の引渡請求が物権的請求権によるか債権的請求権によるかに関わらず、目的物の占有を承継した者は一律に承継人に当たる。
(ウ)固有の抗弁を有する第三者は「承継人」として既判力の拡張を受けるが、固有の抗弁の提出は妨げられないと解する(形式説)。(固有の抗弁があれば「承継人」には該当せず、既判力の拡張を受けないという見解がある(実質説〔87〕)。しかし、既判力の範囲を第三者の主張立証にかかわらせるのは既判力の安定を害し妥当でない。そもそも、既判力が承継人に拡張されても、承継人は前訴で確定された権利関係が争えなくなるにすぎず、固有の抗弁の提出が妨げられるものではない。)
ウ. 前3号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者(4号)
(ア)口頭弁論終結「前」の仮装譲受人は115条1項3号には当たらず、同号により既判力を拡張することはできない。
(イ)では、「請求の目的物を所持する者」(4号)として仮装譲受人に既判力を及ぼすことができるか。
仮装譲受人は形式的には自己のために目的物を所持する者であって、115条1項4号を直接適用はできない。
しかし、実質的には仮装譲受人は「請求の目的物を所持する者」と同様、保護すべき固有の実体法上の利益はない。また、既判力を拡張できないと、仮装譲受人に訴訟承継をさせない限り執行力が及ばず、訴訟が無駄になってしまう。
そこで、同号を類推適用して、仮装譲受人に既判力が及ぶと解する〔A29〕。

4その他(1)法人格否認の法理を適用し既判力・執行力を拡張することは許されない〔89〕。訴訟手続の明確性・安定性を図るためである。第三者異議の訴え(法人格を濫用した第三者が執行の排除を求めた場合)は、法人格否認の法理を適用して、強制執行の異議を許さないとすることができる。実体法律関係の問題だからである。
(2)反射効 ア. 反射効とは、当事者間に既判力を生じたことが、当事者の一方と特殊な関係(実体法上の依存関係)にある第三者に影響を及ぼす効力をいう〔90〕〔91〕。
イ. 明文のない反射効を肯定すると、それが不利益に及ぶ者の手続保障を害し、判決の相対効の原則(115条1項1号)に反するため、反射効は否定すべきである。
そしてこの問題は、手続保障を前提にした自己責任という既判力の正当化根拠に着目し、手続保障が充足されている限度で既判力を拡張することにより妥当な解決を図るべきである。(例:主債務がないとして、主債務者勝訴→直ちに保証人勝訴)
(3)第三者が固有の抗弁を有しているにもかかわらず、執行力を及ぼし、第三者に執行文付与に対する異議の訴え(民執法32条)を提起する負担を課すべきでない。執行力が拡張されることは承継人に、より直接的な不利益を及ぼすことを意味する。
そこで、固有の抗弁を有する第三者は「承継人」(民執法23条1項3号)に含まれず、執行力は拡張されないと解する。

Ⅳ 複雑訴訟
1審判対象(客体)を問題とする複数請求訴訟 2訴訟主体を問題とする多数当事者訴訟
1(1)原始的複数 (2)後発的複数 2(1)共同訴訟 (2)補助参加 (3)独立当事者参加 (4)当事者の交替
1複数請求訴訟
(1)ア. 訴えの客観的併合の形態としては、単純併合、選択的併合、予備的併合がある。併合の要件は、①数個の請求が同種の訴訟手続きで審判されるべきこと(136条)、②法律上併合が禁止されていないこと、③請求について受訴裁判所に管轄権があることである。
要件を満たさない場合、単純併合は却下せず別々に審理し、選択的併合、予備的併合では当事者の意思を解釈して場合分けする。
単純併合とは、法律上両立し得る数個の請求を並列的に併合し、そのすべてにつき判決を求める場合をいう。例:売掛代金支払請求と貸金返還請求を併合する場合 物の給付請求と代償請求
選択的併合とは、同一目的を有し、法律上両立し得るが、そのうちの一つしか認容し得ない数個の請求を、その一つが認容されることを解除条件として併合する場合をいう。例:所有権と占有権に基づき同一物の引渡しを請求する場合
予備的併合とは、法律上両立し得ない数個の請求に順位を付し、主位的請求が認容されることを解除条件として、予備的請求を併合する場合をいう。例:売掛代金の支払いを請求し、売買契約の無効等で支払請求が認められない場合に備えてあらかじめ引渡した目的物の返還を請求する場合
訴訟物の安定及び明確性の要請や、裁判所の裁判を無用に拘束しない必要があることから、原則として当事者による順位付けは裁判所を拘束しない。例外たる予備的併合は、両請求が法律上両立し得ない場合に限られるべきである。
イ. 争点整理、本案の弁論、証拠調べは、訴訟経済・判決の矛盾防止のため全請求につき共通して行われる。
弁論の分離(152条1項)、一部判決(243条2項)は単純併合についてのみ許され、他は訴訟不経済、判決の矛盾防止の観点から許されない。
すべての併合形態において、控訴がされるとすべての請求について確定が遮断され(116条2項)、控訴審に移審される(控訴不可分の原則)。∵相手方に付帯控訴の機会を与えるためである。
ウ. 主位的請求棄却・予備的請求認容判決について、被告のみが控訴した場合、控訴不可分の原則により主位的請求も、確定遮断効が生じ(116条2項)、控訴審に移審する(通常共同訴訟とは異なる)が、主位的請求があると判断した場合に、主位的請求を認容することはできない〔111〕。原告が控訴していない以上、主位的請求に対する第一審判決の当否は控訴審の審判対象とならず、主位的請求を認容することは、控訴人にとって不利益な判決であって不利益変更禁止の原則(304条)に反するからである。
(2)訴えの後発的複数として、訴えの変更、反訴、中間確認の訴えがある。
ア. 訴えの変更とは、訴訟係属後に、原告が当初からの手続を維持しつつ、当初の審判対象(請求の趣旨又は原因)を変更することである(143条1項)。例:土地所有権確認請求に土地明渡しや所有権移転登記請求を加える場合
(ア)制度趣旨は、被告の地位を害さず、従来の手続を利用して多様な紛争の統一的・経済的処理に資する点にある。
効果:訴訟資料の流用、時効中断効の維持
態様として、訴えの追加的変更と、訴えの交換的変更とがある。後者は訴えの追加的変更と訴えの取下げとの複合行為であるから、被告の同意が必要となる(261条2項〔33〕)。
(イ)訴えの変更の要件は、①請求の基礎に変更がないこと、②口頭弁論終結前であること、③著しく訴訟手続を遅滞させないこと(143条)、④訴えの併合の一般的要件(136条)である。
(ウ)「請求の基礎に変更がない」とは、被告保護の観点から、旧請求をめぐる裁判資料を新請求に利用でき、かつ、新旧両請求の利益主張が社会生活上同一又は一連の紛争に関すると認められる場合をいうと解する。
この要件は被告の地位を保護するために要求されるものであるから、被告の同意があれば不要である。また、被告の陳述した事実を新請求の原因とする場合も不要である。
イ. 反訴とは、被告が、係属中の本訴の手続内で、請求又は防御方法と関連する請求につき、原告に対して提起する訴えをいう(146条1項)。例:原告の所有権に基づく土地明渡請求に対する、被告の賃借権確認の反訴請求
制度趣旨は、原告に訴えの変更が認められることに対応し、当事者平等の観点から、被告にも関連請求につき同一手続内で訴えを認めた点にある。かつ、関連請求について審理の重複を避け、判断の統一を図ることができるようにするためである。
要件は、①本訴の請求・防御方法と関連性があること、②本訴の事実審の口頭弁論終結前であること、③著しく訴訟を遅延させないこと、④併合の要件(136条)である。
①関連性は、被告の提出した防御方法に関連すること(内容又は発生原因事実において共通すること)で足りる(明文上)。この要件は、反訴被告(本訴原告)が応訴や本訴の審理への影響によって被る不利益に配慮するものであるから、反訴被告が同意する場合には不要である。
反訴は訴訟係属中の新訴の提起であり、その併合要件は訴訟要件であるから、この要件を欠く反訴は不適法であり、終局判決をもって却下する。
反訴の訴訟物を本訴の相殺の抗弁として提出した場合反訴は予備的反訴へと変更〔A12〕。Ⅱ3(9)二重起訴参照
ウ. 中間確認の訴えとは、訴訟係属中に、当該請求の当否の判断の先決関係たる権利・法律関係の存否につき、原告又は被告が追加的に提起する確認訴訟である(145条)。例:所有権に基づく土地明渡請求訴訟で所有権の確認を求める場合
制度趣旨:本来の請求と先決関係に立つ事項は判決理由中で判断されるだけであり、その判断については既判力を生じない(114条1項)。そこで、中間確認の訴えを認めることで、既判力による確定を図り、訴訟不経済や判断の不統一を回避するようにした。

2多数当事者訴訟
(1)共同訴訟とは、一つの訴訟手続に数人の原告又は被告が関与する訴訟形態である。
ア. 通常共同訴訟とは、各共同訴訟人と相手方との間の複数の請求相互間に38条所定の関連性がある場合に、本来個別に訴訟を提起し審判され得る数個の請求につき便宜上共同訴訟とすることが認められる場合である。例:数人の連帯債務者に対する債権者の支払い請求
その趣旨は、併合審理により審理の重複と判決の矛盾を回避することにある。
要件は、権利義務が数人について共通であること、権利義務が同一の事実上及び法律上の原因に基づくこと(以上38条前段)、権利義務が同種で、事実上及び法律上の同種の原因に基づくことである(38条後段)。前二者と後者は管轄の規律で違いが生じる(7条ただし書)。
(ア)共同訴訟人独立の原則(39条)とは、各共同訴訟人は他の共同訴訟人の訴訟追行に制約されることなく、各自独立に訴訟追行する権能を有する建前を言う。例:ある共同訴訟人に対する請求の放棄・上訴の効果は、他の共同訴訟人に及ばない。
通常共同訴訟においては、共同訴訟人独立の原則(39条)が妥当する。共同訴訟の必要がなく、便宜上同一の訴訟で審理されているにすぎないことから、各当事者の訴訟追行の自由が尊重されるからである。
しかし、共同訴訟人独立の原則を貫くと、共同訴訟人間で別々の内容の判決がなされ、紛争の統一的解決が妨げられる。
そこで、この原則を修正して共同訴訟人間に証拠共通の原則、主張共通の原則を認めることはできるか。
(イ)証拠共通は認められる。自由心証主義(247条)の下では一つの歴史的事実に対する心証は一つしかあり得ないから。
(ウ)通常共同訴訟は別個の訴訟を併合したものにすぎず、訴訟ごとに弁論主義が妥当するはずである。したがって、主張共通は認められず、他の共同訴訟人の援用が必要と解する〔96〕。これと同様の効果を認めたければ、補助参加の申出(42条、43条、45条)をすればよい。 
イ. 同時審判申出共同訴訟とは、共同訴訟人と相手方との間の実体法上両立し得ない請求につき、原告の同時審判の申立てにより、通常共同訴訟ではあるが弁論と裁判の分離を禁じる場合である(41条)。
例:本人に対して契約の履行を請求し、その請求が無権代理を理由として棄却される場合に備えて代理人に対して無権代理人の責任を追及する場合 工作物責任において占有者と所有者を共同被告として訴求する場合
その趣旨は、原告の両負けを防止すること、被告の地位の不安定・不公平を回避することにある。
要件は、①共同訴訟であること、②共同被告の一方に対する訴訟の目的たる権利と、他方に対するそれとが、法律上併存し得ない関係にあること、(③事実審口頭弁論終結時までに原告が申出をしたこと)である。
例:授権が真偽不明であれば請求原因が認められず、本人に対する請求は棄却される。他方、民法117条によれば授権は抗弁事実であるので、真偽不明であれば不存在とされ、代理人に対する請求が認容される。この意味で両負けを防止できる。
ウ. 必要的共同訴訟とは、判決が共同訴訟人ごとに区々となることが許されず、合一確定(40条)が要求される共同訴訟をいう。
固有必要的共同訴訟とは、数人が共同して初めてある請求をめぐる訴えにつき当事者適格が認められ、個別に訴え又は訴えられたのでは本案判決をなし得ない訴訟類型である。例:訴訟担当者たる選定当事者が複数いる場合
類似必要的共同訴訟とは、訴訟共同が強制されるわけではないが、共同訴訟が成立した場合は合一確定の要請が働くので個別訴訟は許されず、必要的共同訴訟の審判の原則が適用される共同訴訟である。例:数人の株主の提起する株主総会決議取消しの訴え
(ア)必要的共同訴訟では、判決が区々となることが許されず、合一確定を実現するための措置が講じられている。
共同訴訟人の一人がした有利な訴訟行為は全員に対して効力を有するが、有利でない訴訟行為は誰に対しても効力を生じない(40条1項)。例:一人がした自白や請求の放棄・認諾、訴訟上の和解、訴えの取下げ〔A32〕は、効力を生じない。共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、すべて全員に対して効力を生じる(40条2項)。
提訴拒否者が一人でもいれば適法に訴えを提起できないと、訴権保護の要請に反する。また、被告に加えれば当事者として手続が保障される。そこで、同調しない者を被告として訴えを提起できると解するべきである〔98〕。
弁論の分離・一部判決は許されない(明文なし)。 全請求につき確定遮断効、移審効が生じる〔102〕。∵合一確定の必要(リー593)。
当事者の上訴期間は、必要的共同訴訟であっても、当事者ごとに個別に計算される〔A36〕。共同訴訟人は全て当事者であり、手続保障は個別に要求されるからである。
(イ)共有者が原告側の場合 
共有者の持分権に関する共有物全部の抹消登記請求訴訟、保存行為〔99〕、不可分債権は、単独訴訟でよい。なぜなら、それぞれの共有持分権が単独行使でき、管理処分権があるからである。
共有地全体の移転登記請求訴訟は、固有必要的共同訴訟である(抹消とは異なる)。
共有者全員の有する1個の所有権たる共有権に関する訴訟は、固有必要的共同訴訟である〔A32〕。共有者全員が法律上利害関係を有するため、判決は全員に矛盾なくなされるべきだからである。
(ウ)共有者が被告側の場合は通常共同訴訟となる。
R1不可分債務の場合、各人に対して全部の履行を請求できる(民法430条・432条)〔100〕。R2争う意志のない者まで被告とすることは訴訟不経済である。R3被告側の共有者全員を原告・裁判所が把握するのは必ずしも容易でなく、手続の不安定を招来する。R4土地所有者は共同相続人各自に対する債務名義・同意がなければ強制執行できないので、被告保護に欠けることはない。
(エ)共有者間の訴訟の場合
持分権の争いは通常共同訴訟。共有関係そのものの争いは固有必要的共同訴訟(リー541)
遺産確認の訴え〔101〕は、当該土地が法定相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えである。共有関係の管理処分権が全法定相続人に帰属するうえ、遺産帰属性は遺産分割(参考:遺産分割審判は既判力ない←→訴え)の前提である以上、相続人全員の訴訟関与があり合一的に確定している必要性が高い。そこで、固有必要的共同訴訟となると解する。
(オ)入会地確認の訴えは固有必要的共同訴訟。総有は持分権を観念できない以上、構成員各自において入会権自体に対する妨害排除としての抹消登記請求はできないからである。
(カ)類似必要的共同訴訟の例:取締役解任の訴え、数人の株主の提起する株主総会決議取消しの訴え
類似必要的共同訴訟の要件は、①原告適格を有し、②共同訴訟人の受けた判決の既判力が他の共同訴訟人に及ぶことである。
訴えの取下げと、上訴は、各共同訴訟人が自由になし得る。
上訴しないものは上訴者から外れる〔102 類似の場合〕。R1意思に反してまでは必要ない。R2影響がない。ペー論1→公益か私益か
複数の債権者が債権者代位訴訟を提起した場合、①と②を充足する。〔102〕の判旨前半を参照。
エ. 主観的予備的併合とは、共同訴訟人と相手方との実体法上両立しない請求につき、主位原告・主位被告に対する請求の認容を解除条件として、予備的に予備的原告・予備的被告に対する請求の審判を求めるものをいう。
予備的被告の地位が不安定となるし、上訴された場合に必ずしも裁判の統一の保障が得られるわけではない(39条参照)。また、同時審判申出共同訴訟(41条)によって、原告が両方の被告に敗訴することを防止するという主観的予備的併合の趣旨はほとんど達成できる。したがって、主観的予備的併合は認められない〔A31〕。
オ. 主観的後発的併合のうち、当事者主導のものとしては訴訟引受け(50条、51条)、第三者主導のものとしては訴訟参加、共同訴訟参加(52条)などがある。
明文なき主観的追加的(後発的)併合は認められない〔97〕。濫訴や訴訟遅延のおそれがあるし、別訴を提起して弁論が併合(152条1項)されれば共同訴訟とできるからである。(H26予)
(2)補助参加(42条)とは、他人間の訴訟結果につき利害関係を持つ第三者が、当事者の一方を勝訴させることによって、間接的に自己の利益を守るために、当該訴訟に参加する参加形態である。例:債権者の主債務者に対する訴訟に保証人が参加する場合
ア. 補助参加に対して当事者が異議を述べた場合(44条)、補助参加の利益(42条)が必要となる。その要件は、(他人間の訴訟であること、)第三者が①訴訟の結果に、②利害関係を有すること、である。
(ア)共同訴訟人の一人は、相互の利益が相反する場合には相手方当事者の側に補助参加し得る〔A33〕。
(イ)補助参加の利益について、①「訴訟の結果」に判決理由中の判断も含まれるか。
既判力に服するわけではない第三者にとっては、判決主文の判断も理由中の判断も事実上の影響力を及ぼすにすぎず、区別する根拠はない。また、参加人にとっては他人間の訴訟の判決理由中の判断に示される先決関係にあるものついて利害関係を有することが多いので、これとの間の利害関係も考慮すべきである。
そこで、判決主文に限らず、判決理由中の判断も含むと解する。
例:(忠実義務違反の前提たる)粉飾決算が認定されると、会社の計算関係に影響を及ぼす。したがって、会社は被告取締役に参加できる(現在は会社法849条の解釈)。
(ウ)②「利害関係を有する」とは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に事実上の影響をおよぼすおそれがある場合をいい、単に事実上の利益に影響を及ぼす場合は含まれない〔103〕〔105 買主の真正について否定〕(一般的債権者は含まれない)。
イ. 独立性:補助参加人は原則、一切の訴訟行為ができる(45条1項本文)。
被参加人への従属性:補助参加時点での訴訟の程度に従い、することができなくなったもの(45条1項ただし書)や、被参加人の訴訟行為に抵触する訴訟行為(45条2項)は制限される。訴訟自体を処分することはできない。補助参加人の上訴期間は被参加人の上訴期間に限る〔A36①〕。
ウ. 補助参加の審判は補助参加人にもその効力を有する(参加的効力 46条)。例外は各号
既判力が裁判所の判断の蒸し返しを防止するという法的安定の要請に基づくのに対し、46条の効力は補助参加人が被参加人を補助して訴訟追行した以上、その敗訴の責任も分担すべきという公平・禁反言の理念に基づくものである。
したがって、46条の効力は、既判力とは異なる効力であると解する。
具体的には、①被参加人が敗訴した場合に、②被参加人と参加人との間に限り作用し(主観的範囲)、③判決理由中の判断にも効力が及ぶ(客観的範囲 〔104〕)と解する。ただし、判決理由中の判断にも判決の効力が及ぶということは、「主文に包含するもの」(114条1項)にのみ及ぶ原則の例外であるから、当事者の手続保障にも配慮してその範囲を限定する必要がある。そこで、参加的効力が生じる範囲は、判決主文とそれを導き出すのに必要な主要事実に係る認定及び法律判断に限られる〔105〕。
エ. 訴訟告知とは、訴訟係属中に、当事者が当該訴訟につき利害関係を有し、参加し得る第三者に対して、法定の方式により訴訟係属の事実を通知することである(53条1項)。
(ア)訴訟告知(53条1項)がなされ、被告知者が参加した場合のみならず、参加しない場合にも両者間に46条の参加的効力が生じる(53条4項)。(H24司)
(イ)被告知者が告知者側には参加せず、告知者の相手方当事者側に補助の参加した場合にも、告知者が敗訴すれば、告知者と被告知者間に参加的効力が生じるか。訴訟告知は、被告知者の手続保障制度でもある。そして、被告知者が告知者の相手方に参加した場合には、告知者と被告知者は共同戦線になく、共同して訴訟を遂行し敗訴判決に至った責任としての参加的効力を認めることはできない。よって、参加的効力は生じないと解する。
オ. 共同訴訟的補助参加とは、判決の効力が及ぶ第三者がする補助参加である。例:株主総会決議取消しの訴えにおいて、株主が被告会社側に補助参加する場合
補助参加の従属性を修正するために、解釈上認められるものである。
共同訴訟的補助参加の要件は、①判決の効力が及ぶ第三者であること、②補助参加の利益である。
共同訴訟的補助参加人は、独自の訴訟活動を保障する必要があり、補助参加人よりも地位が強化されている。被参加人と矛盾抵触する行為ができるなどである。
債権者代位の債務者は、①と②を満たす。共同訴訟参加をすることができる(H25予備)。
(3)独立当事者参加とは、第三者が、係属中の訴訟の原告および被告の双方もしくは一方に対して請求を立てて、原告・被告間の請求とともに同一手続で三者間に矛盾のない判決を求める三面訴訟形態である(47条1項)。例:XのYに対する甲土地の所有権確認訴訟係属中に、Zが同土地の所有権確認を求めて訴訟に参加する場合
ア. 独立当事者参加制度(47条1項)の趣旨は、第三者の手続保障と紛争の一挙解決・合一確定にある。
類型(要件)としては、詐害防止参加(1項前段)と、権利主張参加(1条後段)とがある。
権利主張参加の要件は「訴訟の目的の全部又は一部が自己の権利であることを主張する」こと、つまり、原告の請求と参加人の請求が非両立の関係にあることである〔106〕。
詐害防止参加の要件は、第三者に不利な判決効が及ぶこととする説(判決効説)と、当事者が詐害的な意思をもって訴訟追行をなし、それによって第三者の権利が害されることとする説(詐害意思説 私見)がある。
イ. その趣旨の通ずるところがあることから、必要的共同訴訟に関する40条が準用される(47条4項 論文注意)。当事者の手続保障、権利関係の合一確定が図られている。
既存の二当事者間の意思による訴訟終了(例:和解)は参加人に対して効力を生じない〔108〕。第三者の手続保障。三者間の合一確定の目的に反するからである。もっとも、参加人の同意があれば許されると考える。
ウ. (ア)敗訴者一人のみの上訴により全訴訟の確定が遮断される(116条2項)。合一確定の必要から、上級審に移審する(控訴不可分の原則とは関係がない。リー572.593)。上訴しなかった者は、被上告人となる(40条2項準用 判例)。
(イ)このとき、上訴をしなかった者の敗訴部分をも審判の対象にすることは、(不)利益変更禁止の原則(296条1項、304条、313条)に反し許されない。もっとも、これを貫けば、合一確定により多面的紛争を一挙に、かつ、矛盾なく解決しようした、独立当事者制度の趣旨に反するおそれがある。そこで、例外的に、合一確定に必要な限度で上訴しなかった者の敗訴部分にも変更を加え得ると解する〔107〕。
エ. 債権者代位訴訟が提起された場合、債務者の別訴提起は、①当事者適格、②二重起訴の禁止(142条)、どちらとの関係でも原則として許されない。では、独立当事者参加は許されないか。
(ア)代位債権者の当事者適格(被保全債権たる債権の存否)を争う債務者は当事者適格を有する〔A34〕。
(イ)二重起訴禁止には抵触しない。同一手続で審理がなされ、合一確定が要請されるため(47条4項、40条)、訴訟不経済・被告の応訴の煩・判決の矛盾抵触という二重起訴の弊害がないからである。
オ. 従来の当事者の一方は相手方の同意を得て、訴訟から脱退することができ(48条前段)、その者に対しては残存判決の効力が及ぶ(48条後段)。この「効力」について、脱退の法的性質と関連して問題となる。
本来自分でなすべき訴訟追行を残存当事者にゆだねた脱退当事者の合理的意思解釈から、脱退の性質は条件付放棄認諾と解すべきである。また、紛争の一回的解決の観点から、その効力による論理的帰結の範囲で法定の効果を認めるべきである。
(4)当事者の交替とは、訴訟係属中従来の当事者に代わり第三者が当事者として訴訟を続行する場合である。
当事者の交替には、任意的当事者変更と、訴訟承継がある。
ア. 任意的当事者変更とは、訴訟係属後、原告が、当初の被告以外の適格者に訴えを向けかえ、又は、当初の原告以外の適格者が原告と入れ替わって訴訟を追行することである。例:契約の相手方が取締役個人であるのに、誤って会社を被告として訴えを提起した場合に、被告を入れ替えて従来の訴訟を維持する。
任意的当事者変更の趣旨は、従来の訴訟の利用の要請と新訴当事者の手続保障を調整することにある。印紙代を軽減し、時効中断、資料流用のために、肯定説が有力である。
(ア)その法的性質は、新訴の主観的追加的併合(したがって、〔97〕によれば認められない。しかし、基Mやリークエは肯定説。なお、論M84の法律構成は、新訴の提起と弁論の併合であるが、これは別の構成。)と旧訴の取下げの2つの行為の複合である。したがって、①訴訟係属中であり共同訴訟の要件(38条)を具備すること、及び、②訴えの取り下げの要件(261条)を具備しなければならない。
(イ)新当事者の手続保障の見地から、①従前の訴訟追行の結果に新当事者は原則として拘束されず、②控訴審において任意的当事者変更は許されない(審級の利益)と解する。ただし、新当事者が実質上旧訴手続に関与していた、同意や追認があったような場合には、従来の訴訟追行の結果を流用すべきである。
イ. 訴訟承継の類型として当然承継(124条)、特定承継がある。
特定承継には参加承継(49条、51条)と引受承継(50条、51条)がある。
当然承継とは、承継原因の発生により、法律上当然に当事者が交替して訴訟承継を生じる場合である。例:当事者の死亡
参加承継とは、訴訟係属中に一方当事者と第三者に特定承継があった場合に、それにより新たに紛争主体となった承継人が訴訟参加の申立てをする場合である。例:XからAに債権譲渡があり、AがX・Yに対して訴訟参加の申立てをする場合 XからAに債務引受けがあり、AがX・Yに対して訴訟参加の申立てをする場合
引受承継とは、訴訟係属中に一方当事者と第三者に特定承継があった場合に、それにより新たな紛争主体となった承継人に対して前主の他方当事者から訴訟引受けの申立てをすることである。例:XからAに債権譲渡があり、YがAに対して訴訟引受けの申立てをする場合 YからAに債務引受けがあり、XがAに対して訴訟引受の申立てをする場合
ウ. (ア) 承継原因(要件)は、係争物の特定承継である。ここでいう係争物の意義に関して、当事者適格承継説と、紛争主体地位承継説がある。私見では、訴訟承継人は前主から訴訟主体たる地位を取得した者をいうと解する〔109〕。訴訟物が物権的請求権か債権的請求権かで左右されない。
賃貸借契約終了に基づく建物収去土地明渡請求訴訟の係属中に、被告がその建物に借家人を住まわせた場合、借家人は建物収去に包含される建物退去義務(建物占有者としての地位)を承継した。よって、承継原因が認められる。
(イ)会社法上の共益権の持分譲渡と相続による取得の訴訟承継(訴訟参加)の可否について、前者は許されず(会社法の性質から、社員が社員たる資格に基づき行使する権利である。したがって、地位の承継がなければならない。)、後者は一身専属権ではないので当然承継する〔A37〕。
権利譲渡人からの引受申立ての可否については争いがある〔A38〕が、引受申立ては相手方の既得的地位を保護するための制度である以上、被承継人による申立ては認められないと解する。
(ウ)承継人は当事者となり、被承継人の訴訟追行上の地位をそのまま承継する(訴訟状態帰属効)。ただし、前主の訴訟追行により承継人の利益保障が十分になされたとはいえない承継人の固有の抗弁自体については、訴訟状態帰属効は認められず、承継人は承継後の訴訟でこれを主張する機会が保障されるべきである。
エ. 被告が目的物を第三者に譲渡した場合、原告は第三者に訴訟引受けの申立てをする(50条1項)。そもそも譲渡を防ぎたい場合には、民事保全法の処分禁止の仮処分をすればよい(民保23条1項(53条~55条など))。(H25予備口述)しかし、譲渡に気づかない場合もあり、明文上既判力は拡張されないので(115条1項3号参照)、その場合は既判力の拡張が期待される〔A29〕。
オ. H26予備 参加承継は独立当事者参加の手続により行う(51条・49条 必要的共同訴訟の規律が準用される(47条4項・40条))。
引受承継は、同時審判申出共同訴訟の手続により行う(51条・50条3項 共同訴訟人独立の原則(39条)が妥当。)
どちらも、承継の事実が否定されたときは、請求を棄却する判決をする(難 リー585)。
(5)共同訴訟参加(52条)の要件は、「訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合」つまり共同原告であると仮定した場合に必要的共同訴訟となることを意味する(40条1項)。
例:債権者代位訴訟に他の一般債権者が参加する場合 株主代表訴訟に他の株主が参加する場合
株主総会決議取消訴訟の被告適格は会社に限られる(会社法834条17号)ので、取締役は被告適格を有しない(①不充足)。よって、共同訴訟参加は許されない〔A35〕。

3上訴など
(1)上訴とは、裁判の確定前に、上級裁判所に対し、原裁判の取消し・変更を求める不服申立てである。例:控訴 上告
ア 上訴の利益など
(基準の明確性から、上訴の利益の有無は形式的にとらえるべきである。また、)判決理由中の判断については原則として既判力は及ばないのであるから(114条1項)、判決理由中の判断を理由に上訴を認めるべきではない。そこで、原審における当事者の申立てと判決主文とを比較して、後者が前者に及ばない場合に上訴の利益を認める(形式的不服説)。
これに対し、相殺の抗弁を認容した場合、既判力が及ぶので(114条2項)、判決理由中の判断を理由に上訴できる。
黙示の一部請求で全部勝訴した原告は、例外的に控訴の利益がある。〔A39〕参照、〔110解説〕、リー594
上訴提起により、①確定遮断の効力(116条2項)、②移審の効力が生じる。一つの請求なら全部について(控訴不可分の原則)。複数の請求がある場合、どの請求に確定遮断効、移審効が生じるのかを指摘すること。
イ 附帯控訴(293条)とは、既に開始された控訴審手続の口頭弁論終結までに、被控訴人が、控訴人の申立てた審判対象を拡張して、自己に有利な判決を求める不服申立てである。例:200万円の一部請求に対して認容判決がなされ、被告が控訴した際に、原告が請求額を300万円に拡張する場合
(2)不利益変更禁止
ア 相殺の抗弁を認めて請求を棄却した第一審に対し、原告が控訴した。
相殺の抗弁は現実的な経済的出捐を伴うものであり、請求原因が認められた場合、相殺の抗弁の不存在には既判力が及ぶ(114条2項)ので、この事実は原告に有利な事情である。そこで、被告が控訴していないにもかかわらず、控訴審が相殺の抗弁を否定して改めて請求棄却の判決をすることは、(控訴した原告に不利益となる以上、)不利益変更禁止の原則(296条1項、304条に反し許されない〔112〕。
イ 一部請求と相殺の抗弁と既判力、不利益変更禁止の原則の関係について〔113〕参照。控訴審で相殺を新たに主張して控訴棄却。控訴人の自働債権には既判力(114条2項)が生じない。
ウ 外側説→明示的一部請求の既判力→一部請求の請求額を超える部分の相殺の抗弁の存否について、既判力は生じない。したがって、被告のみが控訴して相殺額が減少した場合でも、それが一部請求を超える部分である限り、不利益変更禁止の原則(296条1項、304条)には反しない。
ウ 予備的併合において、両請求は相互に密接な関連性を有するので、両方移審する(控訴不可分 論M88.89)。
主位的請求が認容された判決に対する控訴について、予備的請求認容判決をする場合は、審級の利益を論ずる(被告に不利になるわけではないので不利益変更禁止ではない。)これに対し、予備的請求の認容判決に対し、原告のみが控訴し、主位的請求を認容する場合は、不利益変更禁止の原則(296条1項、304条)に反し違法である。
(3)審級の利益
債務不存在確認の本訴が控訴審にある場合の給付訴訟の反訴提起は、相手方の同意(300条)が必要とも思える。
しかし、同条の趣旨は、相手方の審級の利益を確保することにある。上述の場合、一審で給付義務の存否が既に審理されていることから、相手方の審級の利益を奪うことにならない。そこで、相手方の同意は不要であると解する。(〔29〕解説3参照)
(4)再審 既判力の拡張を受ける口頭弁論終結後の特定承継人にも、再審の原告適格がある〔117〕。
再審の要件は、①338条1項各号の事由、②再審期間、③補充性(④4号から7号は有罪判決 例外もある)である。
②知ってから5年又は20年以内に提起する(342条1項・2項)。代理権を欠いたこと(3号)、先行する確定判決との矛盾抵触(10号)を再審事由とする場合、期間制限は適用されない(同3項)。
③当事者が既に主張し、またはこれを知りながら主張しなかった再審事由をもってする再審の訴えは許されない(338条1項ただし書)。338条1項3号の手続保障があれば、判決正本の送付だけで足りず、現実の了知を要する〔116〕。