予備試験対策 商法 まとめノート (旧)

1総論 2設立
3株式 4株主平等原則 5譲渡制限 6株主名簿 7募集株式の発行等その他
8株主 9取締役 10356条の行為 11その他役職 12役員等の責任
13計算 14企業の再編と結合

 

1総論
(1)「期間 条文の検索 決議の要否・瑕疵、取消し、無効、不存在の区別 効力否定後の関係 責任」に注意する。
論文は多論点型(瑕疵は常に複数検討)→とにかく条文と情報処理をして、論点をできる限り思いつく。
三角形を書いて、その中に登場人物を埋めていく作業は、いちいち丁寧にする。(人物関係の把握)
会社法改正→リークエ補逸と、応用会社法で十分
(2)一人会社 ア. 社員が一人であっても、社員が株式を譲渡することによって複数になる可能性があり、潜在的には社団であるといえる。また、株式会社においては、社員が一人となったことは会社の解散事由とされていない(471条参照)。
そこで、一人会社は認められると解する。
イ. 株主が一人であるという特殊性から、社団であることを予定した規定の適用につき問題を生じる。
(ア)一人株主が出席すれば、招集手続(298条、299条)はなくとも、株主総会は有効に成立すると解する。なぜなら、全株式を所有する者が出席している以上、300条の同意があったとみてよいからである。 (なお、株主全員が開催に同意し、出席した場合も同様である。〔32〕)
(イ)一人株主の意思は全株主の意思となるので、株主総会の決議事項について取締役から提案があり、それにつき同意した場合、当該提案を可決したものとみなされる(319条1項)。
(ウ)取締役会設置会社における譲渡制限株式の譲渡の承認(139条1項)も、株主自らなし得る〔18〕。株式の譲渡制限の趣旨は、会社にとって好ましくない者が株主となることを防止し、譲渡人以外の株主を保護することにあるところ、一人株主が承認している場合には問題とならないからである。
(3)完全親子会社においては、以下のような会社法上の問題点が生ずる。
ア. 取締役の兼任が多く、競業取引・利益相反行為における取締役会の承認(365条1項、356条1項)が必要か問題となる。
法が取締役会の承認を要求した趣旨は、会社と取締役の利害が衝突する場合に会社が不利益を受けることを防止する点にある。とすれば、経済的に一体である完全親子会社においては、実質上の利害の衝突のおそれはないので、取締役会の承認も不要である。
イ. 親会社の取締役による支配権維持の弊害防止について検討する。
親会社の監査役等は子会社の取締役等の兼任が禁止されている(333条3項1号、335条2項、337条3項2号、400条4項)。
また、子会社による親会社株式の取得が原則禁止され(135条1項)、例外的に取得した場合でも、子会社が有する親会社株式には議決権が認められない(308条1項本文かっこ書)。さらに、親会社の株主の権利行使に関する利益供与は、親会社のみならず子会社の計算においてもなすことはできない(120条1項)。
ウ. 親会社による子会社の濫用的利用に対する措置もある。423条、429条、法人格否認の法理、831条1項3号、利益供与が問題となる。
(4)代表取締役と支配人 論M71 ア. 共通点 包括的権限(349条4項、11条1項)善意の第三者に対抗できない(349条5項、11条3項)。 表見代表取締役・支配人(354条、13条)。競業避止義務(356条1項1号、12条1項2号)。
イ. 相違点 代表取締役は会社の機関。支配人は会社の使用人。(けきだせ)
代表取締役は委任契約(330条、民法643条)。支配人は雇用契約(民法623条)。代表取締役の行為は代表行為=会社の行為そのもの。支配人の行為は代理行為(民法99条)。会社の業務全般(349条4項)。特定の営業所の事業(10条)。支配人は自ら営業、他の会社の取締役などになることも禁止(12条1項1号、3号、4号)。
(5)登記 ア 不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならず(8条1項)、これに違反した場合、被侵害者は商号の使用差止請求をなし得る(8条2項)。
イ 登記がないと善意の第三者に対抗できない(登記の消極的効力 908条1項)。登記があれば善意の第三者にも対抗できる(登記の積極的効力 同項反対解釈)。故意・過失による不実の登記は善意の第三者に対抗できない(同2項 H26)。
ウ 会社分割に22条が類推適用される(最判平20・6・10 応会1)。
→23条の2が新設された。譲受会社にも債権請求できるなど。
(6)支配人 論M72.73 ア 支配人になるためには、会社から選任される必要がある(会社法10条)。
しかし、支店長や営業所長等の名称が付与されていれば、通常は支配人であると思われるので、その者が無権利であるときは、第三者の信頼を保護する必要がある。そこで、同法13条は「本店又は支店」の事業の主任者であることを示す名称を「付した」使用人(表見支配人)はその本店又は支店の事業について支配人と同一の権限を有するとみなして取引安全を図っている(外観法理)。
ここで、「本店又は支店」とは、営業所の実質を備えていない所に本来の支配人が存在することはあり得ないことから、営業所の実質を備えているものであることを要すると解する。そして、営業所の実質を備えている限り、その名称は問題ではない。
イ 表見支配人の問題:①権限ないので、無権代理。②支配人に当たらないか→当たらない。③表見支配人に当たらないか→当たる。∴善意無重過失であれば請求できる。
(7)商法14条及び会社法9条は名板貸責任について定めている。名板貸責任とは、名板貸人が名板借人に、①自己の商号を使用して、②営業又は事業を行うことを許諾したときに、③その事業の相手方たる第三者に負う名板貸人の責任をいう。
ア 名板貸責任の趣旨は、第三者が名板貸人を真実の事業主と誤認して名板借人と取引を行った場合に、外観を信頼した第三者を保護し、取引の安全を図るという権利外観法理にある。名板借人の行う事業が名板貸人と異なるときには、第三者がそれを名板貸人の事業と誤認するおそれが小さい。そこで、②名板貸人と名板借人の営業又は事業は原則として同種でなければならない。
イ 名板貸責任の趣旨が権利外観法理にある以上、取引の相手方たる第三者(③)が悪意であれば本条の適用はない。善意重過失の場合にも悪意と同様に扱うべきと解する。したがって、③相手方は善意無重過失であることを要する。
ウ 「当該取引によって生じた債務」と規定しており、取引主体を誤認した第三者を保護する取引法的規定であるから、名板借人の事業上生じた不法行為には適用されない。取引的不法行為の場合には取引主体誤認の問題となるので保護され得る。
(8)ウルトラC 法人格否認の法理とは、独立の法人格を持つ会社について、その形式的独立性を貫くことが正義公平に反すると認められる場合に、特定の法律関係に限って会社の独立性を否定して、会社とその背後の実体とを同一視する法理をいう。
3条が会社に法人格を付与したのは、会社が社会経済上有用な団体であり、そうすることが国民経済上有益であるという価値判断に基づくものである。法人格が法律の適用を回避するために濫用される場合や、全くの形骸化にすぎない場合には、法人格を認めることがかえって国民経済上不利益となる以上、権利の濫用(民法1条3項)として法人格を否認すべきである。
濫用事例:支配の要件、目的の要件  形骸化事例:支配の要件、業務・財産の混同、会計区分の欠如、法令手続の不遵守

2設立
(1)これで全部:①発起人か否か+同一性説→②発起人の権限内か(一段階)→権限外として 
会社に対する請求は、③民法116条類推適用否定、④信義則、④´地位の譲渡 
発起人に対する請求は、③発起人組合に効果帰属するか(発起人の権限外であるが発起人組合の目的の範囲内であること 二段階)→効果帰属しない場合(三段階)に④民法117条類推適用(第三者の善意無過失が必要)、④´会社法53条責任(発起人の悪意重過失が必要)
(2)会社に帰属 ア ①発起人とは、発起人として定款(26条)に署名した者をいう。
発起人AとBとの契約は、会社成立後に一定の財産を譲り受けることを目的とするものであり、財産引受け(28条2号)に当たる。この財産引受けの効果が会社に帰属するか。
イ 発起人の行為が設立後の会社に帰属することを説明するべく、設立中の会社という概念を用いる。①設立中の会社は成立後の会社と実質的には同一である。発起人の権限の範囲内でした法律行為は、設立中の会社に実質的に帰属し、当然に成立後の会社に帰属する。
ウ ②発起人の権限について、設立のための行為(それに付随する行為(28条4号の定める設立費用以外)も含まれるのだろう)、開業準備行為のうち定款記載の財産引受けのみ権限内としている。開業準備行為のそれ以外の行為は、権限外である。事業行為は権限外である。
開業準備行為について、財産引受けに関する28条・33条を類推適用し、すべて発起人の権限内とする見解がある。しかしこれでは、開業準備行為と事業行為とは明確に区別できず、定款にどのような記載をすべきかが明らかでない場合を生じる。そこで、開業準備行為は定款記載の財産引受けを除き発起人の権限外であると解する。
エ 定款に記載のない財産引受けは会社に帰属しない(28条柱書)が、会社が追認(民法116条類推適用)することができるか。
仮に追認を認めると、時間と費用を要する検査役調査は避けられることになり、制度は空洞化する。③そこで、追認を否定するべきである。④ただし、取引後、長期間が経過した後に無効を主張することが信義則に反する場合もある〔6〕。
オ 発起人が支出した会社の設立のために必要な費用(設立費用 28条4号)は、①発起人が支払い済みの場合、②定款に記載・記録された金額の限度で、③検査役の調査(33条4項)をした金額のみ、会社に求償できる。
発起人が未だ弁済していない(①不充足)債務は、②③を満たしたとき会社に帰属、会社が負担し、これらを満たさない債務は発起人に帰属、発起人が負担するという判例がある〔7〕基M66、リー50。
カ 発起人組合と事業行為
(ア)仮に会社に帰属しない場合、③発起人組合に帰属すれば、発起人個人に対し取引債務を追及することができる。そこで、発起人の行為が発起人組合に帰属するための要件が問題になる。
例:石炭の売買等の、事業の準備行為などは、発起人組合の目的の範囲内に入るだろうか。
(イ)④開業準備行為の効果は成立後の会社に及ばないので、発起人は相手方に対して、無権代理人に準じる責任を負う(民法117条類推適用)。同条は実在する者の代理の規定であって直接適用できないものの、代理権を信頼した相手方を保護する趣旨であり、本件と類似の関係にあるからである。また、これによれば相手方は善意無過失でなければ保護されず、妥当な結論が図れる。
(3)見せ金
ア 全体の流れ 見せ金による払込は無効か→無効であるとして見せ金の当否→ⅰ当たるとして払込が無効となり発行された株式も無効か ⅱ出資財産の最低額を下回れば27条違反となり、重大な定款違反があるので、設立無効事由 ⅲ53条責任
イ 株式の払込みは現実になされることが必要であり、払込取扱機関と通謀して帳簿上の操作により(金銭の移動がない)払込みを仮装する預合い(965条)は、払込みとして無効である。会社財産の形成を害する行為だからである。
ウ 見せ金とは、発起人が払込取扱機関以外から借り入れた金銭を株式の払込に充て、会社の成立後にそれを引き出して借入金の返済に充てることをいう。借入・払込・引出・返済を全体としてみれば、一連の仮装払込みであり、仮装払込みが計画されたものである場合、会社財産の形成を害する行為であるから、無効である。
ただ、仮装払込みの意図は発起人の内心の問題であるため、客観的に推知せざるを得ない。そこで、①会社成立後から借入金返済までの期間の長短、②払込金が会社資金として運用された事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無などを総合的に考慮して、当否を判断すべきである。(き う えぃ)
エ 本問では、①設立登記直後に借入金が返済されており、期間は極めて短い。また、②払込金が会社資金として運用された事情はうかがえない。さらに、③借入金の返済により会社の資金はほぼなくなっている。
以上より、本問の発起人の行為は見せ金に当たり、その払込みは無効となる。
オ 見せ金であることを理由に払込みが無効であるとして、会社の設立にいかなる影響を及ぼすか。
828条1項1号からは設立の無効原因が明らかでないが、設立手続に重大な瑕疵がある場合に限られると解する。
出資額が「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」(27条4号)を下回る場合には、債権者を害するから重大な法令違反といえ、設立無効原因となる。
また、発起人が1株も権利を取得しなくなった場合には、25条2項に反する。この場合、発起人に責任を持って設立事務を執行させるという同条項の趣旨から、設立無効原因になると解する。
(4)責任 ア 発起人の責任は3類型ある。52条(会社に対する現物出資財産等の責任 33条10項1号に「現物出資財産等」の定義(現物出資と、財産引受け)がある。)、④´53条(任務懈怠責任 1項が対会社(423条に相当)、2項が対第三者(429条に相当))、56条(不成立の責任 支出した費用負担)である。52条と53条は連帯責任である(54条)。
53条1項の要件は、①発起人、設立時取締役、②任務懈怠、③因果関係ある損害、53条2項の要件は、①発起人、設立時取締役、②悪意重過失、③因果関係ある損害である。
イ 土地価額が1割低いと判明した。「著しく」(52条1項)に当たらないので、発起人は差額を支払う責任を負わない。1000万円が200万円と判明した場合、「著しく」低いといえるので、発起人は差額支払い義務を負う。(条文の文言を判断する姿勢)
ウ 検査役の調査(33条2項 他の者の調査は×)を経ていた場合、出資財産不足額について発起人は免責される(52条2項1号 不動産鑑定士等33条10項3号の証明では免責されない 注意)。ただし、現物出資をした当該発起人については、免責は認められない(52条2項柱書かっこ書)。無過失免責についても同様(2項2号、2項柱書かっこ書)。
証明者(たる弁護士)と不動産鑑定士も連帯して財産価額の補填責任を負うが、無過失を立証した場合にはこの責任を免れる(52条3項)。 検査役は補填責任を負わない(刑事責任のみである)。
エ 募集設立の場合、発起人の責任は加重され、現物出資の責任(52条)の無過失免責が認められなくなる(103条1項)。
募集設立の場合、疑似発起人は、発起人とみなして52条~56条、103条1項の責任を負う(103条2項)。
新法:仮装払込みの責任 52条の2、102条の2、103条2項が新設。
(5)瑕疵 ア 法的安定性を図るべく、設立の無効は訴えをもってのみ主張できる。また、判決の遡及効はない(839条)。画一的な紛争解決を図るべく、判決に対世効(838条)がある。無効の訴えの提訴期間は会社成立の日から2年以内である(828条1項1号)。提訴権者は株主等に制限され(828条2項1号 これが定義規定)、会社債権者は含まれない。債権者保護は発起人の対第三者責任(53条2項)等によって図られる。
イ 無効事由は明文にないが、設立関与者の信頼を保護すべく、重大な定款・法令違反に限り無効事由とするべきである。
発行可能株式総数の4分の1を下回る場合、株式の価値の希薄化を4分の1までにとどめるという同法の趣旨を没却するので、重大な法令違反であり、設立無効事由となる。通知(36条1項)しても、発起人が一株も引き受けない(25条2項)場合、発起人に慎重な判断をさせるという同法の趣旨を没却するので、重大な法令違反であり設立無効事由となる。この場合、30条2項の例外に当たらないので、定款を変更(して発起人の名前を削除)することはできない。
ウ 会社不成立とは、設立手続が設立登記に至る前に中途で挫折し、会社が法律上も事実上も存在するに至らなかった場合である。株式引受人保護のために政策的に発起人のみ全責任を負う(56条)。払込金の返還義務を負い、設立費用を負担する。
(6)その他 ア 現物出資された土地に、不動産鑑定士と弁護士の証明がついた場合、検査役の調査は不要である(33条10項3号 不動産については、証明者と不動産鑑定士の検定評価も必要となる。同号かっこ内参照)。
法人格を取得するのは設立登記を終えた時点である(49条)。原始定款は公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない(30条1項)。募集設立では発起人以外に募集人がいる(57条1項等)ので、保管証明責任(64条)などで保護を図る。
イ 株式会社においては、社員は、現物出資を除き、株式の引受け(25条1項)及び出資の履行によって確定される。株式会社は大規模を予定しており、社員を定款で確定することは適当ではないからである。また、株主は当然には機関とはならない。経営の合理化を図るべく、所有と経営の分離(331条2項参照)がなされているからである。さらに、出資は設立段階で完全に履行されなければならない(34条、63条参照)。株主は間接有限責任しか負わず(104条)、会社債権者を保護する必要があるからである。
ウ 設立時の定款変更は変態設立事項や発行可能株式総数のみであり(30条2項 創立総会の変更も(96条の限定解釈))、募集設立では時間制限もある(96条 払込期間の初日まで 募集株式の信頼を害さないように)。募集設立の手続について、保管証明責任がある(64条)、発起人以外は現物出資できない(63条、34条参照)、責任の範囲が違う(103条2項等)、募集設立のみ創立総会がある。授権資本制度は37条3項により4倍ルール。113条参照。株式引受人の意思の瑕疵は、51条、102条により処理する。株式引受人が期日までに払込をしない場合、失権する(63条3項)。

3 株式
(1)共有 ア 株式の共有が生じた場合、原則として、権利行使者の決定と会社への通知が必要である(106条 原告適格「株主」に含まれるかでよく争われる。)。権利行使者の決定について具体的な方法は定められていないが、協議を経たうえで持分価格の過半数による指定通知を要すると解する。なぜなら共有者の一人でも権利行使者の指定に反対する限り、共有株式全部の権利行使が妨げられれば、会社運営に支障を来すおそれがあるからである(原則論)。
イ 過半数の指定通知が不要となる例外 例外1:株式の議決権行使がなされたことを前提として法律関係が発生していることを本案で主張している場合、訴訟上の防御権を濫用し、著しく信義則に反して許されない。
例外2:発行済み株式の全部・過半数が共有株式(相続株式)である場合、会社の活動が停止して機能しないから、権利行使を認めるべきである。
ウ 参考:大阪高裁平20・11・28…R過半数を持っているとしても、少数者との協議を行わずに権利行使者を定めることは許されない。このような場合、権利の濫用に当たり、議決権行使が許されない。
東京高判平24・11・28(106条ただし書の会社の同意について)…会社が自由に権利行使者を認めれば、会社の都合のいい準共有者に議決権の行使を認めることになり、相当でない。106条ただし書の会社の同意は、準共有者間において議決権の行使に関する協議が行われ、意思統一が図られている場合にのみ、許されるものである。
(2)相互保有(リー146)
株式の相互保有は、会社資本の空洞化、会社支配のわい曲化のおそれがあるので、以下のような措置が採られている。
子会社は、原則として親会社の株式を取得できず(135条1項 ペー2)、取得しても相当の時期に処分しなければならない(同3項)。ある会社の総株主の議決権の4分の1以上を有するなど株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にある会社は、その有する他の会社の議決権を有しない(308条1項かっこ書)。
(3)失念株 ア. まだ交付されてないとき XのYに対する株式譲渡は名義書換がなされていない。Yは株主たる地位を会社に対し主張できない(130条1項)。したがって、株主に付与された新株の割当てを受ける権利も、会社に対して主張することはできない。したがって、会社に対し自己に交付することを求めることはできない。
イ. 交付されたとき XからYに対して新株の割り当てを受ける権利が譲渡され、Xは無権利者である。ただし、会社は株主名簿上の株主を株式の割当てを受ける権利者(202条1項)として割当てすれば、譲渡を知らない限り免責される(手形法40条3項類推、民法478条)。したがって、Yは名義書換を失念した以上、会社に対し権利を主張できない。
ウ. YはXに新株の引渡しを請求できるか。株式の割当てを受ける権利の帰属が問題となる。
(ア)株式の割当てを受ける権利は株主権と密接に関連するものであるから、株式に随伴して移転する。そこで、株式の割当てを受ける権利は譲受人に帰属する。
(イ)もっとも、譲受人が引受け・払込みをして取得した新株自体は,引受け・払込みの対価であって、株式割当てを受ける権利と同視できない。そこで、譲受人は譲渡人に新株自体の引渡請求をすることはできないが、株式の割当てを受ける権利の価値相当額、すなわち払込み価格と新株の市価との差につき、不当利得として返還請求できるものと解する(民法703条、704条)。
(ウ)額について。失念株主が、譲渡人の危険において投機する機会を防止すべく、払込金額と新株発行直後の株価との差額と解するべきである。
(4)株式と社債の異同について(1共通点 2相違点総論→各論 3両者の法的接近)基M217,218、論M26問、リー330
社債管理者の義務(704条) 社債管理者の責任(710条 2項柱書の無過失免責を認めた裁判例:名古屋高判21・5・28) 社債権者集会決議(724条)とその効力(733条各号(831条の取消し事由と似てる)、734条)
(5)利益供与  I1責任の有無(規則) I2:423条で残りも請求
ア 論文では、120条4項の「関与した者」として規則21条2号を参照すること、423条1項の責任(法令違反行為と、監督義務違反と、両方である)、両者の損害額について供与相当額とそれを超える額であることを示すこと、が大切である。
イ 会社は何人に対しても、株主の権利行使に関し会社又はその子会社の計算において財産上の利益を供与してはならない(120条1項)。その趣旨は、企業経営の健全性を確保するとともに、会社財産の浪費を防止することにある。
無償で財産上の利益を供与したときは、株主の権利の行使に関し、財産上の利益を供与したものと推定される(2項)。
財産上の利益の供与を受けた者は、会社に返還しなければならない(3項)。
また、利益供与に関与した取締役は、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う(4項)。過失が推定されるので、無過失を立証すれば免責される(反論、抗弁で述べる)が、利益供与行為をした取締役自身は無過失責任である(同ただし書)。
3項4項ともに847条で代表訴訟の提起が可能である。(代表訴訟は8-1参照)
(120条の責任を追及しようとするとき、利益の供与を受けた者と、利益を供与した者と、2方向の責任を常に考える。)
ウ P社はQ社の「特定の株主」である(同2項)。そして、Q社は株主であるP社に著しく低い価格で製品を譲渡しているから、「権利の行使に関し」利益の供与をしたと推定される(同2項後段)。
よって、反証のない限り、P社はQ社に対して供与額を返還する義務を負う(同3項)。
エ 会社の好ましくない株主が議決権を行使することを回避するために、当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為は、株主の権利の行使に関し利益を供与する行為に当たる。(消極的方向、いわば権利の不行使でも「権利の行使」といえるということ)現経営陣の経営方針に賛同するよう求めつつ、議決権を行使した株主に対して金品を提供する行為は、株主の権利の行使に関し利益を供与する行為に当たる。(賛成票を入れることを約束に予め金品を提供した場合でなくても、ということ)
オ 120条違反は違法行為であるから、取締役は当然に任務懈怠が認められ、監査役も(無過失を立証しない限り)423条責任を負うことになる。損害額については、供与額相当額の返還は120条により行うことができる。それ以上の損害が会社に生じた場合には、上積みの部分について423条により賠償させればいい。
カ 事例演習 乙は甲社のAの家族に危害を及ぼす旨、会社のカルテルを暴露する(課徴金は数億円)旨、脅迫をした。Aは1億円の利益供与を取締役会に上程した。Bは課徴金よりも安いので賛成。Cは法令違反を理由に反対。Aは乙に1億円交付した。
議案提案したAは120条4項、規則21条2号ロにより「供与した利益の価額に相当する額」たる1億円の責任を負う。Aは実行犯と評価されるので、120条4項ただし書の無過失免責は認められない(同かっこ書)。また、1億円を超える損害についても423条1項の責任を負う。
Bは、賛成しているので、1億円の責任はある(120条4項、規則21条2号イ←ひけるように)。Bは120条4項ただし書の無過失免責の反証は可能であるが、本件では法令違反を認識しているから認められないだろう。
Cは反対しているので、規則21条に当たらず、120条4項の責任は負わない。監督義務違反を理由に、423条の責任を負うと解する。なぜなら、明らかな法令違反がある以上、反対するだけではなく、監査役や株主に報告するべきだからである(難)。
(6)自己株式
ア 自己株式の取得については、①資本維持の原則に反し会社債権者が害される、②株主平等原則に反する、③経営者による会社支配の固定化、④証券市場における不公正などの弊害が生じるおそれがあるとの指摘がある。
もっとも、自己株式の取得・保有・処分が認められれば、取得株式をストック・オプションや組織再編に備えて保有し続けたり、余剰資金の返却の手段として自己株式を取得したり、また、1株当たりの価値を向上させるなどの目的で自己株式を消却できる。
そこで法は、上記の弊害に対処するために財源規制(① 461条など)、手続規制(② 156条以下)、新株発行と同様の規制(③ 210条2号など)、金融商品取引法による規制(④)を置き、155条に列挙する場合に自己株式の取得を認めている。
イ 規制の内容
(ア)財源 会社債権者を保護するため、自己株式の取得の対価として交付する金銭等の帳簿価額の総額は、分配可能利益の範囲内でなければならず(461条1項2号)、それを超えて支払った場合には取締役等の責任が生ずる(462条1項)。
(イ)取得手続 すべての株主に申込み機会を与える場合、株主総会の普通決議が必要である(156条1項)。特定の株主から取得する場合は株主総会特別決議が必要である(160条1項、309条2項2号)。この場合売主は議決権が制限される(160条4項)。また、他の株主には売主追加請求権が認められる(160条2項、3項)。
(ウ)処分手続 会社支配の不公正を防止するため、自己株式には議決権が認められず(308条2項)、自己株式の処分は募集株式の発行等の手続(199条以下)によらなければならないとされている。
ウ 取得手続違反の有効性(注:自己株式の処分の場合(無効の訴え 828条1項3号、828条2項3号)とは異なる)
(ア)取得手続規制に反して自己株式の取得が行われた場合、会社保護のため原則として無効である。ただし、手続上の瑕疵は会社の内部事項であるから、取引の安全を図る必要がある。そこで、善意の株主には無効を主張できないと解する。
ただし、株主は処分により目的を達成しており、投機の機会を与えるべきではないから、無効を主張し得るのは会社だけであると解する。
(イ)423条1項の責任において、損害額が、取得価額をいうのか、取得価額から時価を引いた額をいうのかは論ずる。
(ウ)財源規制に反して自己株式の取得が行われた場合、会社の保護のみならず、債権者を保護する要請もあるので、絶対的に無効であると解する。
エ 自己株式の法的地位について 議決権はない(308条2項)。剰余金配当請求権はない(453条括弧書)。残余財産分配請求権はない(504条3項括弧書)。これに対し、株式併合・株式分割はできる。自己株式の換価価値の維持のためである。

4株主平等原則
(1)ア. 株主平等原則とは、株主は、株主としての資格に基づく法律関係については、その有する株式の内容及び数に応じて平等な取扱いを受けるという原則をいう(109条1項)。これは、会社と株主との関係や株式譲渡などを合理的に処理し、もって、誰もが安心して出資できるようにするという技術的要請に基づくものである。
最も重要な株主の権利である、議決権(308条1項)、剰余金の配当(454条3項)、残余財産の分配(504条3項)について個別的規定があるが、個別の規定に意味を持たせる見解によれば例外は明文のある場合に限り許される(絶対的平等)。
非公開会社では、属人的に異なる取り扱いをすることができる(109条2項)。この理由は、非公開会社には広い定款自治が定められていて、また、株主の個性に重きが置かれている、ということにある。
多数決の濫用から少数株主を保護する機能、取締役などによる恣意的権限行使から一般株主を保護する機能を有する。
イ. 株主優待制度は株主平等原則に反するか。
(ア)まず、事業上の給付も一定数以上の株式を有するがゆえに認められるものであるから、株主としての資格に基づく法律関係に関するものといえる。
(イ)もっとも、ここでいう平等を形式的に解すれば、機動的な資金調達や安定株主の確保といった会社の様々な目的を達成できないので、実質的にとらえるべきである。そこで、①優待的取扱いの程度が軽微であり、かつ、②個人株主の拡大、顧客の増大などの必要性合理性があれば、平等原則に反せず許されるものと解する。
(2)ある時点以降に発行される株式の剰余金の配当を、2分の1とする定款変更は許されるか。株主平等原則の現れである454条3項に反しないか問題となる。
ア. この点、定款変更が劣後株(108条1項)を定めるものであれば、両者は異なる株式である以上、「内容…に応じた」平等を要請するにとどまる株主平等原則(109条1項)ないし454条3項には反しない。
イ. 他方、同種の株式について剰余金の配当を2分の1とする趣旨であれば、剰余金の配当という株主の資格に基づく法律関係に関して異なる取扱いをするものであり、454条3項に反しないかが問題となる。
(ア)この点、公開会社では、454条3項に反するので、定款変更は許されない。
(イ)他方、非公開会社では、剰余金の配当につき株主ごとに異なる取扱いを行うことを定款で定めることが明文上認められている(109条2項、105条1項1号)。したがって、定款変更も許される。
(3)論M19 従業員持株制度 ア 会社が奨励金などの特別の便宜を図ることが株主平等原則(109条1項)に反しないか。
株主平等原則とは、株主は、株主としての資格に基づく法律関係については、その有する株式の内容、数に応じて平等に取り扱う原則をいう。しかし、奨励金は従業員としての資格に注目してなされるものである。よって、株主平等原則には違反しない。
イ 議決権は総務部長Aが代理行使することとされている。株主は議決権を代理行使できるのが原則であるが(310条1項前段)、会社支配の手段として濫用されるおそれがあるため、代理権の授与は株主総会ごとにしなければならない(310条2項)。総務部長Aに対する議決権の代理行使の委託は、「包括的に」なすべきものとされているから、310条2項に反し、違法である。
ウ 従業員が①会社又は持株会に対して、②一定の事由が生じたときに株式を譲渡する義務を負い、③譲渡価額が一定とされる条項は、株式譲渡自由の原則(127条)の脱法行為であり、無効(民法90条)ではないか。
会社法は譲渡人の相手方選択の利益を重視していない(140条1項、4項)。また、売渡しの強制自体は、株式譲渡制限のある会社の株主の投下資本回収に寄与する面があるし、株式を他の従業員に再譲渡する必要もある。したがって、①②は民法90条に反しない。しかし、③について、譲渡益の取得を完全に否定するおそれがある。そこで、剰余金配当が実質的にあり経済的利益が得られるか、譲渡価額の算定方法が株式の価値と連動性を有している場合に、有効であると解する。
(4)Y社とAとの間の贈与契約は、株主平等原則(454条3項 注:109条1項より厳格と解する説)に反しないか。
454条3項はあくまで「配当」について定めた規定であり、本件のような「契約」においては適用されないとも思える。
しかし、その契約が実質的には配当といえるような場合には、454条3項に反し得ると解する。なお、このような支払いは、株主の権利の行使に関する利益供与に当たり(120条)、今日では刑事罰の対象にもなる(970条1項)。

5譲渡制限・株券 (与えられた資料から譲渡制限があるかを見る。非公開会社ではこの譲渡制限の論点を想起する。)
(1)株主間接有限責任(104条)→会社債権者保護→株主が会社から出資の払い戻しを受けることができない(606条参照)→しかし、出資者確保のため出資回収の必要性。所有と経営の分離(331条2項、402条5項参照)→社員たる株主の個性は重視されないので、自由な譲渡を認める弊害も少ない。そこで127条は株式譲渡自由の原則を定めている。
(2)法律、定款、合意による制限 ア 会社は株式の譲渡に会社の承認を要することを定款で定めることができる(107条1項1号、2項1号、108条1項4号、2項4号)。譲渡の承認機関は、原則として株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)であるが(139条1項本文)、定款に定めれば、他の機関とすることもできる(同ただし書)。種類株式につきリー76
イ 譲渡制限株式の譲渡方法 リー94
①譲渡承認請求(136条~138条)→②会社が承認の有無を決定・通知(139条 みなし承認)→③会社が買い取らず、①で買い取り先指定請求をしていれば、会社が買い取るか買取人を指定する(140条~142条)→④売買契約成立(143条、144条)
競売で取得した者は共同で譲渡承認請求する必要はなく単独で請求できる(137条1項2項、規則24条1項3号)。
ウ 法律による制限 (ア)まず、時期による制限として、権利株や、株券発行会社における株券発行前の株式の譲渡は、会社との関係では無効とされている(35条、50条2項、63条2項、208条4項、128条2項)。
(イ)次に、株式を発行した会社に対する株式譲渡は一定の要件を満たさない限り無効となる(155条以下、461条等)。
(ウ)さらに、子会社は原則として親会社の株式を取得することができない(135条)。
相続や合併といった一般承継によって取得する場合「譲渡」による取得でないから、会社の承認は必要ない。しかし、定款で定めれば、会社が譲渡制限株式の一般承継人に対して売り渡すことを請求できる(174条以下)。起算日の解釈、一般承継人が複数いる場合にそのうちの一人に行えるか、承継人の保護も問題となる(受験新報04/14問題)。
エ 合意による制限(基M128 論M17問) 学説:127条の趣旨=投下資本回収を妨げ原則無効(民90)。
判例:原則としてすべて有効。配当がないとき等は無効(事例で24)
法文:譲渡先を会社が決める特約は不当遅滞なら株主名簿書換請求が認められる(145条と同じ趣旨)。
株主相互間の合意による制限の場合には、私的自治の原則、投下資本回収を妨げないので、有効である。
(3)譲渡人XはY社に株主たる地位を主張して、剰余金の支払いを求めることができるか。定款による譲渡制限(107条1項1号)のある会社において、会社の承認を得ずになされた株式譲渡の効力が問題となる。
ア 137条1項・138条2号は当事者間では譲渡が有効であることを前提としていることから、譲渡当事者間においては有効となると解する。
これに対し、会社経営上好ましくない者の参加を排除して会社経営の安定を図るという107条1項1号の趣旨に照らせば、会社に対する関係では譲渡は無効と解する。(会社の事後承認は瑕疵治癒。株主全員承認は趣旨に反さず有効)
イ では、会社は譲渡人Xを株主として扱わなければならないか。この点、136条以下の手続に代替するような裁量を会社に認めるべきではない。そこで、会社は譲渡人を株主として扱う義務があると考える。
ウ 本問では、Y社はXを株主として扱わなければならないので、XはY社に株主たる地位を主張できる。
したがって、Xは剰余金の支払いを求めることができる。
(4)その他 譲渡制限の定款変更に反対の株主は株式買取請求ができる(116条1項)。
譲渡承認請求の撤回制限(143条)の趣旨は、株主の権利濫用の防止にある。
定款で定める承認を要しない「一定の場合」(107条2項1号ロ)とは、株主間の譲渡、かつ、少量の場合が考えられる。
416条4項1号、319条の3(新設)によれば取締役等に譲渡の承認の委任はできない。
(5)株券 ア Xは、甲株式会社が株券を発行する前にYに株式を譲渡しているので、XY間の株式譲渡は当事者間では有効であるが、会社との関係では無効となるのが原則である(128条2項)。もっとも、同条項の趣旨は、会社の株券発行事務の円滑処理を図るという政策的考慮にある。とすれば、会社が株券の発行を不当に遅滞した場合には、その会社を保護する必要はないから、同条項は適用されず、株式譲渡を会社に対抗できると解する。
本問では、甲会社は会社成立後1年間経っても株券を発行しておらず、株券の発行を不当に遅滞しているといえる。
したがって、128条2項の適用はなく、XY間の株式譲渡を会社に対抗できるので、Yは株主たる地位を会社に主張できる。
イ 交付は譲渡の効力要件(128条1項)であり、発効前の譲渡は無効(同2項)。権利推定(131条1項)により所持していれば名義書換に応じなければならない。善意取得(131条2項)、喪失登録(230条)がある。株券発行会社の場合、名義書換は会社対抗要件である(130条2項)。

6株主名簿・併合等
(1)株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、株主名簿の閲覧請求ができる(125条2項)。
株主名簿閲覧請求権の拒絶事由は125条3項各号である〔13〕。125条3項3号(競業関係)は削除された。
(2)要件 ア 有効要件は、不発行では合意、発行では交付(128条1項本文)。対抗要件は名義書換、発行の第三者対抗要件は株券の占有である(130条1項・2項)
イ 名義書換請求がなされなければ、会社は、会社に対して権利行使し得る株主を株主名簿に基づいて確定することができる(確定的効力 130条)。では、自己の危険の下で名義書換未了の譲受人を株主として取り扱い、権利行使を認めることができるか。(注:会社に対しても譲渡の効力は生じていることが前提。)
130条1項は「対抗することができない」と規定しており、名義書換は有効要件では無く(H25司 譲渡は会社との関係でも有効)、単なる対抗要件にすぎないと考えられる。また、同条項の趣旨は集団的法律関係を画一的に処理し、もって会社の便宜を図る点にある。そこで、その会社自身が、自己の危険において名義書換未了の譲受人を株主として扱っても、不都合はない。したがって、会社は名義書換未了の譲受人を株主として扱うことができると解する。
(名義書換なくして権利行使し得る場合は、①会社が任意に権利行使を認める場合、②会社が名義書換を不当拒絶した場合、③長期間株券を発行しない場合、④相続により権利を取得(一般承継)した場合である。)
(3)133条の請求と不当拒絶 ア 甲は名義書換未了のまま株主たる地位を乙会社に対抗できるのではないか。株券につき盗難届が出ていることを理由に名義書換を拒絶することが許されるかが問題となる。
株券の占有者は適法な所持人と推定され(資格授与的効力 131条1項)、会社としても134条柱書本文に当たるとき、その者が実質的権利者ではないことを立証したとき、及び、株券喪失登録(221条)がなされているときを除き、株券を呈示している者の名義書換に応じなければならない。本問では、株券について盗難届が出されているだけであり、これによって甲の無権利を立証することはできない。乙会社が名義書換請求を拒絶したことは、不当拒絶に当たる。
イ. そして、株主名簿制度(121条以下)の趣旨は、多数の変動する株主に関する事務を画一的に処理し、会社の便宜を図る点にある。とすれば、会社が不当拒絶をした場合、名義書換をしていないことを理由に株主の地位を否定することは、信義則(民法1条2項)に反する。
そこで、甲は乙会社に対し、名義書換未了のまま、株主たる地位を主張できると解する。
(4)免責的効力 Xによる取消しにより、本件譲渡は遡及的に無効となり(民法121条本文)、Aは遡って無権利者となる。とすれば、Aへの剰余金の支払いは無効となり、Xは剰余金を請求し得るとも思える。
もっとも、Y社は、XとAが共同して名義書換請求をしたことに対して、応じている。株券不発行会社における名義書換請求には慎重な手続が要求されるから、株主名簿の記載には名義人が権利者として推定される効力を認めるべきである(推定的効力)。その反射的効力として、会社に悪意・重過失がない限り、免責的効力(手形法40条3項類推適用)が認められる。
Y社が取消事由について善意無重過失であれば、剰余金の支払いは有効となり、XはY社に対し請求できない。
(5)株主名簿その他 基準日は124条。基準日後の株主の議決権行使を認めることはできない(124条4項ただし書)。
通知されなくなる(196条1項)、保有株式を強制的に処分されることがある(197条)。(株式の章の後ろ(第7節))
(6)併合・分割など
ア 併合 株式の併合により、株式の併合は株主総会の特別決議が必要となる(180条2項、309条2項4号)。種類株主だけに損害のおそれある場合、種類株主総会決議が必要(322条1項2号)。取締役は説明義務を負う(180条4項)
株主の投下資本の回収のため、株式併合により1株に満たない端数が生じた場合には、競売して代金を分配するのが原則である(235条1項 H26京大)。また、182条の2ないし182条の6が新設されて、差し止め請求が可能になった。
 株式併合により4倍ルールを破ることはできなくなった(180条3項 新設)。
株主は、効力発生日の前日に有する株式の数に株式の割合を乗じて得た数の株式の株主となる(182条)。
イ 179条以下でキャッシュアウトの制度が新設された。
ウ 単元株 種類株ごとに単元数を異なるようにすることは可能(188条3項)。ただし190条により理由開示。単元数の減少に定款変更の株主総会は不要(195条)。単元数を増やす場合、定款変更に株主総会が必要(191条各号除く)。
 150株式所有で1単元が100株の場合、50株については単元未満株主である(189条1項)。
 ①剰余金配当金請求権は、定款でも奪えない当然の権利である(189条2項反対解釈)。株主名簿の書き換えも(189条2項6号 規則35条)。②総会決議取消の原告適格、株主代表訴訟の原告適格は、文言によればできそうだが、189条2項各号には定められていないので、定款によって権利行使を認めないことができる(定款次第の権利)③議決権、議決権行使を前提とする権利(304条の議案提出権など)は、当然に排除され、定款で定めなくても認められない。

7募集株式の発行等 新株予約権
(1)ア 募集株式の発行等は株主の持株比率を変動させるため、持株比率維持の利益を保護する必要がある。
(ア)まず、非公開会社では、株主の持株比率維持への期待が強い。そこで、募集株式の発行等には、原則として株主総会の特別決議が要求されている(199条2項、309条2項5号)。
(イ)これに対し、公開会社では、持株比率維持への期待は低い。そこで、資金調達の機動性が重視されており、取締役会決議で足りるとされている(201条1項)。
ただし、発行可能株式総数の定めが要求され(37条1項・2項、113条3項)、その限度では持株比率維持への期待は保護される。
(ウ)さらに、公開会社・非公開会社を問わず、株主に割当てを受ける権利を与えて募集株式の発行等をすることができ(202条)、この場合には、持株比率維持への期待は保護される。また、「著しく不公正」な方法による新株発行は差止事由となる(210条2号)。取締役の会社の支配権維持の対抗手段:当該株主が有することになる株式数が総株式数の1/2以上の場合、通知が必要。議決権の1/10以上を有する株主が反対したとき、株主総会の承認を要求する(改正会社法206条の2第1項、4項など)。
イ 募集株式の発行等は、発行価額次第では株価の下落を招き、既存株主の(株式価値が希釈化されて)経済的利益を害するおそれがある。
そこで、公開会社でも、第三者への有利発行は株主総会の特別決議が要求される。また、取締役は、当該総会で当該払込金額により募集を行うことを必要とする理由を説明しなければならない(199条2項、3項、201条1項、309条2項5号)。
ウ 以上のような事前の措置が功を奏しないとき、事後的に回復措置をとる必要がある。
そこで、株式発行無効の訴え(828条1項2号)・自己株式処分無効の訴え(同3号)、及び、株式発行不存在確認の訴え(829条1号)、自己株式処分不存在確認の訴え(同2号 H26司)が規定されている。
エ 「取締役会決議が必要になる場合を挙げよ。」という問題→公開会社が対価として株式を発行する場合(ただし有利発行を除く)を挙げる。
(2)乙社は210条に基づいて本件募集株式の発行を差し止めることが考えられる。そして、本問募集株式の発行がされれば、乙社の保有株式比率は5%低下するので「株主が不利益を受けるおそれがあるとき」に当たる。では、各号の事由が認められるか。
ア. 払込価格は市場価格よりも低い価格であるが、これが「特に有利な金額」(199条3項)である場合には、株主総会の特別決議が必要であるところ(199条2項、3項、201条1項、309条2項5号)、本問ではかかる決議がなされていないため、「法令…に違反する場合」(210条1号)に当たる。そこで、「特に有利な金額」の判断基準が問題となる。
199条3項が既存株主の経済的損失を回避するための規定であるから、特に有利な金額とは、時価を基準とした公正な価額よりも低い価額をいうと解する。そして、公正な価額とは、資金調達が達せられる限度で既存株主にとって最も有利な金額をいうと解する。
本問では「直近3ヵ月の市場価格の平均」を基準としており、時価を基準としている。そして、資金調達目的を考慮すれば、1割程度は引かざるを得ず、「90パーセントに相当する額」でも、既存株主にとって最も有利な金額といえる。
したがって、「特に有利な金額」とはいえず、「法令…に違反する場合」には当たらない。
イ. 次に、丁社の持株比率が上昇することから、「著しく不公正な方法」(210条2号)に当たるか。判断基準が問題となる。
株式会社に資金需要があるのは一般的であるから、資金調達目的のみを基準に用いるのは妥当でない。そこで、資金調達目的があっても、主要な目的が支配権維持・確保目的にある場合には、会社法が機関権限の分配を定めた法意に反するから、「著しく不公正な方法」といえると解する。
確かに、本問の募集株式の発行は、業務遂行の一環として資金調達が行われただけとも思える。しかし、この発行は、乙社からの甲社取締役にとって不利な株主提案を受けて「直ちに」なされている。さらに丁社のみを引受人とし、当該発行による株式に限り効力発生日の翌日を基準日としていることからすれば、丁社の現経営陣に賛同するような議決権の行使を意図したものといえる。そのため、かかる発行は、丁社を通じて(注:甲社が丁社を支配利用することが前提)会社支配権を維持強化する目的が主要なものであるといえる。
したがって、本問の募集株式の発行は、「著しく不公正な方法」に当たる。
ウ. 以上より、乙社は本問の募集株式の発行を差し止めることができる。
(3)210条
ア 要件は、①株主が不利益を被るおそれ、②法令・定款違反(1号)又は著しく不公正な方法(2号)による発行である。
差止めの制度趣旨は、株主の個人的な利益を保護することにある。
公開会社では、株主に差止請求の機会を保障するため、募集事項の通知・公告の制度が規定されている(201条3項、4項)。非公開会社では、株主総会の招集通知(299条)及び株主総会の議事録(318条)によって募集事項を知ることができる。
①株主が不利益を受けるおそれとは、株式価値の希釈化により経済的価値が損なわれる場合、議決権の希釈化により支配にかかる利益が損なわれる場合などをいう。
イ 主要目的ルール…。もっとも、当該会社を食い物にしようとする買収の防衛策としての募集株式の発行等の必要性も考慮しなければならない。そこで、支配権維持・確保を目的とする募集株式の発行等は原則として著しく不公正なものではあるが、買収防衛策としての必要性・相当性が肯定できる場合には、株主全体の利益保護の観点から、それを正当化する特段の事情があると考える。かかる場合、例外的に「著しく不公正な方法」とならない。
(4)株式発行の無効の訴え(828条1項2号3号)を提起することが考えられる。
何が株式発行の無効原因となるかは、条文上明らかでなく問題となる。
ア(ア)株主総会又は取締役会決議を欠く発行(199条、201条)は、会社内部の事情であり、対外的に会社を代表する者が株式を発行している以上、取引の安全を図り、有効とすべきである。
(イ)著しく不公正な方法による発行(210条)は、会社内部の事情であり、対外的に会社を代表する者が株式を発行している以上、取引の安全を図り、有効とすべきである。
イ. 非公開会社では、原則として株主総会の特別決議によって募集事項を決定することを要し(199条)、また、株式発行無効の訴えの提訴期間も1年と伸長されている(828条1項2号)。
そうすると、非公開会社については、会社の支配権に関わる持株比率の維持に係る既存株主の利益の保護を重視し,その意思に反する株式の発行は株式発行無効の訴えにより救済するというのが会社法の趣旨と解される。
そこで、非公開会社では内部的な意思決定を欠く株式発行は、手続に重大な法令違反があり、無効となると解するべきである(最判平24・2・24 応用会社法17 H24重判1事件)。
ウ. 差止め(210条)の仮処分又は差止判決を無視した発行については、裁判による法秩序の維持という司法制度の目的に反し、株主の利益を確保するために差止めを認めた210条の趣旨を没却するものであるから、無効と解する。
エ. 募集事項の通知・公告(201条3項・4項)を欠く発行は、株主に差止請求の機会を保障するという同条項の趣旨を没却するものであり、無効とすべき〔100〕。ただし、差止事由が存しなかったことを会社が立証した場合には、適法な通知・公告があったとしても差止めの可能性はなかったのであるから、取引の安全の見地から有効である。①差し止め機会がなく、②差し止め事由がある場合は無効。
公示・公告がなされている場合、判例は無効としない。しかし、株主等は事実上知り得ず、手続保障が与えられていないので、201条の趣旨はみたされない。公示内容を知らない第三者についてのみ、無効事由を認めるべき(リー314〔101〕解説)。
オ 無効の訴えは期間が1年であるが、不存在の訴え(829条 H26司法)は制限がない。無効判決は対世効(838条)及び将来効(839条)を有する。不存在確認の訴えの場合、確認判決は対世効(838条)を有するが、後は一般原則に従い不存在であることにつき既判力が生じる。
会社は金銭の返還義務を負う(840条1項 株式は手続を経ずに無効となるため、旧株主が返還することはない)。
(5)責任 ア ①取締役らと、②通じて、③著しく不公正な払込金額で募集株式を引き受けた場合、引受人は公正な金額と払込金額との差額を支払う責任を負う(212条1項1号 2L後期期末で落とした)。
イ 現物出資の場合に給付した財産の価額が募集事項において定められた価額に著しく不足する場合、引受人は不足額を支払う責任を負う(同項2号 ただし取消し得る(同条2項) この場合関与した取締役らも責任を負う(213条1項 規則44条ないし46条 例外について2項))。株主代表訴訟で請求○(847条1項)。後は423条1項で。
ウ 新設:仮装払込の効力・責任について、209条2項・3項、213条の2、213条の3が新設。設立時発行株式(新法52条の2 第1 項・2 項),募集新株予約権(新法286 条の2 第1項1・286 条の3 第1 項)も同様。
参考:募集株式の発行等と募集設立との異同 基M173、論M27
(6)新株予約権 ア 新株予約権の発行の決定機関など諸々の事項は募集株式の発行とほぼ同様(238条2項、240条など)。
差止請求は247条。この差止請求権は募集新株予約権の場合を想定した規定だが、募集の手続によらない新株予約権無償割当てのような場合でも、株主の利益保護のために必要な場合には類推適用を認めるべきである〔99〕。
無効の訴え、不存在確認の訴えも募集株式発行の場合と同様である。
イ 新株予約権の行使条件を取締役会に委任することもできるが(236条1項、239条1項後段各号)、かかる委任の趣旨の範囲を超えた(ここは解釈 ペー2 H24重判)取締役会決議は無効である。(結局、従前の行使条件の未成就となるので)違法な新株予約権の行使による株式の発行は無効(828条1項2号)となる(最判平24・4・24 百選〔30〕の最高裁 応用会社法17)。
ウ 新株予約権1個につき2株交付、新株予約権行使の払込価格400円、株式の対価2000円の場合、1株は2200円である。(2400円ではない。)有利発行(240条1項、238条3項2号)で間違えないように。

8-1株主
(1)会社の実質的所有者たる株主ではなく取締役会に業務執行が委ねられたのは、経営の合理化のためである。会社の実質的支配者たる株主が経営の合理化を望まないのであれば、これを強要する必要はない。そこで、取締役会の存在意義を没却させない範囲で、取締役会の業務執行に関する決定を定款で株主総会の決議事項とできると解する。
(2)取締役会非設置会社と取締役会設置会社の株主総会の違いについて検討する。(け し つ け て 論M34リー139)
ア. 決議対象は一切の事項(295条1項)と、法律・定款で定めた事項(2項)という相違がある。設置会社には経営に参与しない株主がいることが予想され、通常の業務執行は取締役に決定させたほうが適切な判断がなされると考えられているからである。
イ. 株主総会の招集手続の違い (ア)株主総会の招集通知を発する時期は公開会社では2週間前、非公開会社では1週間前までが原則である(299条1項)。非公開会社かつ取締役会非設置会社では、定款により1週間以下に短縮できる(同項かっこ書)。
(イ)非設置では、株主総会は万能機関として経営に関する意思決定を行うため迅速に開催する必要があるからである。また、株主が経営に積極的に関与することが予定され、準備期間を設けなくても株主が適切な判断をなし得るからである。
これに対し、設置では、所有と経営の分離が進められ、経営に積極的に関与していない株主が多数いることが予定されるため、準備期間を設けないと適切な判断をなし得ないおそれがあるからである。
ウ. 通知方法の違い (ア)取締役会非設置会社では制限がないのに対し、取締役会設置会社では書面又は電磁的記録によらなければならず、298条1項各号の事項を記載又は記録しなければならない(299条2項2号、3項、4項)。
(イ)前者では、経営に積極的に関与している株主は議題等を容易に知り得るのに対し、後者では、経営に関与しない株主に正確・確実に株主総会の議題等を理解させる必要があるという理由による。
エ. 決議可能事項の違い (ア)取締役会設置会社の場合、一定の事項を除き、招集前に議題とすることと決定した事項に限定される(309条5項)。(イ)これは、経営に参与しない株主が多数いることが予定され、かかる株主は事前に議題とされていない事項について適切な判断をなし得ないおそれがあるからである。決議の日にいきなり別の議題を出してきたときに論じる。
参考:議案は総会の場で提出できる(309条5項、298条1項2号は議題のはなし。事例で145)。
オ. 株主提案権の違い (ア)取締役会非設置会社では単独株主権(303条1項、305条1項本文)であるが、取締役会設置会社では少数株主権(303条2項、305条1項ただし書)という違いがある。(イ)前者では経営に関与する株主の意思決定を尊重する要請が強いのに対し、後者では経営に関与しない株主による濫用防止のために行使を制限する要請が強いという理由による。
(3 リークエP133以下)手続 ア 議題や議案は取締役会で決定する(298条1項、4項(2号は議題=テーマ))。
取締役が招集するが(296条3項)、少数株主による招集(297条の2 100分の3+6カ月)もある。
決議と報告の省略(319条、320条)、全員総会出席(300条)により、招集手続きの瑕疵が治癒される。一人会社も同じ。
議題提案権(303条 役会設置は100分の1又は300個)、議案提案権(304条 単独 法令違反等の議案は拒絶○)を行使するとともに、委任状勧誘に備え、他の株主への通知を請求する(305条 役会設置は100分の1又は300個)。304条(規則93条)は提出する権利だが、それを知らせるために305条がある。→委任状争奪戦へ
株主提案権、株主総会参考書類に株主提案を載せる仮処分を求めることができる(判例)。
書面投票(311条)の制度趣旨は、株主の議決権行使の機会を保障することにある。株主1000人以上の会社には義務付けられる(298条2項)。一人の株主が書面、電磁投票、出席で重複した場合、出席した投票が有効となる。総会に出席して議決権を行使することが原則だからである(298条1項3号4号「出席しない」)。書面と電磁は規則63条4号ロによれば、会社はどちらが優先するか定めることができる。
招集手続き及び決議方法を調査させるための制度として検査役選任の申立てがある(306条1項)。
招集通知に議題(会議の目的)を記載する意味は、株主の準備のためである(309条5項参照)。
        総会の手続の流れ→新司サンプル問題見て、少しメモっておく。
イ 取締役等は、株主総会において、株主から特定事項についての説明を求められた場合、当該事項について必要な説明義務を負う(314条本文)。質問されて初めて説明義務が生じる。これに違反した場合、決議方法の違反となる(831条1項1号)。
説明の程度としては、①一般的な株主が議題を合理的に判断するのに客観的に必要な範囲での説明をすれば足りる。例えば、退職慰労金議案との関係では、確定した支給基準の存在、当該基準の株主への公開、当該基準から支給額を算出できることについて説明するべきである。②当該株主が多くの知識を有している場合には、それを前提に説明義務の内容を判断することも許される。なぜなら、これでも、株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行うために必要な説明を受けることを保障した説明義務の趣旨は達成することができるからである。(H25予備)
ウ 取締役の説明義務の例外は314条ただし書と、規則71条がある。関係ないことであれば必要ない(314条ただし書)。一括回答も許される。女性管理職の数はすぐに分からない(規則71条1号)。合併契約の詳細は契約で公表しないとしていた(規則71条2号)。
(4)代表訴訟
ア 提訴の要件は、①株主(847条1項)、②6カ月有すること(1項)、③株主の請求から60日以内に会社が訴えを提起しないこと(3項)である。②は非公開会社の場合は不要である(2項)。③は著しく回復困難な損害のおそれがある場合は不要である(5項)。
イ ①原告適格は、847条1項の会社に対する請求時から、口頭弁論終結時まで満たしている必要がある。例外は851条1号(株式交換・株式移転)、2号(吸収合併)の場合である。
ウ 代表取締役宛てに847条1項の請求した場合、宛先を誤っているので、要件満たさず、原則として代表訴訟は許されない。しかし、監査役がそれを見られる状態で、確認した又は容易に確認できたのにしなかった場合には、例外的に要件を充たす。
会社(監査役386条)が一部請求をした場合でも、847条3項の文言を素直に解釈し、株主は代表訴訟を提起できないと解するべきである。会社に対する詐害的な一部請求は、423条1項、再審などで処理すればいい。
エ 株主代表訴訟の制度は、取締役が会社に対して責任を負う場合、役員相互間の馴れ合いから会社が取締役の責任を追及しないおそれがあるので、株主保護のために設けられたものである。会社が取締役の責任追及を懈怠するおそれがあるのは、取締役の地位に基づく責任に限られない。そこで、「取締役の責任」には、取締役の地位に基づく責任、取締役の会社に対する取引に基づく責任が含まれる〔68〕。(取引債務も含めており広い。取締役の地位と関係ない非取引債務は対象外。 H26司)
例:不動産売買に基づく目的物引渡請求や登記移転請求は代表訴訟で追及可能である。所有権に基づく請求は許されない。
「甲社は取締役Aに対し、5億円を貸し付けた。」という場合、利益相反による423条1項責任だけでいい。(Aの甲社に対する返還債務が株主代表訴訟の「責任」(847条1項)に含まれるかは「なお書き」でいい。)
オ 単独株主権としているが、その反動として権利濫用のおそれがある。そこで、悪意の疎明による担保の提供(847条7項、8項)によって、濫用防止が図られている(株主の損害賠償責任の担保である)。
会社が疎明すべき悪意とは、①原告の請求に理由がなく(認容の見込みが低いこと)、原告がそのことを知って訴えを提起した場合、又は、②原告が株主代表訴訟の制度の趣旨を逸脱し、不当な目的をもって、被告を害することを知りながら訴えを提起した場合である〔69〕。
カ 和解手続(850条)の要件は、会社の承認か、みなし承認(3項 2項の通知催告から2週間)である。和解を承諾する機関は、監査役である(386条2項2号)。
勝訴した場合、必要額は会社に請求可能である(852条1項 敗訴ならできない)。株主が悪意なら、取締役らの負担した費用は株主に請求できる(852条2項 善意ならできない)。
(5)決議事項 監査役の解任は特別決議である(309条2項7号)。一般の取締役の解任は普通決議であるが、累積投票により選任された取締役を解任するは特別決議である(同号)。
定款変更は原則として株主総会の特別決議による(466条、309条2項11号)。例:取締役の員数の変更(346条1項参照) 例外として309条3項1号など。リー342,343

8-2 株主総会決議の瑕疵
(1)株主総会決議取消訴訟(831条1項)の要件は、①取消事由、②原告適格、③3ヵ月以内に主張、④(1号前段の場合は)裁量棄却されないことである。
ア ①取消事由は、招集手続・決議方法が法令・定款違反又は著しく不公正であること(1号)、決議内容が定款違反であること(2号)、特別利害関係人の議決権行使による著しく不公正な決議(3号)である。
招集手続違反の例:招集通知漏れや招集期間の不足。決議方法違反の例:説明義務違反のある決議や定足数不足でなされた決議。手続の著しく不公正の例:ある特定の株主が出席できない状況をねらって招集する場合。
東京地判平17・7・7…内閣府令は法令ではないし、委任状用紙の記載事項の誤りは決議の方法でもない。
イ ②原告適格:全部取得条項付種類株式により株主の地位を奪われた者も、当該種類株式を設ける定款変更や取得のための株主総会決議を争う場合、自らの不利益を救済するための機会が与えられるべきであるから、原告となり得る(応用会社法11)。
取締役選任決議の取消しの訴えにおいて「株主等」(831条1項本文 828条2項1号に定義規定)は、株主と取締役を含む。瑕疵を主張して地位を回復できる株主(明文なし)、取締役、再任されなかった取締役(831条1項柱書後段)も原告適格を有する。
相続の場合、原告適格を受け継ぐ。譲渡のときは、消失する。
検査役選任請求の持株要件(358条1項 100分の3)を訴訟の途中で欠くに至った場合、原則として原告適格を欠く〔59〕。(株主の権利濫用防止のためではなく一定の利害関係を有する要件として100分の3という要件を要求しているのではないか)
(ア)株主丙は、他の株主に株主総会招集通知(299条)が発せられなかったことを理由に、手続の法令違反を理由とする株主総会決議の取消しを求める訴え(831条1項1号)を提起できるか。株主丙が②「株主等」に含まれるかが問題となる。
株主総会決議取消しの訴えは、個々の株主の利害を超えて、公正な決議を保持するための制度である。そして、他の株主に対する瑕疵であろうと自己に対する瑕疵であろうと、決議の公正が害されるおそれは変わらない。また、831条1項は「株主等」と規定し、何ら限定も付していない。
そこで、丙は「株主等」に含まれ、他の株主に対する招集通知の瑕疵についても訴えを提起できると解する〔38〕。
(なお、全員出席して全員一致で株主総会の開催を決定した場合、招集通知漏れの瑕疵は治癒される。)
(イ)当該株主総会において議決権を有しない者は、当該議決に関われない以上、株主総会決議の瑕疵に利害関係を有しない。したがって、②「株主等」に含まれない。
ウ 株主総会決議取消しの訴えの③提訴期間は、株主総会の決議から3ヵ月以内である(831条1項)。提起してからでも3ヵ月経過すると新たな取消原因を主張できない〔39〕。決議の早期確定・法的安定を図るためである。(会社・裁判所の予測可能性)
無効確認の訴えにおいて主張した瑕疵が取消原因と判明した場合、無効確認の訴えを提起した時点で取消訴訟として出訴期間を遵守したといえる〔45〕。予め瑕疵を主張しており、決議の早期確定・法的安定を害さないからである。
エ 効果 株主総会決議取消しの訴えが認容され確定した場合、対世効(838条)及び遡及効(839条反対解釈)を有する。
決議不存在確認の訴え又は決議無効確認の訴えが認容され確定した場合も同様である。この遡及効、対世効から法律関係を論じさせる問題は頻出である。
オ 株主は、自己の利益のために出資を行った者であり、株式会社の実質的所有者である。共益権である議決権も、究極的には株主自身の利益のための権利であり、株主が自己の利益のために議決権を行使する機会は保障されるべきである。そこで法は、特別利害関係人にも議決権行使を認め、それによって著しく不当な決議がなされた場合に限り、決議取消事由とするにとどめている(831条1項3号)。
これに対し、取締役は、業務執行の受任者であって(330条)、会社に対して善管注意義務(民法644条)及び注意義務(会社法355条)を負う地位にある。そのため、株主のように専ら自己の利益のために議決権を行使することは許されない。そこで法は、特別利害関係取締役の議決権を事前に排除している(369条2項)。
(2-1 ①取消事由)A社の定款は代理人の資格を株主に限る旨定めている。にもかかわらず、非株主たる乙が議決権を代理行使している。そこで、決議方法の定款違反(831条1項1号)を主張できないか。
ア. まず、代理人の資格を株主に限定すれば、総会屋対策となり、会社の利益を保護することができる。そこで、かかる定款は310条1項前段に反せず有効と考える。
イ. もっとも、①株主が信頼できる他の株主を探し出すことが困難な場合もある。また、②株主以外の者を代理人にしても株主総会がかく乱されない場合もあり得る。このような場合でも、非株主による代理行使を画一的に拒み得るのでは、会社への過剰な保護となり、議決権行使の機会を保障するという310条1項前段の趣旨に反する。
そこで、①②を充たす場合には、定款規定の効力は及ばないと解する。(手続が煩雑であるので、否定説もある。)
ウ. 法人の代表者は多忙であるから、甲会社の代表者が自らA会社の社員総会に参与することは困難であると思われる。とすれば、依頼しやすい従業員たる乙に議決権の代理行使を認める必要性が高い(①充足)。
また、乙は甲会社の被用者であるから、株主たる甲会社の意図に反して総会をかく乱させるおそれはないといえる(②充足)。
エ. よって、本問ではA社の定款規定の効力は及ばない。
以上より、乙が議決権を代理行使したことは、決議方法の定款違反に当たらず、株主総会の取消事由とはならない。
(2-2 ①取消事由)議決権の代理行使は認められている(310条1項前段(委任状必要 後段))。にもかかわらず、A社は定款に基づき丁による議決権の代理行使を拒んでいる。そこで、代理行使を拒んだA社の対応が、310条に反し違法であるとして、決議方法の法令違反(831条1項1号)を主張できないか。
ウ* 専門的知識を有する弁護士に代理行使を認める必要がある(①充足)。また、丁は弁護士であり、弁護士は社会正義を実現する使命(弁護士法1条1項)を負っているから、株主総会をかく乱させるような行動に出るとは認めがたい(②充足)。
エ* したがって、定款の効力は及ばない。丁による議決権の代理行使を拒絶したA社の措置は310条1項前段に反し、決議方法の法令違反(831条1項1号)に当たり、総会決議は取り消され得る。→裁量棄却の判断へ
(4)④裁量棄却 ア 丙が株主総会決議取消しの訴えを提起し得るとしても、本問の招集通知漏れは、①´違反する事実が重大でなく、かつ、②´決議に影響を及ぼさないものであると認めるとき(831条2項)であり、裁判所の裁量棄却事由に当たらないか。
イ 確かに、200万株の株式を有する株主の賛成で決議がなされるのだから、1万株の株主が出席したとしても、決議に影響を与えることはないとも思える。しかし、瑕疵は重大であるし、たとえ1万株の株主であっても、総会に出席し発言をすることによって他の株主に影響を与え、総会決議が異なる結論に至る可能性がある。
したがって、招集通知漏れは①´②´を充足せず、裁量棄却事由には当たらないと解する。
ウ 招集の決定が取締役会で行われず、代表取締役限りで行われた。招集通知が招集期間より2日遅れた。〔42〕
この場合、法定の機関決定がない点で瑕疵が重大であるし(①´不充足)、機関決定が行われた場合、あるいは法定の招集通知期間が遵守された場合、決議にどう影響したかは検証しようがなく(②´不充足)、裁量棄却は認められるべきではない。
エ 招集通知に議案の要領の記載がない場合には、経営に関与しない株主に正確・確実に株主総会の議題等を理解させるという法の趣旨に反し、瑕疵が重大であるというべきである(①不充足 最判平7・3・9)。
オ 東京地判H24・9・11 判旨1:監査役選任決議の議案に監査役会の同意(343条1項)を欠くという取消事由があるが、監査役会の過半数に当たる2名の同意・追認があり、取締役会においても3名から異議はなかった。重大な違反事実ではなく、決議に影響を及ぼさないので、裁量棄却される(831条2項)。判旨2:取締役会の決議の方法について、挙手、起立、投票等の採決の手続をとられなくても、必要な議決権数に達したことが明白になれば、その時に表決が成立する。
(5 ①取消事由)831条1項3号の要件は、①特別利害関係人の議決権行使によって、②著しく不当な決議がなされたことである。(論文では、多数派株主による権限濫用に対する救済策としてこの条文が有用である。)
ア. ①特別利害関係人とは、決議の成立により他の株主と共通しない特殊な利益を獲得し、又は不利益を免れることになる者をいう。(②の要件が加重されており、①の範囲を制限的に解する必要はないからである。)
例えば、株式交換の相手方の会社やその取締役は、株式交換比率によって直接利益を得る地位にあるから、個人的利害関係を有するといえる。(H25予備)
また、株式併合によって会社の方針に反抗的な株主を排除できる場合、自らの会社に対する支配が強まるので、取締役らは株主としての資格を離れた利害関係を有するといえる。(H26京大)
イ. ②著しく不当な決議とは、内容が合理性を欠くとか、法が定めた権限や責任を無にする場合をいう。
例えば、株式交換比率が異常に低く、会社の方針に逆らう特定の者が損害を被る場合、株式交換を可決する決議は特定の者を不利益に扱うためにされたものとして著しく内容の合理性を欠く。(H25予備)
また、株式併合によって株主の権利行使を阻止する場合、法が期待する株主の適正な監査のための権利行使を没却するものといえる。(H26京大)
ウ 利益消滅の肯定例:〔40〕役員選任決議によって選任された役員が任期満了により退任した場合。
利益消滅の否定例:計算書類〔41〕解説3のはじめ…前の決議取消し→前の書類未確定→後の数字に影響する(連鎖するから)。例えば剰余金の額が変われば配当可能額も変わる。よって、前の決議を取り消す必要性、実効性がある。
(6 無効・不存在) ア 無効確認の訴え(830条2項)の無効事由は、決議内容が法令に違反したことである。例:取締役の上限員数に関する定款規定が存在し(問題文付随の資料を確認)当該員数を越えた取締役選任決議、株主平等原則に違反、株主の追加出資義務を課す、461条1項違反の剰余金の配当 単に決議の動機に公序良俗違反がある場合には無効ではない。
イ 決議不存在確認の訴え(830条1項) 決議の不存在には、手続的瑕疵が著しいため決議が法律上不存在と評価される場合も含む。瑕疵が著しいか否かは、通知を受けなかった株主数とその持株数に着目して判断する。
例:集会がない場合、招集通知を受けた株主が僅少な場合、代表取締役でない取締役が(かつ)取締役会決議を経ないで招集した場合 取締役選任決議が不存在→その者を構成員とする取締役会決議が選任した代表取締役の招集した株主総会決議〔51 ただし、全員出席総会なら許される。〕
主意的に効力の強い不存在確認訴訟を提起し、予備的に取消訴訟を提起することが考えられる。
東京地判平23・1・26…議長の資格のない者によって採決が行われたことは不存在事由である。取締役解任決議が不存在であると確認された場合において、その後、解任決議を追認する決議がされたとき、当該追認に遡及効はない。(ペー1)
ウ 無効と不存在は、訴えの利益がある限りいつでもだれでも訴えを提起できる。
エ 多数派株主の権利濫用については、株主平等、差止め、株主総会の取消し・無効事由(取締役兼任であれば423条・429条責任の追及)がある。利害関係人は831条1項3号、160条4項(自己株式の取得)が重要である。

9取締役
(1)権限の移譲 ア 事業の全部又は重要な一部の譲渡の決定は、株主総会の権限とされている(467条1項)。事業譲渡は業務執行に関する行為であるが、会社の事業基盤や会社組織の基本に重大な変更が生じる(21条参照)ため、会社所有者たる株主自身に決定させてその保護を図る点にある。よって、取締役会の権限とすることはできない。
イ 取締役の報酬の決定は株主総会の権限とされる(361条1項)。この趣旨は、お手盛りの危険を防止することにあるので、受取人たる取締役により構成される取締役会に委譲することは、原則として許されないと解する。
もっとも、報酬の総額を株主総会で決めれば、その範囲で配分されるためお手盛りの危険はなく、同項の趣旨に反しない。
そこで、総額を株主総会で決めれば、具体的配分の決定については、取締役会の権限とすることもできると解する。
ウ 代表取締役の選定は取締役会の権限である(362条2項3号)。取締役会による代表取締役の選定・解職は監督権の実効性確保の一手段にすぎず、他の方法で監督することができる。代表取締役は取締役会の派生機関ではなく独立した機関であるから、代表取締役の選定権を必ず取締役会が有する必要もない。そこで、代表取締役の選定を株主総会の権限とすることはできる。
(2)表見取締役 乙会社はAと取引をしているが、Aは甲会社の代表権を有しない以上、取引の効果は甲会社に帰属せず(民法113条1項)、乙は代金の支払いを請求できないのが原則である。もっとも、Aは甲会社副社長名義で取引を行ったため、会社法354条を適用して、乙会社を保護できないか。
要件は、①取締役に、②代表権を伴うような名称を、③付与し、④第三者が代表権を信頼したことである。
ア. 使用人たるAは取締役ではない(①不充足)。同条を直接適用することはできない。しかし、同条の趣旨は、代表取締役のような名称の使用を認められた場合、相手方は代表取締役と誤認しやすいことから、会社に責任を負わせ、もって取引の安全を図るという、権利外観法理にある。代表取締役であるかのような外観を信頼した第三者を保護する必要性は、行為者が取締役か否かで異なるところはない。そこで、使用人たるAの行為についても、354条の類推適用が認められると解する。
イ. ③は、虚偽の外観に対する会社の帰責性を要求するものである。とすれば、名称の使用を明示的又は黙示的に認めたといえる場合には、会社に帰責性が認められるので、「付した」といえると解する。本問では、代表取締役Bが、Aの行為を知りつつ放置している以上、会社が黙示的に名称使用を認めたといえる。したがって、甲会社が名称を「付した」といえる。
ウ. ④代表権に対する第三者の信頼とは、善意無重過失である。
もっとも、代表取締役の氏名及び住所は登記事項である(911条3項14号)。とすれば、登記がなされている限り第三者は悪意が擬制され(908条1項)、354条を類推適用する余地がないとも思える。しかし、354条は、会社と取引する者に常に登記簿の閲覧を要求したのでは迅速・円滑な商取引を実現し得ないことから、代表権限を有すると認められる名称を付した取締役の行為について会社が責任を負うこととし、取引の安全を確保しようとしたものである。そこで、354条は908条1項の例外規定であり、354条が優先的に適用されると解する。当てはめ:乙会社は善意無重過失である。
エ. 以上より、354条が類推適用され、Aの取引について甲会社が責任を負う。かかる場合には、乙会社は甲会社に対して、代金の支払いを請求することができる。
(3)362条4項・349条5項・取締役会を必要とする場合
ア. ○000万、○億円→論点想起(H26司出題)。
本件不動産の譲渡が「重要な財産の処分」(362条4項1号)に当たれば、譲渡会社であるX社には取締役会の承認がないという手続上の瑕疵がある。そこで、これを理由に本件譲渡契約の無効を主張できないか。
「重要な財産」であるか否かは、相対的なもので、会社の規模、譲渡財産の価格などを考慮して、個別具体的に決する。目安:総資産の10分の1なら当たるだろう。20分の1でも、相互保有株式なら当たるだろう。
本問では、X社の貸借対照表の資産の部に計上される金額のほぼすべてが本件不動産の帳簿価格で占められている以上、X社にとって、本件不動産は「重要な財産」に当たる。
イ. 本問では取締役会の決議がないが、取引の効力をいかに解すべきか。
この点、代表取締役は一切の業務執行権をもつ(349条4項)から、相手方の取引安全のため、原則として有効であると解する。
もっとも、決定権者たる取締役会の意思と権限行使者たる代表取締役の意思が異なる。そこで、意思表示における内心と表示の不一致と同様に解し、民法93条を類推適用すべきである。→悪意有過失の当てはめ
ウ. Aの行為は「10億円以上の借入れは取締役会決議を要する」とする甲会社の内規に違反している。もっとも、かかる制限は善意の第三者に対抗できない(349条5項)。したがって、乙銀行が甲会社の内規違反を知らなければ、Aの借入れの効力は原則として否定されない。(ここは一段目 以下二段目)
しかし、甲会社は、借入れが「多額の借財」(362条4項2号)に当たり、取締役会の決議を経ていないため、効力が否定されるといえないか(H26)。(内規の制限と、法律の取締役会の要求とを、二段階で検討する 規範は上述)
借入れがその会社にとって「多額」であるか否かは、会社の規模、借入れの金額、内規の基準などを参考にして、個別具体的に決定する。本問では、資産総額200億円の10分の1にも当たる20億円は、当該会社の規模に照らし多額といえる。また、内規の制限である10億円の2倍にも該当し、多額性が肯定される。したがって、本件20億円の借入れは「多額の借財」に当たる。
エ 取締役会設置会社においては、社債の発行は取締役会で決定される(362条4項5号)。以上の議論がここでも妥当する。
取締役会の決議がない場合でも、株主全員の同意がある場合、行為が有効となり得る〔18〕〔56〕。
(4)報酬 ア. 退職慰労金は「報酬等」(361条1項)に当たる。同条項の趣旨は、お手盛りによる会社財産の流出を防止する点にあるところ、退職慰労金は報酬の後払い的性格を有するし、自己が退任するときの基準になるため、お手盛りの危険があるからである。したがって、株主総会決議が必要となる。
額を明示することは、退職者のプライバシー権の侵害になる。また、①一定の支給基準が確立しており、②その基準が株主に推知でき、③当該決議が支給基準に基づく相当額を支給すべきものとする趣旨である場合には、お手盛りの危険も少ない。そこで、①②③を満たす場合には、総額の決定を取締役会に一任する決議も361条1項の決議として有効となる〔62〕。
退職慰労金を支給される期待は保護され、使用者の不法行為責任を問い得る(佐賀地判平23・1・20)。
イ. 使用人兼取締役の使用人分給与は「報酬等」(361条1項)に含まれる。給与を受け取る者が取締役として決定権限を有している以上、お手盛りの危険があるからである。ただし、給与体系が明確に確立していれば、お手盛りのおそれは少ないので、例外的に含まれない。
ウ 定款と株主総会決議のいずれの定めもないのに取締役に報酬等が支払われても、無効である。事後的に株主総会が追認することができる。株主全員の同意は、株主総会決議に代わる効果が認められる。
エ 本件決議は、Cの報酬を一方的に変更するものである。かかる決議は361条1項の「決議」として有効か。
取締役の報酬は、一度決定されれば会社・取締役間の委任契約(330条参照)の内容となるから、原則として会社が一方的に報酬を変更することはできないと解する。したがって、Cの報酬を一方的に変更する決議は、原則として無効である〔63〕。
例外的に、職務内容に応じ(事情変更により)報酬の変更が可能であることが契約内容になっていれば、許される。(明示又は黙示の承諾の認定)
オ 本件決議内容は、取締役に対する新株予約権の付与であり、具体的な発行時期及び方法の決定を取締役会に一任している。これは361条1項に反しないか。
新株予約権の付与も、職務執行の対価であるから、「報酬等」に当たる。新株予約権は発行時に公正価格が算定できるので、「報酬等のうち額が確定しているもの」(361条1項1号)に当たる。ストック・オプションの付与は「金銭でないもの」(同3号)にも当たる。よって、「額」(同1号)及び「具体的な内容」(同3号)について、株主総会決議が必要である。
本問では、行使価額の総額、目的たる株式の種類と数は定められている。しかし、具体的な発行時期及び方法は明示されていないため、「具体的な内容」を株主総会決議で定めているとはいえない。以上より、本件決議は、361条1項に反する違法がある。
(5)取締役会の運営など
ア 取締役・取締役会は業務執行(の決定)を行う(348条1項、362条2項1号)。決議は過半数による(369条1項)。
招集は各取締役が招集する(366条1項)。員数制限と仮取締役の423条責任についてH26論文。
取締役会は取締役の監督義務を負う(362条2項2号)。論文では、この取締役会(ゆえに個々の取締役)の監視監督義務が、423条、429条責任等でよく問題となる。漫然と見逃したのか、行為の外形上明らかな不審があったのかを当てはめる。
イ 取締役会決議において「特別の利害関係」を有する取締役は、決議に加わることができない(369条2項)。この趣旨は、受任者たる取締役が忠実義務にそって会社の利益のために行動できないおそれがある場合に予め決議から排除する点にある。とすれば、「特別の利害関係」とは、取締役の忠実義務(355条)違反をもたらすおそれのある、会社の利益と衝突する取締役の個人的利害関係をいうと解する。
代表取締役の選定決議の対象となる取締役については、選定がすべての取締役に関わる利益であることから、個人的利害関係とは言えず、特別利害関係人に当たらないと考える。
他方、代表取締役の解職決議の対象となる者は、一切の私心を去って会社に対して負う忠実義務に従い公正に議決権を行使することはまず期待できないことから、特別利害関係人に当たると解する。利益相反の当事者も当たる。
ウ 瑕疵 株主総会とは異なり、瑕疵ある取締役会決議は、一般原則に従い無効となる。例:招集ルールの違反、定足数不足、特別利害関係人の参加 争い方は法定されていない。
例外:一部の取締役に対する招集通知が欠けていた場合でも、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、右の瑕疵は決議の効力に影響がない(名目取締役に対する招集通知漏れ〔66〕)。
取締役会を要求する趣旨は会社の利益保護にある。したがって、原則として会社のみが無効を主張することができる〔65解説〕。
(6)解任 ア 解任は原則として普通決議であり(339条1項)、累積投票(309条2項7号)は例外的に特別決議となる。役員の選解任の特則(341条)によれば、定足数に下限があり、議決権の数に上限がない。種類株主総会選任取締役(347条)。
339条2項の損害とは、残存任期で得られたはずの報酬額である。「正当な理由」としては、法令定款違反行為、病気により職務遂行が著しく困難であるときなどがある。
イ 解任の訴え(854条)の要件は、①百分の三の株式、②6か月前から有している、③不正行為等法令定款違反にもかかわらず解任議案が否決されたこと、④③から30日以内である。論文では、①②を前提として当てはめて、③④を要件として定立すればいいか。③のために議題議案を提出する(303条~305条)作業を経る。②は非公開会社では不要。
実務では職務差止の保全(職務執行停止の仮処分)が重要である。
〔47〕仮取締役を854条により解任請求することはできない。854条は単に役員と定め、仮取締役は含まれていないからである(329条参照)。また、新たに役員の選任を申し立てることによって、仮取締役の地位を失わせることができるからである。

10 競業取引・利益相反
(1)競業取引 要件は①自己又は第三者のため、②事業の部類に属する取引である(356条1項1号)。
ア. 本問甲の取引が、競業避止義務(356条1項1号)により規制される競業取引に当たるか。
まず①「自己又は第三者のために」とは、自己又は第三者の計算においてという意味である。甲は自分の利益のために取引をしているので、これは満たす。(利益相反の場合とは異なるので注意する。)
イ. 甲の取引はA会社の②「事業の部類に属する取引」といえるか。
356条1項1号の趣旨は、取締役がその地位に基づいて得た情報・機会を会社外の利益のために不正に流用するのを防止し、会社の利益を保護する点にある。経済上の利益の帰属が重要であるので、「事業の部類に属する取引」とは、会社の事業で実際に行う取引と市場が競合し、会社と取締役との利益が衝突する又はそのおそれのある取引をいうと解する。
本問では、確かに営業地域は異なっているが、A会社は「関西地方に進出することを企画していた」ことから、関西地方において取引先が競合するおそれがあるといえる〔55〕。また、販売対象たる「大衆向けの衣料品」と「高級衣料品」との区別はあいまいである以上、両者が競合するおそれはある。よって、甲の取引は「事業の部類に属する取引」に当たる。
本問では、外国人向け旅館業の性質上、10kmという距離は競合しないほど離れているとはいえない。
ウ. 以上より、甲の取引は356条1項1号の競業取引に当たる。そこで、取締役たる甲は取締役会に対して当該取引についての①重要な事項を開示して②その承認を受けることを要する(356条1項柱書、365条1項)。
しかし本問では、甲はA会社に「無断で」取引を開始しており、この開示をせず、承認も受けていない。
(ア)これにより競業取引の効力自体は否定されない。これを否定すれば取引の相手方が不測の損害を被るからである。
(イ)承認がないので、甲の利益を得た額がA会社の損害額と推定され(423条2項 任務懈怠と損害の立証は必要であることに注意する)、A会社は甲に対して損害賠償を請求し得る(同1項)。
(ウ)また、取締役会の承認を得ずに取引をしたことは、取締役の正当な解任事由となる(339条2項参照)。よって、A会社は甲に対し損害を賠償することなく、甲を解任することができる。
(エ)株主全員の同意があるとき、一人会社の場合は、取締役会の承認は不要である。
エ. 本問では、A会社の取締役HはI会社の代表取締役に就任しているが、就任すること自体は「取引」に当たらない。また、同社の不動産事業部門の取引のみを担当するのであるから、ホテル経営のA会社とは利益衝突の危険がないとも思える。しかし、I会社はホテルの経営も行っており、これは不動産の取得や開発と密接に関連している。とすれば、HはA会社の機密情報等を利用してI会社のホテル経営が有利になるように不動産事業を行う可能性があり、A社と市場が競合し得る(②充足)。
オ. 取締役会の承認について、監査役の招集・参加が必要である(368条1項かっこ書)。これがなければ承認はない。
(2)利益相反 総説 全体像:利益相反該当性→承認の有無→取引の効力→任務懈怠責任と推定
ア X社の取締役Aは、Y社取締役を兼任している。X社をB取締役が代表し、Y社を代表するAとの間で取引をした。
取締役が自己または第三者のために会社と取引をしようとするときは、重要な事実の開示と取締役会の承認を受けなければならない(356条1項2号、365条1項)。ここでいう「ために」とは、取引の法律上の名義人を意味する。(競業取引のケースと異なるので注意)
本問では、AがY会社を代表している。AがY会社を「名義人」としてX社と取引しているので、Aは第三者のために会社と取引をするといえる。そこで、重要な事実の開示とX会社の取締役会の承認が必要となる。
なお、AがX会社も代表すれば、Y会社の取締役会も必要となる。
イ 会社が、取締役以外の者との間で、会社と取締役の利益が相反する取引をしようとするときには、取締役会の承認を受けなければならない(356条1項3号、365条1項)。
規制の対象を広げすぎると、取引の安全を害する。そこで、会社と第三者の取引であって、外形的・客観的に会社の犠牲で取締役に利益が生じる行為が、規制の対象となると解する。
ウ 甲社の代表取締役Aが甲社を代表し、甲社取締役Bとの間で取引をした場合について。(H25予備短答21)
(ア)Bが特別の利害関係取締役として取引を承認する取締役会決議に加わっていなかったとしても、本件取引により甲社に損害が生じたときは、Bはその任務を怠ったものと推定される(423条1項1号(3号との違い))。
(イ)損害の額の推定(423条2項)は競業取引の規定であって、利益相反には適用されない。
(ウ)甲社の取締役会の承認を受けずに取引がなされた場合、Bが有効に取締役会の承認があったと信じて取引をした場合でも、甲社はBに対し、本件取引の無効を主張できる。(Bの取引の安全を図る必要はないからである。)
(エ)本件取引の内容が、Bが甲社に対して無利息かつ無担保で金銭を貸し付けるものである場合には、利益相反取引として甲社の取締役会の承認を受ける必要はない。(会社の利益を犠牲にしてBの利益を図る危険がないからである。)
(オ)不動産鑑定士の鑑定評価額を代金額として甲社がBから不動産を買う場合でも、利益相反に当たる。不動産鑑定士の評価は様々な方法があり、Bが依頼すればいくらでも高くなり得る。
エ 取締役の一人会社の場合や、株主全員の同意がある場合には、適用は除外される。
甲社と乙社のともにBがいる場合、甲社と乙社の代表がB以外のものであっても、直接取引(2号)に当たるとすべきか。→通説は否定するので、これでいい(形式説)。取引主体でないと当たらない。
甲社はAが代表し、甲社の取締役Bが、乙社の代表取締役として取引する場合。甲社取締役のBが乙社のために甲社と取引するので、甲社の取締役会の承認を要することには争いがない。乙社について通説に従い否定すればいい。
オ. 事後の報告(357条)が必要である。これがなくても423条の因果関係が否定される場合がある。
利益相反は承認があったとしても、任務懈怠の推定が及ぶ(423条3項)。
(3)取締役が取締役会の承認を得ずに利益相反行為をした場合の効力が問題になる。
ア 法が承認を要求した趣旨は会社の利益保護にあることから、承認を欠く取引は無効であると解する。
会社は、取締役又は当該取締役が代表した直接取引の相手方には常にその取引の無効を主張できる。
しかし、承認の有無は会社の内部事項であるから、取引の安全を図る必要もある。そこで、直接取引の相手方から善意で財産の転得を受けた者(京大ローH26)や、善意の間接取引の相手方には無効を対抗できないとすべきである(相対的無効説)。
(民法93条ただし書を類推適用して善意無過失とするのではない。注意する)
イ 悪意とは、取引が利益相反取引であること、当該取引に取締役会の承認を欠くこと、を認識していることをいう。
本問では、取引が利益相反取引であること、Q社の取締役会の承認がないこと、についてP社が悪意であれば、Q社は本問取引が無効であると主張できる。
ウ 直接取引(2号)の「第三者」(例:利益相反取締役が代表した会社)にも常に無効主張可能である。(取締役の認識=会社の認識と考えれば当然か)
エ 356条の趣旨は会社保護にあるため、取締役会の承認を欠く取引の無効は原則として会社のみ主張することができる。
しかし、会社が取締役に対して負担した債務を保証した保証人は、会社が主債務の原因となった利益相反取引の無効を主張して債務の履行を免れることができるのであれば、主債務の無効を主張し得る。保証債務の履行を免れることができる点で、保証人に正当な利害関係があるからである。 ただし、保証人が悪意であれば、信義則上、取引の無効を主張できない。
(4)利益相反取引により会社に損害が生じた場合、実行取締役(423条3項1号)、会社が当該取引をすることを決定した取締役(2号)、当該取引に関する取締役会の承認決議に賛成した取締役(3号 賛成は議事録に異議をとどめないと推定される(369条5項))は、任務懈怠があったと推定される。
この推定は、承認がある場合でも及ぶ点で、競業取引の損害額の推定(423条2項)とは異なることに注意する。
自己取引をした取締役は無過失責任であり(428条)、無過失の抗弁が許されない。(答案では必ず指摘)
(5)間接取引の事例 
ア A社代表取締役BとD銀行による本件保証契約は利益相反行為に当たり、取締役会の決議が必要ではないか(365条1項、356条1項3号)。本件保証契約が、「株式会社と当該取締役との利益が相反する取引」に当たるかが問題となる。
当てはめ:確かに、A会社がC会社の債務につきD銀行と保証契約を結べば、A会社とC会社の利益は相反することになる。しかし、BはC会社の監査役にすぎず、C会社を経営する権限を有しているわけではないので、客観的にA会社の犠牲でBの利益が生じるとはいえない。したがって、本件保証契約は間接取引に当たらず、取締役会決議は必要でない。
A::A会社とF会社の利益は相反するものの、株主Eは取締役として経営権を有しないので、EとA会社の利害が相反するとはいえないとも思える。しかし、EはF会社の発行済株式総数の70パーセントを保有しており、EとF会社の利害は相当程度一致する。また、株式の半数以上を有しているかという基準は明確である。
したがって、本件保証契約は、客観的にA会社の犠牲によりEの利益を図るものである。
以上より、本件保証契約は間接取引(356条1項3号)に当たり、取締役会の決議が必要となる。
ウ 新司H20 甲社(取締役ABD)は、代表取締役Aを代表として丙から金銭を借り入れた。乙社(取締役A(代表AB)BC)がBを代表してこの債務につき保証契約を締結した。
この保証契約は、Aが代表した甲社の消費貸借契約に基づく債務を主債務とし、Aが代表取締役を務める乙社に保証させるものである。Bが乙社を代表して締結してはいるが、BがAの利益を図ることは容易に想像できる。そこで、当該保証契約は、外形的客観的に乙社の犠牲の下Aの利益を図る行為である。したがって、間接取引に当たり、取締役会の承認が必要となる。

11その他役職
(1)機関リー127
公開会社・監査役会設置会社・委員会設置会社は、取締役会を設置しなければならない(327条1項)。
取締役会設置会社では原則として監査役を置かなければならないが、非公開会社の会計参与設置会社は例外(同2項)。
会計監査人設置会社は、監査役を置くか、委員会設置会社となることが必要である(同3項)。
委員会設置会社は監査役を置いてはならず(同4項)、会計監査人を置かなければならない(同5項)。
大会社も会計監査人を置かなければならない(328条1項2項)。
役員(329条1項)には、取締役、会計参与、監査役が含まれる。役員と会計監査人は会社と委任関係にある(330条1項)。役員等(423条1項)には、取締役、会計参与、監査役、執行役のみならず、会計監査人も含まれる。
会計参与は取締役と共同して計算書類を作成する(374条1項)。執行サイドの人間。
(2)代表取締役は、包括的代理権を有する(349条4項)ため、その権限が濫用されると、会社及び会社債権者に大きな損害をもたらす。そこで、代表取締役の職務執行の適正を確保し、権限の濫用を防止するために、以下のような制度を定めている。
ア. 取締役会設置会社の代表取締役は、取締役会の監督に服する(362条2項2号)。論文ではこの監督義務違反が問題になる。
大会社では、内部統制システムの構築に関する基本方針を決定する義務が取締役会に課されている(362条5項、4項6号)。
イ. 取締役会設置会社では、原則として監査役の設置が義務付けられ(327条2項本文)、監査役により適法性監査がなされる。
論文では違法な行為を見逃した場合に監査義務違反が問題になるが、重大な任務懈怠も善管注意義務違反として違法であり、監査義務違反が肯定され得るので注意。
公開会社かつ大会社は、監査役会の設置が義務付けられ(328条1項)、監査の強化が図られている。
また、定款で会計参与、会計監査人を設置でき(326条2項)、大会社では会計監査人の設置が義務付けられている(328条)。
ウ. 株主総会は、取締役の解任権(339条1項)等を通じて、代表取締役の職務執行を監督する。
エ. 以上のように、各制度が相互に補完し合いながら、代表取締役の職務執行の適正を確保している。
(3)甲社は顧問弁護士であるYを監査役に選任しているが、かかる選任決議は、監査役と「使用人」の兼任を禁じた335条2項に反し違法ではないか。この点、同条項の趣旨は、監査役の独立性を確保し、監査の公正を確保する点にある。そこで、「使用人」とは、会社との間に支配・従属関係がある者をいうと解する。顧問弁護士は、法律専門家として高度の正義感と倫理観に基づき、職務を公正かつ誠実に執行すべき立場にある。また、自己の責任の下に職務を遂行するのであり、取締役の指揮命令に服するわけではない。とすれば、顧問弁護士は、会社との間に支配・従属関係を有する者とはいえず、「使用人」には当たらない。したがって、顧問弁護士が監査役を兼任することは335条2項に反せず、適法である。
(4)監査役
ア 監査役に対し任務懈怠責任(423条1項)を追及することができるか。監査役の業務監査権(381条)は、適法性監査に限定され、妥当性監査には及ばないと解されるので、本件貸付自体が法に違反する等の特段の事情がない限り、任務懈怠を認めることはできない。もっとも、貸付けが著しい善管注意義務違反であれば、明らかな違法がある以上、監査役の任務懈怠を問い得る。
436条、384条、382条、385条の懈怠が423条1項の任務懈怠。
イ 横滑り監査役(取締役から監査役になり、自己監査が一時期だけかぶる場合)について
335条2項の文言には反しない。また、336条1項は監査役の任期と監査対象期間の完全な一致を要求していない。また、監査役には重い責任が課せられており、自己監査でもその適正は確保されているといえる。よって適法であると解する。
ウ 会社経営の適正化を図るためには監査役の監査が重要であり、その実効性を確保するには監査役の独立性及び地位の安定を確保する必要がある。
そこで、会社法は、監査役に4年という長期の任期を保障しており(336条1項)、これを短縮することはできない(332条1項ただし書参照)。選任議案を株主総会に提出するには監査役の過半数・監査役会の同意が必要である(343条1項)。監査役は議題と議案を請求できる(343条2項)。選任・解任・辞任に際して株主総会での意見陳述権を認めている(345条4項、同1項、辞任した元監査役は2項)。
監査役が一定の役職を兼任することを禁止している(335条2項)。監査役会設置会社は社外監査役も必要である(同3項)。
報酬に関して、取締役とは別個に株主総会で決議されなければならないとされている(387条1項)。
エ 監査役の報酬等は、株主総会の決議によって定める(387条1項)。この趣旨は、監査役の独立性を報酬の面から確保し、監査の公正を図る点にある。「報酬等」の決定を監査役から監視されるはずの取締役会に一任することは、報酬の面から監査役の独立性を害し、監査の公正を図れないおそれがあるので、387条1項に反し違法となる。
オ 株主総会議事録の閲覧(318条4項)、取締役会議事録の閲覧(371条2項)、監査の結果が株主総会に報告される(384条)、監査役会の議事録の開示請求(394条2項)。株主はこれらで情報を集めて、訴えの提起について参考資料とする。
カ 会計監査人
会計監査人の選任・解任・不再任の議案は監査役の同意必要(改正法344条)。会計監査人の不再任について、監査法人は株主総会で意見を述べることができる(345条5項、1項)。会計監査役の報酬は監査役の同意必要(399条1項)。
(5)委員会設置会社 ア. 指名委員会、監査委員会、報酬委員会を置く株式会社をいう(2条12号)。
委員会設置会社においては、執行役に決定を大幅に委任することで(416条4項参照)、時機に応じた迅速な意思決定が可能となり、経営の機動力の強化が図られている。また、取締役会の権限を監視機能に特化させ、その権限を強化することで、充実した監督機能を図らせ、会社経営の健全性の確保が図られている。
イ 会計監査人が必要的機関であり(327条1項3号)、監査役を置くことはできない(同4項)。社外取締役が2人以上必要(400条1項、3項)。指名委員会が、株主総会に提出する取締役の選解任に関する議案の内容を決定する権限を有し(404条1項)、監査委員会が執行役等の職務の執行を監査する権限を有する(同条2項)。報酬委員会が執行役などの報酬を個人別に決定する(同条3項、409条)。

12-1役員等の責任(会社に対する責任等)
(1)52条ないし56条は発起人・設立時取締役の責任である。120条(利益供与)は423条とは別の責任である。213条(株式発行の現物出資の差額支払い責任)、462条(剰余金配当の責任)、465条(欠損の責任)も同様に別々に論じる。356条(競業・利益相反)は423条の中で論じる。
(2)423条責任
ア 例:Aが甲会社を代表して行った融資により、甲会社は損害を被っている。そこで、Aは甲会社に対し、損害賠償責任(423条1項)を負うか。例:不当な比率の株式交換によってY社は損害を被っている。そこで、AはY社取締役の責任(423条1項)を追及できないか。
423条1項の要件は、①役員等の任務懈怠、②因果関係のある損害の発生である。これに対し、③無過失の抗弁が可能である(428条参照)。 (ここに「役員等」の定義がある。取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人である。)
取締役等が利益相反行為を行ったことにより会社に損害が生じた場合には、取締役等が①任務を怠ったと推定され(423条3項各号)、立証責任が転換される。「自己のために」した利益相反取引は③無過失責任である(428条)。
論文では他の取締役の監督義務(362条2項2号)の違反や、監査役の適法性監査義務(381条)の懈怠がよく問題となるので意識する。
各取締役には取締役会招集権がある(366条)ことから、上程事項以外の職務行為についても、監視義務を負う(明白な違法又は明らかに会社に損害を与える行為であれば監視監督義務違反を認める)。
取締役に違法行為をする裁量はなく、重大な法令違反は常に①任務懈怠を基礎づける(〔12〕〔51〕参照)。微妙なときは、当然に①を充足し、③過失で争う(事例で8)
債務の性質は債務不履行責任の一種であり、民法の時効(10年)、法定利率(5%)が適用される。期限の定めのない債務である。(最判平26・1・30)
イ Aは取締役として、善管注意義務(330条・民法644条)及び忠実義務(会社法355条)を負っている。Aの経営判断がこれらの義務に違反する場合は、①任務懈怠に当たる。
この点、経営判断は複雑多様な事情に基づく総合的な判断であるし、利益獲得を目的とする以上、一定のリスクが伴うことは避けられない。にもかかわらず、常に事後的な判断により責任を問えば、経営判断は萎縮し消極的なものとなり、会社の発展が阻害されるおそれがある。そこで、当該行為当時の状況に鑑み、通常の経営者が有すべき知見・経験を基準として、当該取締役の判断過程・内容が著しく不合理である場合に限り、義務違反を肯定すべきである〔52〕。(きちんと情報収集したか→判断過程の判断 情報を踏まえて通常出されるべき結論か→判断内容の合理性)
本問では、Aは十分な情報収集をせず、担保の確保や乙会社の経営改善のための措置を検討することもなく融資に踏み切っており、かかる判断過程は、当該行為当時の状況に鑑み、通常の経営者が有すべき知見・知識を基準として、著しく不合理であるといえる。したがって、①を充たす。
〔52〕の最高裁:出資財産と同額で株式を買い取っている(出資から5年しか経っていない)。株主はアパマンショップのフランチャイジーであり、もめると業務遂行に支障が生じる。そこで、円滑に進める必要があった。判断内容は合理的である。弁護士に聞いて判断しており、判断過程は合理的である。したがって、善管注意義務違反は認められない。
(3)423条その他 ア 取締役がその職務遂行に際して会社を名宛人とする法令を遵守することも、善管注意義務・忠実義務に属すると解する。なぜなら、全ての法令を遵守して経営を行うことが株主の合理的な意思だからである〔72〕。
法令違反が微妙なときには①を直ちに認め、③過失で争う(事例で8)。
イ 取締役会の承認を受けない競業取引は、会社法の規定に違反したことが任務懈怠となる。それによって取締役らが得た利益の額が、損害の額と推定される(423条2項)。(承認を受ければ推定が働かないだけで、会社側が任務懈怠や損害額などを立証すれば責任を負う。 退任後の取締役は責任負わない。)
ウ 利益相反取引によって会社に損害が生じた場合、承認の有無にかかわらず、取締役らに任務懈怠があると推定される(同条3項)。
役員等の行為が取締役会の決議に基づくものであれば、決議に賛成した者が、その賛成が任務懈怠となる場合に責任を負う。利益相反取引については、賛成が任務懈怠になると推定される(423条3項3号)。取締役会の決議に参加した取締役は、議事録に異議をとどめなければ、決議に賛成したものと推定される(369条5項)。連帯責任となる(430条)。
利益相反の場面では、たとえ承認を得たとしても、会社の損害で取締役が利益を得た場合、忠実義務(330条)違反として任務懈怠及び過失が認められると構成するべきである。自己取引の場合は無過失責任である(428条1項)。
エ 役員等の任務懈怠責任は総株主の同意がなければ免除することができない(424条 代表訴訟が単独株主権であることとの均衡から(847条) 120条5項も同じ)。
役員等が軽過失の場合には一部免除の方法が3つある(425条~427条)が、自己のために直接取引をした取締役等の責任は、軽減の対象にはできない(428条2項)。
株主総会特別決議(425条 総会への情報開示(2項)、監査役の同意(3項))、定款規定(426条 特に必要があるとき 株主の百分の三の異議(5項)がないこと)に基づき取締役会決議で減額する場合、善意無重過失が必要で、取締役なら報酬の4年分については減額できない(426条1項、425条1項1号ロ(イ6年ロ4年ハ2年))。使用人としての報酬も含まれる(規則113条1号第1かっこ書 ストック・オプションも114条)。社外取締役と責任限定契約を結ぶこと(427条)は最も容易である。
オ 取締役が会社に対し損害賠償義務を負う場合、訴えを提起するか決定し、訴えを提起する場合に会社を代表するのは監査役である(386条1項)。監査役非設置会社では、取締役会が会社を代表する者を定める(364条、353条)。株主代表訴訟については8-1参照
(4)Q社の取締役に請求することが考えられる。
ア まず、本問売買は利益供与に当たるので、Q社の取締役は、供与した利益に相当する額をQ社に対して支払う義務を負う(120条4項本文)。その際、利益供与に関与した取締役は自己の無過失を立証して責任を免れることができるが(同ただし書)、利益供与をした取締役は免責されない(同ただし書かっこ書)。
イ また、Q社に不利益な取引を行ったことは、取締役としての善管注意義務(330条、民法644条)、忠実義務(355条)に違反する。よって、Q社取締役は、Q社に対し損害賠償義務を負う(423条1項)。無過失による反証が可能である。
ウ そして、Q社がこれらの責任を追及しない場合、株主Aは催告し、一定の場合には株主代表訴訟を提起できる(847条1項、3項、5項)。
(5)差止 取締役が違法な行為をするときの事前の手段はこれを想起する。
ア 取締役等の違法行為から生じた損害の事後的救済(423条など)がなされるべきことはもちろんだが、かかる行為は事前に防止できることが望ましい。そこで、株主に取締役等の違法行為の差止めをする権利が認められている(360条、422条)。
要件は①取締役に違反行為をするおそれ、②会社に著しい損害(監査役設置会社などでは、回復することができない損害である(360条3項))、③6か月株式を有することである。
ここでいう違法行為には、善管注意義務の違反も含まれる。論文では違法事由がなくても、これを指摘することを忘れない。ここでも経営判断原則を適用する裁判例がある〔61〕。
違法行為の差止めは会社の利益保護のための制度であるのに対し、募集株式の発行等の差止請求権(210条、247条)は株主の利益保護のための制度である点で、両者は異なる。
差止請求の対象である行為をしないように命じる仮処分の申立てを行うこともできる(民保23条)
イ 監査役の差止め(385条)の要件は、①法令定款違反の行為をするおそれ、②会社に著しい損害が生じるおそれがあること、である。やや緩やかである。
(6)業務執行に関し不正の行為又は法令定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、100分の3以上の株式を有する株主らは、会社の業務及び財産の状況を調査させるため、検査役の選任を申し立てることができる(358条1項)。〔59〕〔60〕

12-2 対第三者責任429条
(1)総論 ア 会社に対しては350条で請求するが、取締役個人に対しては429条が利用される。消滅時効は10年で、利率は5%であり、過失相殺は認められる。
イ 例:株主Xは、自らも株価の下落による損害を被っているので、この損害(参考:間接損害である)について、Aに対して損害賠償責任(429条1項)を追及できないか。
例:株主Aは株式交換によって本来得られるはずの株式よりも少ない株式を得ており、経済的損失を被っているので、Y社取締役に対して責任を追及できないか(H25予)。
要件は、①役員等、②悪意重過失、③第三者、④因果関係のある損害である。(②の中で任務懈怠の当てはめもする。)
ウ 429条1項は、経済社会における株式会社の重要性と、株式会社の業務執行が役員に委ねられていることに鑑み、取締役等に重い法定責任を課して第三者保護を図る規定であると解する。
そこで、②悪意又は重大な過失は任務懈怠についてあれば足り、③第三者には株主も含まれ、④損害は直接損害のみならず間接損害をも含むと解する。
エ 本問では、①取締役Aは、追加融資に際して著しく不合理な判断を行っているので、②を充足する。また、Xの経営判断により会社に損害が生じ、その結果株価が下落して③株主が、④間接損害を被っている。
(2)各要件 ア 何もしていなかった取締役は「漫然と見逃した」として簡単に当てはめる。しかし現に何らかの監視はしていたけど見逃してしまった場合、事実を丁寧に挙げる。例えば、重い作為義務を認める事情として、取締役にどこか不審に思うべき事情があった、前例があったなど→もっとしっかりと監査すべきであったといえる(簡単に認定しない)。
債権者丙は、乙以外の他の取締役に対して、429条1項に基づく損害賠償を請求できるか。
イ (ア) まず、取締役会に代表取締役等の行為に対する監督権限が付与されている(362条2項2号)ことからすれば、取締役会の構成員たる取締役には、代表取締役の職務執行を監視監督する義務があるといえる。
(イ) 設備投資は乙が独断で行ったものであるが、取締役会に上程されていない事項についても、監視監督義務が認められる。
監視監督の対象を取締役会に上程された事項に限ると、業務執行の適正を図れないからである。また、各取締役には取締役会の招集権があること(366条)からすれば、義務を課しても不当ではないからである。
(ウ) 本問では、乙の設備投資は明らかに過大であるから、他の取締役には、監視監督義務の懈怠と、それにつき少なくとも重過失が認められる。以上より、丙は、乙以外の取締役に対しても損害賠償を請求することができる。
ウ 間接損害(役員等の行為による会社財産の減少、又は、不公正発行額の株式発行により、株価が下落したなど)事例では、会社株主は第三者に含まれないとするのが通説である(東京高判平17・1・18も同旨)。会社の損害を回復すれば株主の損害も回復するので、代表訴訟(847条)により保護を図れば十分であるからである。また、先に請求した人が優先的に回収できるのは妥当でないからである。
論文ではこの説でもいいし、伊藤塾のように、常に含まれるという説でもいい(同P237)。
債権取得後、任務懈怠により会社債務超過の場合は、間接損害(リー234 事例で1)。支払見込みのない場合の取引など、相手が取引により直接損害を被る場合は直接損害。
(3)監査役や他の手段 ア 本問では代表取締役に違法な業務執行が認められる。そして、監査役は取締役の職務執行の監査を職責とするから(381条1項前段)、取締役会招集権限(383条)等を行使して、違法な業務執行を防止すべきだったといえる。
明らかに違法な業務執行を漫然と見逃しており、監査役には、かかる任務懈怠につき少なくとも重過失が認められる。したがって、丙は甲会社の監査役に対して損害賠償請求をすることができる(429条1項前段)。
イ さらに、Aを株主総会の決議により解任(339条1項)するため、議案提案権(303条)を行使するなどしてAの解任を株主総会の議題とできる。また、これが否決された場合は、少数株主権として、取締役の解任の訴えを提起できる(854条)。
正当な理由なしに解任をする場合には、役員などは会社に損害賠償を請求することができる(339条2項)。持病の悪化のため療養に専念するとして代表取締役を辞任したXを解任する場合、正当な理由が認められる。〔46〕。
(4)Yは、甲会社の倒産により債権を回収できなくなるという損失を被っている。そこで、429条1項に基づき、Dに対して損害賠償を請求できるか。
ア. Dは選任決議を経ていないので、①役員等に当たらない。したがって、原則として請求できない。
イ. しかし、選任決議の有無は会社の内部事情であり、第三者が容易に知り得るものではない。そこで、善意の第三者を保護すべく、908条2項を適用して、Dを①役員等といえないか。
(ア)「不実の事項を登記した者」とは登記申請者である会社を指すので、登記簿上の取締役に908条2項を直接適用することはできない。
(イ)しかし、908条2項の趣旨は、虚偽の外観を作出した者に、外観を信頼した者に対して外観通りの責任を負わせることにある。そして、登記簿上取締役とされた者が、その登記に承諾を与えた場合は、その者もまた不実の登記に加功した者といえる。
そこで、不実の登記に承諾を与えた者も、当該登記事項が不実であることを善意の第三者に対抗できないと解する(908条2項類推適用)。
(ウ)本問では、Dは取締役として登記される際に名義を貸したのだから、不実の登記作出につき承諾したといえる。
したがって、Yが、Dが取締役でないことにつき善意であれば、Yとの関係でDは①取締役に当たる。
(5)Yは、甲会社の倒産により債権を回収できなくなるという損失を被っている。そこで、429条1項に基づき、Cに対して損害賠償を請求できるか。
ア. Cは既に退任しておりもはや取締役ではないので、①役員等に当たらず、原則として請求できない。
イ. しかし、退任後もなお取締役としての登記が残存している場合には、これに対する第三者の信頼を保護する必要がある。
そこで、908条2項を適用して、Cを①役員等といえないか。
(ア)登記申請者でないCは「不実の事項を登記した者」に当たらず、908条2項を直接適用することはできない。
(イ)しかし、908条2項の趣旨は、虚偽の外観を作出した者に、外観を信頼した者に対して外観通りの責任を負わせることにある。退任取締役が、登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えた場合は、その者もまた不実の登記に加功した者といえる。
そこで、不実の登記に明示的に承諾を与えた者も、当該登記事項が不実であることを善意の第三者に対抗できないと解する(908条2項類推適用)。その結果、自己が取締役としての任務権限を有していないことも対抗できず、任務懈怠を観念し得る。
(ウ)本問では、Cは登記の残存を単に知っていたにすぎず、残存につき明示的に承諾を与えたという事情はない。
ウ. よって、Cは①役員等に当たらず、YはCに対して損害賠償を請求することはできない。
(6)事実上の取締役は、選任されていないし、登記もされていないが、会社に対する強い支配を及ぼしている者であり、429条1項を類推適用できる。(名古屋地判平22・5・14 法人格否認の法理が適用されるような場合 一人会社だけではだめ)
(7)その他 ア 虚偽記載による責任(429条2項)の趣旨は、第三者が損害を被る類型的行為について任務懈怠を推定し、証明責任を転換することにある。虚偽記載をしていない取締役の(監督義務違反等の)責任については、通常通り429条1項の責任を検討する。
イ H25重判5…取締役はMBOで公正価値移転義務、適正情報開示義務を負う。任務懈怠で論じる。

13計算
(1)計算書類リー243~256。資本金・準備金の増加リー264,265、減少264,265,282~285。資本金の減少は論M60、資本金増加は論M61。開示リー256(1)(2)(a)。
(2)帳簿閲覧請求
ア 議決権などの100分の3以上の株式を有する株主は、会計帳簿の閲覧を請求することができる(433条1項柱書)。
共益権の行使の他、株式の適正価格算定のためなど自益権を行使するためであっても、帳簿閲覧請求することができる〔79〕。請求の理由(433条1項柱書後段・3項後段)は具体的に述べなければならないが、理由を基礎づける事実の証明は必要ない。
親会社社員の請求(433条3項前段)には持分要件がないが、同条1項柱書前段が定めるのと同様の要件を、親会社社員は親会社との関係で充たしていなければならない。
イ ただし、例外がある。権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行った(433条2項1号)、請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものである(2項3号)などの場合、会社は請求を拒むことができる。
(ア)「競争関係」について、単に請求者の事業と相手方のそれとが競争関係にある場合に限られず、請求者の親子会社の事業と相手方のそれとが競争関係にある場合も含まれる。親会社と子会社の経済的利害関係は相当程度一致するからである。
例えば、Y社と、その株主Aが67%の株式を有するZ社とが競争関係にある場合、Aの請求をY社は拒むことができる。
(イ)「競争関係」とは、現に競争関係にある場合のほか、近い将来において競争関係に立つ蓋然性が高い場合も含む。
例えば「将来関西地区への進出を検討している」などがキーワードとなる。
(ウ)当該株主が会社と競業関係にある者であるとの客観的事実が認められれば足り、会計帳簿から知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図は不要である。文言上要求されていないからである。また、閲覧謄写によって取り出された情報がその後消滅するわけではなく、得られた情報が将来競業に利用される危険性は否定できないからである〔80〕。
例えば「株式交換比率を確かめるため」という正当な目的があっても、請求を拒むことができる(H25予備)。
 ウ H25予備…会計帳簿がどれかを特定していないが、どの会計帳簿が価格の妥当性の資料となったかは会社しか知り得ない場合が多いから、このように「一切の」として、帳簿を特定する必要はない。(ここは難)
(3)配当 ア 剰余金(446条)の配当は株主総会の普通決議を経る必要があり(454条1項)、純資産額が300万円以上で(458条)、分配可能額(461条2項 具体的計算はおよそ「その他資本剰余金+その他利益剰余金-自己株式」である リー270)の範囲内でのみ認められる(461条1項8号)。
取締役会限りで決定することもできるが、定款規定(459条1項柱書、同項4号)及び、無限定適正意見が付されていることが必要である(459条2項、会社計算155条)。取締役会設置会社は中間配当について定款で定めうる(454条5項)。
イ. 分配可能額を超えた剰余金配当に関する株主総会の決議(454条1項)は、その内容が461条1項に反するものとして無効であり、決議無効確認の訴え(830条2項)の対象となる。
したがって、会社、株主、会社債権者はかかる訴えを提起し得る。
ウ. また、取締役の違法配当により会社に著しい損害(又は回復することができない損害)が生ずるおそれがある場合は、株主は、右剰余金配当の差止請求(360条1項)をすることで配当を阻止することができる。
(4)分配可能額を超えた違法な剰余金配当がなされた場合にとり得る手段
ア. 会社 (ア)この点、463条1項が「効力を生じた日」と規定している以上、これに基づく剰余金配当は有効であると解されるので、会社は株主に対し不当利得返還請求をすることはできない(有効説)。
有効説を採れば、株主が交付を受けた株式を保持することができる。分配可能額を越えて株式買取がなされた場合、株主は引き渡した株式と462条1項の義務の同時履行を主張できない(事例で15)。
(イ)もっとも、会社は分配可能額を超える配当を受領した株主に対し、配当額に相当する金銭の支払いを請求できる(462条1項)。会社財産の確実な回復のため法が特別に株主に負わせた無過失責任である。
(ウ)また、違法配当を行った①業務執行者、及び、②剰余金の配当や自己株式取得について議案を提案・賛成した取締役等に対して配当額の弁済を請求し得る(462条1項柱書 同項各号、会社計算160条・161条(特に462条1項1号かっこ書の「以下この項について同じ」と、同6号イ 会社計算160条3号))。この責任は連帯責任である。
ただし、これらの業務執行者らは自らの無過失を立証した場合には免責される(同条2項)。反論・抗弁で無過失を検討する。
この責任は、行為時の分配可能額までは総株主の同意によって免除できるが、それを超える部分は免除できない(同条3項)。
(エ)取締役・監査役・会計監査人等の任務懈怠責任を追及し、損害賠償を請求することができる(423条1項)。
(オ)欠損が生じた場合、欠損額の責任を負う(465条本文)。これも無過失の抗弁が可能である(同条ただし書)。
イ 株主 会社に対して、責任追及等の訴え提起の請求・提訴をすることができる(847条)。
違法配当によって株価の下落等の(間接)損害を被った株主は、違法配当を行った業務執行者や監査を怠った役員等に対し、429条1項に基づき損害賠償を請求し得る。
ウ. 会社債権者は株主に対し、自己の債権額の限度で、直接交付された金銭相当額の支払を求めることができる(463条2項)。
また、違法配当によって債権の回収が困難になった等の間接損害を被った会社債権者は、取締役等に対し429条1項に基づく損害賠償を請求し得る。
エ. 責任を負う業務執行者らが462条1項により金銭支払義務を履行すれば、同項の責任を負う株主に対して求償をすることができる。ただし、求償の相手方は悪意の株主に限られる(463条1項)。
(5)ア. 会社債権者を保護するために、会社法は様々な制度を置いている。具体的には、①適切な情報開示、②会社財産の流出防止という観点から、会社の性質や想定する事業規模を勘案して、会社債権者の保護の必要性に応じた債権者保護制度を置いている。(リー286,287)
イ. 株式会社においては、社員たる株主は有限責任のみを負い(104条)、会社財産のみが債権者の引当てとなる。また、大規模経営を予定しているため、株主が頻繁に変更され得る。そのため、会社債権者を保護する要請は持分会社よりも強い。そこで、厳格な債権者保護制度が置かれている。
①情報開示の観点から、法は計算書類の作成を義務付け(435条1項、2項)、債権者にこの計算書類の閲覧請求権を付与し(442条3項)、貸借対照表又はその要旨の広告(440条)を義務付けている。
②会社財産流出防止という観点から、法は株主への出資の払戻しを禁止している。また、剰余金の配当や自己株式の取得については、300万円以下は配当不能であり(458条)、また、財源規制を課し(461条1項)、財源規制に違反して配当された財産を受領した株主及び配当に関与した業務執行者に支払義務を負わせている(462条1項)。債権者も自己の債権額の範囲内で株主に返還を求めることができる(463条2項)。

14企業の再編と結合
(1)ア 組織再編の条文操作について。
条文は内容→手続の順番で、手続は消滅会社等→存続会社等又は設立会社の順番である。
合併の内容は748条~756条。分割の内容は757条~766条。株式交換・株式移転の内容は767条~774条。
吸収合併・吸収分割・株式交換の消滅会社等の手続は782条~793条、存続会社等の手続は794条~802条。
新たに設立する場合の消滅会社等の手続は803条~813条、設立会社の手続は814条~816条。
それぞれの株主総会決議は特別決議である(309条2項12号)。
イ 事前の手段としては、差止めや株式買取請求権、株主総会決議の取り消しなどが考えられるだろう。
組織再編の後の手段は、組織再編無効の訴え(828条1項7号~12号)を想起する。無効原因は、明文に定めがないが、828条の制度趣旨たる法的安定性の確保という観点から、重大な手続違反などに限られると解する。他に429条1項など。
組織再編では、常に、株主総会決議、株式買取請求権、債権者異議手続、差止め、総会決議の取消し・組織再編無効の訴えの5点セットを想起する。(組織再編は株主総会と異なり、無効の訴えである。無効確認の訴えではない。)
無効確認の訴えでは、原告適格(828条2項)、出訴期間(828条1項)を必ず最初に当てはめる。
(2)甲株式会社が乙株式会社を吸収合併する場合について検討する。
ア. 合併契約で定めるべき消滅会社の株主に対して交付する財産については、存続会社の株式に限定されていない(749条1項2号)。そのため、合併契約において、乙会社株主に対し、株式以外の金銭等を交付する旨定めた場合には、乙会社の株主は甲会社の株主とならない。
また、株式を交付する場合でも、乙会社は甲会社の株式の割当てを受けず、甲会社の株主とならないし、甲会社も自己の株式の割当てを受けず、自己の株主とはならない(749条1項3号かっこ書)。
イ. 乙会社は合併により当然に解散し(471条4号)、清算手続を経る必要がない(475条1号かっこ書)。
甲会社が乙会社の権利義務の全部を承継することは、合併の本質的要素である。そこで、これに反する特約は無効である。
(3)事業譲渡等
ア.  旧試60第1問 論M67
吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう(2条27号)。事業譲渡とは、一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産を譲渡し、これによって事業活動の承継を伴うものをいうと解する。甲会社が乙会社の総株主の議決権の過半数に当たる株式を取得する場合、甲会社は乙会社の親会社(2条4号)となる。
これらは、競争力の強化、競争の回避、市場の独占等を目的としてなされるが、会社の事業の在り方に影響を与えるため、株主と会社債権者の保護の観点から規制がなされているが、それぞれの影響の程度によって、その内容は異なっている。
三者を比較するときは、①株主の保護、②会社債権者の保護、③瑕疵あるときの効力、を軸に論じる。総括としては、合併、事業譲渡、過半数の株式の取得の順に規制内容が緩和されていく。順に株主、会社債権者に与える影響が小さくなるからである。
イ 論M68 合併は会社の組織運営に重大な変更をもたらすから、株主総会の特別決議を要し(783条、795条、804条)、反対株主の株式買取請求が認められている(785条、797条、806条)。事業譲渡も同様に会社の組織運営に重大な変更をもたらすことから、株主総会の特別決議を要し(467条)、反対株主の株式買取請求が認められている(469条)。両者の差異は、①権利義務の移転、②解散清算、③債務の承継、④瑕疵あるときの効力という視点から論じる。(いて かい さい かし)
ウ 事業譲渡は、会社の事業の在り方に重大な影響を及ぼすことから、株主総会の特別決議を要し(467条1項1号、2号、309条2項11号)、反対株主の株式買取請求権が認められている(469条)。これに対して、単なる重要な財産の譲渡(362条4項1号)は、それらがない。そこで、両者の区別が問題となる。
法解釈の統一性・取引安全を図るために、467条の事業譲渡は、21条以下の事業譲渡と同一の意義であると解する。そこで、事業譲渡とは、①一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産を譲渡し、②これによって、事業活動の承継を伴うものをいうと解する。なお、譲渡会社が法律上当然に競業避止義務を負うことは要件ではない。これを要件とすれば、21条以下との関係で循環論法が生じてしまうからである。また、競業避止義務を排除する特約をすれば22条や23条が適用されないと考えることも、取引相手の保護を害し妥当でないからである。
以上より、事業譲渡と重要な財産の譲渡は、事業活動の承継の有無を基準として区別される。
エ Y社は本件不動産において、X社が行っていたレストラン事業を行わず、それとは全く別の電化製品の販売店を営んでおり、②事業活動の承継はない。したがって、本件不動産の譲渡は「事業の重要な一部の譲渡」に当たらず、Bが467条を理由に本件不動産の所有権移転登記の抹消を求めることはできない。
オ 簡易の事業譲渡(467条1項2号かっこ書)では「事業譲渡等」に当たらないので、467条以下の規制の適用はなく、株主総会の承認は不要であり、反対株主の株式買取請求権もない。
略式事業譲渡等(468条1項)、簡易の事業譲受け(468条2項)では株主総会の承認のみ不要である。(あくまで「事業譲渡等」にあたるので、株式買取請求はある。)
効果は21条、22条を参照する。
参考:商号ではなく店名を使用した場合22条は直接適用できないが、趣旨から類推適用する。
(4)ア 事後設立とは、会社成立後2年以内に、その成立前から存在する財産を継続して使用する目的で、純資産額の5分の1以上の対価をもって、取得する契約を締結することをいう(467条1項5号)。株主総会の特別決議による承認を要する(309条1項2号)。このような財産の取得は業務行為の一環であるが、売買契約の時期を会社成立後に延ばすことによる財産引受(28条2号)の潜脱を防止し、会社財産を保護する必要があるので、規定された。
ただし、発起設立・募集設立の方法によって設立された会社に限られる(309条2項11号括弧書)。
検査役の調査制度はない。反対株主の買取請求権もない。
イ A株式会社が甲事業部門をB会社として分離独立させるための会社法上の手段として、①現物出資(28条1号)、②財産引受け(28条2号)、③事後設立(467条1項5号)、及び、④会社分割(757条以下)の各方法がある。(論M69)
ウ 株式会社がその設立に当たり又は成立後、自然人たる商人の事業を引き継いで経営を行うには、①現物出資(28条1号、199条1項3号)、②財産引受け(28条2号)、③事業譲渡がある。
三者を比較するにおいては、迅速性・資金の必要性から論じる。(論M78)
(5)旧司H21第1問(論M70)
ア. 株主に株式買取請求を認める方法によりA工場含む事業の取得を実行するには、吸収分割の手続を採ればよい。
まず、X社は取締役会決議に基づき、Y社との間で吸収分割契約を締結し(757条)、契約内容等を記載した書面を本店に備え置かなければならない(794条1項)。
次に、X社は同契約について、株主総会の特別決議による承認を受けなければならず(795条1項、309条2項12号)、取締役は交付する株式の価額がA工場の評価額を超える旨の説明義務を負う(795条2項2号)。
株式買取請求権が認められている(797条1項)。また、債権者異議手続(799条)を採らなければならない。
イ. 株主の株式買取請求を認めない方法によりA工場含む事業の取得を実行するには、Y社に対して第三者割当により募集株式を発行し、A工場の現物出資を受けるという手続きを採ればよい(199条1項2号、3号)。
まず、A工場の評価額は5億円もの高額に上り、X社の純資産額の4分の1もの割合を占めるため、本件取得は「重要な財産の」「譲受け」(362条4項1号)に当たる。そのため、会社はこの点について取締役会決議を要する。
次に、「公開会社」たるX社は、募集株式に関する事項(199条1項各号)を取締役会決議で決めればいいのが原則である(201条1項、199条2項)。ただし、払い込む金額が「特に有利な金額」(199条3項)に当たれば、株主総会の特別決議を要する(201条1項前段)。(検討は省略)本件では特に有利な金額には当たらない。よって、原則通り、取締役会決議で足りる。
また、差止め請求(210条)の機会を与えるために、X社の株主に対して募集事項の通知・公告をしなければならない(201条3項、4項)。さらに、金銭以外の財産を出資する場合に当たるので、X社は裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない(207条1項)。
(6)H25予備 不当な比率の株式交換について ア. 事前の手段
Aは株式交換に反対しているので、自己の株式を公正価格で買い取るよう請求することができる(785条1項、2項1号イ)。
新法では784条の2による差止めが認められた。
Xグループが議決権を行使し、不当な交換比率の株式交換を承認する株主総会特別決議(783条1項、309条2項12号)がなされているので、これを831条1項3号により取り消すことができるか検討する。
イ. 事後の手段 株式交換によってY社に損害が生じたとはいえないので、Y社取締役の423条責任を追及することはできない。しかし、不当な交換比率によって得られたはずの株式を得られなくなった株主Aには損害がある。そこで、AのY社取締役らに対する429条に基づく請求の可否を検討する。
株式交換には瑕疵があるので、株式交換無効の訴え(828条11号)について検討する。
ウ. 株主総会決議取消しの訴えと組織再編の無効の訴えの関係:決議を取り消さないと組織再編の無効原因にならないとすれば、無効の訴えの提訴期間に間に合わなくなってしまう。そこで、承認決議に瑕疵があるときは、決議の取消し判決を待つまでもなく、無効の訴えを提起できると解する。
そして、組織再編がなされてしまうと、もはや無効の訴えによるしかない。(吸収説 H25予備等)提訴期間は3ヵ月(838条1項)に合わせるか、法文(828条1項7号ないし12号)を重視して6カ月とするか争いがある。
(7)その他  ア 株式の取得による買収リー356。キャッシュアウトは179条以下、応用会社法「会社法制の見直し4」。組織再編の意義・内容リー362。手続リー372(特に373,374)。無効の訴えリー397。
イ 株主 株式買取請求権を行使できる株主とは、①株主総会の承認を要する場合は反対する旨を会社に通知し、かつ総会で実際に反対した株主(785条2項1号ロ・797条2項1号イ・806条2項1号)、又は、議決権を行使できない株主(同イ・同ロ・同2号)であり、②承認を要しない場合は全ての株主である。(同2号・同2号)
784条の2、796条の2が新設され、株主の差止めが認められる。
ウ. 債権者 (ア)吸収分割・新設分割では「知れている債権者」への個別催告が必要である(789条2項〔81〕、799条2項、810条2項)。知れている債権者とは、債権の存在を主張する者、および、原因・内容の大体を会社が知る者である。新聞・電子公告をすれば各別の催告は不要である(各3項)が、不法行為者に対しては各別の催告を省略できない(789条3項かっこ書、810条3項かっこ書(799条3項は定めなし。吸収合併だから。))。
(イ)知れているか否かにかかわらず、各別の催告を受けなかった場合には、吸収分割会社に請求できる(759条2項第2かっこ書)。
(ウ)[92]新設分割において、分割会社の残存債権者は、債権者異議手続きの対象とならず(810条1項2号)、会社分割無効の訴えの原告適格も有しない(828条2項10号参照 東京高判平23・1・26)。債務の履行の見込みは会社分割の要件ではない。よって、債務超過状態にある分割会社を破綻させることで債権者は不利益を被る。そこで、詐害行為取消権(民法424条)による救済を認めるべきである。
(エ) 甲社は会社分割により乙社を設立し、債権者Pに対する債務は移転せず、債権者Qに対する債務は乙に移転する。この場合、甲社の債権者異議手続において、Pは対象とならず、Qは対象となる。(810条1項2号 「請求することができない」)
しかし、債務超過状態にある分割会社であれば債権者は不利益を被る。そこで、事業譲渡における譲受会社の商号続用の責任(22条)の規定を会社分割にも類推適用する。吸収分割契約に承継の定めのない分割会社の債務についても、同条の要件の下で承継会社もともに責任を負う(最判平20・6・10 応用会社法1)
注:以上の問題は、改正法23条の2、759条2項ないし7項、764条2項ないし7項により吸収する・新設する会社に請求できるようになり改善された。
(8)敵対的買収と防衛策
ア 意義 敵対的買収とは、被買収会社の経営陣の賛同を得ていない買収をいう。
株式を買い集めた者が、その影響力を利用して様々なトラブルを引き起こすことで、買い集めた株式を当該会社や役員等に高値で引き取らせることを狙う者もいる。このような②濫用的な買収を防止するため、防衛策をとりうるだろう。また、③株主が買収に応じるかどうかを適切に判断できるようにするという目的であれば、一定の措置をとりうる。
イ 取締役会による防衛策
210条・247条の主要目的ルールの例外は狭く捉えられている。①買収後に行う事業に賛同するか、買収に応じるかどうかは、「株主や株式取引市場の事業経営上の判断や評価にゆだねざるを得ない」ものである(東京高決平17・3・23)。
①企業の経営支配権の争いがある場合、現経営陣と敵対的買収者のいずれに経営を委ねるべきかの判断は、株主によってされるべきである。ただし、③被買収会社の取締役会は、株主に対し適切な情報提供を行い、その適切な判断を可能とするという目的で、敵対的買収者に対して事業計画の提案と相当な検討期間の設定を任意で要求することができる。合理的な要求に応じない買収者に対しては、株主全体の利益保護の観点から相当な手段を採ることも許される。よって、情報提供等の要求に応じずに買収者が開始した公開買い付けに対抗して、被買収会社の取締役会が決議した株式分割は、適法である(東京地決平17・7・29)。
ウ 株主総会の承認
②買収者XがY社の全株式を対象に公開買い付けを開始したのに対抗してY社が行った、差別的な内容の新株予約権の無償割当てを適法と認めた(最判平19・8・7〔99〕 株主平等原則(109条1項)違反と、247条2号の「著しく不公正な方法」が論点)。事前警告型防衛策を採用していない。本件新株予約権は、Xら以外の株主にはY社株式を対価とするのに対し、Xらに対しては公開買付価格を基準とする金銭を対価とした。本件新株予約権の無償割当ては、Y社の株主総会の特別決議による承認、8割以上(Xら以外の株主の議決権の9割以上)の賛成を得て行われた。という特殊事情があった。
株主平等原則に反しない、著しく不公正ではない、とされた。
エ まとめ ①支配権争いの判断は株主に委ねるべきであるという原則がある。
②公開買い付けなどは強圧性の問題があり、その点で〔99〕のような防衛策も許される。他方、公開買い付けが非強圧的な方法によって行われたときは、③株主に対する情報提供や検討期間の確保のためにのみ、一定の防衛策が許容される。