予備試験対策 刑事訴訟法 まとめノート (旧)

Ⅰ序論 Ⅱ捜査  1総説 2捜査の端緒 3身体保全 4物的証拠 5供述証拠 6被疑者の防御権
Ⅲ公訴・公判  1総則  2起訴状  3訴因変更
Ⅳ証拠     1総論  2許容性  3自白  4伝聞法則  5その他裁判

 

Ⅰ序論
 配点は設問1:設問2が2:1ではないかと考えられる。ページ数は4:3又は4.5:2.5を目安にするといいだろう。しかし、平成27年度の配点が異常だったため、今後どうなるかは分からない。
論文では規範を決めたら、とにかく事実を拾う作業に没頭する。
2 当事者主義と職権主義
(1)当事者主義とは、訴訟において当事者が主導的役割を担う訴訟構造をいい、職権主義とは裁判所が主導的役割を担う訴訟構造をいう。両主義は、刑事訴訟法の目的(1条)を達成するための手段原理であるから、訴訟追行過程におけるそれらの関係についても、いずれの手段が刑事訴訟法の目的たる①人権保障と、②真実発見の実現に資するかという見地から捉えるべき。
①裁判所に訴訟追行の役割を任せると必罰主義を前提とした実質的二面構造となってしまう。また、②訴訟に関し最も利害関係の強い当事者の攻防を通じ、第三者的立場にある裁判所が判断することが、予断が生じる危険も少なく真実発見に資する。
よって、訴訟追行過程においては、当事者主義を基調とすべきである。
(2)現行法も、訴訟追行過程においては、当事者主義を基調とする。
被疑者・被告人に黙秘権(憲法38条1項、刑訴法311条1項)、弁護人依頼権(憲法37条3項前段、刑訴法30条)等を保障し、当事者としての主体的地位が認められている。被疑者の請求による国選弁護(法203条3項、37条の2)の要件は、①長期3年以上、②勾留状が発せられている又は勾留を請求された、③年収50万円以下である。
公訴の提起・維持・取消しを一方当事者たる検察官に委ねている(247条、248条、257条)。そして、起訴状一本主義(256条6項)の採用により、捜査機関から裁判所への嫌疑の承継を切断して予断が生じる危険を防止している。
裁判所に嫌疑を承継しないため、審判の対象は検察官の主張する具体的事実たる訴因のみであるとする訴因制度(256条3項)を採用し、訴因変更も検察官の専権とされている(312条1項)。
さらに、証拠調べ段階では、証拠調べは原則として当事者の請求で行われる(298条1項)。
(3)ただし当事者の不注意や錯誤などにより訴訟が十全に機能しない場合には、刑事訴訟法の目的たる人権保障・真実発見が損なわれるおそれがある。そこで、職権主義的規定(312条2項、298条2項等)が当事者主義の補完として規定されている。
3 予断排除の原則
(1)予断排除の原則とは、裁判官は事件について何らの予断を抱くことなく白紙の心境で審理に臨まなければならないとする原則である。以下、第1回公判期日前について具体的制度を検討する。
(2)ア. 法は起訴状一本主義(256条6項)を採用し、捜査機関から裁判官への嫌疑の承継を切断している。
また、証拠保全の請求(179条)や、証人尋問の請求(226条、227条)は、受訴裁判所ではなく裁判官に対してなされ、勾留に関する処分も裁判官が行う(280条1項)。
4 捜査の適正のための役割(論M5)
(1)捜査の目的は、犯罪の嫌疑の有無を解明し、公訴に備えて被疑者を保全し又は証拠を収集することにある。これが行きすぎると、被疑者の人権侵害のおそれがある。そこで、人権侵害を防止するために適正・適法な捜査を確保する必要がある。
(2)裁判所・裁判官の役割
ア. 事前に捜査機関の活動を監視する役割を有し、捜査機関が強制処分を行う場合、原則として裁判官の発する令状が必要である(憲法33条、35条)。その趣旨は、強制処分の可否を公平な立場の裁判官の判断にゆだねることで、捜査権の濫用を防止し、人権保障を図ることにある。捜索・差押令状の場合、「正当な理由」を判断し捜査権の濫用を防止することにある。
具体的には、逮捕・勾留(刑訴法199条、207条1項本文、60条1項)、捜索・差押え・検証(218条1項)は、裁判官の発する令状がなければ原則として行うことができない。また、身体拘束については、逮捕と勾留の2度にわたる裁判官の審査を受けさせることを原則としている(逮捕前置主義 207条1項本文)。
イ. 捜査の適法性を事後的に監視して是正をする役割として、①勾留理由開示(憲法34条後段、刑訴法207条1項本文、82条以下)、②勾留取消し(207条1項本文、87条)等により裁判官は違法な身体拘束から被疑者を解放する役割を担う。なお、勾留や押収に関する裁判及び捜査機関の処分については、裁判所に準抗告でその取消し・変更を請求できる(429条1項2号、430条)。
ウ. 公訴提起後においては、捜査の効果を否定することで間接的に違法捜査の抑制を図る。
捜査に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、得られたものを証拠として許容することが、将来の違法捜査抑制の見地からして相当でないと認められる場合、その証拠能力を否定する(違法収集証拠排除法則)。また、違法な捜査がなされ、その違法が重大でもはや訴訟手続を続行することが許容されない場合、裁判所が公訴提起の効力を否定し得ると解する(公訴権濫用論)。
4 被害者の地位(論M8)

Ⅱ捜査
1総説
(1)ア かかる捜査が強制処分に当たるか。捜査が強制処分(197条1項ただし書)に当たれば根拠法令が必要であり、また令状主義が妥当し令状が必要となることから問題となる。
プライバシー(憲法13条)侵害のように有形力の行使を伴わない人権侵害もある。そこで、強制処分とは、相手方の明示又は黙示の意思に反して身体、住居、財産等の重要な権利・利益の制約を伴う処分をいうと解する。(憲法33条、35条を挙げてもいいが、不要か)
イ 令状主義の趣旨は、事前の司法的抑制によって、捜査機関による公権力の濫用を防止して人権保障を図ることにある。
(2)任意処分であっても,…という人権侵害は伴い得る。(ここ実際に認定。おとり捜査なら認定しない。)そこで、①捜査目的を達するのに必要な範囲において、②相当な方法でのみ許される(比例原則 刑訴法197 条1 項本文)。
A:当てはめ ①において犯罪の重大性、嫌疑の程度、当該行為によって見込まれる情報や証拠の価値・重要性、捜査の進展状況、緊急性(ここ忘れない)等を、②においてプライバシー、住居権、身体の管理処分権、財産権の侵害がどれくらいかを考慮する。②は捜査官の主観や行為後の事情も拾い上げること。
(3)捜査とは公訴の提起・追行のために、被疑者の身体保全・証拠の収集を行うことをいう。特定の犯罪が被疑事実となっている場合。将来の犯罪の捜査の可否について論マス37
(4)強制処分における付随的処分が許されること:
令状ない以上、原則として許されない。
しかし…の実効性を確保できないことから、裁判官は令状発付に際して付随処分も含め審査し許容したものと解される。そこで、必要性に応じた相当性がある限り、付随処分も許されると解する。
(5)違法性の承継 当該捜査は違法な先行行為により得られた証拠を利用して行っており違法ではないか。(処分→処分)
別の手続である限り個々にその要件や適法性を判断するのでは、先行行為の違法性をとがめることができず、将来の違法捜査抑制の見地から妥当でない。そこで、先行行為と後行行為との因果性がある場合に、後行行為も違法となると解する。判例〔95〕は「同一目的」と「直接利用」を理由に、〔96〕は密接関連性により因果性を判断する。
後行行為が違法となった場合、違法の重大性と、排除の相当性から証拠排除を検討する。
(6)事実評価 証言の信用性が高いことを示す評価…秘密の暴露、自己の不利益陳述、客観的事実と合致している。
何も答えない、捜査に応じない→そのままでは嫌疑・有罪を基礎づける事実とならない(論M83参照)。そこで、怪しい事情があり、それを説明すべき事情があるにもかかわらず、答えない、応じない、という状況を指摘した上で、嫌疑・有罪を基礎づけると評価すれば、点数は入る。
重大な犯罪であり、真相解明の必要性が高い。当該証拠が真相解明に役立つので必要性が高い。

2捜査の端緒
(1)職務質問
ア. 職務質問の適法性は、警職法2条1項による。要件は、犯罪をしたか、すると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪、行われようとしている犯罪について知っていると認められること。
イ. 甲の行った行為は適法か。警察官は、職務質問に際して、対象者を「停止させ」て質問することができる(警職法2条1項)。停止行為における有形力の適法性の判断基準が問題となる。
警職法2条3項があえて刑訴法の強制捜査について定めていることから、職務質問における「停止」の限界に関する判断基準は、刑訴法上の任意捜査の限界に関するそれと基本的には同じものであるべきである(警職法1条2項)。そこで、①行政目的を達成するために、②相当な方法でなされた停止行為は許される。(強制処分か否かの判断は不要であろう。)
乙は突然逃げ出しているから、停止させて不審事由を解明する必要があり(①充足)、停止のために後ろから肩に手をかける行為は身体に対する制約は小さく、後にすぐ手を離していることから、必要最小限度の行為といえる。(②充足)
ウ. 任意同行には、警職法2条2項と、刑訴法197条1項(198条1項)と、2つのものがある。職務質問に続く同行なら警職法、特定の犯罪の嫌疑なら刑訴法により処理する。後者は比例原則による。
警職法2条2項の要件は、①本人の不利又は交通の妨害、②附近の警察署等に同行すること、③比例原則(1条2項)である。
(2)所持品検査 ア. 甲が乙のポケットから所持品を取り出した行為(所持品検査)は適法か。所持品検査について明文の規定がないため、その根拠、要件が問題となる。
所持品検査は明文にないものの、口頭による質問と密接に関連し、かつ職務質問の効果をあげる上で必要性・有効性が認められる行為である。したがって、職務質問に付随して行い得ると解する。
原則として所持人の承諾を得て行われなければならない。しかし、警職法2条3項があえて刑訴法の強制捜査について定めていることから、承諾がない場合でも、①捜索に至らない程度の所持品検査に限り、②職務質問の目的を達成するために相当な方法でのみ行うことができる(同1条2項)。
本問では、乙の承諾を得ていないので、例外的に許されるか検討する。甲が上着の内ポケットに手を入れた行為は、一般にプライバシー侵害の程度の高い行為であり、その態様において捜索に類する程度の行為である(①不充足)。
イ. バッグの施錠されていないチャックを開けて内部を一べつするのはギリギリ許される。もしバッグが施錠されていて、錠を開いて内部を見たと仮定すると、ダメ。施錠されていなくても、手を差し入れると、ダメ。施錠されていないチャックは、格別の強制を加えることなく容易に開被することができるし、また、それはバッグの通常の開被の方法でもある。内部を一べつする行為は、在中品が何であるかを確かめるにすぎない行為である(探す意図はない)。だから、許されるのである。
(3)甲らの行った自動車検問は適法か。(外観上不審事由があれば職務質問で検討すればいい。)
警察法2条1項が「交通の取締」を警察の職務として定めていることから、自動車検問も任意処分による限り許される。
もっとも、自動車検問は、不審事由がはっきりしない段階で一斉に行われるものであるから、適正手続の観点からその限界を画する必要がある。そこで、①交通違反の多発する地域等の適当な場所において、②短時分の停止を求めて、③相手方の任意の協力を求める形で行われ、④自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法・態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。(あくまで比例原則の下位規範か?)
(4)告訴は短答がなくなったので論文でもあり得る。230条以下と、告訴不可分の原則は復習しておく。
親告罪では告訴がなければ公訴提起できない以上、公訴提起の準備活動たる捜査もできないとも解される。
しかし、捜査機関は「犯罪があると思料するとき」に捜査をなしうるのに対し(189条2項参照)、親告罪における告訴は訴訟条件にすぎず、犯罪の成否に関係のない条件である。また、捜査の「目的を達するため」には、告訴がなくとも被疑者及び証拠を保全しておく「必要」がある(197条1項本文参照)。そこで、原則として、告訴がなくとも捜査はできる。
もっとも、捜査は公訴の提起の可能性を前提とするから、告訴人に告訴意思がないことが明らかな場合には許されないし、捜査をすることが親告罪とされた趣旨に反する場合にも許されない。

3身体保全
(1)逮捕 ア 手続は、202条~206条を参照する。時間制限は実務で必須の確認事項。誤れば懲戒事由。
司法巡査→直ちに、司法警察員に引致→48時間以内に検察官に送致→検察官は24時間以内に勾留請求(全72時間以内)
検察事務官→直ちに、検察官に引致→検察官は48時間以内に勾留請求
イ 通常逮捕(199条 令状発布=裁判官が審査)の要件 ①被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(法199条1項、2項 特定の犯罪の存在+犯人性) ②逮捕の必要がないことが明らかな場合でないこと(法199条2項但書、規則143条の3 逃亡のおそれ 罪証隠滅のおそれ 相当性(利益衡量) を判断する) ③逮捕状の存在 ④軽微事件(30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪)については、被疑者が定まった住居を有しないこと、又は正当な理由なく出頭の求めに応じないこと(法199条1項但書)
ウ. 緊急逮捕の要件は、①犯罪の重大性、②嫌疑の充分性、③逮捕の緊急性である(210条1項前段)。手続的要件は、①´理由を告知して逮捕すること、②´逮捕後直ちに裁判官の逮捕状を求めることである(同項中段後段)。
エ.  現行犯逮捕(212条1項)の要件は、①犯罪の現行性、②犯罪と犯人の明白性、③逮捕の必要性である。現行犯逮捕が令状主義の例外として許される(憲法33条、刑訴法213条)根拠は、犯罪の実行が明白であり、司法審査を経なくても誤るおそれが小さいことにあるから、②が必要となる。
②は原則として現認が必要である〔13〕。逮捕者は被疑者等の供述も考慮してよいが、伝聞であるので、自己の知覚などを補充するものとして、利用する。(供述の信用性、犯罪と犯人の特定などを総合考慮する上で、補充するもの。)また、意思を通じあうとか、依頼されるとかにより、本人の逮捕・共同逮捕として適法とする法律構成もあり得る。
オ 準現行犯逮捕の要件は、①212条2項各号のいずれかに該当すること、②罪を行い終わってから間がないと明らかに認められること、③逮捕の必要性である。(②では、②´時間的接着性と、②´´特定の犯罪の嫌疑が高いことを述べる。)
カ. その他 逮捕状の執行において、逮捕状の呈示(法201条1項)が原則である。緊急執行(法201条2項、73条3項)の要件は、①逮捕状を所持しておらず急速を要すること、②公訴事実の要旨及び逮捕状が発せられている旨を告げること、③逮捕状を速やかに示すことである。
逮捕に伴う実力行使は、完遂のために必要かつ合理的な実力行使であれば認められる(比例原則)。
司法警察員は、逮捕した又は受け取ったときは、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げたうえ、弁解の機会を与えなければならない(203条1項 弁解録取書を作成する)
(2)勾留 勾留とは、被疑者又は被告人の身体を拘束する裁判とその執行をいう。その要件は①嫌疑の相当性(207条1項、60条1項柱書)、②60条1項各号の事由(罪証隠滅・逃亡のおそれ・住居不定)、③勾留の必要性(207条1項、87条1項)である。
ア 1号の住居不定とは、住所や居所を有しないことを意味する。住居が明らかでないときでも当たる。(10年住んでいれば十分。実態がない、住居を転々としていることを拾い上げる。)
イ 2号の罪証隠滅のおそれとは、証拠に対する不正な働きかけによって、終局的判断を誤らせたり捜査や公判を紛糾させたりするおそれがあるときを意味する。(H25予備では、各要件の規範を書いていなかったため、低い点数にならざるを得なかった。)
考慮要素は以下の4要因である。対象(犯罪事実の認定にとって重要な意味を持つ場合、起訴不起訴の判断や量刑上重要な意味を持つ場合)、態様(共謀者との通謀、証人との通謀、証人に対する圧迫、物証の毀棄隠匿)、余地(客観的可能性及び実効性)、主観的可能性
ウ 3号の逃亡のおそれ。逃亡のおそれとは、被告人が刑事訴追や刑の執行を免れる目的で裁判所に対して所在不明となる可能性があるときを意味する。(事情は2つ。1つは被告人の生活状態が不安定という状況。もう1つは、処罰を免れる目的で身を隠そうとすることを強くうかがわせる事情である。)
エ ③勾留の必要性について。被告人の身柄を拘束しなければならない積極的な必要性と、その拘束によって被告人の被る不利益・苦痛や弊害とを比較衡量して、前者が極めて弱い場合や後者が著しく大きい場合は、勾留の必要性が欠ける。
(3)逮捕前置主義 ア 被疑者勾留には逮捕の先行を要する(逮捕前置主義 207条1項「前3条の規定による」)。その趣旨は、嫌疑の流動性の高い捜査の初期段階において、慎重な司法審査により不当な勾留を回避し被疑者の人権を保障することにある。
本問でも勾留請求が認められるには、逮捕が先行しなければならない。そこで、逮捕勾留の及ぶ範囲が問題となる。
法は被疑事実ごとに要件・効果を法定し(200条1項、203条1項等)、身体拘束の理由を手続上顕在化している被疑事実に限ることで身体拘束の理由の明確化を図り、不当な身体拘束を防止しようとしている。そこで、逮捕が先行しているかどうかは、被疑事実(事件)を基準として判断すべきである(事件単位説)。
イ. そして、被疑事実の同一性は「公訴事実の同一」に準じた基準に判断すべきである。
ウ. 逮捕時の被疑事実と勾留時の被疑事実の些細な違いは、公訴事実の範囲内である限り、勾留の適法性に影響しない。「嫌疑」がある限り上述の趣旨には反しないからである。
エ. A事実とB事実が同一の事件の範囲内にない場合、B罪について逮捕が前置されていないので、逮捕前置主義に反するともいえそうである。しかし、逮捕事実たるA事実で勾留請求されている以上、逮捕前置主義の趣旨に反しない。むしろ、B事実については、改めて逮捕されるよりも身体拘束期間の点で被疑者の利益となるといえる。
したがって、A事実及びB事実で勾留することは、逮捕前置主義に反せず認められる。
オ. B事実に対する勾留の適法性をA事実の勾留に求める以上、前提となるA事実について勾留の要件が欠けている場合には、B事実のみのための勾留請求は認められない。この場合、勾留請求は却下される。検察官は改めてB事実で逮捕し、勾留請求すべきである。裁判官の判断に不服があれば、準抗告を申し立て(429条1項2号)、執行停止を申し立てる(432条、424条)。
(4)先行する逮捕が違法な場合
逮捕が違法であればその時点で釈放されているはずで、勾留請求はできなかったはずである。また、現行法は逮捕の準抗告を認めておらず(429条1項2号参照)、勾留裁判が逮捕の違法性を審査する機会であると考える。したがって、先行する逮捕が違法な場合、原則として勾留請求が認められない。もっとも、軽微な違法で勾留請求できないとすると、捜査の必要性を害してしまう。そこで、重大な違法がある場合に限って、勾留請求を却下するべきである。
207条4項が定める206条2項(制限時間)違反に匹敵するほど重大な違法の場合には却下するべきである。207条4項に掲げる事由以外でもいい、という規範を示すほうがいい。例:逮捕手続の選択を誤ったなど形式的瑕疵にとどまるならば、重大な違法はない。現行犯逮捕の要件を充足しておらず現行犯逮捕し、緊急逮捕の要件は備わっていたものの、緊急逮捕後に逮捕令状の発付がない場合は、重大な違法。〔6〕参照
まとめ:1.逮捕の違法→勾留請求が認められる→そのまま勾留して捜査処理 2.逮捕の違法→勾留請求却下→再逮捕肯定→再勾留して捜査処理 3.逮捕の違法→勾留請求却下→再逮捕否定→在宅で捜査処理
(5)別件逮捕 論文では逮捕・勾留の要件も検討すること 全体像:判断基準として別件基準説+余罪取調べの適法性→逮捕の要件→勾留の要件→余罪取調べの適法性
ア I:本件の逮捕・勾留は、別件逮捕・勾留に当たらないか。
別件逮捕・勾留とは、令状を得るだけの証拠がない「本件」について取調べをする目的で「別件」被疑者を逮捕・勾留することである。
イ. 別件逮捕・勾留に当たるかは、別件の逮捕勾留の要件の有無を基準とするべきである(別件基準説)。「別件」の令状請求の段階において「本件」を基準に判定することは無理な要求であり、また、「別件」の身柄拘束については適法に司法審査を経ていることを無視できないからである。
別件の取調が明らかに本件の捜査のためである場合には、別件逮捕勾留の理由及び必要性が無いと判断される。要件を欠くので、違法となる。(取り調べ等の態様等から、別件の逮捕・勾留の要件を審査する説)
考慮要素は、①別件と本件の関係、②別件の重要度、③別件の取調べ時間と本件の取調べ時間との対比、④本件についての逮捕勾留の有無及びその時期(捜査進度)
ウ. 違法な別件逮捕を利用した取り調べも違法である。
エ. 逮捕・勾留の理由必要性はあるので、(又は、当初からBについて取り調べ目的があったわけではないので、)逮捕・勾留は適法である。しかし、Aで逮捕・勾留され取り調べられていた被疑者を、途中からBについて取り調べている。
そこで、余罪取調べの可否・限界が問題となる。(別件基準説に立てば、余罪取調べそれ自体の適否を論じる実益がある。)
(ア)前提として198条1項ただし書の反対解釈から、逮捕・勾留されている被疑者に取調受忍義務があると考える。
ただ、身体拘束下で自由に取調べができるとするのは妥当でない。その趣旨たる令状主義が共に妥当し、身体拘束の不必要な延長を防止する必要があることから、事件単位の原則が、取り調べにも適用されると解する。したがって、原則として余罪取調べは許されない。
(イ)余罪取調べが許されない理由は、身体拘束の不必要な延長をもたらすことにある。そこで、これをもたらさない場合、つまり、①その取り調べが本罪の取り調べとして意味を持つ場合(密接に関連する場合)、②取調受忍義務のないことを告知する、被疑者が希望するなど任意取り調べ(197条1項本文)の場合、③優越的利益が著しく大きいとき(ここの例外は争いある。要確認。 同種余罪のときは、身体拘束期間がむしろ短くなるので、相当であるといいやすいだろう。)には許される。
参考:取調受忍義務はあくまで出頭・滞留義務である。この義務を伴う限りで身体拘束中の被疑者取調べは強制処分である。
密接付随事項=量刑含めて広い。関連性、事件背景を示すものなど。
(6)一罪 前提として保釈は勾留の条件付停止であり、勾留は観念的に維持されている。とすれば…でさらに逮捕・勾留することは、一罪一逮捕・一勾留に反しないかが問題となる。(一罪の一部起訴が問題となるとき、起訴後勾留のときもこの論点。古江5、2L後期期末)
ア. 不当な逮捕・勾留の蒸し返しを無条件に認めれば、法が厳格に認めた身体拘束期間の制限の趣旨が没却され、被疑者の人権を侵害することになる。そこで、明文にはないが、罪数を基準とした同一の犯罪事実について、同時に複数の逮捕・勾留をすることはできない(一罪一逮捕・一勾留の原則)。
イ. では「一罪」の判断基準をいかに解すべきか。
実体法上一罪の関係にある事実は、一般的に密接な関連性があり、行うべき捜査が共通しているので、捜査を行うための身体拘束も一回で足りるところ、複数の身体拘束を認めることは身体拘束の不当な蒸し返し・長期化につながる。
そこで「一罪」とは実体法上一罪であると解する。
ウ. しかし、別の犯罪が明らかになっても、「一罪」に当たる限り一切逮捕・勾留できないとするのでは、真実発見の要請に反する。
そもそも、一罪一逮捕・一勾留の趣旨が実質的に同じ捜査の不当な蒸し返し防止にある以上、一括処理が不可能であったなどの事情があり、不当な蒸し返しといえなければ、「一罪」に該当しても例外的に許されると解する。
(7)再 ア 不当な逮捕・勾留の蒸し返しを無条件に認めれば、法が厳格に認めた身体拘束期間の制限の趣旨が没却され、被疑者の人権を侵害することになる。そこで、明文にはないが、同一の事実について、時を異にして逮捕・勾留を繰り返すことはできない(再逮捕・再勾留の禁止)。
イ 同一の事実とは、被疑事実だけでなく、実体法上一罪の関係にある事実を含む。(例:牽連犯も含む。事件単位説とは異なる。)なぜなら、一罪一逮捕一勾留で許されないところ、時間をずらしさえすれば単位事実ごとに逮捕勾留を繰り返せることは不当だからである。
ウ もっとも、法は再逮捕を予定する規定を置いている(199条3項)。また、有力な新証拠がでてきたなど、不当な蒸し返しとはいえない場合には、上述の趣旨に反しない。そして、逮捕と勾留とは相互に密接不可分の関係にあり、再度の勾留についても認められうる。そこで、①新たに逮捕・勾留する必要性があり、②被逮捕者の権利を著しく害しない場合には、例外的に再逮捕・再勾留も許されると解する。
考慮要素:①の例として新証拠の発見、②を否定する例として先の逮捕・勾留の期間が最長の23日までなされていたこと。逆に勾留請求すらしていなければ、再逮捕しやすい。

4物的証拠
(1)令状による捜索・差押え
(発付の)要件=「正当な理由」は、①捜索・差押えの理由(犯罪の嫌疑(219条1項、規則156条1項参照)、証拠等の存在の蓋然性(証拠物又は没収すべき物と思料するもの 222条1項、99条1項))、②対象の特定性(場所的範囲 押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合 古江7)、③必要性(218条1項 相当性含む)である。
現実の捜索差押えの適法性について論文の問題になりうること。 1捜索すべき場所の管理権内か(場所的範囲、及び主体について管理権の範囲内かどうかが問題となる)。 2-1捜索なら令状記載の「差し押さえるべき物」(関連性+記載された物)の存在の蓋然性 2-2差押えなら、対象物が、関連性+令状に記載された物であることを検討する。 3必要性(相当性含む 99条1項、218条1項)。例:取材の自由、生活に利用する必要性 4「必要な処分」の判断。
ア 捜索の範囲
(ア)単一の管理権の範囲内かどうかにより判断する。判例によれば、居室と一体の場所をなす付属の場所(例:10m離れたプレハブの中)も単一の管理権の範囲内とされている。
(イ)場所に対する捜索差押令状によってその場に居合わせた者の身体を捜索できるか。(例:被疑者甲のポケットが膨らんでいるとき、内妻Aの懐に物がありそうな場合)
法が捜索対象として身体と場所を区別しており(222条1項、102条)、身体のほうがより被疑者の直接の管理下にあり要保護性が高い。そこで、場所に対する令状によって人の身体を捜索することは許されず、原則として別個の令状が必要であると解する。
もっとも、捜索・差押えが妨害されたときにこれを阻止できなければ、その実効性を確保できない。そこで、①その者が自己の身体に捜索目的物を隠匿したと疑うに足りる合理的理由がある場合、②捜索の実効性確保のために相当な行為も、「必要な処分」(222条1項、111条1項 条文必ず挙げる)として許されると解する。
(ウ)住居を捜索対象とする捜索令状によって人の携帯物に対する捜索をすることはできるか。(例:ボストンバッグ)この点、住居に対する捜索令状は住居権を制約している。そして、住居に存在する物を自由に使用し生活を営むことも住居権の内容である。よって、住居権に対する制約は、住居にある住居権者の物に対しても当然に及んでいるといえる〔21〕。したがって、住居権者又はそれに準ずる者の携帯物については、捜索することができる。
手に持っているか否かで結論を変えるのは妥当でないので、手に持っていても場所の概念に包括されて捜索対象となる。
(エ)管理権の例外:明らかに第三者の管理下にある誰の者か分からない物、その場所で管理されていることが通常予定されていない物については、捜索の対象外である。対象者の引き出しと判断される客観的事情があれば当然に含まれる(H21新司)。鍵の有無など事件ごとに相対的に決まる。令状発付の段階で被疑事実との関連性のある証拠物が存在する蓋然性のある場所か否かを判断する。
 例:施錠されており、自分の物ではないと供述し、鍵等所有関係を示す証拠がないときは、管理権は及ばない。
H24司:乙宛の荷物が、令状の対象たるT株式会社の管理権に含まれるか。(管理権→蓋然性 という処理手順)H24採点実感「証拠物が存在する蓋然性さえあれば、T株式会社の管理権の範囲を超えて捜索できる」という「誤った理解」をしないように。
イ. 捜索差押令状を発付した裁判官の審査の時間軸は、どこまで及んでいるのか。
物がいつ捜索場所に存在するかは偶然の事情にすぎず、捜索開始前後で判断を区別するのは妥当でない。また、裁判官は捜索すべき場所とそこにある物を、同じ住居権の支配下にあるととらえ、一体として考えている。そこで、裁判官は令状執行の終了時点までに捜索場所にある物の蓋然性を審査するといえる。したがって、捜索中に捜索場所に搬入された物にも令状の効力は及ぶ。〔22 有効期間の問題であることを意識する。 H24司〕
ウ. 特定 (ア)(H24予 ここは①②あれば適法な点は争いがないので、「その他一切の物件」となっており、①又は②がない場合のみ。) 捜索差押令状には、「差し押さえるべき物」を特定して記載しなければならない(219条1項)。そこで、本問の記載がこの特定の要件を満たすかが問題となる。
219条1項が特定を要求したのは、範囲を明確にすることで捜査官の恣意を抑制し、被疑者らの防御権の範囲を明確化し、裁判官が「正当な理由」を審査するための担保を要求することにある。そうすると、原則として、対象ごとに個別的・具体的に特定される必要がある。もっとも、捜索・差押えは捜査の初期の段階で行われるため、差し押さえるべき物の具体的内容が判明していないことが多く、あまりに厳格な特定を要求すると捜査機関に困難を強い、かえって取調べ中心の捜査を助長することにもなりかねない。そこで、概括的記載でも、①具体的・類型的表示に付加されたものであり、かつ、②被疑事実との関連性を要件とし、範囲が限定されていれば、特定の要件を満たすと考える。
(イ)落としやすい視点:裁判官の審査の対象となっているか否か。例:概括的記載→その範囲(場所・物・人)全部について証拠品が存在する蓋然性があれば許される。たまたまそこにいる関係ない人がいる可能性がある場合は許されない。(古江7)例:被疑者の荷物が「到達した場所」という記載はどうか?(覚せい剤入りのバッグを泳がせる場合)→その場所が客観的に判断しうるなら許される。→伝票を見れば場所は分かる。よって、捜査官の恣意を抑制し、被疑者等の防御権の範囲を明確にし、証拠物の存在蓋然性を判別することもできる。
エ 物 (ア)令状記載の差し押さえるべき物の当否は、①関連性と、②記載の物であることを当てはめる。
捜索場所は「差し押さえるべき物」の存在する蓋然性のある場所でなければならない(H24司)。
(イ)令状によって差し押さえることができる物は、令状中に表示されている特定の被疑事実と関連性を有する物に限られる。
例:暴力団の恐喝事件で賭博場のメモは被疑者と暴力団との関係を知り得るばかりでなく、O組の組織内容と暴力団的性格を知ることができるので、被疑事実との関連性を有するといえる〔24〕。
オ 行為 (ア)捜索差押えの際の本件…行為は「必要な処分」(222条1項、111条1項)として許されるか。
111条1項の趣旨は、法が捜索差押行為そのものを許可した以上、その目的を達成するために必要な付随的行為も、あわせて包括的に許可することにある。そこで、①捜索・差押えの目的実現に必要で、②相当な限度の行為は「必要な処分」として許されると解する。(この規範は他でも使える。想起できるように。)
(イ)令状執行後に令状を提示していることが222条1項、110条に反しないか。
222条1項、110条による捜索差押令状の呈示の趣旨は、処分を受ける者に防御権の範囲を明確にし、手続の公正を担保するという点にある。とすれば、令状は原則として事前に提示されなければならない。もっとも、常に事前提示を要求すると、捜索差押の実効性を確保できない場合がある。そこで、①令状を提示せず執行する必要性が認められ、②その後令状を速やかに呈示した場合、令状執行後に令状提示前に許されると解する。(ここでの①は、上の111条1項の①と重なる。)
例:覚せい剤はトイレに流すなど容易かつ瞬時に証拠隠滅できてしまうので①を充足する。②令状提示の時期に加え、なぜ遅れたのか、という理由や相当性も当てはめる。
(ウ)警察官が退出しようとした乙を制止しているが、かかる行為は222条1項の準用する112条1項の「出入りすることを禁止する」行為であり、適法である。被疑者と弁護人に立会権はない(222条6項)。その他116条ないし124条を参照
押収物の必要な処分は111条2項である(H22新司)。
(2)電子 ア 関連性(相当性の論点とは別。)
捜査官が差し押さえることができるものは、被疑事実と関連性があるものに限られる。したがって、原則として捜索現場で関連性を判断し、これを肯定できる場合に差し押さえることができる。
ところが、電子的記録物は、可視性可読性がなく、大量の情報を記録でき、捜索現場で関連性を判断するのは必ずしも容易でない。また、情報の消去・加工も容易であるから、それが必ずしも適当ではない。(USB等)
そこで、①電子的記録物に被疑事実に関連する情報が記録されている蓋然性があり、②その場で確認せずに差し押さえる必要性がある場合には(例:情報が多すぎる(無関連情報を含む記録媒体)、情報損壊のおそれがある)、内容を確認せず差し押さえることができると解する。
イ 110条の2、111条の2が新設され、複写・印刷・移転が可能になった。したがって、付随処分の論点は条文解釈にすぎなくなった。事業者に対し、通信履歴の保全を要請することができる(197条3項・4項)。
(3)逮捕に伴う無令状の捜索差押え
捜査機関が捜索差押えをするには、原則として令状が必要である(憲法35条1項、刑訴法218条1項)。しかし本問では令状が発付されていない。そこで、逮捕に基づく無令状捜索・差押え(220条1項2号)として、本件捜索・差押えが許されないか。
ア. 捜索・差押えは令状によるのが原則であり(憲法35条1項、刑訴法218条1項)、逮捕に伴う無令状の捜索・差押え(220条)は、例外にすぎず、その許される範囲は令状が待てない場合に限定すべきである。したがって、220条1項2号の趣旨は、逮捕者の身体の安全、及び逃亡・罪証隠滅の防止を図る緊急性にあると解する。
そこで、「逮捕する場合」とは、逮捕に着手したといえる状況が必要であり、「逮捕の現場」とは、被疑者の身体及びその手の届く範囲を意味すると解する。物的範囲は凶器と被疑事実に関連する証拠に限られる。(時間的範囲、場所的範囲、物的範囲の)
イ. 逮捕の現場
(ア)逮捕した被疑者を移動させた場合、移動した場所は「逮捕の現場」ではないから、原則として捜索することはできない。
ただ、逮捕した場所で被疑者の身体・所持品の捜索を実施すれば、被疑者の名誉・プライバシーを不当に侵害し、交通の妨げとなるなどの弊害が生じ得る。このような場合には、実施に適する場所まで連行して実施する必要がある。
(この点、移動した場所を「逮捕の現場」に含める見解がある。ところが、逮捕した場所から離れた場所を「逮捕の現場」というのは文言上無理があるし、捜索できる範囲が不明確になり、適当でない。)
そもそも、「逮捕の現場」で無令状の捜索差押えが許される趣旨は、逮捕者の身体の安全、及び逃亡・罪証隠滅の防止にあるところ、この趣旨はその場所に直接結び付くものではなく、移動後の場所においても同様に認められる。
そこで、①逮捕した場所で直ちに捜索を実施することが適当でないときには、②速やかに被疑者を捜索・差押えに適した最寄りの場所まで連行した上で実施することも、「逮捕の現場」における捜索と同視して許容されると解する。(H25司)
(ウ)逃げた事例:上と同じでもいい。
逃走した場所を「逮捕の現場」というのは文言上無理があるし、捜索できる範囲が不明確になり、適当でない。
そもそも逮捕において付随処分が許されなければ、その実効性を確保できないことから、裁判長は捜索差押令状発布に際し逮捕の付随処分も含め審査を許容したものと解される。そこで、①逮捕の実効性確保に必要な処分は、②相当と認められる方法である限り、逮捕行為の付随処分として許されると解する。
(エ)逮捕する場所を捜査官が恣意的に選択した場合:「逮捕の現場」に当たるか。
上述の(イ)の判断でいくのか。(ただ、こっちは逮捕する前に移動している。)逮捕権の濫用であり、「逮捕の現場」に当たらないとするべきである。したがって、違法である。
ウ 物的範囲 例:注射器は凶器である。本問の…は凶器でもなく、被疑事実に関連する物件とはいえない。したがって…の逮捕に伴う捜索差押えとして差押えすることはできない。
もっとも、…は禁制品であるから、①現行犯として逮捕して、逮捕に伴う差押えとして押収できる(220条)。また、②任意提出を求めて領置することができる(221条)。(それでも無理なら、③新たな令状を得てこれに基づき捜索・差押えを行うことになるが、それまで現場の出入りを禁止することができる(222条、112条1項)。)
〔28〕被告人とK子との関係や本件の状況から、220条1項、222条1項・102条2項(第三者の管理権下にあるとき)の要件を満たす。よって、適法に捜索することができたはずである。(逮捕場所を恣意的に選択した判例か?)
逮捕事実と対象物との関連性は必要である。例:覚せい剤所持罪→入手経路を探るべく携帯電話や日記は関連性○
エ 逮捕に伴う被疑者の捜索(220条1項1号)の要件は、①逮捕する場合、②必要があるときである。逮捕に着手したのに被害者が逃げてしまった場合には、このはなしにつなげるべし。
オ 220条1項2号は、捜索差押えの実施場所を「逮捕の現場」とし、222条1項は差押えの対象につき99条を、捜索の対象につき102条(「場所」「物」「人の身体」)を準用しているので、①「逮捕の現場」に居合わせた者の身体の捜索をすることができる。(積極説 古江10 この論点は無令状の論点。身体を捜索する場合の論点。ペー4)ただし、②「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合」(222条1項、102条2項)である必要がある。
考え方:令状とって改めて捜索できるから。第三者の管理権下であるから、相当説か緊急処分説かはあまり関係ない。
カ 独立の項目:遺留物、任意提出物を領置することができる(221条)。占有の取得については強制を伴わない任意処分であり、比例原則の判断をする。ごみの領置は、遺留物であることを認定し、捨てた人のプライバシー(期待)、管理権者の管理権の侵害の程度を検討する(H22新司)。
(4)検証 ア 検証とは、一定の場所、物、人の身体を五感によって認識する強制処分である。認識は機械等を用いる場合も含まれ、カメラで強制的に写真撮影することは検証としての性質を有する。検証の際の「必要な処分」は準用規定と例が異なるので注意する(222条1項・129条)。
ア. …の写真撮影は、対象を五官の作用によって認識する強制処分であるから、検証に当たる。したがって、原則として検証令状(218条1項)が必要である。(必ず法的性質と原則論)
もっとも、捜索・差押えの際には、差押えできない証拠の証拠価値を保全する必要性が生じうる。また、捜索差押令状は被疑者の住居権・被疑事実に関する財産権に対する制約を予定し、令状記載の被疑事実に関する証拠の写真撮影は、既存の権利制約の範囲内である。そこで、①証拠保全の必要性があり、①´令状で差し押さえるべき物件を撮影することは、「必要な処分」(222条1項、111条1項)に当たり、例外的に検証令状がなくともできる。②また、捜索手続の適法性を担保する必要性がある場合にも、令状は不要である(単独の要件、令状記載の物でなくてもいい。H21新司)。
イ. これに対し、①´令状に記載のない物権については、令状による権利制約が予定されているとはいえず、別個独立の処分である。したがって、②を満たさない限り、検証令状が必要である。
捜索 注:身体の強制について 102条 218条1項前段
検証 129条(直接強制可能 139条) 218条1項後段(直接強制可能 222条1項・139条)
鑑定 168条 裁判官による直接強制を請求できる(172条) 225条1項・168条1項(直接強制不可)
ウ. 逮捕の現場では令状なしに行うことができる(220条1項2号、3項)。検証の一種としての身体検査も同様である(222条1項は220条についても129条などを準用する。)身体拘束中の被疑者の指紋採取等、押収物の検証も令状が不要である(218条3項)。鑑定留置の間、勾留は執行停止とされ(224条、167条の2)、勾留の規定が準用される(224条2項、167条4項)。
(5)強制採尿 ア. 強制採尿は身体に対する危険を伴うし、対象者に著しい屈辱感を与える。しかし、密行性の高い覚せい剤自己使用罪の立証において尿鑑定が決定的役割を果たす。また、身体への危険性は医師等が相当な方法でなす限り小さいし、屈辱感は対象者を裸にする検証としての身体検査(222条1項、131条)の場合にも、同程度のことはあり得る。
そこで、①被疑事実の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性から取得の必要性があり、②適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、捜査上真にやむを得ないときに限り、③適切な法律上の手続を経たうえで許されると解する。
イ. いかなる令状によるべきか。体内の尿は老廃物であって、「物」といえるから、捜索差押令状(218条1項前段)によるべきである。ただし、手段の相当性を確保するために医師によって適切な手段で行われるべき旨の条件の記載が不可欠と解する(条件付捜索差押令状 218条6項)。
ウ. 被疑者が採尿場所への任意同行に応じない場合、採尿場所まで強制連行できるか。
強制連行できないとすると、強制採尿の目的を達することができない。また、裁判官は目的を達成するために必要な付随手段の当否も含めて審査し、令状発付を行ったといえる。そこで、強制採尿令状自体の効力として、①採尿に適する最寄りの場所まで強制連行でき、その際、②必要最小限度の実力行使も許されると解する。(実力行使の当てはめも)
エ. 強制採尿のための留め置き
まず強制処分の判断→任意処分とする。次に純粋に任意捜査として行われている段階と、強制採尿令状の執行に向けて行われた段階とを区別して論じる。(規範は任意捜査の規範だが、当てはめは別々に書く。)令状の要件が備わってから執行するまでは、警察官の書類作成、裁判官の審査、医師への連絡があり、時間がかかるため、準備のために対象者の所在確保の必要性は高い。そこで、後者の段階では、(あくまで任意捜査だが)半強制的でもやむを得ない(東京高判平21・7・1 同22・11・8)。
(6)強制採血 ア. まず、強制採血という手法をとること自体は許される。採血はアルコール検査に有用であるし、注射針による身体の障害は軽微、かつ、血液の採取量がわずかで足りるからである。
イ. 強制採血は身体への傷害を伴うから、強制処分(197条1項ただし書)に当たり、令状主義に服する。ではいかなる令状によるべきか。血液の検査は医師等が専門的技術的方法を用いることになるので、鑑定処分許可状によるべきである。もっとも、225条は172条を準用しておらず、225条4項が準用する168条6項は139条を準用していないので、鑑定処分許可状では直接強制できない。(ニニコ イナニ、ニニコシ、イロハロ、イソグ)そこで、身体検査令状(218条1項後段)を併用する。
ウ. 強制採血は鑑定としての性質を有しており、鑑定については逮捕に伴う無令状による場合を記載していない(220条1項2号参照)。したがって、逮捕に伴う無令状採血はできない。
(7)おとり捜査
ア. 捜査機関たる司法警察職員甲がその身分や目的を秘して、乙に覚せい剤所持罪等の犯罪を実行するように働きかけており、犯行に出たところを現行犯逮捕しているので、おとり捜査に当たる。
イ. かかるおとり捜査が強制処分に当たるか。捜査が強制処分(197条1項ただし書)に当たれば、令状主義が妥当し、令状なくされた捜査は違法となることから問題となる。
プライバシー(憲法13条)侵害のように有形力の行使を伴わない人権侵害もあるので、強制処分とは、相手方の明示又は黙示の意思に反して重要な権利・利益の制約を伴う処分をいうと解する。
本問では、あくまで乙が自分の意思で行動している以上、その意思に反するとはいえず、任意捜査である。
ウ. もっとも、被害者のいる犯罪は未然に防止すべきである。また、おとり捜査は、国家が詐術的な手段を用いるのであるから、できれば避けるべきである。さらに、国家が犯意を誘発するのは司法の廉潔性に反し許されないと考える。
そこで、おとり捜査は、少なくとも、①直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、②通常の捜査方法のみでは犯罪の摘発が困難である場合に、③機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象にするときに許容される。
本問では「乙は警戒し、幾度となく断った」にもかかわらず、甲が「執拗な働きかけ」をしており、結果として乙が応じている。このように乙は当初は甲に売るつもりはなかったのであるから、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象としたとはいえない(③不充足)。
エ. 参考:写真撮影、ビデオ撮影、当事者録音、同意傍受、おとり捜査は、I1強制処分か否か、I2比例原則判断、という大きな枠組みを守り、これさえ外さなければ大丈夫である。

5 供述証拠
(1)捜査機関は、捜査をするうえで必要があるときは、被疑者の出頭を求め、取り調べることができる(197条1項本文、198条)。取調べに際して、捜査機関は被疑者に対し黙秘権の告知をしなければならない(198条2項)。
黙秘権の告知までは憲法上の要請ではなく、黙秘権を告知しないで供述調書を得た場合でも、直ちに自白は排除されるわけではないが、供述の任意性の不存在が推定される(→自白法則)。
(2)取調べの適法性 実質的逮捕=強制→社会通念上相当と認められる方法・態様。の二段構造を示す(H26司)
ア. 勾留請求が認められるには、逮捕が先行していることが必要である(逮捕前置主義 207条1項本文)。
そして、勾留の前提となる逮捕は適法でなければならない。なぜなら、現行法は逮捕の準抗告を認めておらず(429条1項2号参照)、勾留裁判が逮捕の違法性を審査する役割を果たすからである。
これを本問について見るに、…であるから、適法な逮捕手続がなされているように思える。
イ. しかし、通常逮捕に先行する一連の手続きは、実質的逮捕に当たらないか。もし実質的逮捕に当たれば、令状主義(憲法33条)反する違法な逮捕となるため問題となる。
この点、任意同行と実質的逮捕の違いは、対象者の自由意思の有無にある。そこで、①同行時の状況、②同行の態様、③同行後の取調べ状況という要素を検討して、被疑者に自由意思がなければ、実質的逮捕に当たると考える。
本問は、…であるから、実質的逮捕に当たる。
ウ. もっとも、軽微な違法があるにすぎない場合に常に勾留請求を許さないとするのでは、身体保全の必要性が図れない。
そもそも、実質的逮捕が違法とされる理由は、令状主義に反する点にある。そして、無令状で逮捕して適法に勾留請求できた場合には、令状主義潜脱の意思がなく、勾留請求を却下するほどの重大な違法とはいえないといえる。
そこで、①実質的逮捕の時点で緊急逮捕の要件があり、②勾留請求が実質的逮捕からみて制限時間内であれば、勾留請求も認められると解する。
エ. 本問では、実質的逮捕のあった5月1日午後10時頃から48時間以内に検察官に送致され(203条1項)、検察官の勾留請求がなされたのは5月3日の午後5時であり(205条1項、同2項)、制限時間内である(②充足)。
しかし、甲がマンションという住居を有しており、警察官らが甲の住居まで赴いたことに照らせば、緊急逮捕するほど「急速を要し」ていた(210条1項)とはいえない(①不充足)。
したがって、本件逮捕には、勾留請求を却下すべき重大な違法があったといえる。
オ. 以上より、本件の勾留請求は認められない。
(3)取調受忍義務
ア. 198条1項ただし書の反対解釈によれば、逮捕勾留されている被疑者に取調べ受忍義務がある。被疑者は取調べを受忍すればよいのみであり、供述拒否権を告知したうえで行われる取調ならば、被疑者の黙秘権を侵害しないので、肯定してよいと解する。
イ. 令状主義の趣旨は取調べにも妥当するので、事件単位の原則は、取り調べにも適用される。したがって、拘束被疑者に対する、強制の余罪取調べは原則としてできない。もっとも、取調受忍義務のないことを告知したうえで、それでも被疑者が任意に取調べに応じた場合であれば、受忍義務ない被疑事実でも任意処分として取調べを認めてもよい。
(4)取調べを求めた第三者が協力的でない場合、法226条の証人尋問を請求することで、321条1項1号の書面を作成することができる。226条の要件は、①被疑事実の存在、②犯罪捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者(けっこう広い)、③取調に対し出頭、供述を拒んだことである。③には、署名押印を拒んだ場合も含まれる。

6被疑者の防御権
(1)弁護人の役割 ア 法は訴訟追行においては当事者主義を基調としており(256条6項、298条1項等)、訴追者たる検察官と被告人は対等な当事者として扱われる。しかし、検察官と被告人では法律知識、資料収集の能力等で大きな差がある。そこで、被告人に弁護人依頼権が保障され(憲法34条前段、37条3項前段、刑訴法30条)、弁護人は被告人の単なる訴訟代理人ではなく、保護者としての役割をも果たすべきと解される。
イ まず、捜査段階では身体を拘束されている被疑者との接見交通権が認められる(憲法34条前段、刑訴法39条1項)。
また、勾留について理由開示請求(憲法34条後段、刑訴法207条1項、82条以下)及び取消請求(207条1項本文、87条)、準抗告(429条1項2号)により身体の解放を求めていくことになる。
ウ 勾留の場面で行う弁護人の役割 ①勾留状の開示請求(規則79条、法207条、規則31条)②準抗告(429条1項2号、430条)③弁護人以外の者との接見等禁止(法81条)の一部解除の申立て④勾留場所の変更の申立て⑤勾留理由開示請求(法207条1項、82条)⑥勾留取消請求(法207条1項、87条)⑦保釈(法88条~98条)⑧勾留執行停止(法207条1項、95条)(かい じ いち ば り とり ほ し)
(2)接見交通権
ア 弁護人以外の者との接見交通は接見禁止がされ得る(207条1項、81条)。弁護人は秘密交通権(39条1項)。
争う方法は準抗告である(430条)。
イ 弁護人BはAと接見する権利を有するが(39条1項)、警部補である甲は接見の指定をしている(39条3項本文)。
そこで、かかる接見指定が適法か。「捜査のために必要があるとき」(39条3項本文)の意義が問題となる。
憲法34条前段の弁護人依頼権の趣旨は、被疑者の有効な防御活動を実現し、権利利益を守るために、援助者たる弁護人の選任権を保障したことにある。そこで、同条は、弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障していると解する。刑訴法39条1項はかかる憲法の保障に由来する。とすれば、接見指定できる場合は厳格に解するべきである。
ただし、身体拘束されている場合は、憲法の内在的制約として捜査権の行使が許される。つまり、被疑者の身体拘束期間が限定されており、捜査機関側と弁護人側で身体利用が競合するおそれがあるので、その時間を調整する必要がある。接見指定はこの調整を図る趣旨の規定であり、「捜査のために必要があるとき」とは、①捜査に顕著な支障が生じる場合をいうと解する。具体的には、現に被疑者を取調べ中であるか、実況見分・検証に立ち会わせているか、又は間近い時に取調べ等をする確実な予定がある場合等である。(ここの具体例まで規範 準限定説)
A:例は原則であり、例外の判断も必要である(リー181、古江12、〔36〕)。
ウ (ア)②接見指定の要件を満たす場合、捜査機関は弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならない(39条3項ただし書)。例:時間が遅すぎると指定義務違反。
(イ)特に逮捕直後の初回の接見は、弁護人の選任を目的とし、その援助を受ける最初の機会であって、憲法上の保障の出発点をなすものであるから、被告人の防御に特に重要である。
そこで、②´即時又は近接した時点での接見を認めても、接見指定をすれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能なときは、引致直後の所要の手続きを終えた後に、たとえ比較的短時間であっても接見を認めるべきである。これに反した場合には「被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限する」ものであるといえる。
考慮要素:申出がなされた接見の重要性、それを認めた場合に生ずる捜査への支障
弁護人の選任を目的としない場合、逮捕直後でもない場合、初回でなくても新たな状況で、判例の射程が及ぶ旨(古江12)。なぜなら、精神的、法的援助を受ける最初の重要な機会であることに変わりはないから。
エ ②-2 一般式指定等の場合、指定の方式は合理的裁量に委ねられる。また、手続上接見指定のために弁護人を待機させることも許される。①-2 秘密交通権がない状況でも接見(面会交通)するかどうかに配慮する義務も負う。③身体不拘束の被疑者に弁護士が接見の申出した場合、捜査機関は伝達する義務を負う〔38〕。
オ 予めの司法審査により捜査官の恣意的権限濫用を防止するという令状主義の趣旨から、逮捕・勾留などは、令状に記載されている被疑事実についてのみ及ぶ。接見交通の指定は身体拘束中の身体利用の時間調整のための規定であって、身体拘束に関する効力であるので、やはり令状主義の趣旨が妥当する。したがって、接見指定は身体拘束の理由となっている被疑事実を理由としてのみ許され、それ以外を理由としては許されない。
カ 被疑者勾留されているときには接見指定される場合があるが、被告人の接見交通を制限することはできない(「公訴の提起前に限り」 39条3項)。被告人が余罪で逮捕・勾留されている場合、両者の地位が併存するため、接見指定の可否が問題となる。
憲法の保障に由来する接見交通権の重要性に鑑みれば、余罪の接見指定は限定されるべきである。しかし、被疑者の身体拘束期間が限定されており、身体利用が競合するおそれがあるので、その時間を調整するという接見指定の趣旨は、余罪で身体拘束されている場合にも妥当する。そこで、①の要件に加え、被告事件について防御権の不当な制限にわたらない限り、接見指定権を行使し得ると解する。

Ⅲ公訴・公判
1総則・その他
(1)起訴の統制 ア. 248条は起訴便宜主義を定め、不当な起訴処分について特に明文の規定はない。
しかし、248条はあくまで検察官に公訴提起の裁量を認めているにすぎず、裁量を逸脱・濫用した起訴は許されない。
そこで、裁量の範囲を判断し、これを逸脱・濫用した起訴は、被告人を救済すべく手続を打ち切る、具体的には338条4号に基づき公訴棄却すべきであると解する。
イ. 訴追裁量権の逸脱の場合に公訴棄却されるのは、公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られる。
ウ. 嫌疑なき公訴にこれを適用して公訴棄却(338条4号)するべきか。嫌疑の存在を訴訟条件とすると、捜査から公判へと嫌疑を引き継ぐことになり、予断排除の原則(256条6項)に反する。また、嫌疑なき場合には、無罪判決をすれば良く、一時不再理効が生ずる点で被告人にも有利である。よって、嫌疑の存在は訴訟条件では無い。公訴棄却できない。
エ. 違法捜査に基づく起訴に公訴権濫用論を適用して公訴棄却することはできない。捜査の違法性が直ちに公訴棄却に結び付くとしたのでは、実体的真実発見(1条)の要請の見地から妥当でないし、被告人の保護は違法収集証拠排除などの手段でも図り得るからである。
(2)一罪の一部起訴が適法か。
当事者主義(247条、298条1項など)を原則とする現行法制化では、訴因の設定・変更は検察官の専権とされている(256条3項、312条1項)。とすれば、いかなる事実を訴因として構成するかは、検察官の訴追裁量にゆだねられていると解される。したがって、一罪の一部起訴も原則として適法である。
もっとも、あくまで裁量として許されているのであるから、真実発見及び人権保障の要請(1条)による制約に服する。そこで、①真実発見の要請に著しく反する場合、又は、②人権保障を図るための法の趣旨を没却する場合には、訴追裁量の逸脱であり、不適法とされる。
(3)同一事件の甲に対する起訴によって、乙の公訴時効が停止するか。時効停止の範囲が問題となる。
ア. 公訴時効が停止する(254条1項)根拠は、特定の罪となるべき事実に関する検察官の訴追意思が表明されることにある。そして、検察官は「公訴事実の同一性」の範囲内で訴因変更できる以上、その範囲内で訴追可能性が認められる。そこで、時効停止の効力は「公訴事実の同一性」の範囲内に及ぶと解する。そして、「公訴事実の同一性」とは…
また、共犯者の1人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯者に対してその効力を有する(254条2項)。
イ. 公訴の効力は、検察官の訴因に記載した被告人にのみ及ぶ(249条)ことから、起訴状記載以外の者については前訴で処罰される可能性がない以上、公訴事実の同一性は否定される。また、甲と乙に共犯関係はない。
そこで、甲に対する人違い起訴によっては、乙の公訴時効は停止しないと解する。
ウ. 起訴状謄本が法定期間内に送達されなかった場合にも、公訴時効が停止するか。起訴状謄本が法定期間内に送達されなければ、公訴の提起は遡及的に効力を失うことから(271条2項)、公訴時効の停止も生じないとする見解がある。しかし、公訴時効が停止する(254条1項)根拠は、特定の罪となるべき事実に関する検察官の訴追意思が表明されることにある。たとえ起訴状謄本が法定期間内に送達されなかったとしても、起訴がなされている以上、検察官の訴追意思は表明されたといえる。したがって、公訴時効は停止する。
エ. 不適法な公訴提起や訴因変更請求であっても、特定の事実に関する訴追意思を表明したものと認められるので、時効は停止する。
(5)告訴の追完 ア. 親告罪で起訴されたが後に告訴が得られた場合、裁判所は不適法として公訴棄却判決(338条4号)をする。起訴時に告訴がない以上は不適法であり、告訴なき起訴の瑕疵は重大であるから、告訴の追完は認めない。
イ. 非親告罪で起訴された時に告訴がなかったが、後に得られ、裁判所が親告罪の心証を抱いた場合、いかなる処理をすべきか。
起訴は非親告罪でなされた以上、適法であって、親告罪へ訴因変更がされた時点又は親告罪が追加された時点で告訴がされていれば足りる。本問では、親告罪へ訴因変更がなされる前に告訴がされている。したがって、親告罪で有罪認定できる。
(6)公判の順番 ①人定質問(規則196条) ②起訴状朗読(法291条1項) ③被告人に対する黙秘権等の告知(法291条3項前段 規則197条) ④被告人・弁護人の意見陳述(罪状認否 法291条3項後段) (次期モイ 条文を引けるように)
(7)証拠調べの必要性・相当性が欠ける場合、又は、証拠調べが許容されない場合には、証拠請求を却下することができる。
交互尋問の規制は規則199条参照。
検察官、被告人又は弁護人は、証拠調べに関して異議を申し立てることができる(309条1項)。対象に制限はなく、法令違反、相当性(裁判所の決定に対する場合を除く)を理由とし得る(規則205条1項)。異議の申立ては個々の行為、処分、又は決定ごとに、簡潔にその理由を示して直ちにしなければならない(規則205条の2)。

2起訴状
(1)起訴状には、被告人に関する事項、公訴事実、罪名・罰条を記載する(256条2項)。
実質的被告人の特定については、起訴状の表示を、検察官の訴追意思や被告人とされている者の挙動から合理的に解釈することによって、被告人を判断すべきと解する。
(2)このような記載でも許されるか。公訴事実の特定を要求する256条3項に反しないかが問題となる。
256条3項が公訴事実の明示・特定を要求した趣旨は、審判対象を具体的に提示することで裁判所がこれを他の事実から識別・特定し、「罪となるべき事実」に当たること、すなわち構成要件該当性の有無を判別する点にある(審判対象の画定)。そこで、①他の犯罪事実から識別可能な程度に特定され、②構成要件該当性の有無を判断するのに必要な事実については必ず記載しなければならない。
そして審判対象の画定の表裏一体の機能として被告人の防御機能も果たすところ、かかる観点から、③日時・場所・方法など①②の周辺的事項についても「できる限り」(256条3項)特定する必要がある。
(3)ア. 本問は「共謀の上」と記載されている。
この点、実行行為が記載されており、どの犯罪についての共謀か識別できるので①は満たす。共謀の事実は②構成要件該当事実であるが、記載されている。共謀の日時・場所は③周辺的事項にすぎないところ、共謀は密行性がある以上、具体的な日時・場所の特定まではできない。本問では検察官が釈明により「6/1又は6/2」「甲宅において」と明らかにしているので、「できる限り」特定されており許されると考える。
イ. 尿鑑定が示すことは覚せい剤の使用行為が行われたという事実であって、これを証拠とする検察官の意思は、最終の一回の覚せい剤の使用行為を起訴する趣旨である。したがって、①他の事実から区別もできるし、②犯罪事実も認定できる。また、使用日時・場所は③周辺的事項であるところ、尿鑑定からは直近の数日・数週間にしたことは確実に分かるものの具体的な時期が分からないし、密行性のある犯罪でもある。そこで、「平成14年3月1上旬から20日ころ」「東京都内又はその周辺」という幅のある記載でも、③「できる限り」特定したといえる。
ウ. 帰国に対応する密出国は1回しかない。よって、出国の時期を明示しなくとも、帰国を特定するだけで①と②は満たされる。 また、その他の周辺的事項については、目撃者もおらず,出国先である中華人民共和国と国交がなかったという事情に鑑みれば、日時・場所について幅のある記載でも③「できる限り」特定したといえる。
(4)「暴力団」「覚せい剤の前科3犯を有する者である」という記載は、引用を禁止した256条6項(起訴状一本主義)に反しないか。
ア. 256条6項は、起訴状には裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物を添付し、又はその内容を引用してはならないと定めている(起訴状一本主義)。この趣旨は、裁判官の予断を排除し、公平な裁判所の実現を図ることにある。
他方で、法は、訴因の特定を要求している(256条3項)。そこで、両者の関係が問題となる。
イ. この点、256条3項が訴因の特定を要求した趣旨は、裁判所が審判対象を他の事実から識別・特定し、「罪となるべき事実」の有無を判別する点にある(審判対象の画定)。そこで、①他の事実から識別可能な程度に特定し、②構成要件該当性の有無を判断するのに必要な事実については必ず記載しなければならない。そして、審判対象の画定の表裏一体の機能として被告人の防御機能も果たすことから、①②の周辺的事項についても③「できる限り」(256.3)特定する必要がある。
ここに、裁判官がいったん予断を生ぜしめるとこれを完全に払しょくすることは困難であることに鑑みれば、裁判官の予断を排除するという起訴状一本主義の趣旨から、③よりも起訴状一本主義が優先されるべきである。
そこで、文書の「引用」「添付」は、①②については必ず記載し、③については省略・要約して記載すべきである。
例えば、被疑事実が脅迫の場合に脅迫内容と全く関係ない文言は省略・要約して記載するべきであるが、文書全文を記載しなければ文書の趣旨が判明しがたいような場合には全文の記載も許される。
ウ. 起訴状一本主義に反した場合、裁判所はいかなる措置をとるべきか。
この点、起訴状一本主義に反し、裁判官がいったん予断を抱いたら、これを完全に払しょくすることは不可能である。
そこで、起訴状一本主義に反する場合、起訴状は無効となり、裁判所は公訴棄却の判決(338条4号)をすべきである。

3訴因変更
(1)ア. 裁判所は訴因変更なくして…罪につき判断することはできるか。訴因変更の要否が問題となる。
イ. 刑事訴訟の本質構造は当事者主義(256条6項、298条1項など)にあり、裁判所の審判範囲は検察官の起訴状記載の訴因に拘束される。したがって、審判対象は訴因であり、これを逸脱して事実認定することは許されない。そこで、審判対象の画定の見地から、訴因の記載として不可欠な事項のずれについては訴因変更を要し、他の事項については訴因変更を要しないと解する。
もっとも、訴因の特定に不可欠でない周辺的事項についても、①訴因事実と認定事実とを抽象的・類型的に比較して重要な事項であれば、審判対象の画定の表裏一体の機能として被告人に争点の明確化という防御上の利益があるため、原則として逸脱認定は許されず訴因変更が必要である。
ただし、その場合でも、異なる事実認定が②被告人に不意打ちとならず、かつ、②´被告人の防御に著しい不利益といえないときには、被告人の防御上の利益は大きくないので訴因変更は不要である。〔46〕
ウ 訴因の記載として不可欠な事項は、上の2(1)を参照。
(2)裁判所は…について訴因変更なくして事実認定できるか。
この点、訴因の機能は審判対象の画定にあり、その表裏一体の機能として被告人の防御上の利益の確保がある。
そして、認定事実が訴因に完全に包含される関係(包含関係)にある場合、認定事実も審判対象に含まれおり、また、被告人の防御も尽くされていたといえるので、訴因変更なくして事実認定できる(縮小認定の理論)。
(3)ア. …に訴因変更することは許されるか。「公訴事実の同一性」の意義が問題となる。
イ. 同一事件について再訴がなされた場合、二重処罰の危険、二重の応訴の負担が生じる。かかる不都合を回避するために法は二重の危険の禁止(憲法39条)を定め、当該訴訟手続において訴因変更により処理することが要請される。このように、訴因変更制度は二重の危険の禁止を定めた帰結である。
そこで、訴因を比較して両訴因が二重処罰の実質を生じるような関係にある場合、つまり①公訴事実の単一性、又は、②狭義の同一性が存する場合には「公訴事実の同一性」を肯定する。②は基本的事実関係の同一性をいうが、これが明らかでない場合でも、両訴因が二重処罰の実質を生じるような関係にあるという観点から、処罰の非両立性が認められる場合に②狭義の同一性を肯定する。
ウ. (ア)本問では、前訴因は過失致死・死体遺棄、後の訴因は犯人隠避の事実で全く異なるものである。したがって、基本的事実関係の同一性は認められない(②不充足)。
(イ)本問では、両訴因の共通性は明らかでない。そこで、両者の非両立性を検討するに、本問では同じ死体に関する事実である以上、過失致死・作為の遺棄で処罰されれば不作為の遺棄で処罰されることはない。したがって、②狭義の同一性を充足する。
(4)ア. 検察官は告訴のない強姦罪に訴因変更しようとしている。このような不適法訴因への変更が許されるか。
この点、不適法訴因への変更は、形式的裁判を導くので許されないとする見解もある。
しかし、当事者主義(256条3項、298条1項など)の下では、訴因の構成は検察官の自由である。また、不適法訴因の変更は形式裁判のためというよりも将来の実体裁判のためであり、訴因に関する適法性維持に資するので、訴因変更を否定する理由はない。
したがって、不適法な訴因への変更も認めるべきである。
イ. 裁判所は訴因変更を命ずることができる(312条2項)。
それでは、裁判所に、不適法訴因への変更命令権限まであるだろうか。
この点、312条1項が裁判所に訴因変更命令の権限を与えた趣旨は、真実発見の見地から、裁判所に後見的役割を果たさせる点にある。そして、形式裁判を導く場合には、真実発見にはつながらない以上、裁判所が後見的役割を果たす場面では無い。
したがって、裁判所に不適法訴因への変更命令権限はないと解する。
なお、権限がない以上、命令をしなくとも、審理不尽(379条)とはならない。
(5)ア. 審判の対象設定は検察官の専権であって、裁判所に訴因維持命令の義務は原則として認められない。
もっとも、312条2項が裁判所に訴因変更命令の権限を付した趣旨は、真実発見の見地から、裁判所に後見的役割を付与することにある。これは訴因維持命令においても妥当する。そして、裁判所が当初の訴因について既に有罪の心証を固めているにもかかわらず、訴因変更により被告人を無罪とすれば、上述の趣旨に反する。
そこで、上述の場合には、例外的に訴因維持命令義務を認め得ると解する。
イ. 訴因維持命令にもかかわらず検察官が訴因変更請求した場合には、裁判所はこれを許可しなければならない。
訴因の変更を検察官の権限としている刑訴法の基本構造から、訴因維持命令には形成力が認められないと考えるからである。
(6)訴因対象説を前提に、審判の対象設定は検察官の任務だから、裁判所に変更命令義務は原則として認められない。
もっとも、312条2項が裁判所に訴因変更命令の権限を与えた趣旨は、真実発見の見地から、例外的に裁判所に後見的役割を付与することにある。そして、重大な犯罪において、訴因変更すれば確実に有罪認定できるにもかかわらず、訴因変更されない場合には、裁判所の後見的役割が期待される。
そこで、①犯罪の重大性、②証拠の明白性等を考慮して、例外的に訴因変更命令義務を認め得ると解する。
ただし訴因変更命令に形成力は認められない。形成力を認めれば、訴因の変更を検察官の権限としている刑訴法の基本構造に反するからである。
(7)結審が間近い段階など、被告人の防御に不利益が生じる時点で訴因変更がなされた場合、原則として、防御の準備に必要な期間、公判手続を停止させる措置をとるべきである(312条4項)。
もっとも、あまりに不当な時期になされ、新たな防御が著しく困難といえるときには、被告人の二重の応訴の危険を回避するという利益が没却されたといえるので、権利濫用の法理(刑訴規則1条2項)によって、検察官の訴因変更請求を不許可とすべきである。要件としては、①結審が間近であること、②変更する内容が新たな防御が生じること、③被告人に有利な訴訟経過を覆すことが挙げられる。

Ⅳ証拠
1総論
(1)…は犯罪事実・刑罰権の存否・範囲を画する事実を立証するものであるから、証拠として採用するには、証拠能力がなければならない(厳格な証明 317条)。
(2)自由心証主義とは、証拠の証明力の評価について裁判官の自由な判断に委ねることをいう(318条)。
裁判官の自由な判断にゆだねられるのは証明力であって、証拠能力は法定されている。ゆえに、証拠能力ある証拠の証明力の評価だけが自由心証に委ねられる。
自由心証主義の合理性を担保する制度として除斥・忌避・回避(20条・21条)、当事者主義的制度(256条6項、298条1項、312条1項など)、証拠能力の制限(自白法則 伝聞法則)などがある。上訴・再審においても、事実誤認が控訴・再審理由となる(382条、435条6号)。
自由心証主義の例外として補強法則(憲法38条3項、319条2項)がある。
なお、心証の程度は自由ではない。犯罪事実の認定には、合理的な疑いを超える程度の証明が必要となる。
(3)挙証責任 ア. 犯罪事実については、原則として検察官に客観的挙証責任がある。これに対し、主観的挙証責任は、訴訟の進展に伴って一方当事者から他方当事者へ順次移転する。
イ. 円滑な訴訟の遂行のため、被告人側が犯罪阻却事由等の存在を疑わせる一応の証拠提出責任を果たしたときに、はじめて検察官はその不存在につき客観的挙証責任を負う。自白法則についても同様である。
ウ. 被告人が例外的に客観的挙証責任を負う場合、証明の程度はいわゆる証拠の優越の程度で足りるという説がある。
(4)証拠開示 ア. 公判前整理手続に付された場合、証拠開示制度が利用できる(316条の14~27)。類型証拠開示(法316条の15)の請求がなされた場合、①類型証拠該当性、②重要性、③相当性が満たされれば、請求が認められる(防御)。被告人側の主張立証に必要な証拠の開示請求の要件は、①自己の主張に関連する証拠、②必要性、弊害等を考慮した相当性である(316条の20 攻撃)。
期日前整理手続においても同様である(316条の28)。
それ以外の制度について、まず提出された証拠については、弁護人に書類・証拠物を閲覧・謄写する権利が認められている(40条)。また、取調請求する証拠について事前開示の義務が定められている(299条1項)。さらに、一定の証拠について検察官は取調べ請求しなければならない(300条)。
イ. 開示命令の対象となる証拠の範囲が問題となる。争点整理と証拠調べを有効かつ効率的に行うという公判前・期日前整理手続における証拠開示制度の趣旨に鑑みれば、①捜査過程で作成・入手した書面等で、②公務員が現に保管し、③検察官が容易に入手できる物を含む。
ウ. 解釈上の証拠開示命令の可否→実質的当事者主義及び真実発見の見地○ もっとも証人威迫や証拠隠滅等の危険。そこで、①証拠調段階に入った後に、②弁護人から具体的必要性を示して証拠閲覧の申し出があり、③その閲覧が被告人の防御のために重要であり、かつ、上記の弊害を招来するおそれがない場合に証拠開示を認める。
(5)証拠調べに関して異議を申し立てる(法309条1項)。異議の対象となるのは、証拠調べに関するすべての事項である。異議事由は法令違反、又は相当でないことである(規則205条1項本文)が、証拠調べに関する決定に対しては、相当でないことを理由として異議の申立てをすることができない(同ただし書)。
これとは別に、裁判長の処分に対する異議も申し立てることができる(法309条2項、規則205条2項)。

2許容性
(1)証拠能力は、①自然的関連性(要証事実に関して最低限度の証明力があること)、②法律的関連性(裁判所に誤った判断をさせるおそれのないこと)、③証拠禁止に当たらないこと、が認められる場合に肯定される。
法律的関連性がないとは、証明力を誤らせる事情がある、争点が不当に広がってしまうなど、法的観点から立証に用いるべきでないことをいう。
関連性の判断は、問題文の検察官の示した立証趣旨(又は要証事実)との関係で判断する。
(2)自然的関連性 ア 科学的証拠は、原理・法則が不確かな危険。科学的知見の専門家ではない裁判官にとって証拠の実質的吟味が困難。そこで、①基礎にある科学的原理・法則が確かなものであること、②用いられた特定の技術・手法がこの原理・法則に適合していること、を満たす場合に関連性を認める。
イ ポリグラフ 心理テストの不安定さ、検査の不安定さの正確性を担保する必要がある。そこで、①検査官が検査に必要な技術と経験を有する適格者であったこと、②検査に使用された機械の性能・操作技術からみてその検査結果は信頼性のあるものであったこと、③被験者の身体並びに精神状態が検査を受けるに適した状態にあったことが必要である。
(3)前科 ア. 前科を証拠とすれば、前科から被告人の悪性格を推認し、悪性格ゆえに今回もやったのだろうと推認することになるが、2段目の推認は、悪性格というあいまいなものから公訴事実の犯人性を推定できるか疑わしく、自然的関連性があるか疑問である。また、裁判官に不当な偏見を抱かせ、被告人に対する不意打ち、争点の拡散・混乱の危険があるので、原則として法律的関連性を欠く。
しかし、公訴の対象とされた犯罪行為の態様に際立った特徴があり、特殊な犯行態様の共通性に着目してそこから犯人性を推認する場合には、悪性格といったあいまいな媒介項は存在しないので、自然的関連性に問題はない。また、不当な偏見を抱かせる等の危険も小さく、例外的に法律的関連性を有するといえる。
適法な推認が働くための要件は、①前科の犯罪事実が顕著な特徴を有し、②それと公訴事実とが相当程度類似することである。ただし、別の証拠によって犯人である可能性のある者の範囲が絞られる等、他の条件次第では、要求される①特異性、②類似性の程度を緩和してよい場合もある。
イ.  ①の考え方は、別人によって行われることが考えがたいか否か。前科と本件の期間の長短、前科の事件数も、①の判断要素になりうる。例:ガソリンをまいて点火することは、誰でもやりうることであり、模倣も容易であるから、①を欠く。
ウ. 既に犯罪の客観的要素及びそれと被告人との結びつきが立証されているときに、犯罪の故意等の主観的要素を、同種前科で立証することは可能である。なぜなら、犯罪の主観的要素は立証が困難であり、同種前科を用いる必要性が高いからである。また、犯罪の客観的要素が立証されている場合には、不当な偏見等の弊害が生じるおそれは少ないからである。
A:被告人のどのような認識・認容を立証できるのか具体的に。
(4)排除 ア 証拠物の収集手続きに違法があるとして、証拠能力が否定されないかが問題となる。
違法な捜査により収集された証拠を用いることは、司法の廉潔(けんけつ)性、適正手続の保障、将来の違法捜査抑制の観点から好ましくない。もっとも、軽微な違法があるにすぎない場合にも証拠能力を否定すると、真実発見(1条)に反する。そこで、証拠物の収集手続に、①令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、②これを証拠とすることが将来の違法捜査の抑制の見地から相当でないときには、証拠能力を否定すべきである(違法収集証拠排除法則)。
考慮要素:ⅰ違法の程度、ⅱ違法行為と当該証拠との間の関連性の程度は、①で考慮する。ⅲ同種の違法行為が行われる可能性、頻度、ⅳ当該証拠の重要性、ⅴ事件の重大性は②のなかで考慮する。
例:偶発的である場合(ⅲ)は②を否定する。証拠が重要で事件も重大な場合、相当である=②を否定する。強制処分の時点で緊急逮捕の要件が備わっていれば②を否定する。他の合法的手段によって当該証拠が発見できた場合、②を否定する(不可避的発見の法理)。(排除法則は一般的な人の人権を考えている。具体的な者の人権は適正手続で図る。)
イ では、違法収集証拠によって発見された派生的証拠も排除されるか。
この点、派生的証拠についても証拠能力を否定しなければ、違法収集証拠排除法則の意義が没却される。もっとも、証拠の違法性・派生の関連性が軽微な場合にも証拠能力を否定すれば真実発見に反する。そこで派生的証拠については、①違法収集証拠と派生的証拠との関連性がある場合に、②違法の重大性、排除の相当性から、排除の是非を判断すべきである(毒樹の果実の理論)。
①を充足した場合に②を検討する手法(古江28)。この場合、犯罪の重大性、収集された派生証拠の重要性は②のなかで排除の相当性を否定する理由として考慮する説でいい(考慮すべきでないという批判あり)。
①の肯定例:証拠→その鑑定書、証拠を基に行われた捜査により発見・収集された証拠物 否定例:別の情報からまたはそれと相まって発見収集された場合(参考:違法承継と毒樹の果実は、ともに因果性の判断である。)
ウ 証拠収集後の捜査の違法は、証拠に対し因果性を及ぼしえないので、排除の理由にならない。ただし、捜査の経緯全体を通して表れた警察官の反規範的態度に照らせば捜査手続きの違法は重大である、として、主観的違法性の高さを推認させる事情としては用いることができる。
エ 第三者の権利侵害を主張する場合、排除の申立適格の論点。 違法収集証拠排除法則は将来の違法捜査抑制の見地から一般人の人権を保護するものであるから、処分の直接の相手方でない第三者であっても主張できる。

3自白など
(1)自白 ア 自白とは、被告人による、自己の犯罪事実の全部又は主要部分を直接認める内容の供述である。より広い概念として不利益事実の承認がある。これは被告人にとって刑事上不利益な内容のものすべてを含む。
自白は319条1項により、不利益承認かつ公判外供述は、322条1項により証拠能力を判断する。
322条の任意性は319条の任意性と同じである。
イ 本件供述は、被告人による自己の犯罪事実を認める内容の供述であるから、自白に当たる。
そこで、本件供述調書は、自白法則(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に反し証拠能力が否定されないか。「任意にされたものでない疑のある自白」の意義が問題となる。
ウ. 任意性を欠く自白は虚偽である蓋然性が高いため、これを証拠とすると誤判のおそれがある。また、たとえ内容が真実でも、黙秘権を中心とする被告人の人権を侵害する危険性がある。これらの危険性を防止すべく、319条1項は不任意自白の証拠能力を否定したものと解する。そこで、①虚偽の自白を誘発するおそれがあるか、又は、①´黙秘権を中心とする人権を不当に侵害するおそれがあるとき、「任意にされたものでない疑のある自白」に当たる。
エ. (ア)偽計による自白は虚偽排除説からは説明しにくい→人権擁護説から説明する。かような心理的圧迫は、勾留中という状況と相まって、供述についての自由な意思決定を阻害し、黙秘権を不当に侵害するおそれが高いものといえる。
例:妻をかばうべく、また、決定的証拠を出されたことにより、心理的圧迫を受けたといえる。したがって、黙秘権侵害の危険があり、自白を排除する。
なお、本当に自白した場合に事実を伝えることは、捜査手法として当然許される。
判例の射程:憶測を交えた手法も同様に許されるだろう。例:ポリグラフで「クロが出た。」ただし、科学的証拠について拡大解釈をして被疑者を犯人と「決めつけ」、これに加え、大声を出す、小突くなどの行為が併用された場合、強い心理的強制を与えたとして、黙秘権侵害の危険があり、不任意自白に当たる。考え方:そもそも証拠だけでは「決め付け」ることは難しいが、偽計によって証拠の隙間を埋め、「決め付け」ることができてしまう。この決め付けは強い心理的圧迫となる。
(イ)約束による自白は人権擁護説から説明しにくい。虚偽排除説から説明する。検察官から容疑を認める代わりに不起訴という被告人に非常に利益となる対価を持ちかけられれば、Xが不起訴を期待してこれに迎合し、虚偽の容疑を認める可能性がある。被疑者としては警察官と検察官を一体として考えるから、持ちかけた者が起訴権限のない警察官であってもこれは同じである。
判例の射程:権限ない者の利益誘導は迎合可能性が高くないとも思える。しかし、権限の有無は通常、被疑者にはわからない。そこで、迎合の可能性が高いとするべきである。例:家族と立会人なしの面会を許す。軽い刑にする。
(ウ)「拷問」や「強制」に当たらない暴力を用いた場合、対象者は心身ともに圧迫を受け黙秘権を侵害されたり、圧迫を逃れるべく相手方に迎合し虚偽自白を行ったりする危険性が高い。したがって、任意性説から排除する。
オ. 派生的証拠について:319条1項の趣旨は虚偽自白・人権侵害による不任意自白を招来し得るような取調べを排除する点にあるところ、派生的証拠を全く排除しなければ、かかる取調べは抑止されない。もっとも、関連性の薄い派生的証拠もすべて排除すれば真実発見に反する。そこで、①先の自白に関する手続の違法性と、②両証拠の関連性が強ければ排除する。
②を満たした場合に、①を検討する説に立てば、①は違法性の重大性、排除の相当性、という要件になり、犯罪の重大性、収集された派生証拠の重要性をも考慮できる。
反復自白の要件:心理的強制の影響が残存している場合は排除する。遮断されているときは証拠能力を認める。考慮要素:第1取調べの方法、取調べの主体や目的の異同、取調べの時間的間隔・場所的同一性、弁護人との接見の有無
カ. 違法収集証拠排除法則の根拠は適正手続の保障、司法の廉潔性の保持、将来の違法捜査の抑止にあるが、自白についてもこれらは妥当する。そこで、自白についても排除法則は適用されると解する(二元説)。捜査・取調べの違法がある場合に論じる。
排除法則の規範に、①令状主義の精神を没却する、という文言は入らない。なぜなら、供述獲得のための令状はない以上、必ずしも令状主義の精神が妥当するとはいえないからである。この場合は、単に①重大な違法、という規範でいい。例:監視つきの長すぎる取調べは、身柄拘束に近く、心身に多大な疲労、苦痛を与える。(任意処分として)相当性がないので違法である。
自白と排除法則の先後関係は論点である。自説:明文のある自白を先に検討するべきである。
(2)補強法則 裁判所は被告人を自白だけで有罪とすることはできず、有罪判決を言い渡すには犯罪事実の自白に補強証拠が必要となる(補強法則 憲法38条3項、法319条2項・3項)。この趣旨は、自白偏重による誤判の危険防止にある。
論点は、①範囲、②程度、③証拠適格である。
ア. 範囲 いかなる範囲に補強証拠が必要か。
自白偏重による誤判の危険防止という補強法則の趣旨から、補強の範囲についてもできる限り客観化された明確な基準を定立すべきであり、犯罪事実の客観的範囲の主要部分(罪体)につき補強証拠が必要と解する。
罪体の範囲については、刑事訴訟手続は犯罪に対する刑罰権の実現を目的とするから、①客観的法益侵害があったという事実だけでは足りず、②法益侵害が何人かの犯罪行為に起因するという事実まで必要であると解する。
これに対し、③犯罪者と被告人の同一性まで求める見解もあるが、有罪の認定が極めて困難になり、かえって自白偏重に陥ることから不要と解する。また、犯罪の主観的側面についても証拠収集は困難であることから補強証拠は不要と解する。
(そこで、以下の事実が、罪体に当たるか検討する。又は、本問において…の客観的要件事実は、①②である…。)
主観面については自白以外により立証が困難であり、もしこれを罪体に含めるとなると、かえって自白偏重の捜査を誘発する。そこで、犯罪の主観面については罪体に含まれないと解する。
判例:運転行為のみならず、運転免許を受けていなかった事実についても補強証拠を要する。
イ 程度 補強はいかなる程度が必要か。
自白と補強証拠とが相まって全体として犯罪事実を認定できればよいとする見解がある。しかし、これでは補強を要する範囲を裁判所の裁量にゆだねるに等しく、自白偏重による誤判の危険防止という趣旨が没却されかねず妥当でない。また、自白の内容及びその証明力を前提とした上で他の証拠による補強の程度を判断することになり、301条と調和しない。そこで、自白と切り離して補強証拠だけで一応の証明がなされる程度の証明力を要すると解する。
ウ 補強証拠たり得るのはどのような証拠か、補強証拠適格が問題となる。
補強証拠も犯罪事実認定のための実質証拠であるから、①証拠能力が必要である。また、自白偏重による誤判を防止するという補強法則の趣旨から、②自白から実質的に独立した証拠でなければならないと考える。
例:備忘のために記帳していた書面 ①323条2号、かつ、②独立である。
エ その他 補強証拠らしきものが排除されて、有罪方向の証拠が自白だけとなる出題方法もありうる。
(3)共同被告人 ア 知覚、記憶、叙述の過程に虚偽の介在する危険性のある供述証拠を証拠として採用するには、反対尋問による吟味が不可欠である。判例は、共同被告人の供述に対して被告人は反対質問の機会があるから、被告人に対する関係で証拠能力を認めてよいとする。しかし、包括的黙秘権を有する共同被告人に対しては反対質問が機能し得ない場合もある。そこで、事実上反対尋問が行われたといえる場合に限り証拠能力を肯定すべきである。
イ まず、共同被告人のままでは、黙秘権を保障された被告人であり、供述義務がない以上、証人適格を有しない。(根拠条文は?(憲法38条1項を根拠条文というのか?) 運用か? 要確認)
では、手続を分離して共同被告人を証人尋問できるか。
この点、判例は、手続を分離すれば共同被告人でなくなることから肯定する。
しかし、手続を分離して証人として尋問されると、証言拒絶によって自己の有罪を暗示させてしまうか、さもなければ偽証罪の制裁の下に供述を余儀なくされる。被告人をかような進退両難の地位に陥れるのは、黙秘権の保障(憲法38条1項)に反する。
そこで、手続を分離しても、その(共同)被告人の申し出がない限り、証人尋問は許されない。このような場合は、手続を併合したまま被告人質問の限度で共犯者の供述を求めるほかない。
ウ 供述をした甲は「被告人」である一方、乙との関係では「被告人以外の者」に当たる。そこで、甲の警察官の面前での供述は322条1項、321条1項のいずれの規定によって証拠能力を検討すべきか。共同被告人の第三者としての地位や、共同被告人が他の一方を引きこむなど両者の利害が相反するおそれがあることに鑑み、321条1項によるべきと考える。
エ 共同被告人の自白のみで…を有罪とできるか。補強法則(憲法38条3項 法319条2項)の適用の肯否が問題となる。
共同被告人をすべて同一の地位にあるとして扱うべきでは無く、被告人本人からすればあくまで第三者であるから、「本人の自白」とはいえない。また、他に補強証拠がない場合に、自白した者が無罪となり、否認した者が有罪となるとしても、自白が反対尋問に代わる状況的信用性のある供述よりも証明力が弱い以上当然であり、必ずしも不合理とは言えない。
そこで、共犯者の自白に補強法則は適用されないと考える。

4伝聞法則(来年はほぼ確実に伝聞)
本件○○は公判期日外の甲・Wの供述・行動を記した・内容とする書面・供述・写真・動画であるから、伝聞法則(320条1項)により証拠能力が認められないのではないか。
(1)総論 ア. 供述証拠は知覚、記憶、叙述という過程を経るが、そのいずれにも誤りが介入し得るため、その内容の真実性を立証する場合には、当事者の反対尋問等によって供述の正確性を吟味・確認する必要がある。そこで、①公判期日外の供述に代わる書面又は供述で、②原供述の内容の真実性が要証事実となるものは、伝聞証拠に当たり原則として証拠能力が否定される(320条1項 伝聞法則)。
したがって、伝聞証拠の当否は、要証事実との関係で相対的に決せられる。
イ. …の被疑事実との関係では、検察官の「…」という立証趣旨は意味を有するので、原供述の要証事実は…である。要証事実との関係では、公判期日外の甲の供述内容の真実性が問題となる。よって、捜査報告書は「供述に代え」た「書面」に当たり、伝聞証拠である。したがって、被告人の同意(326条1項)がない限り、原則として証拠能力が認められない。
ウ. 論文では、発言者や媒体を全てたどる必要がある。例:甲→B→メールと印刷機→P→捜査報告書 の場合、P→書面について321条3項、B→メールについて321条1項3号、甲→Bについて322条1項が必要となる、(H23司法)。
注:検討は公判に近いほうから!ここは必ず守る。この例ならP→B→甲の順である。
エ 要証事実は、検察官の主張する立証趣旨との関係でほぼ100%決定する。つまり、立証趣旨が意味を持つので、それとの関係で要証事実が…である、というシンプルな指摘をすればいい。
供述(H18)や被疑事実(H23)ごとに、主張・証拠関係から検察官の示す立証趣旨との関係で要証事実を設定しよう。何罪のどこを否認しているか、どのような証拠構造か、何が争点となるか(なる事案か)を明らかにする。「要証事実を的確にとらえれば」(H23出題趣旨)「個々の要証事実を的確にとらえ」(H23採点実感)→主要事実や間接事実を認定する作業を一言でいいのでいれて立証趣旨との関係で要証事実を示す。
立証趣旨が3つある出題としてH20新司
オ. 内容の真実性 「原供述者の知覚」が要証事実となる場合。原供述内容が本当にそのとおりであれば立証できる、という場合なのか(ペー2失敗)。それとも原供述の存在自体で立証できるもの(原供述者の記憶・叙述)が要証事実か。
非伝聞は供述の存在自体で要証事実との間に関連性を有するので、非伝聞である。という言い方がいいか。
伝聞が無理なら、(公訴前なら226条)証人として呼ぶか、物証の展示(306条1項)による。
(2)非伝聞 ア 確かに定義①②には当たる(ことを述べたうえで書くべき。論M65・H22旧司)。
しかし、精神状態に関する供述は非伝聞であり、伝聞法則(320条1項)の適用を受けない。精神状態に関する供述は、知覚・記憶の過程が欠けており、誤りが介在する危険性が小さいからである。また、叙述の真摯性が問題となるとしても、供述時の態度などについて第三者に聞いて確認することができるからである。
イ 被告人の犯行動機を立証するために、「被害者が「被告人はすかんわ、いやらしいことばかりする」と言っていた」というWの証言が用いられた。同証言は被告人に対する嫌悪の感情との関係では伝聞法則は適用されないが、犯行動機との関係では実際にいやらしいことをしたか、つまり知覚・記憶の過程も問題になり、伝聞証拠に当たる。伝聞例外の検討をする(第三者の伝聞供述 324条2項、321条1項3号)。
ウ 事例:W「XがYに「Vはもう殺してもいい。」「Vへの攻撃はけん銃で行うが慎重に調査し計画しよう。」と話しかけるのを聞いた。」 Wの証言を、事前にVに対する殺意、犯行計画を持っていたことを立証事項として用いることが考えられる。共同正犯の要件たる共謀の内容の意思連絡を立証する場合などである。この場合、Wの供述は、Xの供述当時の心理状態の供述であるから、W証言は非伝聞である。
エ 犯行計画メモは、共謀の立証の一内容として作成者の意思・計画を証明する場合などそこに書いてあることそれ自体を立証する場合は心理状態の供述であり、知覚・記憶の過程を欠く。したがって、非伝聞となる。
記載どおりの共謀が成立していることを立証する場合などには伝聞証拠となる。なぜなら、作成者が謀議の内容を知覚、記憶した過程も問題になるからである(共同正犯の事案)。
共謀の非伝聞1:共謀を証明する別の証拠がある場合 同2-1:共謀者全員がメモを回覧・確認した場合、メモは全員の心理状態の供述ともいえる。同2-2:回覧・確認自体を共謀とみてメモの存在を共謀の立証に用いる場合 参考:事後報告メモも、他の証拠から記載通りの犯罪事実の証明があれば、作成者と犯罪との関与が直ちに推認され、非伝聞となる。
←各論点につき、問題文の検察官の示す立証趣旨を見て、どのケースかを判断する。
(3)伝聞例外総論 ア 321条柱書は、録取の書面に署名・押印を必要としている。録取の伝聞過程をなくすためである。
イ 被告人以外の第三者が作成した書面は原則として321条1項3号により伝聞例外を検討する。
要件は、①供述不能、②証拠の不可欠性、③絶対的特信状況である(321条1項3号)。
特信性の有無は、供述内容そのものからではなく、供述時の外部的付随事情から判断する。ただし、供述内容(=客観的状況に合致するか)も信用性のある状況を推知する一資料として考慮していい。1項3号の特信性は当該供述それ自体の問題である(絶対的特信情況)。例:衝動的・自然的な発言、発言者間の関係、自己の利益に反する、取引の度につけた備忘メモ
以上の③の判断方法も規範として答案に示す。
ウ 検面調書の要件は、①供述不能(2項前段)(、②特信状況)か、①相反供述、②特信状況(2項後段)である。
①相反は丁寧に認定し、②は相対的な特信状況である。
エ 裁判「官」面前調書は、高度の信用性が認められるため、伝聞例外の要件は、①供述不能、②供述の相反性のいずれかである(321条1項1号)。
オ 被告人以外の者の公判準備・公判期日の供述録取書は、無条件に証拠能力が認められる(321条2項前段)。当事者に立会権・当事者尋問権が与えられているからである。
カ 裁判所・裁判官の検証調書(2項後段)は、無条件に証拠能力が認められる。
キ 捜査機関の検証調書(3項)は、真正作成供述が要件である。主体は捜査機関に限定される。
鑑定書も同様に真正作成供述が要件である(4項)。
ク 被告人の供述書、又は供述録取書で被告人の署名・押印のあるもの(322条)について証拠能力が認められるには、①被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるときは、②それが任意に行われたものであればよい。
それ以外の場合、特に信用すべき情況の下になされたものであること(絶対的特信情況)が必要。
ケ 前科調書は、323条1号により証拠能力が認められる。判決書は、323条3号により証拠能力が認められる。参考:前科の判決書の事実認定の部分も後訴で使用していい(例:共犯者の有罪判決文→他の共犯者の裁判で使っていい)。323条3号に含まれる。証拠能力のある証拠による事実認定の過程が適法かつ厳重な手続きであり、信用性が高いからである。
コ 伝聞供述は書面に準ずる(324条 1項は被告人、2項はそれ以外(条文は324条2項、321条1項3号))。
(4)321条1項2号 ア 供述不能 (ア)まず前提として供述不能事由が例示列挙か限定列挙か問題となるが、列挙事由は例示列挙であると解する。(なぜなら、同条項は供述者に対する証人尋問を妨げる典型的事由を示したものにすぎず、これと同様な事由の存する場合にも、証拠能力を認め得るからである。)
証言拒絶権を行使した場合も、供述不能に当たると考える。証人が供述を拒否すれば、公判期日において供述は全く得られず、被告人に反対質問の機会が与えられない点、供述の正確性を確認できない点は、死亡や海外にいる場合と同じだからである。
そうすると、法廷でしゃべられないこと、証言の顕出不能性が、供述不能の要件である。これは、国外から帰ってこられない状況等と比較して、証人の重要性、審理計画に与える影響、証言拒絶の理由及び態度(翻意の可能性)等を総合考慮する。
(イ)「国外にいる」の判断基準は検面調書の証拠調べの時点である。すると、本件検面調書の証拠調べ時点では、Aが「国外にいる」ため、要件を満たすとも思える。もっとも、321条1項2号前段が伝聞証拠禁止の例外を定めたものであり、憲法37条2項前段が被告人に証人尋問権を保障している趣旨、適正手続(憲法31条)の観点から、検察官において供述者が退去強制させられることを認識しながら殊更利用しようとした場合や、裁判官又は裁判所がその供述者についての証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合には、証拠能力が否定されると解する。
イ 相反性はどこの部分が不一致であるかを指摘する。公判の供述とそれより「前の供述」が相反すること(ap16)。
(ア)検面調書の記載内容が公判廷における供述よりも詳細であるときも、321条1項2号後段の「実質的に異った」供述といえるか。この点、2号書面は訴訟の一方当事者たる検察官が作成したものであり、1号書面より信用性の状況的保障は劣るため、必要性の小さい場合にまで認めるべきではない。そこで、「実質的に異った」とは、他の証拠と相まって公判廷における供述とは異なった結論を導く場合をいうと考える。
(イ)証人尋問後の取調べ調書を証拠とすることができるか。(公判:α→供述β→公判:α)確かに、再度の証言αとの関係では、供述βも「前の供述」といえ、それが相違なるものであれば321条1項2号後段に該当するようにも思える。判例もかかる場合に証拠能力を認めている。しかし、公判廷で2回も同趣旨の供述をしているような場合、むしろ検面調書の信用性に疑いがあることからすれば、原則として特信状況が否定されるというべきである。
ウ 判例は、前段において特信情況の要件を不要としており、答案が書きやすい。学説は必要とする。なぜなら、検察官は被告人の反対当事者であり公平な立場にはなく、通常反対尋問に代わる信用性の状況的保障があるとはいえないからである。
特信性は、公判供述と検面調書とを比較して判断する。供述時の外部的付随的事情(例:時の経過、供述者と被告人との関係、取調べ状況等)から判断するべきである。ただし、供述内容も信用性のある状況を推知する一資料として考慮していい。
例:供述者と被告人との間に特別の関係(家族・親分)があり、供述者が被告人に対する気兼ね、遠慮から、公判の被告人の面前では被告人に不利益な供述をし難い情況にある場合。供述者が、被告人と共犯若しくはそれに準ずる関係にある場合(検察官に対する供述後、被告人と通謀して、口裏を合わせたのかもしれない 弁護士通じてもありうる)。 供述者が、被告人ないしその関係者から威迫されたり買収されたりした場合。
(5)321条3項 実況見分調書は、捜査機関の供述を記した書面で原供述の内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たる。
したがって、被告人の同意(326条1項)がない限り、証拠能力が認められないのが原則である(伝聞法則 320条1項)。
では、321条以下の規定により、例外的に証拠能力が認められないか。
ア. 実況見分調書は321条3項の書面に包含されると考える。同条項において検証調書の証拠能力が緩やかな要件で認められる趣旨は、検証が専門的な訓練を受けた捜査員が行う技術的事項で恣意の入る余地が少なく、また、その結果を書面で報告したほうが口頭で供述するよりも正確かつ詳細な点にあるところ、検証と同様の方法で行われる実況見分により作成された書面にも、この趣旨は妥当するからである。
したがって、作成者が公判廷において「真正に作成されたものであることを供述」したときは、証拠能力が認められる。
イ.  …は、現場において被疑者等を立ち会わせて検証事項を明確にするために必要な状態を任意に指示陳述させる、現場指示である。これはその地点を実況見分した動機・手段を明らかにするためにしたものにすぎないので、指示事実の存在自体が要証事実であり、個別に伝聞法則の適用を受けない。実況見分の一内容として321条3項により証拠能力を検討する。
ウ. …は実況見分の実施をこえて、現場を利用して…の供述内容を明確にすることを主たる目的として作成されたものであり、独立に別個の供述録取書として伝聞法則が適用されると解すべきである。本問は…であるから、321条3項に加え、…の要件を必要とする。
エ. 「飲酒日時」「飲酒動機」の両欄の記載は、調査の際に巡査が聴取した質問事項に対する応答報告であって、検証の結果ではない。応答それ自体が酒に酔っていることを示す証拠として意味を持つ場合がある(素面ではとうてい述べないような答えをした場合、「今日は何日で今何時ですか」に対する応答など)。この場合は、その答えを非供述証拠として使用するものであって、その記載はむしろ本人の外観、動作などを観察したところを記載したものに類似するから、実況見分結果に含まれる。
(6)321条4項 ア 鑑定受託者(223条1項)の作成した鑑定書は、公判廷外の供述に代わる書面で、内容の真実性が問題となるものであるから、伝聞証拠に当たる。したがって、原則として証拠能力が否定される(320条1項)。
ただ、伝聞例外(321条以下)の要件を満たした場合には、例外的に証拠能力が認められる。
鑑定人ではなく、鑑定受託者の作成した書面であるから、321条4項を直接適用できない。しかし、同項が比較的緩やかな要件の下に伝聞例外を認めた趣旨は、鑑定人は専門的知識に基づいた判断を報告することから信用性が高く、鑑定内容は複雑であるから書面によるほうが正確を期しやすい点にある。鑑定受託者による書面にもかかる趣旨は妥当する。そこで、同項を準用し、作成者の真正作成供述があれば、証拠能力が認められると解する。
イ 火災原因の調査判定に関して特別の学識経験のある私人が県消防学校の依頼により行った燃焼実験の結果を報告した書面。
321条3項の書面の作成主体は、文言上、司法警察職員等に限定されている。同条項が主体を明示する趣旨は、そこで明示された主体が法律上捜査の職権と職務とを有する公務員であり、その検証の結果を信用しうる資質上、制度上の保証を備えている点にある。したがって、作成主体が重要な意味を持つため、民間会社の作成する書面には準用できない。
同書面は、特別の学識経験を有している者の作成した書面であり、専門的客観的に作成され恣意が入りにくい点、書面によるほうが正確を期しやすい点で鑑定書と同様である。そこで、321条4項を準用して、作成者の真正作成供述がある場合に証拠能力が認められる。
ウ 判例の射程:保険会社など、精密な実験が行われ、高度の信用性を有する場合にも適用できるのではないか。
(7)機械など ア. (犯行現場を撮影・現像・記録・プリントした)写真は、事物の知覚・記憶・叙述のいずれの過程も機械が正確に行うので、誤りが介在する危険は少なく、反対尋問を要しない。(作成過程の誤りの介在のおそれは関連性の判断ですればいい。)よって、現場写真は非供述証拠である。現場録音も同様である。
(供述内容を明らかにするための)説明写真は供述を補充し、供述と一体となっているので、書面と同一性の証拠能力(321条3項、4項)をもつ。例:調書記載の写真 
イ. 供述録音・録画は、供述内容の真実性が問題となる場合、伝聞法則が適用される。録音録画自体は機械でなされるので、その伝聞過程は問題にならず、署名・押印は不要である。
ウ. 再現写真・撮影(だけのとき)は、再現状況を行動で表現した供述といえ、これをカメラで録取していると考える。実際に行われたことを証明するために用いる場合には、再現者の供述内容の真実性が問題となるので、伝聞法則が適用される。本問は…であるから、…を適用して証拠能力を判断する。なお、撮影はカメラによって機械的になされているので、録取の伝聞性が問題とならず、署名・押印は不要である。
エ. 再現写真を添付した調書の写真部分は、321条3項に加え、供述録取書(321条ないし322条)の要件を満たせば証拠能力が認められる。 検証と供述の両方の性質が並立しているからである。 このとき、録取の過程はカメラによって正確になされているので、録取の伝聞性が問題とならず、署名・押印は不要である。
オ. 録画テープは写しであるから、写しにも証拠能力が認められるかが問題となる。(論文で忘れやすいので注意)
写しは写す段階で介入の入る余地があり、原本に比べて信用性に劣るから、原則として原本を提出すべきである。もっとも、正確な写しが技術的に可能となった今日において写しを提出する弊害は少ない。そこで、①原本の存在、②写しの正確性、③写しを提出する必要性、という要件を満たせば写しも提出できると解する。
(8)324条など
ア 伝聞供述(324条)は、書面か口頭かの違いしかないから、書面に関する規定たる324条1項が322条1項を準用し、324条2項が321条1項3号を準用する。
イ 再伝聞 324条は供述者が公判の供述について定めているが、伝聞例外の要件が認められれば、公判に近いほうの原供述が、公判供述と同じ性質を有する(320条 「公判期日における供述に代えて」)。そこで、再伝聞の場合で、公判外伝聞供述にも324条を(類推)適用する。
ウ 本問では、甲が被害金額を警察官Kに伝え(第1伝聞過程)、Kがそれを丙に伝え(第2伝聞過程)、丙が法定供述している。したがって、まず、Kの供述に代わる丙の供述(324条2項・321条1項3号)、次に、甲の供述に代わるKの供述(324条1項、322条1項)に伝聞例外の要件が備わる必要がある。
(9)326条 証拠能力付与説で書く。この場合、伝聞例外のところにある理由を説明できるようにする必要がある。
ア. 弁護人は包括代理権を有しているので、被告人を代理して有効な同意を与えることができる。
ただし、弁護人の同意は被告人の代理人として行うものであるから、被告人の意思に反して行うことはできない。
イ. 同意の性質は、証拠に証拠能力を付与する訴訟行為であると解する。とすれば、同意は証拠の証明力までを認めるものではないから、その証明力を争うために供述者の証人尋問請求権を有すると考える。
ウ. 退出命令や出頭拒否にも326条2項が適用され、同意が擬制される。同条項の趣旨は公判手続の円滑な進行を図ろうとした点にあるところ、かかる趣旨が同様に妥当するからである。
エ. 同意により違法収集証拠の証拠能力まで認められるか。この点、326条1項の同意は、証拠に証拠能力を付与する積極的な訴訟行為であると解する。したがって、同意があれば、違法収集証拠の証拠能力は認められる。
(10)328条 ア. 限定説:328条の「証拠」に当たるか。弾劾証拠は同一人の自己矛盾供述に限られると解する。自己矛盾の供述は、その存在自体で証拠とされた供述を弾劾できるのに対し、それ以外の者の供述は内容が真実であって初めて証拠とされた供述を弾劾できるから、328条で採用することはできない。したがって、…の供述は328条の「証拠」に当たらないと解する。
イ. 証明力を回復するために一致供述を提出する場合も、回復証拠の存在自体を立証して証言等の信用性を弾劾するものであり、同条の趣旨が妥当する。そこで、「証明力を争う」には、証明力を減殺する場合のみならず、証明力を回復する場合も含むと考える。
ウ. 本問供述録取書は、公判廷における…の証人尋問終了後に作成されている。このような場合でも328条の「証拠」として認められるか。この点、判例は、公判廷における供述の先後を問わないとする。しかし、証言後に作成された供述録取書でもよいとすると、捜査機関による不公正な作為が介入するおそれを否定し得ない。そもそも、公判中心主義の原則からすると、証人が公判廷で検察官の予期に反した証言をした場合、その証人尋問中に問いただすべきである。そこで、公判定の証言後に作成された供述録取書は328条の「証拠」とはいえないと解する。

Ⅳ裁判
1 有罪判決
(1)狭義の択一的認定:異なる構成要件ABいずれについても認定の可能性があり、そのいずれであるか判明しない場合に、「A又はBのいずれかである」(明示的択一認定)と、あるいは軽いほうの「Bである」(黙示的択一認定)と事実認定できるかという問題である。
(2)明示的択一認定は許されない。AとBの合成的構成要件を設定したことになり罪刑法定主義に反するからである。
他方、黙示的択一認定はAとBの事実が論理的択一関係にあれば許される。論理的択一関係にある場合、重いほうのAを「疑わしきは被告人の利益に」の原則の適用より不存在とすれば、軽いほうのBの存在を推定できる。
(3)余罪を実質上処罰する趣旨で量刑の資料として考慮することは許されない。これに対し、単に被告人の性格・経歴及び犯罪の動機・目的方法等の情状を推知するための資料として考慮することは許される。
2 一事不再理効
(1)判決が確定すると同一事件は起訴されず、起訴されても免訴判決が言い渡される(337条1項 一事不再理効)。そこで…についても遮断されないか、一事不再理効の及ぶ範囲が問題となる。
この点、一事不再理効は二重の危険の禁止(憲法39条前段後半、後段)に基づくものである。そして訴因変更制度の下では、検察官は「公訴事実の同一性」の範囲内で訴因変更できる(312条1項)ため、被告人はその範囲で訴追・処罰の危険にさらされていたといえる。そこで、一事不再理効は「公訴事実の同一性」の範囲内に及ぶと考える。
では、公訴事実の同一性の範囲についていかに解するか。
この点、処罰の一回生の見地から、訴因を比較して両訴因が二重処罰の実質を生じるような関係にある場合、つまり①公訴事実の単一性、又は、②狭義の同一性が認められる場合には「公訴事実の同一性」を肯定する。
(2)一事不再理効の主観的範囲:共犯者には及ばない。
時間的範囲:原則として第一審判決の言い渡し時である。
3 攻防対象論
検察官の控訴申し立てのない、被告人の無罪部分について、控訴審は審理することができるか。
一罪の被疑事実は一体であるから(古江30)、第一審の全部について審判対象となるので、被告人にとって不服のない部分についても全部が控訴審に移審する。
職権で控訴理由の有無を審査でき(392条2項)、文言上も制約はないので、無罪部分についても審理できるとも思える。
しかし、控訴理由の主張が義務付けられていること(376条1項)から、控訴審は事後審としての性質を有する。事後審の性質から、職権審査は補充的なものになる。そこで、当事者主義の観点から、被告人の無罪部分については、被告人から不服申し立てる利益がなく、検察官からの控訴申し立てのない場合、当事者間においては攻防の対象から外されたといえる。したがって、この場合には、被告人の無罪部分について審査は許されないと解する。