予備試験対策 憲法 まとめノート (旧)

論文式試験対策 1論文全般 2違憲審査基準 3処分違憲と法令違憲


1 論文の書き方
(1)問題文を読むときに、原告に有利な事情は×、被告に有利な事情は○とする。×○は原告・被告で大枠を出し、私見で詳論する。問題文の事実は全部使い切る勢い。×1、×2、○1、○2と番号をふると書きやすい。
司法権→文面審査→法令審査→処分審査の順で検討する。迷ったら法令審査と処分審査の両方書いとけばいい。問題文の立法事実と司法事実の量から配分を読み取り、バランスをとる。
配点は原告:反論:私見=4:1:5である。(H27司問題に明示 2.8ペ 0.7ペ 3.5ペで予め準備しておこう。)
1. 司法判断適合性(法律上の争称など)
2. 問題の所在(何条の問題か)
3. 問題となる権利が、同条の保護範囲に含まれるか。
4. 制約の有無
5. 制約が正当化されるか。
判断基準 目的審査 手段審査 結論
(2)辰巳
当事者の主張の意図をさぐる。(これは、司法試験委員の考えをくみ取ることをも意味する。)問題にでてくる当事者は、試験委員のなりかわりであることを意識する。(問題文で問題となっている点を順に追うだけで論点を拾うことができる。)
原告の主張で、自分の都合のいい事実だけを取り上げて、判例に触れないのはよくない。判例も知らずに主張立証するのは、弁護過誤である。被告の反論は、簡潔に指摘するだけでいい。その吟味は私見で述べる。
(3)具体的指摘内容 ア まず初めに、憲法上の攻撃対象を特定することが大切である。具体的にどの法令が、どの行為が、憲法上の人権を侵害するのかを特定して、答案の初めに示す。
イ 違憲とした後に違憲とする理由につなげる。例:よって国賠法上違法、行為は無効、Xは無罪である。
(4)かみ合わせ 反論は、原告のどこに対する反論かを明確にし、私見で原告・反論のいずれに賛成するかを明示する。「原告の主張は正当である。」「反論は正当である。」など
答案構成段階からかみあわせを意識し、私見で原告・反論にないことをいきなり書かないようにする。原告で有利な事情を挙げ、私見で原告の主張がなぜ正しいのかその理由を書く。反論は骨子だけを示し、その反論がなぜ正当・不当なのかその理由を私見で書く。このように詳細は私見にとっておく、という書き方がお得。特に手段審査で多くかみ合わせる。
2 法令違憲
(1)法令違憲における原告の主張
ア 原告の主張は、①権利の保障根拠示して、②保障内容画定して、③制約認定して、④保障の程度と制約の程度から違憲審査基準か、④*統制密度設定して、⑤事案にあてはめる、作業を全部やる。
①②は、一つの括弧に含めて論じても良いと思う。③は分ける。
イ もっとも、人権も無制約ではなく…という論証は不要である。制約の有無を論じた後であるから、かかる制約は許されない、とか、かかる制約が許されるか以下検討する、などのほうがよいだろう。
ウ 本件の問題となっている自由がどの自由に含まれるのかをきちんと示す。根拠条文の保障する人権の内容→本件自由がそのうちのどれに入るのか、その保障の程度はどうか。
法令違憲を論じる際には具体的事実で論じてはいけない。あくまで法令違憲は法が憲法に一般的に反するということを主張しなければいけないので、具体的事実に触れた瞬間論理矛盾が生じてしまう。法令違憲を論じる場合のあてはめは、あくまで一般的な立法事実等を用いることになる。
エ 手段審査:手段適合性(目的を促進するか)、必要性(より緩やかな代替手段の有無)、相当性(必要性に対し過度な規制となっていないか 比較衡量)この手段審査が本番では肝になる。現場で必死に考える。
(2)審査基準
ア 審査基準は、原告で1個 反論はより緩やかにする旨主張し、私見は原告に従う。これで十分。
基準の優先順位は判例>芦部ら学説
イ ブログ 
①失われる権利がどの程度強く規制されているか。②権利の価値。③得られる利益の価値が、②を上回るか。
(違憲審査基準の設定の際に参照するのは、①制約される権利の価値、②規制の厳しさという、制約される側の事情だけ。③の必要性と関連性はともに、得られる利益である。関連性も利益であるという考え方:どんなに立派な目的を掲げていてもその目的を達成できない規制からは、得られる利益『0』である。)
ウ 違憲審査基準は四つが代表的。
A  厳格審査(①目的が必要不可欠で、②手段が必要最小限度である)
B-1 LRAの基準 (①目的が重要で、②同じ目的を達成するより緩やかな手段が存在しないこと)
B-2 実質的関連性の基準 (①目的が重要で、②目的と手段の間に実質的関連性があること)
C  合理性の基準  (①目的が正当で、②目的と手段の間に合理的関連性があること)
エ 人権と人権のぶつかり合いについて裁判所が判断する場合など「人権と人権とが衝突し、その調整を図るような場合」には、個別的利益衡量論による。これに対し、人権と国家の利益の衡量が行われる場合には、後者が優先される可能性が高い。そこで、違憲審査基準によるべきである。
オ 審査基準を決定する要因は,規制の目的(経済的自由で)、①憲法上の権利としての保護の有無・程度,②制限の有無・程度・態様,③立法裁量の有無・程度の3つである。これらの要素が、事案の性質を読み解くカギになる。
教育、管理者、決定する側の場合、③裁量がある。
参考:手段の規制の程度が強いので、審査基準を強くするというのは、当該規制だけを見ている。これに対し手段審査では、目的達成との関係で、他の手段と比べて当該規制がよりよいかを見ている。
原 反 私
保 中間 簡単に 厚く
制 中間 簡単に 簡単に
審 中間 簡単に 厚く
目 簡単に 簡単に 簡単に
手(ここが最も厚く) 厚く 関連性 必要性 相当性 厚く 最も厚く
3処分違憲
(1)人権が憲法上保障されていることは、処分違憲を論じる前に法令違憲のところで論じていればここで論じる必要はない。いきなり処分違憲から論じるときはここで論じる。制約も同じ。
(2)ア 
「処分審査においてなすべきは、憲法に照らして法令の要件を解釈し、そこに事実をあてはめることである」
目的手段審査を用いず、法令の要件の解釈であることを必ず示す必要がある。あくまで法令の文言の解釈である。その中で憲法の人権に照らして解釈するという行為が入るのみであり、長々と論じない。ここで拾うのは具体的事実(司法事実)である。立法事実ではない。
法令の文言(例えば「住居」に「侵入」)は、憲法14条1項から、「特定の思想表現を差別する形で適用してはならない」と解釈することができる。
例えば、公務員のストのあおり行為を禁じた法律を「これは悪質でないストに適用するのは違憲だから、これは悪質なストに限定すべき」とする合憲限定解釈を経た上で、本問のストが悪質なストといえるかどうか、を審査する場合ですね。
イ 
「私は、適用違憲の場合は、法令違憲と異なり、特別に審査基準を立てずに単純に文言のあてはめをすることによって適用場面なのかどうかを論証していく方針が正しいと思っています。」
(3)厳格性を審査するための事由は、法令違憲と同じく、権利の価値、制約の有無・程度、裁量の有無・程度である。

人権 Ⅰ人権の享有主体  Ⅱ基本的人権の限界  Ⅲ包括的人権と法の下の平等  Ⅳ精神的自由権
Ⅴ表現の自由  Ⅵ経済的自由権  Ⅶ人身の自由・社会権・参政権
Ⅰ 人権の享有主体
1 章前
処分違憲と統治の一部は準備。嫡出子・君が代起立斉唱・堀越・成年被後見人の選挙権・薬事法等の判例。
人権の勉強法:なぜその権利・自由が保障されるのか、その理由を理解し、そこから論じる。
介入されない自由か、強制されない自由か、求める自由か、など権利・自由の本質も意識する。
2 法人(1)法人にも人権保障規定が及ぶか。人権は本来自然人を予定しているようにも思えるため問題となる。
この点、法人は現代社会において一個の社会的実体として重要な構成要素であると認められる。
そこで、法人にも性質上可能な限り人権が保障されると解する。
(2)法人は社会上の実体性を観念し得るので、その外面的な精神活動も観念し得るといえる。
とすれば、精神的自由たる政治的表現の自由(21条1項)も、権利の性質上、法人に保障されると解する。
(3)では、法人にも自然人と同程度の政治的表現が保障されるか。
この点、法人は現代社会において強大な経済的・社会的影響力を有する。とすれば、法人に自然人と同程度の政治的表現の自由の保障を認めると、相対的に個人の政治的影響力を低下させる。
また、法人は、その内部に人権を保障された自然人が存在し、内部の自然人に対する不当な影響力を及ぼしかねない。
そこで、法人の政治的表現の自由は、自然人の人権を不当に制約しない限度でのみ保障されると解する。
3外国人
(1)原告:人権の前国家的性格(11条)、及び憲法が国際協調主義(98条2項)を採用していることから、権利の性質上、日本国民のみを対象とするものを除いて、外国人にも人権の保障が及ぶ。
(2)選挙 ア 国政選挙権(15条1項)は外国人に保障されるか。
憲法は国民主権原理(1条後段)を採用しており、これは国民が自己の属する国における国政のあり方を決定する権限を有するという原理である。とすれば、国政選挙権はその性質上日本国民のみを対象とするものである。
したがって、外国人に国政選挙権は保障されない。
イ 憲法が国民主権原理(1条後段)を採用し、地方公共団体が統治機構の不可欠の要素をなすものであることから、93条2項の「住民」とは、地方公共団体の日本国民を意味すると解される。
したがって、地方選挙権は、その性質上日本国民のみを対象とするものであって、外国人には保障されない。
ウ もっとも、憲法は地方自治を保障しており(第八章)、地方レベルにおいては住民自治の要請が強い。すなわち、地方自治は、住民の意思に基づいて行われるべきであるとされている。そこで、地方公共団体の管理する地域と緊密な関係を有するに至った外国人に対して、法律をもって、地方選挙権を付与することは禁止されないと考える。
エ. 法は、日本国民と外国人との取扱いを異にするものであるから、14条1項違反の問題も生じる。
この点、14条は個々人の差異に基づく合理的区別のみを許容するところ、選挙権が外国人に保障されない以上、法の別異取扱いは合理的な区別であり、14条に反しないと解する。
(3)公務 ア 公務就任権が憲法上保障されるか。
公務員になることは政治に参加することであるから、公務就任権は15条1項により保障されると解する。(原告の主張)
公務員も生計を維持するための職業の一つである。そこで、公務就任権は22条1項によって保障される。(反論・私見)
イ 前提として、人権の前国家的性格(11条)、及び憲法の国際協調主義(98条2項)から、外国人にも、権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除いて、人権が保障される。国の統治作用に関わる公務員に就任する権利は、国民主権原理(1条後段)の観点から、日本国民のみを対象とするものである。したがって、外国人には保障されない。
これに対し、国の統治作用に関わる可能性・程度が極めて低い公務員に就任する権利は、国民主権原理に反するおそれがほとんどないため、日本国民のみを対象とするものとはいえない。したがって、外国人にも保障される。
ウ 地方公共団体が統治機構の不可欠の要素をなすものであるから、同様に国民主権原理が妥当する。したがって、地方公務員の就任権も、上述の判断基準によるべきである。
ただ、憲法第8章の趣旨たる住民自治の観点から、地方公共団体の管理する地域と緊密な関係を有するに至った外国人については、より広範な職務就任権を認めるべきと解する。
エ. なお、法は日本国民と外国人との取扱いを異にするものであるから、14条1項違反の問題も生じ得る。
この点、同条項は、個々人の差異に基づく合理的区別のみを許容したものである。
公務就任権が外国人に保障される以上、法は不合理な差別である。したがって、14条に反すると解する。
(4)政治 ア 政治活動の自由などの精神的自由権は自然権的・前国家的性質を有する人権であるため、権利の性質上当然に外国人にも保障される。
イ もっとも、政治活動の自由は参政権の行使に関わるものである。そして参政権は国民主権の原理(1条)に基づき、本来日本国民のみに認められるべき人権である。
とすれば、外国人に政治活動の自由が保障されるとしても、日本国民と同程度の保障を認めることはできず、我が国の政治問題に対する不当な干渉にならない限りで認められると解する。
(5)教育 ア 教育を受ける権利(26条)は外国人に保障されるか。
(教育を受ける権利は社会権としての性質を有する。そして、社会権は本来各人の属する国によって保障されるべきものであるし、国家の財政事情の下、社会政策上の処遇は国の裁量に委ねる必要がある。しかし、)教育を受ける権利(の背後には学習権が存し、これは国家によって不当な制約を受けないという)自由権的側面を(併せ)持つ。かかる自由権的側面をもつ教育を受ける権利は、日本国民のみを対象とするものとはいえない。したがって、外国人にも保障されると解する。
↑逆では?
イ 制約が許されるか否かの判断基準が問題となる。
教育を受ける権利の社会権としての性質を強調すれば、権利の制約において立法裁量が広く認められ、審査基準も緩やかになる。
しかし、上述のように、自由権的側面をも併せ持っていることからすれば、制約の合憲性はやや厳格に判定すべきである。
ウ  …は日本国民と外国人とで異なる取扱いするものであるから、14条1項違反の問題も生じ得る。14条は、正当な理由のある合理的区別のみを許容したものである。…は不合理な差別であるいえる14条に反する。
(6)生存 ア 生存権(25条)は外国人に保障されるか。
生存権は社会権としての性質を有する。社会権は本来各人の属する国によって保障されるべきものであるし、国家の財政事情の下、社会政策上の処遇は国の裁量に委ねる必要がある。とすれば、生存権は日本国民のみをその対象とするものといえる。
したがって、生存権は外国人には保障されないと解する。
もっとも、参政権と異なり、原理的に認められないものではないから、法律において外国人に社会権の保障を及ぼすことは、憲法上禁止されていないと解する。
→問題文の法律から、どのような権利として具体化されているかその内容を詳細に特定する。
イ …は日本国民と外国人との取扱いを異にするものであるから、14条1項違反の問題も生じ得る。同条項は、個々人の差異に基づく合理的区別のみを許容したものである。合理的区別に当たるか否かの審査基準は、生存権が社会権としての性質を有し、権利の制約において立法裁量が広く認められることから、緩やかに解する。
(7)出入国 ア 国際慣習法上、国家は外国人の入国を自由に拒否できる。したがって、入国の自由は権利の性質上、日本国民のみをその対象とするものであって、22条1項により外国人に保障されるものではない。
そして在留期間の更新も、入国と同一の次元で捉えうる以上、在留権は外国人には保障されないと解する。
在留期間中の政治活動は、在留の更新の際に消極的事実として考慮され得る。
イ 反論:国際慣習法上、外国人に入国の自由は認められていない。これは、再入国の自由においても同じである。
原告:しかし、再入国を新規入国と同視することはできない。なぜならば、特に生活の本拠を日本に有する外国人にとっては、再入国は生活の本拠地たる日本への帰国を意味するからである。また、自国の親族を訪ねるなど、一時出国の要請が強い。そこで、新規入国よりも審査基準をやや厳格にし、法務大臣に広範な裁量権は認められないと解する。

 

Ⅱ 基本的人権の限界
1 特別権力関係
(1)公務員 政治的表現 
ア …は政治的表現の自由であり21条を根拠に保障される。そして公務員にも当然に政治的表現の自由が保障される。
イ 制約が許されるか。反論:憲法が公務員関係の存在と自律性を憲法秩序の構成要素として認めており(15条、73条4号)、また、職務の公正とそれに対する国民の信頼を保護すべく、公務員の職務はその中立性が保たれる必要がある。そこで、緩やかな基準によるべきである。(事案に応じて信頼が害される場合の重大性を論じさせることはありうる。)
私見:政治活動の自由は表現の自由(21条)に含まれ、表現の自由は民主主義社会の基礎をなす重要な権利であるから、その制約は厳格に解すべきである。
適用違憲では、職務上の地位や職務の内容に照らし、その行為が与える影響を判断する(法令違憲も一般的な形でこの判断)。
ウ 堀越事件(最判平24・12・7)
法令解釈・処分違憲R:法102条1項は公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持し、これに対する国民の信頼を保護することを目的とする。他方、国民の政治的活動の自由は憲法21条1項により保障され、この自由は民主主義社会を基礎づける重要な権利であることに鑑みると、政治的行為の禁止は必要やむをえない限度に制限されるべきである。この要件は刑罰法規の構成要件となり、制約の程度が重大である。そこで、政治的行為とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、現実的に起こりうるものとして実質的に認められるものを指し、同項はそのような行為の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解する。
法令違憲R:憲法21条1項に反するか。目的が合理的かつ正当で、制限は必要やむを得ない限度で目的を達成するために必要かつ合理的であれば合憲である。
法令違憲A:本件罰則規定の目的は、公務員の職務の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し、これに対する社会的信頼を維持するところにあるところ、これは議会制民主主義に基づく統治機構の仕組みを定める憲法の要請にかなう国民全体の重要な利益である。したがって、目的は合理的かつ正当である。また、禁止の対象は、政治的中立性を損なうおそれがあると実質的に認められる政治的行為に限られるので、その制限は必要やむを得ない限度にとどまり、前記の目的を達成するために必要かつ合理的な範囲にとどまるというべきである。合憲である。
処分違憲A:本件配布行為は管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもない。したがって、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。
(2)公務員労働権  ア 公務員も労働力を提供し対価を得て生活している者であるので、「勤労者」(28条)に当たる。したがって、公務員にも労働基本権が保障されている。
イ 全逓東京中郵事件:労働基本権の制限の合憲性基準として4要件。制限を合憲としたが、被告人の行為を正当争議行為として刑事免責した。都教組事件:合憲限定解釈、二重のしぼり(適用違憲で使える)によって、規定を合憲としたうえで被告人を無罪とした。全農林警職法事件:①財政民主主義論、②市場抑止力の欠如、③代償措置論を理由に、一律かつ全面的な国家公務員の争議行為の禁止規定を合憲とした。(ざい し だい)
ウ  原告:労働基本権は勤労者の生存権(25条)を保障するために不可欠な人権である。また、本件は…であり、経済的弱者の地位にある労働者を団結等させることによって使用者と対等の立場に立たせるという28条の趣旨にかなう側面である。
反論:公務員の職務は公共性を有するので、その職務の停滞は国民生活に重大な影響を及ぼす。国民生活全体の利益の保障という見地から、権利は制約され、緩やかな審査基準によるべきである。
私見:職務上の地位や職務の内容に照らし、その職務が停滞するとどうなるのか丁寧に検討する。
(3)在監者 ア 情報摂取は個人の思想・人格を形成・発展させる。また、文字による表現は読み手がいて初めて実質的に保障される。そこで、閲読の自由は19条、21条1項の派生原理として保障される。そして、被収容者にも当然に閲読の自由が保障される。
イ 制約が許されるか。
憲法が収容関係の存在と自律性を憲法秩序の構成要素として認めているため(18条、31条)、被収容者の人権は必要最小限度の制約に服する。未決拘留者については、収容目的を達成する必要に加え、施設の規律と秩序を維持する必要がある。ただ、閲読の自由は表現の自由(21条)の一内容をなし、表現の自由が民主主義社会の基礎をなす重要な権利であることに鑑みれば、制約の合憲性はやや厳格に解するべきである。そこで、①障害が発生する相当の蓋然性があり、②手段が必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、必要最小限度の制約として許されると解する。
ウ 被疑者は、権利制約の根拠(収容目的)として、拘禁と戒護が挙げられる。矯正教化は当てはめない。
被告人であれば、権利制約の理由として、拘禁、戒護に加え、矯正教化も含まれる。
エ H25重判11…選挙権行使の制限の場合もやむをえない事由が必要である。受刑者であることから公正な選挙権が期待できないとはいえない。不在者投票と同様の方法により選挙権を行使できる。一般に公民権を剥奪される合理的理由はない。テレビも新聞もあるので、受刑者が選挙権行使に必要な情報を収集することが刑事施設法により一般的に制限されているとはいえない。やむを得ない事由はない。もっとも、立法不作為は要件①②ともに欠き、国賠法上違法とはいえない。
(4)制限行為能力 ア H25重判10…憲法が選挙権を保障する趣旨は、自らが自らを統治するという民主主義の根本理念を実現するために、主権者として国のあり方についての意見を持ち選挙権行使を通じて国政に反映させることが、議会制民主主義の根幹であることにある。そこで、やむを得ない場合に限り制限することができる。成年被後見人の中にも、選挙権行使に必要な判断能力を有する者はいる。それらの者の選挙権行使が困難であることは認めがたい。地位確認請求が認められる。
イ 未成年者は、精神的に未成熟であり、外部からの影響を受けやすい。そこで、自己加害や悪影響に対する防止を目的とする制約については、緩やかな基準により審査するべきである。

2 私人間適用
(1)憲法の人権規定は本来、対国家的性質を有することから、私人間に適用されないという見解がある。
しかし、今日、社会的権力による人権侵害の危険が増大している。また、憲法は全法秩序の基本原則であって、すべての法領域に妥当するものである。とすれば、憲法の人権規定を私人間にも適用すべきである。
ただし、直接適用すれば、国家の過度の介入により市民社会の基本原則たる私的自治の原則が害されるおそれがある。
そこで、私法の一般条項に憲法の人権規定の趣旨を取り込んで解釈・適用し、間接的に私人間の行為を規律すべきと解する。
(2)論M5(H13旧試) ア 人権保障と私的自治の調和の観点から、私法の一般条項に憲法の人権規定の趣旨を取り込んで解釈適用し、間接的に私人間の行為を規律すべきである。
具体的には、社会的に許容しうる限界をこえたか否かにより判断する。→比較衡量(事1.2)
イ 本問では、団体内部の構成員の思想良心の自由(19条)と、団体の政治献金をする自由(21条1項)の利益衡量により、本件決定が団体の「目的の範囲内」(民法34条)の行為か、検討する。その際、①団体の性質、②問題となっている人権の性質、③構成員に求められる協力の程度を判断要素とする。
ウ この点、法律上の強制加入団体においては、多数決の決定が少数者の意思に反したとしても、脱退によりその権利を守ることができない(①)。また、特定の政治団体に政治献金をするかどうかは、構成員の選挙権(15条1項)の行使と表裏をなすものとして、構成員各自が個人の意思に基づいて自主的に決定すべき事柄である(②)。
エ したがって、本問の決定は、構成員の政治的思想良心の自由を侵害するものであり、19条の趣旨に反し団体の「目的の範囲」を逸脱し、無効と解する。
(3)本問は…が公序良俗(民法90条)に反しないかが問題となる。
この点、…は学問の自由(23条)により保障される。また、学校側の自律権も、学問の自由(23条)の一内容たる自治の自由に含まれ保障される。そこで、両者の利益を比較衡量して、…が公序良俗に反しないかを検討する。
(4)比較の方向性を出す。例:男女平等(日産)、思想良心の自由VS雇用の自由(三菱)、学生を規律する義務権能(昭和女子)
比較する要素を出す。あてはめをまず考えて、そこから帰納的に抽出し抽象化した要素を書き出して作る。

 

Ⅲ 包括的人権と法の下の平等
1包括的人権
(1)人権は人間が人間であることにより当然に有する権利である(人権の固有性 11条、97条)から、憲法は14条以下の人権以外の人権の保障を排除する趣旨ではない。よって、新しい人権は一般的・包括的権利である幸福追求権(13条後段)を根拠に保障されると解する。もっとも、新しい人権を安易に認めてしまうと人権がインフレ化し、人権保障の意味を希薄化してしまう。そこで、新しい人権として保障されるには、個人の人格的生存に不可欠な利益であることが必要であると解するべきである。
参考:個人の私生活や(思想良心など)内心に関する情報…厳格に審査する。 上記には含まれないが、性質上利用方法次第で上記情報にアクセスできる情報(指紋など)…中間的な基準でいく。 その他(例:喫煙の自由)…恣意的記載は許されない。比例原則(13条)
(2)プライバシー権とは、自己に関する情報をコントロールする権利をいう。現代のような高度情報化社会において、個人情報がいったん流出すると当該個人の人格的利益が甚だしく害されるおそれがあることを考えれば、プライバシー権は人格的生存に必要不可欠なものといえる。したがって、13条後段により保障されると解する。
原告:前科は人の名誉、信用に直接関わる事項であるから、前科をみだりに公開されない権利も13条により保障される。反論:前科は公的記録であり、公開を欲しない個人情報とはいえないとも思える。私見:それが広く一般に認識されているとは限らない。とすれば、前科であっても公開を欲しない個人情報といえる。したがって、前科をみだりに公開されない権利もプライバシー権の一内容として保障される。
反論:個人情報は公開法廷(82条参照)で既に明らかにされているため、公開を欲しない個人情報とはいえないとも思える。私見:それが広く一般に認識されているとは限らないことから、公開を欲しない個人情報といえる。したがって、前科者の個人情報もプライバシー権の一内容として保障される。
原告:氏名、住所、電話番号もプライバシー権の一内容をなす。反論:これらは個人識別のための単純な情報であって、秘匿されるべき必要性が高いとはいえないから、保護され得ない。私見:これらの情報であっても、自己が欲しない他人にはみだりに公開されたくないという期待は保護され得る。
原告:自己の私的事項に関する情報の取扱いについて自ら決定する権利は、人格権の一内容たるプライバシー権として、憲法13条後段により保障されると解する。
反論・私見:氏名、生年月日、性別、住所は、本人確認情報にとどまるもので、個人の内面に関わる情報と異なり、秘匿性の程度は低い情報である。収集は既に終わっており、人に利用され、開示され、初めて意味をもつ情報である。(利用・開示の場面である 収集の場面×)住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集、管理、利用する行為は、正当な行政目的の範囲内を逸脱せず、第三者に開示・公表される具体的な危険がないので、制約はない。
(3)外国人の指紋押捺事件 
個人の私生活上の自由として、何人もみだりに指紋の押捺を強制されない自由を有する。
情報の性質のみで要保護性を導くのではない。利用方法まで考え、index機能=私生活や内心に関する様々な個人情報を引き出すことが可能になる。指紋は、指先の紋様であり、それ自体では個人の私生活や人格、思想、信条、良心等個人の内心に関する情報となるものではないが、性質上万人不同性、終生不変性をもつので、採取された指紋の利用方法次第では、個人の私生活上の自由が侵害される危険性がある。そこで、指紋の情報は、特に保護されるべきである。
A反論:外国人は戸籍制度がないので、立法目的に必要性・合理性がある。三年に一度で一指のみ、刑罰による間接強制と、他の手段と比べても緩やかなものである。以上より、合憲である。
(4)承諾なしにみだりに容貌等を撮影されない権利についてこれを見るに、現代のような高度情報化社会において、顔写真がいったん流出すると被写体の人格的利益が甚だしく害されるおそれがあることを考えれば、人格的生存に必要不可欠なものといえる。したがって、承諾なしにみだりに容貌等を撮影されない権利も、13条後段により保障される。
(5)自己決定権 ア 髪形の自由が憲法上保障される。以下詳論する。自己決定権とは、個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項を、公権力の介入なしに自ら決定できる権利をいい、13条後段により保障される。そして、髪形や服装などの身じまいを通じて自己の個性を実現させ人格を形成することは、個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項であるから、髪形の自由も自己決定権に含まれ保障される。
イ エホバの判例は適用違憲の事例 輸血を伴う手術を拒否する権利が憲法上保障されるか。自己決定権の憲法上の意義と関連して問題となる。自己決定権とは、個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項を、公権力の介入なしに自ら決定できる権利をいう。これは、個人の人格的生存に不可欠なものであるから、13条後段により保障される。そして、様々な宗教観・世界観を持つ人がいる以上、輸血を伴う手術を拒否するか否かも自分で決定すべきものである。したがって、輸血を伴う手術を拒否する権利も自己決定権に含まれ保障されると解する。医師は手術について輸血をする可能性がある点を説明した上で、受けるか否かの判断を委ねるべきである。(何となくという理由で輸血を拒否した場合や、明確な意思を有していない場合は、輸血されない自由は人格権の一内容にならないのだろうか。判例の射程)反論:医師には救命義務がある。

2法の下の平等
(1)処理手順 ①誰と誰との間の別異取扱いが問題となるか(比較の対象)。最初に指摘→14条1項が問題になる。
②それはどのような事由に基づいた区分であるか(差別の基礎)。性別、社会的身分、労力、収益など
③権利利益の性格(不利益の程度) 例えば精神的自由について不利益を受ける場合、厳格に審査する(二重の基準論)。
④目的と別異取扱いの合理性審査(②③より規範→当てはめ→結論)合理性審査:目的が合理的根拠を有し、別異取扱いが著しく不合理ではないこと。やや緩やか:目的が合理的根拠を有し、目的と別異取扱いとの間に合理的関連性があること。厳格な合理性審査(中間):目的が合理的根拠を有し、目的と別異取扱いとの間に実質的関連性があること。厳格審査:目的が必要不可欠で、目的達成のために別異取扱いをすることが必要最小限であること。
当てはめ:区別することそれ自体が不合理である(目的審査)。別異取扱いの程度が著しいので不合理である(別異取扱いの合理性審査)など。
(2)前提 ア. まず、法の内容が不平等であれば、いかにそれを平等に適用しても平等の保障は実現されない。よって、法適用の平等のみならず、法内容の平等も14条1項により保障されるものと解する。(注意:適用違憲ではこの論点は書かない。)
イ. 次に、14条は13条前段の個人の尊厳を受けて規定している。そこで、「平等」とは個人の事実的差異を前提とした上で、同一事情、条件の下では同一に取り扱うという相対的平等をいい、合理的区別は許されると解する。
(3)②について ア 本問の法律は性別による差別といえる。これは、14条1項の列挙事由に基づく差別であり、列挙事由は民主主義の理念に照らし特に重要なものであるから、原則的に不合理といえ、厳格な審査基準によるべきである。
イ 非嫡出子という身分は、親が婚姻しない限り解消されないから、自らの意思では変えられない社会的な評価を伴う地位であるといえ、「社会的身分」に当たる。これは、14条1項の列挙事由に基づく差別であり、民主主義の理念から原則的に不合理といえる。また、自ら変えることのできない事由に基づく差別は、個人の尊厳を害する。
ウ 身体障害の有無は、自らの意思では変えられない社会的な評価を伴う地位であるから、「社会的身分」に当たる。これは、14条1項の列挙事由に基づく差別であるから、民主主義の理念から原則的に不合理といえる。また、自ら変えることのできない事由に基づく差別は、個人の尊厳を害する。
(4)③について ア 原告:相続分の減少は大きな財産上の不利益であり、審査基準は厳格に解する。反論:相続制度を定めるに当たっては、国の伝統、社会事情、国民感情、家族というものをどのように考えているか、その国における婚姻ないし親子関係に対する規律、国民の意識等を総合考慮しなければならないので、相族制度をどのように定めるかについては立法府の広い裁量に委ねられる。そこで、審査基準はやや緩やかに解する。(H25重判)
イ 反論:しかし、社会的弱者たる身体障害者を優先することは、福祉主義(25条以下)の要請に合致する。そこで、やや緩やかな基準で審査すべきである。
ウ 反論・私見 出生届に「嫡出子」または「嫡出でない子」の別を記載させる戸籍法の規定の場合、記載が何か影響を与えるわけではない。したがって、不利益は小さい。不合理な差別とはいえない。
エ 男女間の障害等級の差別は合理的区別として許されるか。その審査基準が問題となる。(京都地判平22・5・27)
労災補償による填補の程度は、経済的・社会的条件、国の財政事情等を総合考慮した上での専門的技術的考察及び政策的判断を要する。よって、厚生労働大臣に広い裁量が認められる。そこで、緩やかな審査基準によるべきである。
当てはめ:外ぼうの醜状障害による精神的苦痛、就労機会の制約、損失填補の必要性は男性より女性のほうが大きい。しかし、本件差別的取り扱いは、男女間で5級の差があり、給付額の差が大きい。性別と質的に大きく異ならない年齢等の職業能力的条件は障害の程度を決定する要素となっていないところ、著しい外ぼうの醜状障害についてだけ、性別によって上記のような差が設けられていることの不合理さは著しい。
(5)国籍法違憲判決
①嫡出子と非嫡出子で異なる取扱いをする。そこで、14条1項に違反しないかが問題となる。
原告:②嫡出性に関する別異取扱いである。嫡出性は、子にとっては自らの力では変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。これによって別異取扱いをすれば、個人の尊厳(13条)という民主主義の根本理念を害するおそれがある。また、③日本国籍は日本国の構成員としての資格であるとともに、日本国において基本的人権の保障(参政権等)、公的資格の付与(?)、公的給付(国民健康保険など)等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位である。そこで、審査基準は厳格に解する。
反論:③しかし、国籍の得喪の要件は「法律でこれを定める」(憲法10条)とされており、国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等を考慮する必要があるので、広い立法府の裁量に委ねられている。したがって、審査基準は緩やかにする。
そこで、④目的が合理的根拠を有し、別異取扱いとの間に合理的関連性を有する場合には合憲である。
本問では、諸規定を通覧すれば、血統主義を基調に日本国民との法律上の親子関係に加え、日本国との結びつきの指標となる一定の要件(父母の婚姻)を求めたものであり、立法目的には合理的根拠があるといえる。しかし、家族の多様化、事実婚が増加していること、国際結婚が増えたことから、我が国との結びつきを示す事情として嫡出性を求めることは、目的との間に合理的関連性がない。以上より、14条1項に違反し違憲である。
(6)地方公共団体は、各地域によって特殊性を有する。また、憲法94条は各地方公共団体の条例制定権を認めており、地域による取扱いの差異は憲法自身が容認するものである。よって、地域差も合理的区別といえる。

3議員定数不均衡 (けしさごはじ)
(1)権利性 選挙権は議会制民主主義の根幹をなす重要な権利であり、国民の意思が正確に議会に反映されるには、その価値も平等でなければならない。そこで、投票価値の平等も、14条により保障されると解する。
(2)審査基準 代表民主制における選挙制度は、選挙された代表者を通じて、国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標とし、他方、国政における安定の要請をも考慮しなければならない。議員が全国民を代表する(43条1項)という要請の下、選挙の具体的事項については法律で定めるものとし(43条2項、47条)、各選挙制度の仕組みについて国会の裁量が認められる。そこで、国会が選挙制度の仕組みについて具体的に定めたことが、上記基本的要請や、法の下の平等などの憲法上の要請に反するため、裁量の逸脱濫用がある場合に、違憲となる。
上述の投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的と調和的に実現されるべきものである。選挙区制度が採用される場合には、選挙制度の区割りについて、議員1人当たりの選挙人数又は人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることを求めているが、それ以外の要素も合理性を有する限り考慮することができる。具体的には、地域の面積、人口密度といった事情を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保する要請との調和を図ることが求められる。
(3)その他 ア 参議院においても同様の基準によるべきか。反論:参議院における地域代表的性格を重視して、衆議院の場合よりも広い較差を認めるべきである。原告(私見):しかし、どちらも同様に「全国民を代表する」(43条)から、両者を同様に扱うべきである。したがって、参議院においても同様の基準によるべきである。
イ 人口の異動は不断に生じるので、合理的期間内における是正が行われない場合にはじめて憲法違反となると(合理的期間論)。
ウ では、違憲とされた場合、その範囲はどこに及ぶか。議員の総定数と各選挙区の定数配分は、密接な関連性を有している。とすれば、定数配分規定は、不可分のものであると解され、全体が違憲となると解する。
エ 選挙の効力をいかに解すべきか。本来ならば選挙は無効となるはずであるが、選挙無効の判決が言い渡されても、法改正なくしては違憲状態を改正し得ない。また、選挙を無効とすると、著しく混乱を招いてしまい、これは憲法の予想しないところである。そこで、一般原則たる事情判決の法理(行訴法31条参照)を採用し、選挙自体はこれを無効としないとすべきである。

 

Ⅳ 精神的自由権Ⅰ
1内心の自由
(1)保障 ア 思想良心の自由(19条)の保障内容は、保持強制の禁止(内心の自由)、沈黙の自由である。
イ 謝罪広告の強制が思想・良心の表明を強制することになり、19条に反しないか。この点、思想・良心とは、世界観・人生観など個人の人格形成に必要な精神作用をいう。なぜなら、人格形成活動に関連のないものまで含めると、思想・良心の自由の価値が希薄になるからである。謝罪の意思表示の基礎にある道徳的な反省、誠実さは人格形成活動に関連のないものであるから、思想・良心に含まれない。したがって、謝罪広告は思想良心の表明を強制するものではないから、19条に反しない。
(2)制約 思想良心の自由は、内心にとどまる限り絶対的に保障されるが、外部の他の利益等との関係で制約される場合がある。
思想良心と一般的客観的にみて不可分に結びつく行為に反する行為をさせようと(強制)することが、内心の自由を直接的に制約するものである。
特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から評価される行為を命じる(強制する)ことが、沈黙の自由を直接的に制約するものである。例:踏み絵
(3)君が代のピアノ伴奏を拒否したことを理由に、懲戒免職をすることは許されるか。ピアノ伴奏を命じる職務命令が、Xの思想・良心の自由(憲法19条)を侵害し違憲ではないかが問題となる。
ア 原告:君が代が果たしてきた役割に対する否定的評価という歴史観・世界観は、個人の人格形成に必要な精神作用であり、思想・良心に当たり、その自由(19条)として保障される。そして、ピアノの伴奏拒否はかかる思想・良心に基づく選択といえる。
反論(私見):しかし、内心に反する行為を強制されない自由は、19条の保護範囲に含まれない。当該思想良心と、一般的にみて、不可分に結びつく行為に反する行為をさせる場合に、内心の自由に対する直接的制約があるとしている。→直ちに違憲。
入学式でのピアノ伴奏は音楽教師にとって当然求められる職務内容であり、上記思想良心と不可分に結びつくものではなく、本件職務命令がかかる価値観それ自体を否定するものではない。したがって、直接的制約はない。
私見:思想・良心と一般的には結び付かないが、個々人の思想良心と結びつく場合がある。本件ではXの思想良心と直接結び付く行為であり、その点で間接的制約がある。(論文では、直接的制約がなくても諦めない。)
イ 原告:君が代の斉唱に際し、公的機関が参加者の意思に反してでも一律に行動すべく強制することに対する否定的評価も、思想・良心に含まれ19条により保障される。
反論:しかし、全て公務員は全体の奉仕者であること(15条2項)からすれば、職務命令によって達せられる公益(公務員全体の自律性の確保)がなお優先されるべきである。
(4)君が代起立斉唱職務命令(最判平23・6・14)
採用選考の不合格が国家賠償法上違法であるとしている。不合格の要因となった起立斉唱行為を命じる職務命令が、Xの思想良心の自由(憲法19条)を侵害し違憲ではないかが問題となる。
ア 権利の保障
思想・良心とは、世界観・人生観など個人の人格形成に必要な精神作用をいう。Xらの有する君が代に対する否定的評価も、歴史感ないし世界観から生ずる社会生活上ないし教育上の信念であり、個人の人格形成に必要な精神作用である。
そして、公務員であっても、思想良心の自由は当然に保障される。
したがって、Xらの君が代に対する否定的評価は、憲法19条により保障される。
イ 制約の有無
内心に反する行為を強制されない自由は、19条の保護範囲に含まれない。君が代に際し起立斉唱することは、思想良心と一般的客観的にみて不可分に結びつく行為ではない。したがって、直接的な制約はない。
しかし、音楽教員のピアノ伴奏とは異なり、起立斉唱行為は教員が日常担当する事務内容自体には含まれないものであり、声を出し歌うという能動的な行為を伴い、国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為である。そうすると、個人の歴史観・世界観に由来する行動と異なる外部的行動を求められることになり、それが心理的葛藤を生じさせ、ひいては個人の歴史観ないし世界観に影響を及ぼす。この点で思想および良心の自由について間接的な制約がある。
ウ 制約が許されるか
私見:間接的な制約である以上、緩やかな審査基準によるべきである。個人の歴史観ないし世界観には多種多様なものがあり、それが内心にとどまらず、それに由来する行動の実行または拒否という外部的行動として現れ、当該外部的行動が種々の社会一般の規範等と抵触する場面において制限を受ける。そこで、間接的制約は、職務命令の目的及び内容並びに制約の態様等を総合的に衡量して、職務命令の必要性及び合理性が認められる場合に許される。(これも適用違憲の規範で使えるか)
エ 国歌斉唱不起立減給処分(最判平24・1・16) 減給処分は、直接の給与上の不利益が及び、将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上、本件通達を踏まえて毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典の度に懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくので、不利益(制約の程度)は大きい。そこで、処分は慎重な考慮がなされるべきであり、過去の処分歴等に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容を考慮し、当該処分を選択することの相当性を基礎づける具体的事情が認められる場合であることを要する。(これも適用違憲で使えそうである。)A:処分歴が戒告一回という理由だけで減給処分としている。考慮不尽であり、違憲違法である。
(5)会社や自治体が、構成員の考えを強制している場合問題となっている自由が思想・良心の自由として保障されるか→私人間効力の問題→法人の人権享有主体性を述べたうえで反対の利益に言及→両者を利益衡量して判断する(論M14)
ア. 寄付をするか否かの決定は、個人の思想・信条に大きく左右されるものであり、個人の人格形成に必要な精神作用といえる。
とすれば、寄付をするか否かを決定する自由は、思想・良心の自由(19条)として保障される。
イ. 人権保障と私的自治の原則との調和の観点から、私法の一般条項に憲法の人権規定の趣旨を取り込んで解釈・適用し、間接的に私人間の行為を規律すべきである。本問では決議が公序良俗(民法90条)に反し無効となるか、判断基準が問題となる。
ウ. 寄付をする自由は、結社された団体が活動する自由として、結社の自由(21条1項)の一内容をなし、性質上法人にも保障されると解する。そこで、構成員の思想・良心の自由と、団体の寄付をする自由の利益衡量により、本件決定が公序良俗(民法90条)に反しないか、検討すべきである。

2 信教の自由
(1)保護範囲 ア. 信教の自由(20条1項前段)の保障内容は、信仰の自由、宗教的行為の自由、宗教的結社の自由、である。
教義(信仰心)に従った行動をすることも、信仰の自由の一内容をなす。信仰の内容に従ったために不利益を受けるという点で制約を受ける。(又は、教義・信仰心に従った行動をとることも、宗教的行動の自由に含まれるとしてもいいが、しかし、通説は含まれないとする。)
イ. 原告:剣道実技への参加拒否や授業参観の欠席は、信仰の自由により保障される。
ペンダントの着用は、信仰する宗教上の教義に基づく選択であるから、宗教的行為の自由に含まれる。
(2)制約 ア. 解散命令は宗教団体それ自体の解散を命ずるものではなく、信者が当該団体を存続させることが法的に禁じられるわけではないので、宗教的結社の自由を侵害するとはいえない。法人格の取得は自由の保障の範囲外である。清算等により、祭壇等の利用ができなくなることから、信者の宗教的行為の自由に支障が生じるとして、間接的制約を認定するべきである〔42〕。
イ. 剣道の授業は、信仰上の協議に反する行動を命じたものではない。したがって、Xの信仰の自由を直接的に制約するものではない。しかし、重大な不利益を避けるために、信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせるという性質をもつから、この点で間接的制約があるというべきである。
(参考:保護範囲に含まれないとしても、仮に間接的制約があるとして、制約が許されるのかという話に入る場合がある。)
(3)審査基準 ア. 原級留置・退学処分という重大な不利益を与える。よって、さらに審査密度を高める。(判例は、このように審査基準を何重にも、深層化するという手法を採っているので、判例を読むときには注意する。)
剣道の不受講のみを理由として原級留置・退学処分をしていること(他の科目が優秀である、という判例の当てはめからも分かる ここは判例の射程)から、制約の程度は大きい。
イ. 原告:問題となっている行為は、内面的信仰の自由に深く関わるものである(もっと具体的に事実を抽出して評価する)。そして信仰の自由は、個人の人格の核心をなすものであるから、審査基準は厳格に解するべきである。
反論:信教の自由は、内心にとどまる限り絶対的に保障されるが、それが外部的行為としてあらわれる場合には、社会的相互関連性の観点から、他の権利利益との調整が不可欠である。
反論:制約は行為の外形・結果に着目した規制であり、信仰そのものを抑制するものではないので、制約の程度は小さい(間接的付随的制約)。そこで、審査基準は緩やかに解するべきである。
ウ. 他者の血液が体内に入ることを禁止する信仰を理由に拒否した場合、面を付けている以上、出血の可能性はほとんどない。したがって、関連性は薄い。信教の自由に対する制約は非常に限定的であるということになる。
エ. 学校も国家から補助金を受けており、宗教活動の促進という施策の一環を担う(例:関学)と考えれば、拒否は許されないことになる。
(4)政教分離 (ここだけ権理論ではなく、規範→当てはめ→結論というシンプルな構成になる。)
ア. 市費の支出は政教分離原則に違反する行為であり、これにより市が損害を被ったとして、住民訴訟により、市長に対して市の損害を補填するよう求めることが考えられる。
20条3項は「行為」に着目して判断する(71-8 71-13 71-24)。これに対し、20条1項後段、89条は当該「組織・団体」に着目する(71-18 71-20 71-22)。大切なので、問題提起、規範定立、当てはめで、それぞれ区別していることを示すこと。(…は「宗教的活動」に当たるか。宗教的活動とは…。本件行為は…。 …は「宗教上の組織若しくは団体」に当たるか。宗教上の組織若しくは団体とは…。本件…集団は、…)
参考:市が主催した地鎮祭が宗教的行為に当たり、憲法20条3項の政教分離原則に違反しないかが問題となる。(市の支出が20条3項に違反しないか、というのは誤り。単に支出するだけなら、何も問題にならないからである。)原因行為たる地鎮祭が20条3項の宗教分離原則に反するとなって初めて、結果行為たる公金支出も89条に反することになる。最高裁は、原因行為たる地鎮祭が20条3項に反しないとしているので、判旨に89条のはなしは出て来ないことになる。
イ Xは公務員であるから、Xの活動は「宗教的活動」(20条3項)に当たり政教分離原則に反しないか。
憲法は、少数者の信教の自由を確保するため、国家の非宗教性ないし宗教的中立性たる政教分離原則を制度として保障している。かかる趣旨からすると、国家と宗教とは完全に分離されなければならないとも思える。しかし、福祉国家としての理念(25条以下)を果たすためには、宗教団体と国家との完全な分離は現実的ではない。そこで、「宗教的活動」とは、国と当該宗教団体との関わりあいが相当とされる限度を超えるもの、すなわち、①その行為の目的が宗教的意義を持ち、かつ②その効果が宗教に対する援助又は抑圧等になる行為をいうと解する。
その際、行為の場所・宗教的意義、当事者の目的・意図、一般人の評価、一般人への影響等の要素を考慮する。(こうも冷え)
ウ Aの費用支出は、宗教上の組織・団体に対する公金支出の禁止(89条前段)に反しないか。(支出先が、「宗教上の組織・団体」か、が問題となる。それとともに、支出行為が20条3項の「宗教的活動」に当たるかが問題となる場合もある。H24)
参考:H24司法 (ア)公金の支出であり、89条前段の違法が問題となる。公金の支出が20条1項後段又は3項に反するかも問題となるが、ともに制度的保障たる政教分離原則の現れであるから、20条1項後段又は3項は、89条前段の政教分離原則違反のなかで論じる。
(イ)宗教上の組織・団体とは、国家が特権を付与したり公金を支出したりすることが特定の宗教に対する援助又は抑圧等になるものである。特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体である。(本件状況でなく、当該団体の一般的な性質のみを当てはめればいい。 H24) 団体RAC 
(ウ)「宗教上の組織・団体」に当たるとしても、政教分離原則に違反しないか(二段階目)別途検討を要する。→検討
政教分離のRAC 以上の全体像を示せば十分だろう。
参考:空太知事件…目的効果基準を用いなかった。この判例の射程は論争になっているが、私見として「相当限度を超えるもの」という規範で十分だった、と示せばいい。
エ 反論で信仰を理由に別異取扱いをすることは政教分離に反することはあり得る。仮に代替措置を採ることができないなら、裁量の範囲内ということになる(適用違憲の事例か)。政教分離に反しないと判断すれば、代替措置について考慮するべきである。
オ. 国に対する請求は、住民訴訟などの法律が存在しない以上認められない。宗教的人格権の侵害を判例は認めていない。

3 学問の自由(23条)
(1)保障 ア 内容は、学問研究の自由、学問研究結果発表の自由、教授の自由である。→どれに含まれるかを示す。
大学が学術の中心として深く真理を研究することを本質とすることに鑑みて、特に大学における学問の自由が広く保障される。(一般国民の学問の自由と、大学における学問の自由は異なる。)
大学が学術の中心として広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究することを目的としていることから、大学における教授の自由が認められる。
原告:幼稚園の新設は、私人が自らの教育的理念に従い、園児に対し広く幼児教育を行うことを可能とするものであるから、その制約は幼児教育実践の場を奪うという側面こそが最も脅威となる。そこで、幼稚園の新設は学問の自由(23条)の一環として保障される。
反論:営業の事由(22条1項)として保障されるという反論があり得る。
イ. (制約の有無→)かかる制約が許されるか検討する。
原告:学問の自由は、批判的性格ゆえに権力の干渉を受けやすいという性質を有する。とすれば、国家から自由な立場での活動が要請されることから、厳格な審査基準によって判断されるべきである。
反論:しかし、幼稚園における幼児教育は地域住民の正当な関心事であり、公共性を有するから、教育水準低下を防止すべく公権力の関与が要請される。また、施設、設備、予算の国家的整備の不可欠性などから、公権力が一定の限度で関与する必要もある。そこで、やや緩やかな審査基準を用いる。
反論:未解明・未知の危険性、生命・身体の回復不能性から、制約を受けやすい。
(2)大学の自治 ア 原告 学生が一般国民と異なり大学の施設を利用できるのは、大学教授らと同様に特別の学問の自由を有しているからである。
イ 反論 大学の自治は、大学における学問の自由を保障するために、制度的に保障されている。大学の自治の内容は、教授等の人事と、大学の施設と学生の管理である。広い裁量がある。
大学における教授などの研究者が研究結果を教授する自由は保障されている。学生は大学の教授等の教授の自由と自治の効果として学問の自由と施設の利用が認められているにすぎない。よって、保障の内容は間接的であり、権利の価値は小さい。
大学が学術の中心として深く真理を探求することを本質とするので、大学の学問の自由と自治もその範囲でのみ認められる。したがって、学生の集会が実社会生活の政治的社会的活動に当たる行為は、学問の自由の保護範囲に含まれない。
(3)教育権の所在 人は一般に教育を受けて学習し、人間的に発達・成長していく学習権を有する(26条)。特に自ら学ぶことのできない子どもは国家に対し教育条件を整備するよう要求する権利としての学習権を有する。
とすれば、教育は児童生徒の心身の発達に応じて適切な教育的配慮の下で行われる必要があり、そのためには初等中等教育における教育の自由も23条により保障されなければならないと考える。
もっとも、児童生徒には教育内容を批判する能力が備わっていないうえに、学校・教師を選択する余地に乏しい。さらに、全国的に一定の教育水準を確保すべき要請がある。
そこで、国家も必要かつ相当と認められる範囲においては、子供に対する教育内容を決する権能を有すると解する。ただし、学習権の趣旨から、子どもの自由かつ独立の人格としての成長を妨げるような国家的介入は許されない。
(4)教師の教育の自由は、23条により保障される。(仙台地判平23・1・20)
通信表の記載は、教師による教育評価であり、自己の指導が適切であったか否かについて自己反省する機会を与え、児童の発達可能性を引き出すのに重要な手段であるから、教師の教育活動の自由の中でも、教師の裁量を尊重すべき要請が大きい。
そこで、通信表の記載は、上司の職務命令や公権力の行使によって不当に制約されることは許されないと解する。

 

Ⅴ 表現の自由
1 21条1項の自由全般
(1)表現の自由とは、自己の思想・信条(特に政治的意思)を表明する自由である。
本来は、国家から意見表明を妨げられない自由である。そこで、国に表現を強制される場合(強制されない自由、消極的表現の自由 H18新試)、給付請求(プレ ペー1)の場合は、自由の内容及び表現の自由に含まれるかを厚く論じる。
(2)本問の制約は未成年者の知る自由を侵害し違憲でないか。
ア. 知る自由も、情報の送り手と受け手が分離・固定化した現代社会において、自己の人格を形成発展させ、政治的意思決定に関与するという表現の自由の趣旨を実現するために、21条1項によって保障されると解する。
イ. 制約がある。→かかる制約が許されるか。
知る自由が自己の人格を形成発展させ、政治的意思決定に関与する価値を有する重要な権利であることに鑑みれば、厳格な審査基準によるべきとも思える。
ただ、青少年は一般に精神的に未熟であるため、知識・情報を選別して取得する能力を欠き、外部からの影響を受けやすいので、成人と同程度の保障を認めることはできない。そこで、審査基準を緩やかにするべきである。
(3)では、知る自由ではなく、積極的に国家に情報等の開示を請求する権利(知る権利)まで21条によって保障されるか。表現の自由が本来、国家の干渉を排除する自由権であることから問題となる。
この点、国民が政治的意思決定をなすには、公権力の有する情報を得ることが不可欠である。また、国民主権原理の下、公権力の保有する情報は本来国民の情報である。よって、積極的な情報開示請求権も21条によって保障されると解する。ただ、21条の文言は抽象的で具体的な開示の手続を導き出すことはできないし、国防や、国家機密、個人のプライバシーにも配慮する必要がある。そこで、かかる請求権は法律・条例の制定を待って具体化される抽象的権利と解すべきである。本件では、情報公開法により、…という権利として保障されることが具体化されている。
→問題文の法律から、どのような権利として具体化されたのか、知る権利の内容を具体的に特定することが大切である。
(4)アクセス権に対する反論:紙面を割く等の負担を生じさせ、公的事項に関する批判的記事の掲載をちゅうちょさせ、表現の自由を間接的に侵害する。
(5)結社の自由 結社の自由とは、複数人が共通の目的を持続的に結合する自由をいう。その内容は、団結する自由、結社の自律的意思決定の自由、団体に加入しない自由等の消極的結社の自由である。
「政党が…を公認候補とすることができなくなる」という法律について、政党の結社の自由(21条1項)の問題として扱ってもいいのではないだろうか(H25予)。反論:選挙制度については、立法府の裁量(47条)があるので、審査は緩やかにする。
(6)営利的表現の自由
ア 原告:まず、営利的な表現活動であっても、国民一般が消費者として広告などを通じて様々な情報を受け取ることの重要性に鑑み、表現の自由の一環として21条1項で保障されるものと解する。
表現の自由のために必要不可欠な資金調達活動の一つであるから、表現の自由の一内容として保障される。という発想でもよい。
イ 反論:広告放送はあくまで営業の自由(22条1項)の一内容である。
ウ 制約が許されるか検討する。一般に表現の自由は、個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的な価値(自己実現の価値)と、言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという民主政に資する社会的価値(自己統治の価値)を有する、極めて重要な人権である。とすれば、厳格な審査基準により合憲性を判断すべきとも思える。
もっとも、営利的表現は政治的意思決定に関わる可能性が低く、自己統治とのかかわりが希薄である。そのため、やや緩やかな基準を用いる。

2報道の自由と取材の自由
(1)取材の自由 ア 開示は、テレビ局の取材によって得られた情報の開示を強制されない権利を不当に制約し違憲でないか。
取材した情報の開示が強制されると、将来の取材活動が萎縮するので、かかる権利は取材の自由の一内容をなす。
原告:報道の自由も国民の知る権利に奉仕するものであるから21条1項により保障される。そして、報道は取材・編集・発表という一連の行為により成立する。そこで、報道の不可欠の前提たる取材の自由もまた21条1項により保障されると解する。
法人も社会的実在として権利の性質上可能な限り人権規定が適用されるところ、取材の自由は、報道機関たるテレビ局にも性質上保障される。したがって、テレビ局に、取材によって得られた情報の開示を強制されない権利が保障される。
反論:取材はあくまで報道が正しい内容を有するための手段にすぎず、21条1項の精神に照らし十分尊重に値するにとどまるというべきである。したがって、やや審査基準を緩やかにする。
イ 報道の自由、取材の自由と、公正な刑事裁判の実現(37条1項)との調整をいかに図るかが問題となる。
取材の自由は国民の知る権利に奉仕する重要な権利である。また、公正な刑事裁判の実現(37条1項)も、刑事被告人の人権保障に不可欠であり、憲法上の重要な要請といえる。本問は両者の調整を図る場面であるから、個別的利益衡量論により、提出命令により得られる利益がこれにより失われる利益より大きい場合に合憲であると考える。その際、犯罪の重大性、証拠の必要性、取材の自由の妨げられる程度、報道の自由に及ぼす影響等を考慮する。(犯証取報)
ウ 取材の自由と、適正迅速な捜査の遂行という要請との調整をいかに図るかが問題となる。
この点、取材の自由は国民の知る権利に奉仕する重要な権利である。また、適正迅速な捜査の遂行も、公正な裁判の実現に資するものではある。そして、両者の調整を図る場面であるから、個別的利益衡量論によるべきである。
原告:しかし、適正迅速な捜査の遂行は憲法上の要請ではない。そこで、取材の自由を重視した上で、差押えによって得られる利益が差押えにより失われる利益よりも大きければ合憲と考える。その際、犯罪の重大性、証拠の必要性、取材の自由の妨げられる程度、報道の自由に及ぼす影響等を考慮する。
提出○側:公正な刑事裁判の実現(37条1項)のためには適正迅速な捜査の遂行は不可欠であり、両者の利益の程度に差はない。
エ 〔80 取材の自由の刑罰の事例が出た場合、適用違憲で使える。〕①真に報道目的によるものであり、②手段方法が社会通念上相当なときは、正当な業務行為(刑法35条)に当たり違法性が阻却される。
オ 取材に対する保護 反論:国家秘密の保護を理由に必要最小限度の制約に服する。
原告・私見:国民主権の下では本来、国家の情報は国民の情報であり、原則として公開すべきである。とすれば、例外的に、プライバシー保護、裁判の公正、外交防衛上の要請などから、その内容が実質的にも秘密として保護すべき場合に限り、相当な制約も許されると解する。
(2)取材源 
原告:取材源を開示すると、報道関係者への情報提供に萎縮的効果を及ぼすので、取材源の強制開示によって報道機関は報道そのものを控えるようになる。そこで、取材源の秘匿権は、多様な情報の自由な流通という公共の利益を保護するために、21条1項により保障される。原則として取材源に関する証言を拒絶することができる。
反論・私見:手段が相当、承諾がある、当該民事事件が社会的意義を有する、公正な裁判の実現のために取材源の開示が不可欠→〔75〕は比較衡量、などという特段の事情がある場合には、取材源の秘匿は許されない。
(3)その他の自由 ア 放送の自由 反論:テレビなどによる放送に対しては特に強い規制が課されても許される。電波は有限であり、放送は受け手に強力な影響力を及ぼすからである。また、放送は直接茶の間に侵入し、即時かつ同時に動画や音声を伴う映像を通じて視聴される点で受け手に与える影響が強いからである。(H20新試 ウェブサイトの画像もこの論証○)
イ 編集の自由 原告:テレビ局の編集の自由は、報道の不可欠の前提であり、21条1項で保障される重要な権利である。被告:市営=公権力の管理下にあり、やや公共的性格を受けるから、制限される方向に主張できる。
ウ レペタ訴訟 各人が意見、知識、情報を摂取することは、個人の人格の形成発展に役立ち、政治的意思決定に関与する上で欠くことのできない重要な権利である。そこで、情報を摂取する権利は、憲法21条1項の派生原理として保障される。そして、情報摂取のための補助手段として、筆記行為は、憲法21条1項の精神に照らし尊重される。(2段階)
注:筆記行為の場合、二段目の自由なので、取材の自由とは異なり、「十分」尊重に値するとはいわない。
参考:裁判は公開されている(82条)ので、国家に妨げられないという自由権を問題にすることができる。仮に閉ざされていれば、公的な関心事(私的な日記とは異なる)、公正な裁判に資するなどを理由に情報公開請求権でこじ開けないといけない。注意:公開ということは、国が私人に認めているだけであって、請求権として認められているのではない。自由権として争う。この視点は、社会権などでも役立つ。
(4)考慮要素
提出○側…重大な犯罪について、重い刑罰が科される可能性(強力な人権制限)がある以上、慎重かつ適正な手続きの要請が強い。∴提出を認めるべきである。(逆もあり得る) 証拠の必要性について、必要性が高ければ、公判で提出した場合に真実を明らかにできるので、公正な裁判に資する。よって、提出を認めるべきである。(逆もあり得る)
提出×側… 報道の自由について。報道前か後か。前にフィルム提出=報道できなくなる。∴報道の自由に対する侵害の程度は大きい。後ならいい。取材の自由について。取材フィルムにもいろいろある。対象者の了解をとっているもの(匿名やモザイクなどをするものもある 信頼関係が形成されている)と、単に現場にいたから撮影されたものとがある。仮に取材源が問題となった場合には、取材源が公表を望まないのに裁判所に提出されてしまうと、信頼関係が破壊され、取材対象に萎縮的効果が生じてしまう(今後取材に応じない人が出てくる)ので、取材の自由に対する侵害の程度は大きい。よって、提出を認めないとするべきである。また、私人が撮影したものについても、また貸しが信頼関係を破壊し、萎縮的効果を及ぼすことから同様の論理を展開する。

3名誉的表現 (表現内容が嘘又は論評の場合である。明らかな真実の場合はプライバシー)
(1)保護範囲 名誉は人の人格的生存に不可欠の権利として、憲法13条によって保障される。
本問では、Xの社会的評価が低下しており、名誉権侵害が認められる。
(2)処理手順 名誉権の権利性→名誉権侵害の有無=特定人の社会的評価を低下させたか→検閲に当たらないか→事前抑制禁止に反しないか=利益衡量、北方ジャーナルの規範
名誉権の権利性→名誉権侵害の有無→R私人間効力→民法709条→刑法230条の2準用or論評の4要件・逆転の規範
(3)基準 ア 刑法230条の2は、名誉の保障と表現の自由の調和を図ったものであり、これは民事上の不法行為にも妥当する。そこで、名誉毀損的表現も、刑法230条の2の要件(①事実の公共性、②目的の公益性、③真実性の証明)を満たせば不法行為は成立しないと解する。
イ もっとも、③真実性の証明はかならずしも容易ではなく、これがなければ常に不法行為となるのでは、表現の自由に萎縮的効果を及ぼす。これは、名誉の保障と表現の自由との調和を図るという刑法230条の2の趣旨に鑑みれば妥当でない。
そこで、真実と誤信したことについて確実な資料に照らして相当な理由があるときには、故意を否定すべきと解する。
「確実な資料」とは…裁判所○、警察○、その他△→きちんと裏付けをとっていれば○(反論:出版社の規模によって、裏付けをしようにも限界があるので、裏付けを少しだけすればいい。特に個人の場合は、ネットサーフィンぐらい。
私見:ネットによる情報拡散は侵害が大きい。被害者側は、主体が大規模か個人かで損害賠償などできない場合があるのは、被害者救済に反する。そこで、主体ごとに評価は変わらない。)
ウ かかる制約が許されるか。(この論証は、公共の利害に関する表現で、かつ、事前抑制の場合にのみ論じる!)
表現の自由に対する事前の公権力による規制は、表現による公の批判の機会を減少させ、また、事後抑制に比べて規制の範囲が一般的かつ広範である。さらに、公共の利害に関する表現は、社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきである。
そこで、公共の利害に関する表現に対する事前抑制は、21条の趣旨に照らし原則として許されず、厳格かつ明確な要件の下においてのみ例外的に許されると解する。具体的には、①その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であって、かつ、②被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに、③表現者の主張・立証の機会を与える場合、差止めが許される。(真公 重 主 ①②が明らかな場合には③は不要。)
(3)論評 ア 名誉権は人の人格的生存に不可欠の権利であり憲法13条後段によって保障され、Xにも保障される。
イ 本問ではYの行為によりXの社会的評価が低下しているので、名誉権の制約が認められる。
ウ 論評は意思の表明であり、客観的事実を公表するものではないので、論評それ自体の真実性や合理性を問うことのない基準を設けなければならない。また、意見の表明ないし論評を表明する自由が、議会制民主主義社会に不可欠な表現の自由(21条1項)の根幹をなすものであることを考慮する必要がある。
そこで、①公共の利害に関する事項に関する論評が、②専ら公益を図る目的でなされたものであり、③その前提としている事実が主要な点において真実であることの証明であったときは、④人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り、名誉侵害の不法行為の違法性を欠くと解する。(公公真人 私人間適用の事例)
(4)名誉は人の人格的生存に不可欠の権利として、13条によって保障される。そして、本問Yの発言は、Xの社会的評価が低下させているので、Xの名誉権が侵害されたといえる。
しかし、名誉権侵害を理由に出版を差し止めることは「検閲」(21条2項)に当たり許されないのではないか。
検閲とは、①行政権が②思想内容等の表現物を対象とし、③全部又は一部の発表禁止のため、④網羅的一般的に、⑤発表前に審査し、⑥不適当と認められるものの発表を禁止することである。(ぎ し き も ま ふ)。
網羅的一般的にという点、発表のみを禁止することから、芦部説より狭い。

4プライバシー (表現内容が事実の場合 真実性を問題としない規範を立てなければならない。)
(1) ア プライバシー権は13条後段により保障される。そして、前科をみだりに公開されない権利もプライバシー権の一内容として保障される。
イ プライバシー権の制約があるか。
プライバシー権の制約があるというためには、公開された内容が、①私生活上の事実又は事実らしく受け取られる、②一般人の感受性をもって公開を欲しない、③一般の人に未だ知られていないことがらであることが必要である。(じ かん み)
本問では、障害の事実や手術歴は私生活上の事実である(①充足)。また、障害の事実は本人にとっては劣等感を抱くこともある事実で、ふつう公開を欲しない事柄である(②充足)。また、障害の事実や手術歴は一般人に未だ知られていない(③充足)。
したがって、Xのプライバシー権侵害が認められる。
(2)しかし、プライバシー権侵害を理由に出版を差し止めることは「検閲」(21条2項)に当たり許されないのではないか。
本問は裁判所による差止めであるから、行政権が主体となるものではないので、検閲には当たらない。
(3)基準 では、事前抑制の禁止の法理(21条1項)に反しないか。Xの表現の自由とYのプライバシー権との調整をいかに解すべきかが問題となる。
ア 本問では、Xのプライバシー権とYの表現の自由の調整が問題になっているであるから、前科を公開されない法的利益と、表現が許されないことによる不利益とを比較衡量する。具体的には、①表現の公共的・社会的意義、②公表の意図・目的、③対象者の被る不利益の程度を考慮し、前者の利益が後者の不利益を上回る場合には、差止めを認める。(公 公 不)
(別規範:①表現行為が社会の正当な関心事か、②表現内容が不当なものではないか)
イ 石に泳ぐ魚:私人についての表現については、公益性が全くなし=表現の価値は低い。プライバシーは公表されると回復できないので、公表によって失われる利益は大きい。∴差し止めるべきである。
 ウ 当てはめ 原告:10年間経過すると、いったん公表されたとしても、再び公表されない利益を得る=私生活上のはなしである(①がない)。反論:前科は犯罪事実であり、常に公的関心事である。
原告:実名報道はプライバシー侵害の程度が大きい(③が大きい)。実名ではなく仮名でも表現の目的は達成できるとし、結論として実名報道までは必要ない(①との関連性が薄い)。反論:前科について実名報道がなければ真実性の裏付けがとれず、安易に誤った公表が行われるので、実名報道は表現の核心をなす(①との関連が密接である。)
ジャニーズ 差止め○側…プライバシーは一度公開されると、回復が困難であるから、名誉に比べて差し止める必要は高い。住所はプライバシーの根幹に関わり、それが公表された場合には私生活に多大な影響が出るので、被侵害利益は重大である。アイドルは公職とは関係なく、表現の価値が大きくないので、差止めは原則禁止とまではいえず、緩やかに認められる。
(4)プロセス演習憲法 検討課題P144(プライバシー対報道の自由)
ア 報道に対し差止めが請求された。差止め×側…闇金は社会悪であるから、公的社会的関心事であり、報道の自由の価値は大きい。借主たるPは既に死亡しているので、プライバシーの享有主体ではない。家族のプライバシーも関係ない。死者の名誉や、家族の心の静ひつ、という権利は、価値が大きくない。
イ 差止○側…議員の娘といえども未だ公人ではないので、公的関心事とはいえない。したがって、報道の自由の価値は小さい。
差止×側…しかし、離婚は今日の日本において日常的であるから、失われるプライバシーの利益は小さい(重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるとはいえない。)公人に関するとは少なくともいえるので、報道の自由の価値は大きい。出版直前=印刷済みで、差止めにより間接的に失われる報道の自由は大きい。
ウ 差止め×側…議員の娘と銀行の要職の者の政略結婚は公的関心事。将来的に公人になる可能性がある、というのは、やや理由として不適切だろう。
エ 差止め○側…常習性の記事と、1回しか行っていないPとは関連性が薄く、実名報道をする合理性がない(目的との関連性のはなし)。また、公判でも住所までは明らかになっていないので、住所を明らかにすることはプライバシー侵害の程度が大きい。
(5)その他 差止○側:プライバシー権は憲法13条で保障されるところ、少年の場合少年法61条により、実名報道されない権利が具体化される。×側:否定 差止め×側…実名報道は報道の公正・正確性を担保するために必要であり、報道の根幹をなす。なぜなら、仮名では事実の裏付けがとれないので、容易に虚偽の報道が行えるからである。そこで、差止めにより得られる利益は小さく、失われる不利益は大きい。
そして、少年法61条の目的は、少年の健全育成を図る、少年の特別予防(社会復帰)を図ることにある。そこで、かかる目的を考慮して、①表現行為が社会の正当な関心事か、②表現内容が不当なものではないか。(当てはめから帰納して規範や考慮要素を考えることは大切である。)差止め×側:17歳であれば、義務教育終了しており、健全育成や更生を図ることは、妥当しない。○側:ほとんどが日本では高校に進むので、未だ教育段階にいるといってよい。したがって、少年法の目的が妥当する。
差止め×側…凶悪な事件は社会的関心事である。死刑が確定しているので、更生の余地はない。死刑判決を出すほどの重大な犯罪を行ったのだから、社会的関心は高いともいえる。また、死刑という重大な国家行為が誰に行われるかということを知らせるのは重要である。差止め○側…再審の可能性があるから更生ありうる。

5選挙 集会 (1)選挙運動の自由
戸別訪問の一律禁止を定める法条は選挙運動の自由を侵害し違憲ではないか。
ア まず選挙運動の自由が憲法上保障されているか。
立候補にあたって自らの政治的意思表明及びそれに対する賛同を求める行為は、政治的意思表明であるから、選挙運動の自由は表現の自由(21条1項)により保障される。
イ 民主政の根幹をなす選挙のための資料を提供する重要な権利である。
反論(私見):選挙運動が全く自由になされると、選挙の公正が害されるおそれがある。そこで、選挙の公正の要請(前文1段参照)により一定の制約を受けると解する。戸別訪問の一律禁止は選挙の公正による制約として許されるか。(し ばい じ こ)
反論:戸別訪問の一律禁止も、①買収・利益誘導の危険、②情実による投票の左右、③候補者の過大な出費の間接的強制、④有権者の私生活の平穏のかく乱、などの弊害を回避して選挙の公正を確保するためのものであり、合憲である。
ウ 原告(私見):選挙がその本来の意義を発揮するには、有権者が必要かつ十分な判断資料に接することが必要であり、選挙運動はそのための不可欠の前提をなす。議会制民主政の下において重要な意義を有する選挙運動の自由は最大限尊重されるべきである。そこで審査基準は厳格に解する。
②と③についてはそれ自体抽象的危険を問題にしているにすぎず、目的が正当とはいえない。①と④については目的が正当とも思える。しかし、④を防止するには、訪問の時間・人数・方法を制限すればよく、①については事後処罰を定めるなどより制限的でない他の選びうる手段がある。以上より違憲である。
(2)集会の自由
ア 集会の自由とは、複数人が共通の目的を持って同一の場所で目的実現に向けた行動を行う自由である。
デモ行進は、動く公共集会であり、集会の自由に含まれる。
イ 本件不許可処分は、法人の集会の自由を考慮して解釈されるべき地方自治法244条2項「正当な理由」(条例7条の「公の秩序を乱すおそれがある場合」)の解釈を誤り、適用違憲ではないか。(これが処分違憲の書き方!)
(ア)市民会館は地方自治法244条の「公の施設」に当たり、「正当な理由」がない限り、原則として利用可能である。一般的にアクセスが可能である場所であるし、集会の用に供される場所でもあるから、市民会館はパブリックフォーラムといえる。そこでの21条1項の自由に対してはできる限り配慮するべきである。
条例7条は地方自治法244条の「正当な理由」の具体化であるから、同様に以上のことが妥当し、21条1項の自由にできる限り配慮するべきである。
また、集会の自由は精神的自由であり、重要な人権であるから、厳格な審査基準によるべきである。
そこで、7条1号の「公の秩序を乱すおそれがある場合」とは、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見できる場合に限られると解する。(「おそれ」「危険性」の適用違憲で使える規範)
(イ)反論:集会が会館で開かれたならば、グループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結果、グループ構成員だけでなく、本件会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害されるという事態を生ずることが、具体的に明らかに予見されたといえる。
原告:警察への出動要請などで十分対応可能であった。
ウ 現代民主主義において、集会は、国民が様々な意見や情報に接することで自己の思想や人格を形成、発展させ、また、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、さらに、対外的に意見を表明するための有効な手段であるから、憲法21条1項の保障する集会の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されるべきである(成田新法事件)。
エ 集団行動の自由
(ア)デモ行進は、動く公共集会であり、集会の自由(21条1項)に含まれ、憲法上保障されているものと解する。
(イ)原告:情報の送り手と受け手の分離が顕著な現代社会において、集団行動は情報の受け手の地位に固定化された国民が自己の思想を表明する極めて重要な手段であるといえる。手段は、許可制をとっており権利の制約の程度が大きい。包括的な場所規制であり、制約が大きい。そこで、審査基準は厳格に解すべきである。
(ウ)反論:集団行動は純粋な言論と異なり、一定の行動を伴うものであるから、特に他の国民の権利・自由との調整を必要とする。また、基準が明確であるし、実質的には届出制であるから、権利の制約は大きくない。したがって、審査基準は緩やかに解すべきである。
(エ)規制目的は公衆の道路の利用という社会に不可欠な要請を実現するものであるから、必要不可欠といえる(①充足)。

6 限界
(1)明確性(H20・23新試)
ア 表現の自由(21条)を規制する立法は、その要件が明確でなければ、行政の恣意的運用を許すとともに、表現活動に萎縮的効果を及ぼすおそれがあるため、明確でなければならない。(21条の問題であることに注意 31条のときはこの理由は書かず、下の規範のみ)不明確ゆえに違憲となるかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによって決すべきである
イ 参考:刑罰法規の明確性の場合は31条の罪刑法定主義を根拠に挙げ、規範は同じでいい。
ウ 広島市暴走族〔89〕 諸規定を通覧すれば(論文でも事情拾う)、「暴走族」とは、条例2条7号の定義にもかかわらず,暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外には,服装,旗,言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団に限られる。(これも適用違憲で使えそう。)
(2)審査基準を導く権利性・権利制約(制約は手段審査でも書ける) ア 原告:表現の自由は、個人が言論活動を通じて自己の人格を形成・発展させるという価値と、言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという民主政に資する価値を有する、極めて重要な人権である。(自己実現・自己統制と略さず、かつ、本件事案に適した形で直す。このまま書かない。)
イ ビラ配りは、資金の少ない者が、自己の意見を多くの他者に伝えるための簡易かつ効果的な手段である。
ポスター貼付は、必要な資金、時間が少なく、自己の意見を広範囲かつ多数の人に表現できるので、重要な表現手段である。
インターネットはいつでもどこでも誰でもクリック一つで見られる簡易かつ重要な表現手段である。
ウ 「日本共産党大演説会の弁士・日時・場所に関する告知ないし表現をすること」…原告:政党の演説であり、国民の政治的意思決定に関与するものであり、表現の自由の中でも特に重要である。権利の価値は高いので、審査基準は厳しくする。反論:あくまで表現の自由を伝えるための補助手段にすぎず、表現行為それ自体ではない。自己統治の価値との関わり合いは低く、権利の価値は低いので、審査基準は緩やかにするべきである。
エ 「政治的見解に関わる立看板」…原告:他の(営利目的などの)立て看板でも、静穏な住環境の維持を害する。よって、政治的見解に関わるものだけを制限するのは、目的との関係で不合理である。(手段の合理性or平等権侵害で述べる)
オ 精神的自由が不当に侵害されると、民主政の過程そのものが傷つけられてしまい議会では是正不可能である。また、経済的自由の規制については社会経済政策の判断が必要となり、裁判所の審査になじまないが、精神的自由の規制についてはかかる不都合はない。よって、精神的自由の規制は、経済的自由の規制よりも厳しい基準によって審査する。(あまり使わないほうがいい)
カ 反論:事後的かつ段階的規制である。
間接的・付随的規制:行動の結果としての弊害が直接的な規制対象であり、規制の結果として間接的・付随的に自由が制約されるにすぎない。制約の程度は大きくないので審査基準は緩やかにする。
キ 原告:権利そのものが奪われる。制約が強度。違反に刑罰。
反論:本問の条例は時・所・方法に関する規制、内容中立規制であるところ、内容中立規制は内容規制に比して公権力による恣意的運用の危険性は小さい。また、表現内容を伝達する手段が他にあるので、その制約の程度は大きくない。そこで、審査基準はより緩やかにする。原告:内容規制に匹敵しうる。
ク 言論の低価値性(例:ヘイトスピーチ) 原告:政治的意味を持ちうる。低価値か否かを判断するのは自由市場であり、審査基準を緩やかにすべきではない。表現内容規制であり制約が厳しい。
反論:名誉毀損。差別的表現は低価値である。H25重判9:公共性はある。差別的表現は公益性がないので正当性を欠く。
(3)目的手段
ア (反論)私見 目的:25条が国民の文化的生活の増進・向上を目途としており、都市の美観風致の維持はこれに資する。したがって、目的は重要である。規制目的は、電柱を所有する電力会社の財産権・管理権を保護することにあり、正当である。
生命身体は金銭賠償による回復が不能。不可欠な権利のために相当の制約は許される。
イ ○:目的を達成できる。×:他の代替手段でも目的達成できる(必)。
○委員会による審査で権利行使の適法性は担保されている。×:被審査者たる…が任命権者になっており、実質的に担保としての役割を果たさない。×:実行行為だけ処罰すればよいのであおり行為は許されない。具体的危険なくして抽象的危険犯の処罰は過度に広汎である〔53解説〕。
(4)PF(H25司)表現行為にはそのための場所が必要不可欠であるため、①一般公衆が自由に出入りできる場所で、②表現の場として役立つ場所については、そこでの表現の自由の保障に対し、可能な限り配慮する必要がある。審査基準を厳しく。
道路や公園は当たるが、教室などは当たらない(H25司)。マンションの敷地内、駅構内などは①を充足しない。
原告:集合住宅の郵便受けは、表現の媒介が出入りする、表現の場として役立つ場であるから、そこでの表現に対してはできる限り配慮するべきである。反論:①を充足しない。私見としては反論に賛成する。住居権者が私生活を営む場所であってプライバシーに関わる場所であり、管理権者もそのような場所として管理しているからである。

 

Ⅵ 経済的自由権 H26司(出題趣旨と採点実感写す→書きなおし。)
1営業の自由
(1)まず、…は営業の自由の一内容をなす。そして、選択した職業を自由に遂行できなければ、職業選択の自由を保障した意味がないことから、営業の自由も22条1項により保障されると解する。
(2)制約の有無→制約が許されるか。
ア. 経済的自由が不当に制約されても、民主政の過程で自己回復が可能である。また、経済的自由の制約は、専門的政策的判断が要求されるから、立法府の判断を尊重すべきである。そこで、精神的自由よりも緩やかな審査基準が妥当する。
イ. そして、規制目的に対応して詳細な基準を立てる。つまり、社会経済政策目的(積極目的)については、社会経済政策に精通しない裁判所は国会の判断を尊重すべきなので、規制が著しく不合理であることが明白な場合に限って違憲とする。
他方、国民の生命身体の安全を図る消極目的規制については、複雑な社会・経済・政策的判断は不要なので、当該規制の必要性・合理性及び、同じ目的を達成できるより緩やかな規制手段の有無を立法事実に基づいて審査すべきと解する。
ウ. 本問条例の目的は、青少年に対する性犯罪を防止すること、青少年の健全な育成を図ることにある。とすれば、本問条例は、青少年の心身の健康に対する危険を防止する消極目的規制といえる。そこで、後者の基準により判断する。
(3)二分論によらない ア. そして、確かに、積極目的・消極目的で区別する二分論によるべきとも思える。
しかし、本問のように、「飲酒者自身の健康」や、「周囲の者の迷惑」など、国民の生命・身体の安全を目的とする消極目的と、「医療費の増大による公的医療保険制度の影響」などの国民経済的見地からの積極目的が併存する場合がある。
そこで、この場合、規制の①目的、②必要性、③規制態様等の事情を考慮して、不当な制約といえるかを判断するべきと解する。
イ. 本問を見るに、①規制目的は合理的である。また、②規制の必要性も存する。もっとも、③規制態様は極めて強力であるし、必ずしも有効(合理的)であるとはいえない。
ウ. したがって、本問の法律は営業の自由を不当に制約するものといえ、違憲である。

2財産権
(1)この法律は土地を収用される者の財産権を侵害し違憲ではないか。
まず、29条1項は、私有財産制の保障と併存して、各個人の有する個別的・具体的な財産権の保障を認める規定であると解する。
なぜなら、個人の尊厳(13条前段)を確保するためには個人の経済的基盤の確立が不可欠であるし、1項も「財産権」と規定しているからである。
(2)ア. 財産権を含む経済的自由は精神的自由とは異なり、民主政の過程での自己回復が可能である。また、経済的自由の制約は、専門的政策的判断が要求されるから、立法府の判断を尊重すべきである。
そこで、精神的自由よりも緩やかな審査基準が妥当すると解する。
イ. 積極目的・消極目的で区別する二分論によるべきとも思える。しかし、財産権の種類・性質も、規制目的も、多種多様であり、積極目的・消極目的は考慮事由の一つにすぎない。そこで、規制の①目的、②必要性、③規制態様等の事情を考慮して、合理的な制約といえるかを検討する。目的の正当性、必要性、内容と制限の性質、内容、程度を比較衡量する(もひないせなて)。
ウ. 事後法による財産権の内容変更〔104〕租税遡及立法(84条)〔204〕①財産権の性質、②変更の程度、③変更により保護される公益の性質を考慮する。
エ. A市の条例によりXの財産権が侵害されている。では、条例によって財産権を制限することは許されるか。29条2項が「法律」と定めていることから問題となる。この点、地方的な特殊事情が存在する場合がある。また、条例も地方公共団体の議会において制定され、法律と同様に民主的基盤を有する。そこで、条例によって財産権を侵害することも許されると解する。
(3)本問の法律は、私有地の収用を市場価格より低い価格で認めている。
ア 「公共のために用ひる」の当てはめもする(事9)。
イ 「正当な補償」(29条3項)の要否が問題となる。
29条3項の趣旨は、公共の利益のために生じた損失を貨幣価値によって補い、財産権不可侵の原則(29条1項)を貫こうとすることにある。また、損失補償制度には、公共の利益のための特定人の経済的損失は全体で負担すべきという平等原則(14条)の契機も含まれている。したがって、特定の個人に特別の犠牲を加えた場合に、補償が必要と考える。
そしてこれは、①侵害行為の対象が一般人か特定人か、②侵害行為が財産権に内在する社会的制約として受忍すべき限度内か、その本質的内容を侵すほど強度なものか、という2点を考慮して判断すべきである。
ウ 正当な補償の内容が問題となる。完全補償説と相当補償説との対立がある。完全補償説は、当該財産の客観的な市場価格を全額補償すべきとする見解である。相当補償説は、「正当な補償」とは、当時の経済状態における価格に基づき合理的に算出された額をいうとする見解である。財産権不可侵の原則や平等原則の契機という29条3項の趣旨を達するために、原則として完全補償説によるべきである。もっとも、財産権は常に社会的評価を伴い変化するものであるから、例外的に相当補償説も採り得る。
エ 25条の生存権保障の趣旨に照らし、生活補償費も「正当な補償」に含まれると解する。
(4)法令上補償規定がない場合や、不十分な場合、法令は29条3項に反し違憲無効となるか。
法令上補償規定がない又は不十分な場合でも、29条3項を直接の根拠として補償請求できる。なぜなら、同項は私有財産を公共のために用いた場合の救済規定であり、当然に憲法上請求権が発生するものと解されるからである。したがって、法令を29条3項に違反するものとして違憲無効とする必要はない。
(5)国の違法行為に対しては17条によって救済が図られ、国の適法行為による財産権の侵害については29条によって救済が図られる。すると、国の適法行為による財産権以外の侵害については、いかに救済を図るべきかが明らかでなく問題となる。
この点、憲法13条後段・25条1項の趣旨に照らせば、財産上特別の犠牲が課せられた場合と、生命・身体に対し特別の犠牲が課せられた場合とで、後者を不利益に扱う合理的理由はないとして、29条3項の類推適用により救済を図る見解がある。しかし、損失補償の規定を用いることは、生命・身体であっても補償さえすれば適法に侵害できることを認めることになり、妥当でない。そこで、国の賠償責任を危険責任と構成するべきである。すなわち、違法な結果が発生した場合には過失を推定し、①予防が完全に尽くされていた、又は、②後遺障害が個人的素因によるものであるなどの特段の事情がない限り、憲法17条の規定を受けた国賠法上、過失が認められると解する。

 

Ⅶ 人身の自由・受益権・社会権・参政権
1人身の自由
(1)判例では、憲法31条が直接規定していない①手続の適正や②実体の適正までも保障しているかどうかについて解釈をしている。また、③行政手続に31条が適用されるかどうかについても解釈がなされている。
ア. ①手続の適正について 憲法31条は手続の適正をも要求する。公権力が国民に刑罰その他の不利益を課す場合には、告知・弁解・防御の機会を与えることが必要である。
イ. ②実体の適正について
憲法31条が実体の適正の一内容として、刑罰法規の明確性を要求している。行政の恣意を抑制し、国民の予見可能性に配慮し公正な告知を与えるためであると考えられる。明確か否かは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによって判断すべきである。そして、不明確な場合には当該法規はあいまい不明確ゆえに無効になる。
ウ. ③行政事件への適用について(成田新法事件) 憲法31条は直接には刑事手続に関するものであるが行政手続にも及び得る。行政権の行使による国民の権利侵害の危険性が大きいからであると考えられる。事前の告知・弁解・防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容・性質・制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容・程度・緊急性等を総合衡量して決定される。
(2)35条・38条〔119〕川崎民商
ア 35条(令状主義)は直接には刑事手続に関わる規定である。そこで、行政手続に適用されるか否かは、当該立ち入りが、①公共の福祉の維持という行政目的を達成するため必要か、②刑事責任追及の資料収集に直接結び付くものかどうか、③強制の程度、態様が直接的かを総合考慮する。
イ 38条の趣旨は、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障することにある。そこで、実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続にも及ぶ。
(3)33条は不法な身体拘束からの解放について、35条は住居権の不可侵と令状主義について定めている。
37条1項は公平な裁判所の迅速な公開裁判について、37条2項は証人尋問権、37条3項は弁護人依頼権について定めている。
38条1項は黙秘権の保証、38条2項は自白排除の法則、38条3項は補強証拠の法則について定めている。
(4)第三者の違憲主張適格(H20新試 ペー4)
ア 没収 日本では違憲審査権について付随的審査制を採用している。したがって、第三者の憲法上の権利を訴訟で主張することは原則として許されない。しかし、憲法上の権利侵害があり実体的権利の剥奪である場合(29条)、刑事手続の問題で31条の適用場面である場合、第三者の権利主張も可能である。
原告(私見):被告人に対する付加刑であること、利害関係を有すること、を理由に、第三者の権利主張は可能である。
反論:当該訴訟で主張されなければ第三者が後に権利主張することが不可能となるか、実益がなくなる場合に限られる。
イ オウム 原告:宗教法人の解散・清算により、祭壇や儀式の道具などを失い信仰を続けることができない。団体が構成員の権利を主張できるのは当然である。
反論:(解散により被る反射的利益であり、)事実上の不利益にすぎない。したがって、法的な利害関係人とはいえない。
(第二審 私見でこの規範立てる):①第三者の憲法上の権利の性質、②当事者と第三者の関係、③第三者が独立の手続において自らの当該憲法上の権利を擁護する機会を有するかどうか、④当事者に対し第三者の憲法上の権利主張の適格を認めないときには第三者の権利の実行性が失われるかどうか等を総合考慮する。
参考:輸血せずに死亡した場合。医師は依頼に基づく治療をする義務があり、特別な利害関係を有する。第三者は死亡しており、当該訴訟で主張しなければ権利の主張機会が失われる。したがって、第三者主張適格を認めるべきである。(判例の射程)

2受益権
(1)82条は司法の章の規定であるから、82条の「裁判」とは、固有の司法権に属する純然たる訴訟事件の裁判をいう。非訟事件たる家事審判を非公開の法廷で行っても、82条には反しない。
では、32条は純然たる訴訟事件の裁判を受ける権利のみならず、非訟事件の裁判を受ける権利をも保障しているといえるか。32条の「裁判」の意義が問題となる。判例は、32条の「裁判」は82条の「裁判」と同義に解すべきとしている。これによれば、非訟事件の裁判を受ける権利は32条によっては保障されない。しかし、福祉国家理念(25条以下)の進展とともに、国家の後見的作用が要請される分野が増えており、非訟事件の裁判を受ける権利も憲法上保障されるべきである。そこで、32条の「裁判」とは、82条のそれとは異なり、国民が紛争解決のために裁判所で当該事件にふさわしい適正な手続の保障の下で受ける非訟事件に関する裁判を含むと解する。
(2)国会議員の立法行為が国賠法上、違法の評価を受けるかが問題となる。
立法は国会の広範な裁量に委ねられている(41条)から、原則として国会議員の立法行為は国賠法上違法とはならない。
もっとも、立法の内容が、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合には、例外的に、国会議員の立法作為は、国賠法上違法となる。
立法不作為は、①国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、②国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に国賠法上違法となる。
(3)郵便法 (問題文の法律に公務員の故意・過失の免責規定があったらこれ!)
ア 憲法17条は国の不法行為責任について、国が原則賠償をすることを定めている。どのような行為、いかなる要件で不法行為責任を認めるかは、高度な政策的専門的判断が必要であるから、立法府の裁量に委ねられている。そこで、国家賠償法により、要件を満たせば原則として賠償を認める旨が定められている。そして、郵便法は亡失、毀損を除いて、一律に免責している。
(亡失、毀損などの場合には損害賠償する旨が定められているが、いずれかに該当する限り、として制限している。)
イ. 立法府の裁量の下で、憲法17条の権利を国賠法が具体化し、さらに郵便法で具体化している。この裁量権行使が不合理であり、憲法の要請に反するのであれば、裁量の逸脱・濫用=違憲となる。
当該行為の態様、侵害される法的利益及び侵害の程度、免責又は責任制限の範囲および程度等に応じ、①規定の目的の正当性、②目的達成の手段として必要性合理性を総合衡量して判断する。
ウ. 郵便法ないし郵便制度の目的たる、円滑迅速で、安価かつあまねく公平な郵便事業を実現するために、国賠法の原則どおりにすべて損害賠償責任を認めることはできない。(憲法17条の具体化(第1次決定)たる国賠法を参照している。憲法17条の原則と比べるのではなく、国賠法の原則と郵便法の例外(第2次的決定)とを照らし合わせて検討する。例外を出すなら、その例外の合理性が要求されると考えればいい。)郵便制度という目的が重要な社会基盤の1つであることに鑑みれば、この目的の実現のために国賠法の原則に対して例外を持ちこむことに必要性があるといえるので、郵便法による責任制限の目的は必要であり、正当である(①充足)。
エ. 書留郵便物の場合、故意重過失による損害は、通常の職務遂行であればごく例外的な場合にとどまるので、合理性はない。故意重過失の免責は許されない。
特別送達郵便物は、適正な手順に従い確実に受送達者に送達されることが強く要請される。ごく一部に止まるうえに、特別の料金が必要であるところ、訴訟当事者は他の送付手段を有しない。(相手方の保護の必要性。郵便事務者の保護の必要性がない。)軽過失による不法行為責任を肯定したからといって、目的の達成が阻害されるとはいえず、合理性・必要性はない。故意重過失軽過失の免責は許されない。
(4)署名 ア 第一審:署名行為は、署名活動者らの政治的表現行為に賛同するという政治的意思表明であり、表現の自由(21条1項)によって保障される。また、署名簿の提出に参加する意味で請願権(16条)によって保障される。署名活動も自己の政策的意見を表明する行為であるから表現の自由で保障され、署名の提出について請願権によって保障される。請願を受けた官公署当は、これを誠実に処理する義務があり、署名の真正や請願の趣旨を確認する必要があり、その限度で相当な調査は許される(岐阜地判平22・11・10)。
イ 控訴審:名古屋高判平成24・4・27(H24重判11)…真の目的は民意を確認することではなく、統廃合に反対する住民が多くないこと、記載の過誤を間接的に聴き取り調査によって明らかにしようとすることにあった。威圧感を与え、その後署名活動が困難となり、表現の自由、請願権を侵害し違法。思想良心の自由(19条)の侵害もある。一覧表を作成するのみならず利用し未だ廃棄されていないことから、プライバシー権の侵害がなされたといえる。

3社会権
(1)生存権 ア 生存権を具体化する法令の規定が欠けているときに、25条1項を直接の根拠として請求できるか。生存権の法的性質と関連して問題となる。25条1項が明文で「権利」と規定している以上、法規範性を否定することは妥当でない。そこで、生存権も法的権利として認められる。
もっとも、25条1項を直接の根拠として請求できるという見解は採り得ない。なぜなら、生存権は社会権であり、その実質化は社会的政策的な観点が不可欠となるため、政治部門に委ねるべきだからである。したがって、生存権は、これを具体化する法令があって初めて具体的権利として保障されると解する。以上より、25条1項を直接の根拠として請求することはできない。
イ. 本問では生活保護法…条により、…という権利が具体化されているので、具体的権利性を有しているといえる。←①どの条文により、②どのような権利が保障されているのか、ここを具体的に書くことが大切である。
もっとも、「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であって、具体化にあたっては、専門技術的考察と社会的政策的な観点が不可欠となるため、政治部門の広範な裁量に委ねられている。では、本問の処分は裁量権の逸脱・濫用として25条に反するか、その判断基準が問題となる。この点、健康で文化的な最低限度の生活か否かの判断は、ある程度の客観化が可能であるから、裁量権の範囲もある程度限定的に解すべきでる。これに対し、より豊かな生活か否かの判断は、客観化が難しいので、裁量権も緩やかに解すべきでる。
→下記の判例のように(行政法のように)事案に応じた裁量権の判断基準を定立すればいいのではないか。
ウ. 老齢加算廃止(H24重判10) 裁量の逸脱・濫用があるか否かは、①厚生労働大臣の判断過程及び手続における過誤欠落があるか、②老齢加算廃止に際し激動緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が、被保護者の期待や生活への影響から相当でないか、を検討して判断する。
朝日訴訟:憲法25条の健康で文化的な最低限度の生活を、生活保護法が具体化している(立法裁量)。厚生労働大臣の判断により保護基準が定められている(行政裁量 こっち 対象を明確に)。この保護基準が違憲ではないかが争われた。
エ.  防貧施策の規定か救貧施策(生活扶助)の規定か(重なり合う場合は、二重取りできない)という視点、国家の財政との関係で、拠出制ならば裁量狭く、無拠出制であれば裁量広いという視点、という2つの視点を持つ。
例:児童扶養手当も、障害福祉年金も、ともに事前の防貧施策である。目的が重なるので、複数事故の問題となる。複数事故において、2以上重なったからといって、稼得能力の低下が事故の数に比例して増加するとはいえない。社会保障給付の全般的公平を図るため、併給調整の判断は、立法府の裁量の範囲内である。
反論で有用:生活保護法による公的扶助がある以上、最低限度の生活は保障されている。
オ その他 25条2項の「向上及び増進」の義務から→制度後退禁止原則を持ち出す説がある。反論:既得権的な考え方はするべきではない。そこで、私見では現行の制度の合理性を見るべきであり、過去の制度と比べるという手法はとらない。
原告:2割減は生活における不利益が大きい、2年でここまで減額されるのは急激なものであり、手段として相当でない。反論:移行期間があること、一応段階的に減額していることから、被給付者の生活に対する一応の配慮がなされている。委員会の意見に沿うものであるから合理的である。
(2)教育(26条)
ア. 立法不作為の違憲の判断基準→本問では立法義務があるか。教育条件の整備に関する義務が法的義務といえるか、26条の法的性質と関連して問題となる。
26条が明文で「権利」と規定している以上、法規範性を否定することは妥当でない。26条は、子供が学習することで成長、発達する学習権を保障している。子供は自ら学習することができないから、同条は子供の学習権を実質的なものとするために、子供が国に対し教育条件の整備等を要求する権利を認めていると解する。そこで、26条は法的権利を認めたものといえる。
とすれば、26条の法的権利に対応して、教育条件を整備する法的義務が国に認められる。しかし、どの範囲まで法的義務を負うのかは、別途考えるべき問題である。そこで……する法的義務まで認められるかが問題となる。26条1項が要求する法的義務は、必要最小限度の整備に限り、2項が義務教育の無償を定めていることを考え併せると、かかる法的義務は義務教育の整備にとどまるものと考える。
本問は高校の問題であり…。以上より、…法的義務は認められない。
イ. 旭川学テ事件〔140〕 主張:学習権(26条)や教育の自由(23条)から、教育権の所在を論じ、そこから旧教育基本法10条「不当な支配」の文言解釈をする。不当な支配に当たる場合、違法な公務であり、公務執行妨害では罰することができない。
人は学習により成長発達する権利を有し、26条はかかる学習権を保障する。国民各自の学習権は自由権である。
特に自ら学習することのできない子供は、学習環境の整備を要求する権利を有する(社会権としての性質)。
そこで、教育は子供の心身の発達に応じて適切な教育的配慮の下で行われる必要があり、そのためには初等中等教育における教師の教育の自由も23条により保障されなければならないと考える。
もっとも、児童生徒には教育内容を批判する能力が備わっていない。また、教師が生徒に強い影響力を有する。児童は、学校・教師を選択する余地に乏しい。さらに、全国的に一定の教育水準を確保すべき要請が強い。とすれば、教師の教育の自由を完全に認めることができない。
そこで、国家も、①子供自身の利益の擁護のため、子供の成長に対する社会公共の利益や関心に応えるため(目的審査)、②必要かつ相当と認められる範囲(手段審査)においては、子供に対する教育内容を決する権能を有すると解する。ただし、子供が学習権を有することから、子どもの自由かつ独立の人格としての成長を妨げるような国家的介入は許されない。
(3)労働 ア 労働基本権の内容は、団結権、団体交渉権、団体行動権である。
28条の趣旨は経済的弱者の地位にある労働者を団結等によって使用者と対等の立場に立たせることにある。また、生存権(25条)に資する重要な権利である。そこで、審査基準は厳格にする。
イ 社会権、自由権、使用者に対する民事免責、などの側面を有する。本件では、どの自由が問題になり、制約されるのかを明確にし、それを規範や当てはめにつなげる。
ウ 労働組合への加入強制は認められるか。労働者に結社に加入しない自由が認められると、経済的弱者の地位にある労働者を団結等によって使用者と対等の立場に立たせるという28条の趣旨に反する。したがって、消極的団結権は労働者には保障されていないと解する。
エ 全逓東京 原告:経済的制裁や刑事制裁は、特に重大な不利益であり、制約は大きい。そこで、審査基準を厳しくする。
被告:公務員の職務の公共性に鑑みれば、職務停滞が国民生活全体に障害をもたらす(国民全体の共同利益を害する)。したがって、目的は必要不可欠である。
オ 都教組…争議行為、あおり行為はともに、違法性の強い行為に限定して解釈するべきである。(これは「行為」が刑罰の構成要件に該当する適用違憲の問題で使えるフレーズである。覚えておこう。)
カ (ア)①目的の範囲内か、②協力を義務づけられるか、の二段階で審査する。メインは②である。(事2、〔150解説〕)
(イ)まず法人にも権利の性質上可能な限り人権が保障されるところ、統制権は結社の自由(21条1項)の一内容として労働組合を含む団体一般に当然に認められる。さらに、労働組合には、経済的弱者の地位にある労働者を団結等によって使用者と対等の立場に立たせるという28条の趣旨から、より強力な統制権が認められる。そこで、必要かつ合理的な範囲であれば、統制権の範囲内として許されると解する。その際、問題とされている具体的な組合活動の内容・性質と、これについて組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較衡量する。
(ウ)例:強制加入や、選挙の立候補をやめるよう説得することは許される。
例:立候補の自由は、選挙権(15条1項)の自由な行使と表裏一体の関係にある。もし、立候補する自由を不当に制約すれば、選挙人の自由な意思の表明を阻害することになり、自由かつ公正な選挙の本旨に反する。したがって、立候補したことに対する統制違反として組合員の権利を停止することは、統制権の限界を超えるものとして許されない。
例:政治的要求の賛否は、政治的意思を形成するべき国民が個人の自己の思想、見解、判断等に基づいて決定すべき事柄である。したがって、組合員に協力を強制することは、統制権の限界を超えるものとして許されない。
例:政治的資金の提供は、どの政党又はどの候補者を支持するかと密接に関連性を有し、投票の自由(15条1項)と表裏一体をなすものであり、組合員各自が自主的に決定すべき事柄である。したがって、組合員に費用の負担を強制することは許されない。

4参政権
(1)ア 選挙権は憲法15条1項、43条1項、44条ただし書により保障される。本件は、選挙権そのものが制約されている。
他の事案もあり得る。反論:選挙権の行使(方法)の制約は小さい。私見:変わらない。なぜなら、機会が与えられなければ選挙人が選挙の結果に影響を及ぼすことはそもそもできなくなるからである。
イ 憲法は国民主権原理(1条)に基づき、投票を通じて国政に参加できる権利を国民固有の権利として保障している(15条1項)。かかる選挙権の重要性に鑑みれば、選挙権の制限は、それがやむを得ないといえる事由がなければ許されない。具体的には、制限なしに選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り、やむを得ない事由は認められない。
ウ 被選挙権は、選挙人の自由な意思表明の必要であるから、選挙権と表裏一体であり、15条1項で保障される〔149〕。国政に参加する権利そのもののであり、国民主権原理(1条)の下、その制限はやむを得ない事由がなければならない。
エ 反論:H17の規範は選挙犯罪者には適用されない〔152省略判旨〕。
反論:憲法は選挙権(44条)、選挙制度の定めを立法に委ねており(47条)、国会の裁量が認められるから、選挙権の内容及び、選挙制度の立法に関しては裁量が著しく不合理である場合に限り違憲とするべきである。
反論:国家機関を選定する権利であり、純粋に個人権とは違った側面を持つ。そこで、義務を正当化し得る。
(2)15条は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と規定しているが、国会議員に対する国民の罷免権は否定すべきである。なぜなら、憲法は国会議員がその地位を失う場合を明記しているし(45条ただし書、69条、58条2項、55条)、51条の免責特権はリコール制などを認める命令委任を否定する趣旨だからである。
(3)議会の代読拒否措置(H24重判3 部分社会論と参政権が論点)
ア 「法律上の争訟」に当たる。地方議会は自律権を有するので、部分社会論の採否が問題となる。
議会の措置が議員の憲法上の権利行使を妨げたことが争われており、議会の意思がこれに優越することはない。
よって、部分社会論は採用されず、本案審理がなされる。
イ 地方議会議員は、地方議会(93条1項)の構成員として、地方公共団体の住民の多元的な意見・諸利益を、当該地方公共団体の意思形成・事務執行等に反映させる役割を担う。そこで、表現の自由(21条)及び参政権(15条1項)の一内容として、地方議会において意見を表明する自由が保障され、しかもこれは議員としての最も基本的・中核的な権利というべきである。
そこで、障害者にできる限り意見表明の機会を提供するべきであり、ある障害補助手段を強制することは許されない。
(4)被後見人の選挙権制限(公職選挙法11条1項1号)について(H25重判11)
反論:制約について、選挙権の行使自体ではなく一部を制限するにすぎない。したがって、制約の程度は小さい。審査基準は緩やかにする。
原告(私見):やむを得ない事由という判断基準は、(選挙権の行使の制限に関する事案であるが、)選挙権の制限についても妥当する。
確かに、選挙権は公務としての性格を持ち、選挙権を行使する者は、そのための能力を具備していることが必要である。
しかし、法は成年被後見人を、常に事理を弁識する能力を欠く者として位置付けていない。事理を弁識する能力を一時的にせよ回復した成年被後見人について、選挙権を行使する能力を欠くとはいえない。成年後見制度は財産等の権利を後見的に保護する制度であり、選挙権の審判をするものではない。よって、選挙の公正を害する事情はなく、やむを得ない事由はない。
(5)在外国民の最高裁裁判官国民審査投票権(東京地判平23・4・26)
最高裁は規則制定権(77条)や下級審裁判官の指名権(80条)を有するとともに、拘束力のある判決を行う最高審級の位置にあり、違憲審査権を行使する終審裁判所として(81条)憲法保障機能を有する。法はかかる最高裁の地位と機能の重要性に鑑み、裁判官の選任に関し、国民審査という民主的コントロールを及ぼそうとしている(79条2項ないし4項)。
かような制度趣旨からすれば、選挙権に関する憲法の規定(15条3項・4項、44条ただし書)及び投票機会の平等の要請(14条1項)は国民審査の審査権にも及ぶ。
そこで、平成17年の、在外国民選挙権の判例と同様の基準で判断するべきである。

 


統治 1その他 2国会 3内閣 4裁判所 5財政 6地方自治


統治の書き方 ①全体像を書き、②本問がどの次元からどの次元のはなしをしているのかを意識する。③まず各次元の基本原理を思いつく限り全て挙げて、④そこから論じるようにする。
1その他
(1)憲法の最高法規性は憲法の内容が他の法規範とは質的に異なる(つまり、人間の権利・自由を国家権力から不可侵のものとして保障する規範を中心として構成されている)ことから導かれるが、このような意味における最高法規性が一般に実質的最高法規制と呼ばれている。
(2)国政に国民投票制度を採用することが憲法上許されるか。
41条後段は、国会を「唯一の立法機関」とし、国会による立法は国会以外の機関の関与を必要とせずに成立するという、国会単独立法の原則を定める。
ところが、本問法律は、国会以外の機関である有権者の関与を必要とする。そこで、本問法律が、かかる国会単独立法の原則に反しないかが問題となる。
ア. 41条の趣旨は、国民主権原理(1条)の下、主権者たる国民の代表によって構成される国会(43条1項)に立法権を独占させて国政の民主的統制を図ることによって、国民の権利・自由を可及的に保障しようとする点にある。
イ. この点、本問法律が定める国民投票制度は、国民の意思を直接的に国政に反映させるものであり、国政の民主的統制により資するものといえる。よって、上述の趣旨に反しない。
ウ. したがって、本問法律は、41条の定める国会単独立法の原則には反しないものと解する。
(3)憲法は代表民主制を基本原則としている(43条1項)。
ところが、本問法律は一種の直接民主的制度を国政レベルで採用している。そこで、本問法律が、代表民主制の原則に反しないかが問題となる。
ア. 憲法が代表民主制の原則を採用した趣旨は、多数者から少数者の権利・自由を保障すること、独裁制への危機感(プレシビットの危険)という点にある。
イ. この点、本問法律は、過半数の賛成があるときは、直ちに法律として成立するとしており、少数者の権利・自由を侵害するおそれや、プレシピットの危険は否定できない。
ウ. したがって、本問法律は、憲法が代表民主制を原則とした趣旨に反し、違憲無効である。
(4)全国民の代表(43条1項)と免責特権(51条)の関係について
審議討論を尊重し、独裁の危険を回避するため、代表民主制を採ることが国民の人権保障に資することから、憲法は代表民主制を原則としているものと解される(前文1段)。
よって、国民主権は、有権者に国の在り方を最終的に決定する権力があること(権力的契機)よりも、全国民に国家権力行使を正当化する究極の根拠が存すること(正当性の契機)を中心にとらえるべきである。
とすれば、代表者は特定の有権者の意見に拘束されずに自由に国民のために活動すべきである。43条1項の「全国民の代表」とはこのことを示したもので、特定の者の代表でないこと、民意に法的に拘束されないことを意味する。そして、51条が免責特権を定めているのは、この法的に拘束されないことを担保したものであると解する。

2国会
(1)適用対象が限定された措置法を国会が制定することは、権力分立原理(41条、65条、76条1項)に反しないか。「立法」(41条後段)の意義が問題となる。
ア. (ア)この点、「立法」を形式的に法律の定立と解すると41条後段が同義反復となってしまうので、「立法」とは、特定の内容の法規範の定立(実質的意味の立法)を意味すると解する。
(イ)そして、41条後段が国会を唯一の立法機関とした趣旨は、国民の代表機関(43条1項)たる国会が立法を独占することにより、国民の権利・自由を保障する点にある。そこで、実質的意味の立法とは、広く一般的・抽象的法規範をいうと解する。
(ウ)ところが、措置法は適用対象が限定された個別的・具体的法律であり、一般的・抽象的法規範とはいえない。
イ これは国会と内閣との役割分担を定めた権力分立構造に反するとも思える。しかし、今日行政権が肥大化し、特定の事件に対する行政権行使を国会によりコントロールする必要性が高い。また、議院内閣制の確立によって、議会と政府の関係について権力分立原理は決定的意味を持たない。そこで、行政裁量の余地が全くなく権力分立原理の核心が侵害された例外的な場合でない限り、権力分立には反しない。
また、平等原則(14条1項)にも反するおそれがあるが、社会国家(25条以下)においては、合理的区別も許される。
(2)委任立法とは、本来法律で定める事項を国会以外の機関による法形式に委ねることをいう。かかる委任立法は、国会を「唯一の立法機関」とする41条後段に反しないか。
ア. そもそも、41条が国家を唯一の立法機関とした趣旨は、主権者たる国民の代表機関が法を制定することで、治者と被治者の自同性たる民主主義を実現し、もって国民の権利・自由を確保しようとする点にある。
しかし、今日の複雑な社会の下では、高度の専門知識を有し、柔軟・機敏に対応できる行政機関に立法を委任する必要性が高い。
また、73条6号ただし書は委任立法の存在を予定している。
そこで、委任立法も、国会中心立法には反しないと解すべきである。
イ. もっとも、全く包括的委任を許容したのでは、実質的に行政権が立法するに等しく、国会の民主的コントロールが及ばないため、41条の趣旨を没却する。
そこで、個別具体的な委任であれば、委任立法も41条に反せず許されると解する。
ウ 医薬品ネット販売規制(最判平25・1・11)
郵便等販売に対する新たな規制は、郵便等販売を主な事業とする者の職業活動の自由(22条1項)を制約する。規制の範囲が広い、規制の程度が強い。そこで、新施行規則の規定が委任の趣旨の範囲内であるというためには、立法過程における議論も踏まえ、薬事法の規定から郵便等販売を規制する授権の趣旨が明確に読み取れることを要する。注意:委任の趣旨を読み取り確定していない。委任立法の内容(郵便等販売の禁止)が、授権規定たる委任規定から、読み取れるものではない、としている。
(3)国会は「唯一の立法機関」(41条)であり、国会の立法は他の国家機関の関与なしにされなければならない(国会単独立法の原則)。その趣旨は、全国民の代表者(43条)で構成される国会に立法権を独占させることで国民の権利利益を保護する点にある。
(4)国会単独立法との抵触について。41条後段が、国会を「唯一の立法機関」と定めた趣旨は、国民代表機関たる国会(43条1項)に立法権を独占させることで、審議・討論を通じて国民の人権を保障することにある。
とすれば、国会以外の機関に法律案の提出権を認めても、国会での審議・討論は行われるから、かかる趣旨を害しない。
よって、内閣・裁判所に法律案提出権を認めても、41条後段には反しない。
(5)もっとも、法律案提出権を認めることが、権力分立原理(41条、65条、76条1項)に反しないか。憲法上、法律案提出権を認める①必要性、②許容性があるかによって判断する。
ア. 内閣の法律案提出権
①議院内閣制(66条3項参照)の下、国会と協働関係にある内閣に法律案提出権を認める必要がある。また、現代の福祉国家理念(25条以下)の下、専門技術的判断に優れた内閣の意見を国政に反映すべく、これを認める必要がある。
②さらに、憲法は内閣に「議案」(72条)の提出権を認めており、「議案」には法律案も含むと解し得るから、法律案提出権を認める根拠もある。内閣は間接的に民主的基盤を有する。
したがって、内閣の法律案提出権は憲法上認められると解する。
イ. 最高裁判所の法律案提出権
①最高裁には規則制定権(77条1項)が認められており、裁判所の専門性はこれにより尊重されるため、法律案提出権を認める必要性はない。
②内閣の場合と異なり、裁判所の法律案提出権の手がかりとなる規定がない。また、法律案提出権を認めると、その法律の制定に向けて裁判所が多数派閥の政治的紛争に巻き込まれることになり、少数者の人権保障が図れなくなる。さらに、裁判所が政治的抗争に巻き込まれると、司法の政治化を招き、司法権の独立(76条3項)に反する。
したがって、最高裁判所の法律案提出権は、権力分立原理に反し、認められない。
(6)憲法は41条で国会を唯一の立法機関と定め、議員はその構成員であるから、議員の発議権は当然に認められる。
では、特定人数の賛成を議案の発議要件とすることは、少数者の発議権を不当に制約することにならないか。
ア. 国会は立法権限(41条)を有するから、法律によりどのような制約を課すかは、国会の広い裁量権に属する。
もっとも、裁量も無制約ではない。そこで、立法内容が著しく不合理なことが明白でなければ、許されると解する。
イ. お手盛り防止の必要性。国会法56条1項について見ると、必要な人数は各議員のわずか25分の1であるから、少数派議員であっても賛同者を集めて発議権を行使することは十分可能である。また、衆議院と参議院の人数要件の差についても、両議員の定数の差に鑑みれば、著しく不合理であることが明白とまではいえない。したがって、合憲。
(7)政党 ア 本件の法律は、政党助成金の交付の要件として党首の選出方法を義務付けている。これは政党の「結社」の自由を侵害し、憲法21条1項に反しないか。団体にも性質上可能な限り憲法上の人権が保障されているところ、政党は私的かつ自発的に結社される団体である以上、結社の自由の保障を受ける(21条1項)。
原告:政党は単なる私的団体ではなく、国民の政治的意思を形成する媒体として議会制民主主義に不可欠の要素である。すなわち、選挙を通じて全国民の代表を国会に送り、国民の政治意思を形成するという重要な団体である。そこで、できる限りその自由を尊重するべきである。 
反論:公的役割を果たす。かかる政党の権力性を帯びた公的役割を重視すると、政党内部の民主的統制が要請される。
そこで、両要請を調和し、①政党の国民の意思を媒介するという役割にとって規制目的が重要であり、②目的と手段との間に実質的関連性があれば、合憲であると解する。
イ 一人別枠方式は、選挙区割りの決定に当たり、行政区画や地理的状況等の非人口的、技術的要素とは全く異質の恣意的な要素を考慮して採用されたものであって、正当性が認められない。以上より、違憲である。
ウ 確かに、被選挙権や立候補の自由は憲法15条1項により保障される重要な権利である。しかし、候補者届出政党の要件は、国民の政治的意思を集約するための組織を有し、継続的に相当な活動を行い、国民の支持を受けていると認められる政党が、小選挙区選挙において政策を掲げて争うにはふさわしいものであるとの認識の下に、選挙制度を政策本位、政党本位なものとするために設けられたものである。政党の果たしている国政上の重要な役割に鑑みれば、選挙制度を政策本位、政党本位のものとすることは、国会の裁量の範囲に属するといわなければならない。したがって、14条1項に違反しない。
イ 政治過程の腐敗・わい曲化を防止し、民主政治の健全な発展を図るため、政党の活動資金の適切性・透明性が確保されるよう法律で規律することは、憲法に反しない。
政党に対する公的助成を行う場合には、法律により、政党の役員・党員等の名簿、活動計画書を提出させた上で、政党の設立を許可する制度を設けることは、違憲となる。
(8)公開 ア. 両議院の会議は、公開とする(57条1項)。その趣旨は、国会が民意の反映・統合を役割とするものであるから、その活動内容を国民の監視下に置き、正しく民意を反映しているかチェックすることにある。また、国民の知る権利に奉仕する意義をも有する。
イ. 出席議員の3分の2以上の多数の議決で会議の公開が不適当であると認められるときには、秘密会とすることができる(57条1項ただし書)。その趣旨は、国民による監視の必要性、国民の知る権利に配慮して要件を厳格にしながら、国会が民意の反映・統合を役割とするから、非公開の決定も多数意見による意思決定になじむ点にある。
(9)BはAに対し名誉侵害を理由に損害賠償を求めている。Aの発言が憲法51条の要件を満たせば免責される。そこで、Aの発言が「議院で行った」「演説、討論又は評決」に当たるか、及び、「責任」の内容が問題となる。
ア. 51条の趣旨は、審議討論を通じた統一的国家意思の形成を図るため、国民の代表機関たる国会の構成員である国会議員の、言動の自由を最大限保障することにある。とすれば、免責特権の及ぶ範囲は広く解し、「議院で行った」とは、院の内外を問わず、およそ議員の活動の一環として議員が職務上行ったことをいうと解する。
本問のAの発言は法律案に関して開催された地方公聴会において法律案の必要性を訴える中でなされていることから、Aが議員の活動の一環として職務上行ったといえ、「議院で行った」といえる。
イ. また、「発言」は「演説」に含まれる。
ウ. そして、「責任」とは法的責任をいうところ、本問のような民事上の法的責任もこれに当たる。
エ. なお、Aの発言はBの名誉権(13条後段)を侵害するものであるが、前述の51条の趣旨に鑑みれば、免責特権は絶対的なものと解すべきである。よって、名誉権を侵害する発言であっても、免責特権の保障が及ぶと解する。
オ. 以上より、BのAに対する損害賠償請求は認められない。→国家賠償責任の検討↓
カ 議院の発言につき国家賠償責任が肯定されるには、「当該国会議員が、①その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、②虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特段の事情があることを必要とする」
(10)国政調査権(62条)に基づく証人尋問が許されるか。国政調査権は「国政に関する」事項についてのみなし得るため、本問の調査目的が「国政に関する」ものといえるか、国政調査権の法的性質と関連して問題となる。
ア. この点、権力分立(41条、65条、76条1項)を採用する憲法下においては「最高機関」とは、政治的美称にすぎず、国政調査権も議院がその権能を実効的に行使するための補助的権能と考えるべきであり、調査の目的もそれに制限される。
本件のように、議員の贈収賄事件の真相を解明することは、議員の処分(55条)に関する判断資料を収集するなどの、議員の権能に含まれる。
よって、本問調査目的は、「国政に関する」ものといえる。
イ. もっとも、裁判官の訴訟指揮や裁判内容の当否を批判したりする目的で調査することは許されない。
なぜなら、少数者の人権を守るために、裁判官が裁判をなすに当たって他の国家機関から事実上重大な影響を受けることを禁じているからである(司法権の独立 76条3項)。
(12)国会は、予算の議決に際し、減額修正を行うことができ、予算の款や項目を削除することも許される。財政立憲主義(86条)の原則の下、全面否定権を有する国会に減額修正権があるのは当然だからである。

3内閣
(1)条約 ア. 73条の条約は国家間の文書による合意である。憲法は条約締結権を内閣に与えている(73条3号)。その趣旨は、現代の複雑な国際政治情勢の下,さまざまな利益を比較衡量しながら迅速・円滑に条約を成立させるためには、行政権が適任であるところにある。
イ. しかし、条約は国民の権利義務に多大な影響を与えるので、国会による民主的コントロールを及ぼすべく、国会に条約の承認権が与えられている(61条、60条2項)。
ウ. もっとも、国会に条約修正権は認められていない。仮に修正したとしても、それは不承認を意味する。(自説)
その理由は、国会に条約修正権を認めると、内閣の条約締結権を侵害し、憲法の趣旨に反するからである。
エ. 事前に国会の承認を得られなければ不成立である。(自説)
事後に国会の承認を得られなかった場合、国内法的効力は無効である。また、事前に承認を要することが明白である以上、相手方の信頼が害されることもないので、国際法的にも無効であると解する。
(2)ア. 本問解散が適法であるためには、7条3号を根拠に解散できることがまず必要である。そこで、解散の実質的決定権者、根拠が問題となる。
この点、7条3号は、本来政治的な行為である衆議院の解散を「助言と承認」を通じて内閣にその実質的決定権を帰属せしめることにより、天皇の行為としては形式的・儀礼的な国事行為にしているものと考えられる。
そこで、7条3号を根拠に内閣が衆議院の実質的解散権を有すると解する。
イ. もっとも、…を理由に解散したのは適法か。69条所定の場合以外に自由に解散できるかが問題となる。
この点、69条は内閣不信任決議の効果を定めたにすぎず、また、ほかに憲法上解散を制限する規定もない。さらに、解散には現代の民主主義の下において、解散に続いて行われる選挙(54条1項)で重要な政治問題について民意を問うという重要な民主的意義がある。
そこで、内閣は69条所定の場合に限らず、国政に関する民意を問う必要がある場合には、衆議院を解散することができると解する。
(3)内閣から独立して活動している行政委員会は、行政権が、内閣に「属する」とする憲法65条に反しないか。
65条の趣旨は、①権力分立及び②民主的行政責任を定める点にあることから、これらの趣旨に反しないかが問題となる。
ア. 行政権が肥大化した行政国家現象の下では、権力分立制の趣旨は、行政権の抑止にあるといえる。
とすれば、行政権を分離し独立行政委員会に分担させることは、①権力分立の趣旨に反しない。
イ. 民主的行政責任の趣旨は、内閣に対する連帯責任(66条3項)を基礎として、内閣を通じて民主的統制を行政各部に及ぼす点にある。とすれば、国会による統制が直接に及ぶのであれば、②民主的行政責任の趣旨には反しない。
ウ. 以上より、独立行政委員会を設置することは、国会による民主的統制が及ぶ限り、65条に反せず合憲である。
(4)「内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の……地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解する」

4裁判所
(1)Aの訴えは裁判所の司法審査の対象となるか。訴えは「司法権」(76条1項)の範囲に含まれるかが問題となる。
ア. ここに司法権とは、具体的な争訟について法を適用しこれを裁定する国家作用をいう。そして具体的な争訟とは、「法律上の争訟」(裁判所法3条)すなわち、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争で、②法の適用により終局的に解決することができるものをいう。
本問について見ると、①歳費請求の前提として衆議院の解散の無効を主張することは具体的な権利義務に関する争いといえる。そして、②議院法等の適用により終局的に解決されるので、「法律上の争訟」に当たる。
イ. もっとも、衆議院解散の効力についての争いは、極めて政治性の強いものであるが、非政治的機関たる裁判所による司法審査の対象となるか。統治行為論の採否が問題となる。
ウ 成立前にAの法律の無効の宣言を求めることができるか。
未だ成立していない法律では、当事者のいかなる権利が侵害されたのかを確定することができない。とすれば、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争とはいえない(①不充足)。
したがって、本問の訴えは、法律上の争訟に含まれないので、司法審査の対象とならない。
エ. 宗教団体に対する寄付金の返還は、民法上の不当利得返還請求権の有無を争うものであるから、当事者間の具体的な権利義務に関する争訟といえる(①充足)。
もっとも、その判断に際しては、宗教の教義の当否に立ち入る必要がある。宗教の教義をめぐる争いは、当該宗教団体における自律的判断、及び信徒の内心における信仰の問題として、各宗教団体ないし信徒自身の判断を尊重すべき事項である。これに裁判所が積極的に関与し、当該教義の当否を裁判所が公権的に確定することは、かえって新たな紛争を招来するおそれがある。
したがって、本件は法の適用により終局的に解決することができるものとはいえない(②不充足)。
以上より、本問の訴えは、「法律上の争訟」に含まれず、司法審査の対象とならない。
(2)以下、司法権の範囲に含まれるが、司法権を行使できない類型
ア 参議院による除名処分は、議院の議員懲罰権(58条2項本文後段、同ただし書)という議院自律権に基づくものである。議院自律権とは、各議院が他の国家機関等から監督や干渉を受けることなく、その組織・運営に関し自主的に決定できる権能をいう。
かかる権能が議院に認められる趣旨は、権力分立原理(41条、65条、76条1項)からの要請にある。
そこで、参議院の議院自律権に関する事項については、(司法権の範囲内ではあるが)司法審査の対象とならないものと解する。
イ. 統治行為 確かに、法の支配を徹底すれば、あらゆる法律問題について裁判所が裁判をなし得るのが原則である。しかし、高度な政治性を持つ問題については、民主的基盤の弱い裁判所が法律的見地のみから判断するのは妥当でなく、むしろ一次的には民主的機関である国会の判断を尊重すべきであり、究極的には主権者たる国民の判断に委ねるべきである。また、裁判所が政治的紛糾に巻き込まれると司法の政治化を招来し、司法の公正、司法権の独立(76条3項)の要請に反する危険がある。そこで、民主政に内在する制約及び裁判所の自制として、統治行為論を日本国憲法上採用することができると解する。
自衛隊の設備は、国家防衛というまさに直接国家統治の基本に関する高度の政治性を有する統治行為といえる。
衆議院の解散は、直接国家統治の基本に関する高度の政治性を有する行為であるから、統治行為に含まれる。
以上より、本問の訴えについて裁判所は「司法権」(76条1項)の範囲には含まれるが、「司法権」を行使することができない。
ウ. 地方議会は、「地方自治の本旨」(92条)の内容たる住民自治と団体自治が認められている自主的な機関である。自主的な団体は、一般社会とは別個に自律的な法規範を有する特殊な部分社会を形成している。そこで、かかる団体の自律性を尊重するために、一般市民法秩序と直接関連しない純然たる内部紛争は、すべて司法審査の対象にならないものと解する。
本問において、地方議会による除名処分は、議院たる地位を奪い失職させるものであり、一般市民法秩序に関連する紛争である。そのため、もはや純然たる内部紛争とはいえず、司法審査の対象となる。
エ. 政党は21条1項の結社の自由によってその結成や運営の自由が保障されている自主的な団体であり、別個に自律的な法規範を有する特殊な部分社会を形成している。そこで、かかる団体の自律性を尊重するために、①一般市民法秩序と直接関連しない純然たる内部紛争は全て司法審査の対象にならないものと解する。
その上で、政党は国民が国家の意思形成過程に関与をするための媒介をなし、議会制民主主義を支える重要な役割を担っていることから、より高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなし得る自由を保障すべきである。そこで、①一般市民法秩序と直接関連する事項についても、②当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情がない限り、②´適正な手続に則って処分がなされたかということのみが、司法審査の対象となると解する。②´´手続がなければ条理に基づき審理。
本件の政党による除名処分は、①一般市民法秩序と関連するため司法審査の対象となるが、②´当該処分が適正な手続に則ってなされたかということのみが司法審査の対象となる。
オ. 大学は学問の自由(23条)を保障するため自治の自由が保障された自主的な団体であり、別個に自律的な法規範を有する特殊な部分社会を形成している。そこで、かかる団体の自律性を尊重するために、一般市民法秩序と直接関連しない純然たる内部紛争は司法審査の対象にならないと解する。単位認定は審査対象外。卒業認定は審査対象。
カ. 憲法上の権利が侵害された場合、具体的な権利侵害は一般市民法秩序と直接関係があるといえる(H24重判3)。
(3)ア. 裁判は原則として公開で行う(82条1項)。その趣旨は、裁判所は民主的基盤が希薄であるから、裁判所の公正を確保し、国民の信頼を確保するために、公開という形で民主的コントロールを及ぼすことにある。
イ. 裁判官の全員一致で、公序良俗を害すると判断したときには、対審を非公開とすることができる(82条2項)。もっとも、政治犯罪や出版に関する犯罪などは常に公開しなければならず(82条2項ただし書)、判決に関しては公開の原則は定められていない。
国会の会議と異なり多数決によって非公開とすることができないのは、裁判所が少数者の人権を保障する役割を有し、多数決による意思決定にはなじまないからである。
(4)裁判は原則として公開である(82条1項)が、裁判官の全員一致で、公序良俗に反するおそれがあると決した場合には、対審を非公開とすることができる(同2項)。
では、私企業の保有する営業秘密という私的利益が、公序良俗の内容となるか。
ア. この点、裁判の公開の趣旨は、公正な裁判により国民の権利自由を保障しようとするものであるから、公開によってかえって国民の権利自由が侵害されては本末転倒の結果となる。もっとも、憲法上保護されない利益まで含めると、非公開が公開の原則(81条1項)の例外であることに鑑みれば、その範囲が広くなりすぎる。
したがって、憲法上保障された私的利益は、公序良俗の内容となると解する。
イ. 本問では、営業秘密の公開により企業の財産権(29条1項)が侵害される。とすれば、企業の営業秘密を公開することは、公序良俗を害すると解する。
ウ. したがって、裁判所は82条2項により非公開とすることができる。
(5)「各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する」自由は、憲法21条1項の「規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれる」。このような情報等に「接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきである」「公正かつ円滑な訴訟の運営は、傍聴人がメモをとることに比べれば、はるかに優越する法益である」が、傍聴人のメモ採取行為が訴訟の運営を妨げることは、「通常あり得ないのであって、特段の事情のない限り、これを傍聴人の自由に任せるべきであり、それが憲法21条1項の規定の精神に合致するものということができる」。
(6)ア. まず前提として、憲法は条約に優位すると解する。なぜなら、条約を優位と解すると、厳格な手続によらず憲法改正が可能となってしまい、憲法の最高法規性(98条1項)ないし、硬性憲法(96条)の建前に反するからである。
そして、条約は81条に列挙されていないものの、そのまま国内法として通用する以上、81条の「法律」に準ずるものとして違憲審査の対象となると解する。
したがって、最高裁判所に条約の違憲審査権が認められる。
イ. ただし、条約が違憲と判断された場合も、国際法的能力は残るので、内閣が相手方との交渉でその効力を失わせることになるにすぎない。(自説)
(7)内閣に条約締結権が与えられている(73条3号本文)その趣旨は、実際に相手方との交渉に当たる内閣が権限を有するのが合理的であるし、条約締結に要求される迅速性・専門技術性を備えているのも内閣であるからだと解される。とすれば、かかる迅速性・専門技術性を備えていない最高裁判所の違憲判断が内閣を拘束すれば、73条3号本文の趣旨を没却する。また、条約には国会による民主的統制が及ぼされているし(61条)、条約に起因する具体的争訟で事後的に違憲審査をすることで人権保障は図ることができる。
したがって、最高裁が条約の締結に際し違憲であるとの見解を示した場合、内閣は条約を締結できないとする点は、内閣の条約締結権(73条3号本文)を侵害し違憲である。

5財政
(1)検討 1.84条の適用又は趣旨が及ぶか 2.要件法定 3.要件明確
ア. 租税法律主義(84条)の趣旨は、課税手続に対する民主的統制を及ぼし、恣意的な課税から国民の財産権(29条1項)を保障する点にある。
ここでいう「租税」とは、国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充当するために、特別の役務に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付をいう。
上述の趣旨は、84条が直接適用されない「租税」以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合いが強いもの等であれば及ぶ。
イ. 租税法律主義は、①課税要件法定主義と、②課税要件明確主義を内容とする。
(2)「公の支配」に属さない教育事業への公金支出は禁じられている(89条前段)。そして、私立学校は教育事業である。とすれば、私立学校に対する国の補助金支出が憲法上許されるには、私立学校が「公の支配」に属することが必要である。
そこで、「公の支配」の意義が問題となる。
ア. この点、89条後段の掲げる慈善・教育・博愛の事業は、その目的の公共性ゆえにあるいはその美名に頼って公費が濫用されるおそれが多い。そこで、89条後段は、財政民主主義(83条)の見地から国費の濫用を防止したものと解する。
かかる趣旨に鑑みれば、「公の支配」とは、国費の濫用を防止し得る程度の一定の監督を受けることをいうと解する。
イ. 本問の場合、私立学校は私立学校法等の教育関係法規による一定の監督に服しており、これにより国費の濫用を防止し得る程度の監督は及んでいる。
ウ. したがって、私立学校は「公の支配」に属するので、国の補助金支出は憲法上許されると解する。
(3)教育 ア. 地方公共団体においても行政権の濫用による公金支出の危険があること、89条後段は国費ではなく「公金」としていることから、地方公共団体が補助金を支出する場合にも89条後段の適用があると解する。
イ. 学校教育法にいう幼稚園に該当しない幼児教室が「教育の事業」に当たるか。
教育の事業とは、人の精神的又は肉体的な育成を目指して人を教え、導くことを目的とする組織的、継続的活動をいう。
本問の幼児教室も幼稚園に類似した事業を行うことから、かかる活動を行うものと認められ、「教育の事業」に当たると解する。

6地方自治
(1)甲県は、憲法92条の「地方自治の本旨」を理由に…の違憲性を主張している。「地方自治の本旨」の意義が問題となる。
ア. 憲法が一章を設けて(第八章)地方自治制度を保障した趣旨は、行政国家現象の下で進む中央集権を緩和し権力分立を図る自由主義的側面と、国政レベルでは民意の統合を重視するため、国政に十分反映されない住民の意思を地方議会に反映させる民主主義的側面にある。
とすれば、「地方自治の本旨」とは、①国から独立した地方公共団体が自己の責任において事務を処理する権限を有するという団体自治の原則と、②地方公共団体の意思決定がその構成員たる住民の意思に基づいて行われるという住民自治の原則をいうと解する。
イ. 確かに、地方公共団体に自主財政権を認めることは、団体自治の原則から必要である。とすれば、起債に許可を必要とすることはその制約になり許されないとも思える。
しかし、無制限な起債は国家の金融秩序・国家経済へ与える影響が大きい。また、地方公共団体の自主財源としては地方税の徴収等の他の方法もある。
よって、地方公共団体の起債に許可を必要とすることは、「地方自治の本旨」に反するとまではいえないと解する。
(2)本問条例は法に反しないか。本問条例が「法律の範囲内」(94条)といえるかどうかが問題となる。問題文に法律と条例が両方載っているときには注意(H19新試)
「法律の範囲内」か否かの判断は、両者の対象事項と規定文言を対比するのみではなく、その趣旨・目的・内容及び効果をも比較して両者の間に矛盾抵触があるかを検討する。
(3)リコールの合憲性 国政レベルでは代表民主制が採用され(43条1項)、民意の統合が重視されていることから、民意の反映が十分に図られない。また、地方の事務は住民に密接な事柄である。そこで、地方レベルでは中央の補完として、より民意の反映を達成すべく、直接民主制を採用している。
すなわち、92条は、自由主義の観点から地方自治の本旨として地方公共団体の自律権(団体自治)と、民主主義の観点からその意思決定に住民が参加すること(住民自治)を定めている。また、市長が住民から直接選挙(93条2項)され、直接請求による解職制度を認めることも、民意の反映に資する。
強い民意の反映は、独裁の危険をもたらすおそれがあるが、地方自治において一部の地域の利益のみを図るということは起きにくく、国政の場合よりも不都合は大きくない。
(4)住民投票の合憲性 ア. 本問条例は市長に住民投票を実施できる権限を与えている。
市長は、住民から直接選挙(93条2項)されるものである。また、地方自治法は地方公共団体の長の解職制度を採用しており、独裁の危険は解職制度のない中央と比べて少ない。
よって、本問条例が市長に住民投票の実施権限を与えていることは合憲である。
イ. では、拘束型の住民投票は認められるか。
確かに、地方自治においても議会が設置(93条1項)されており、間接民主制を前提とすることに反するとも思える。
しかし、92条は地方自治の本旨として、自由主義の観点から地方自治が団体自らの意思と責任の下で行われること(団体自治)と、民主主義の観点から地方自治が住民の意思に基づいて行われること(住民自治)を定めている。そして、住民投票の結果に法的拘束力を認めることは、住民自治の理念にかなうものである。
また、住民投票においてはその区域が国民投票よりも狭いため、住民同士の実質的討論を行う過程も期待でき、少数者の人権を害するおそれも低いといえる。
よって、地方自治においては、拘束型の住民投票が認められると解する。